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第6章の7・明日もグッと行くぞ!…の ぷち話し
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鏡が一人暮らししているマンション。ここに竜沢達が集まっていた。
「いよいよ、か。」
竜沢が真顔で言う。
「おう!せやな!」
隆正のテンションは高い。
「明日ですね。」
鏡はいつも通り笑顔で話す。
「ふぅ~…竜沢くん、重みを感じさせる意味が分からないんだけど?」
流香は竜沢の真顔と声のトーンが重い事に違和感しかなかった。
「確かに。甲の故郷に行くんだよな?はしゃぐとこじゃねーのか?」
学美は流香に同調。だが…
「いや…あまり軽く考えない方がいい。」
甲は珍しく竜沢に同調していた。
「前にも言ったが、今が最も危険な時期だ。」
甲の故郷へ行く為の準備も整い、あとは明日、関西を出発するだけだが…甲はここで再度注意をするよう促した。
「いや、それは聞いたけどさー。ただ、あんたの故郷だろ?人間が住んでない訳じゃないんだからさー。」
「それに弟さんは毎日山を下りて学校に行ってるんでしょ?いくらなんでも大袈裟じゃない?」
学美と流香の考えに対し、甲は首を横に振った。
「確かに壬は学校に通っている。俺もそうだった。母親も買物に行く。だが…それはうちの家族だからだ。」
〝説得力…〟
何か納得する竜沢。
「ま、まぁせやけど、ちゃんと注意すりゃいいんやろ?お前に着いて行くで、甲!」
「うむ。俺も吹雪で前後左右が分からなくなり、偶然じいちゃんに会って助かった事もある。運が良ければ大丈夫だ。」
「いや、運なん?」
ビビり出す隆正。
「だが最も危険なのは…」
この先の言葉は、聞かずとも皆分かっていた。
「熊だろ。」
「そうだ。」
竜沢の答えにうなずく甲。
「冬眠に失敗した奴はかなり危険だ。だから…」
「分かってるって。」
竜沢はポケットから鈴を出した。
「ベアーベル。五百円(ワンコイン)で買ったぞ。」
何故か得意気な竜沢。
「今持ってて大丈夫ですか?僕はもう荷物に入れてますよ。」
「大丈夫だよ、心配性だな鏡は。」
「いや、だって竜沢くんだし。高確率で忘れそうですから。」
鏡の言葉に全員がうなずく。
「う、くっ…じゃ、じゃあ持っててくれよ。」
「はいはい。」
「お母さんか?!」
自分のベアーベルを鏡に渡す竜沢と、それを『仕方ないなー』という感じでにこやかに受け取る鏡を見てツッコむ隆正。
「ふぅ~、七月が見たらムッとするシーンね。」
「それ、流香が言うかー?」
にやにやしながら言う学美に、ちょっと拗ねた表情をする流香。
「そういや七月さんは空港で待ち合わせやったな。おい神侍、いつ以来や?嬉しくてワクワクしてんとちゃうか?」
「何言ってんだよ隆正。そんな感じじゃないって。」
隆正を気にしてか、竜沢はニヤける事も、うろたえる事もなく、冷静に話す。
「へ、へぇ、そんなもんかいな。」
「ワクワクじゃない。……モンモンだ。」
「ブッ飛ばす!」
顔を赤らめて握り拳で言い切る竜沢に、怒り心頭の隆正。
その頃の七月。
「ん?」
ベランダで空を見ていたら急に寒気を感じた。
「なっちゃん、明日でしょ。風邪引いたら大変よ。」
母親の笹月に言われ、家の中に入る七月。
「あと、これ。」
笹月はベアーベルを七月に渡した。
「これ付けてれば熊が近付いてこないんだって。」
「ありがとう、お母さん。」
ベアーベルを受け取り、部屋に戻る七月。
まぁベアーベルでは避けれない、ある意味もっとも危ない奴が居るけどな。
