龍青学園GCSA

楓和

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第2章の2「いいパンチだ」

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 夜道を一人歩く、鞄を持った学生服の女の子。ライトブラウン色をした長い髪の女の子に、背後から近づく影…。

 「えっ?!」

女の子は気配に気付き振り返った…その瞬間、右手に激痛が走った。手に持っていた鞄を落とし、うずくまってしまう女の子。

 「悪いなぁ、ふははっ。」

アイスホッケーの面を被った背の高い男は笑い声を上げ、走り去った。これは、龍青学園と鬼緑学院との対抗戦が終わった、その夜の出来事である…。


 龍青学園昼休み、生徒指導室。

 「不破学美?!」

お茶を飲みに来ていた七月が、鏡からその名を聞いてお茶をふき出しそうになった。

 「あれ?七月さん、知ってるんですか?」
 「え、え~と…」

言いにくそうな七月に竜沢がツッコむ。

 「ふっ、昔の女か…。」

次の瞬間、顔面にパンチをくらって床に転がる竜沢。

 「はぁ、はぁ…ぶつわよっ。」

既にぶっている。

 「いいパンチだ。」

七月の肩をポンっと軽く叩き褒める甲。

 「ふぅ~…竜沢くんは置いといて。七月、本当に知ってる子?」
 「う、うん。前の学校の友達。変わった名前だし間違いないかな。」
 「なるほど夜遊び友達か。悪さばっかしてやがったんだなー、やっぱり。」

復活した次の瞬間、またも顔面にパンチをくらって床に転がる竜沢。

 「いいパンチだ。」

再度褒める甲。

 「ふぅ~…まぁ愚か者は放っといて。七月、その様子からして…それだけじゃないんでしょ?」

流香に問われ、話し出す七月。

 「…引っ越しが決まって、転校する前日…その日に初めて喧嘩したんだよね。まだ一年ちょっと前の事だけど原因は何だったか…忘れたなー。多分たいした事じゃなかったからだと思う。ただそのまま喧嘩別れしてて…ずっと気にはしてたんだけど。」
 「何で連絡しなかったんです?」

鏡の素朴な疑問。

 「その子、家の事情が複雑で…携帯とかも持ってなくて。手紙くらいしか連絡方法がなかったんだけど…手紙ってなんか…慣れないっていうか…。」
 「そうかー、携帯がないのはツラいなー。ライン交換できねーのかー。」
 「そんなこと言ってたらまた七月さんにやられますよ?それにしても…よく復活しますね、竜沢くん。」
 「俺の回復力は知ってるだろ。」
 「ところで…股の部分、破れかけてません?」
 「何?!今コケた時か?!」
 「そこは回復できないんですね。」
 「できるか!」

鏡と竜沢のふざけたやり取りを横目に、七月は渋い表情であった。やはり気まずいようである。その時、誰かが廊下側の扉をノックした。

 「はい、どうぞ。」
 「し、失礼します。」

入ってきたのは、肩まで伸びた黒髪と白い肌、潤んだ瞳をした、一年の女生徒だった。

 「今度の日曜、映画でもどうかな?」
 「え?ええっ?」

すばやくその女生徒の手を握って口説き出した竜沢は、次の瞬間流香にノートで顔面をどつかれた。

 「ご免なさいね~。」

やさしく声をかける流香。その後ろで竜沢は鼻の片穴にティッシュを詰めていた。

 「あ、あの、私、一年星組の中山(なかやま)里奈(りな)って言います。」
 「知ってるよ。いい名前だ。」

またもやその女生徒の手を握って鼻にティッシュを詰めたまま口説き出した竜沢は、次の瞬間七月にノートで顔面をどつかれた。

 「気にしないで。まぁ座ってくつろいで。」

お茶を出し、里奈に座るように勧める七月。その後ろで竜沢は鼻の両穴にティッシュを詰めていた。

 「あ、ありがとうございます。」
 「さて…何があったか、私達に話してくれる?」

里奈の表情から、何か一人で解決できない問題が起こったのだと判断した流香が優しく語りかける。

 「は、はい。…私、サッカー部のマネージャーをしているんですが、実はうちの副キャプテンが…脅迫されているんです。」
 「渡くんがっ?」

少し前に出る鏡。

 「脅迫とは穏やかじゃないわね。それで…誰に?どうして?」
 「…渡先輩はいつも早朝トレーニングしてて…私、それ知ってたから、その…汗を拭いてもらおうと思って、タオルを持ってコースの途中で待っていたんです。そしたら…