「明日かー…」
竜沢達の顔を浮かべて、微笑んでしまう七月であった。
「グッと行くぞーっ……何てね。」
「いよいよ、か。」
竜沢が真顔で言う。
「おう!せやな!」
隆正のテンションは高い。
「明日ですね。」
鏡はいつも通り笑顔で話す。
「ふぅ~…竜沢くん、重みを感じさせる意味が分からないんだけど?」
流香は竜沢の真顔と声のトーンが重い事に違和感しかなかった。
「確かに。甲の故郷に行くんだよな?はしゃぐとこじゃねーのか?」
学美は流香に同調。だが…
「いや…あまり軽く考えない方がいい。」
甲は珍しく竜沢に同調していた。
「前にも言ったが、今が最も危険な時期だ。」
甲の故郷へ行く為の準備も整い、あとは明日、関西を出発するだけだが…甲はここで再度注意をするよう促した。
「いや、それは聞いたけどさー。ただ、あんたの故郷だろ?人間が住んでない訳じゃないんだからさー。」
「それに弟さんは毎日山を下りて学校に行ってるんでしょ?いくらなんでも大袈裟じゃない?」
学美と流香の考えに対し、甲は首を横に振った。
「確かに壬は学校に通っている。俺もそうだった。母親も買物に行く。だが…それはうちの家族だからだ。」
〝説得力…〟
何か納得する竜沢。
「ま、まぁせやけど、ちゃんと注意すりゃいいんやろ?お前に着いて行くで、甲!」
「うむ。俺も吹雪で前後左右が分からなくなり、偶然じいちゃんに会って助かった事もある。運が良ければ大丈夫だ。」
「いや、運なん?」
ビビり出す隆正。
「だが最も危険なのは…」
この先の言葉は、聞かずとも皆分かっていた。
「熊だろ。」
「そうだ。」
竜沢の答えにうなずく甲。
「冬眠に失敗した奴はかなり危険だ。だから…」
「分かってるって。」
竜沢はポケットから鈴を出した。
「ベアーベル。五百円(ワンコイン)で買ったぞ。」
何故か得意気な竜沢。
「今持ってて大丈夫ですか?僕はもう荷物に入れてますよ。」
「大丈夫だよ、心配性だな鏡は。」
「いや、だって竜沢くんだし。高確率で忘れそうですから。」
鏡の言葉に全員がうなずく。
「う、くっ…じゃ、じゃあ持っててくれよ。」
「はいはい。」
「お母さんか?!」
自分のベアーベルを鏡に渡す竜沢と、それを『仕方ないなー』という感じでにこやかに受け取る鏡を見てツッコむ隆正。
「ふぅ~、七月が見たらムッとするシーンね。」
「それ、流香が言うかー?」
にやにやしながら言う学美に、ちょっと拗ねた表情をする流香。
「そういや七月さんは空港で待ち合わせやったな。おい神侍、いつ以来や?嬉しくてワクワクしてんとちゃうか?」
「何言ってんだよ隆正。そんな感じじゃないって。」
隆正を気にしてか、竜沢はニヤける事も、うろたえる事もなく、冷静に話す。
「へ、へぇ、そんなもんかいな。」
「ワクワクじゃない。……モンモンだ。」
「ブッ飛ばす!」
顔を赤らめて握り拳で言い切る竜沢に、怒り心頭の隆正。
その頃の七月。
「ん?」
ベランダで空を見ていたら急に寒気を感じた。
「なっちゃん、明日でしょ。風邪引いたら大変よ。」
母親の笹月に言われ、家の中に入る七月。
「あと、これ。」
笹月はベアーベルを七月に渡した。
「これ付けてれば熊が近付いてこないんだって。」
「ありがとう、お母さん。」
ベアーベルを受け取り、部屋に戻る七月。
まぁベアーベルでは避けれない、ある意味もっとも危ない奴が居るけどな。
「明日かー…」
竜沢達の顔を浮かべて、微笑んでしまう七月であった。
「グッと行くぞーっ……何てね。」
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