 「な、何だお前らは!」

渡を囲む学生服の集団。手には木刀や鎖を持っており、顔にはアイスホッケーの面(目の部分だけ丸く開いているやつ)をつけている。その中の一人が前に出て渡に語り掛ける。
その男は、身長の高い渡よりは低めだが、胸板が厚くて体格が良い。

 「サッカー部の渡健二だな。いいか、今度の抹中との勝負…出場するな。」
 「どういう事だ?!お前等は一体…!」
 「いいな。もし出場すれば…サッカー部員全員をつぶす。」

そう言い終わると、アイスホッケー男全員が素早くその場を去った。

 「…はっ!マ、マネージャー…。」

近づいて来た里奈に気付く渡。

 「渡先輩、い、今のって…」
 「…今の事は、誰にも言わないでくれ。」

そう言って走り去っていく渡。


…という訳なんです。渡先輩、みんなの為に今度の試合、絶対出ないつもりです。この学園のみんなとプレーするの、今度の抹紅との親善試合が最後なのにっ。」
 「最後って…?」

問い掛ける流香に対して鏡が答える。

 「渡くんは来月引っ越すんですよ。」
 「鏡、詳しいな。って同じ夢組だったか。」

鼻からティッシュをとる竜沢。もう復活。
 「ええ。渡くんとは割とよく話しますよ。最近少し様子がおかしかったんで気になってはいたんですが。」
 「だから私、渡先輩を出場させてあげたい!いえ、渡先輩に出て欲しい!最後にみんなと思い切りプレーして欲しいんです!だから…!」

里奈の潤んだ瞳を見て、その場にいた誰もが、渡を想う里奈の気持ちを理解した。

 「分かったわ、その連中を何とかして欲しいってことね。どうする?竜沢くん。」
 「聞くまでもないだろ?受けるぞこの依頼。」
 「あ、ありがとうございます!」

うれしそうな里奈を見て微笑む七月と流香。

 「が、報酬はちょっと高くつく。」
 「ちょっと神ちゃんっ、それはないんじゃないっ?」

少し声を荒げる七月。

 「いえっ、いいんです。何でも言って下さい。」

竜沢は決意する里奈の目をじっと見てこう言った。

 「…争奪杯当日、里奈ちゃんの手作り弁当六人分。頼むよ。」
 「え?…は、はいっ!」

少し驚いたような表情をし、その後微笑んでうなずく里奈。そして里奈は嬉しそうに生徒指導室を出て行った。それにしてもこいつら…食うこと好きだよな。

 「竜沢くん、なかなかいい案でしたね。」
 「だろ?弁当六人分ならけっこう頑張らないといけないだろうけど、無理な事でもないし。何にしろ俺らに頼るだけでおしまいじゃなく、好きな人の為に頑張るって事があの子にとっても良い事なんじゃないかなって…そう思ってな。」

自分に酔っている竜沢。だが、そのキャラからして何かおかしい。

 「へぇ?まぁしっかり私の分も入れてくれてるからね、あんまり多くは突っ込まないけど…私ゃてっきり彼女がサッカー部のマネージャー以外に料理研究会に所属していてオマケに料理の腕は一流と知ってて言ったのかと思ったわ。」
 「う、む…そ、それは初耳だなぁ。」
 「図星ね…。」

背を向ける竜沢に呆れ顔の七月。

 「と、とにかくだ…グッと行くぞ!」

ビリッ。七月の突っ込みを強引に流した竜沢だったが、力を入れた際に学生ズボンの股部は音を立てて大きく破れた。これは流せない。

 「あ、あのね…」

力の抜ける七月。流香はさっと目を背けた。

 「さて、少し空気を入れ替えるか。」
 「わー!や、やめてくれ甲!」

わざと廊下側の扉を全開にする甲と、泣きながら股をおさえるなさけない竜沢。

 「りゅっうざっわさんっ。」

そこへナイスなタイミングで登場する咲子。固まる竜沢。

 「りゅ、竜沢さぁん…」
 「い、いや、これは…」

股を押さえている竜沢に、さすがの咲子も目が点になった…?

 「…お、おもらし?」

咲子の言葉に全員が…さすがの甲が…へなへなと崩れ落ちた。

 「生徒指導室…ここか。」

そこへ現れたのは…

 「ま、学美…!」

七月は、いきなりの学美の登場に驚きを隠せない。

 「な…七月?七月か?!…うっわ~、久しぶり~!」

学美は七月の手を取り飛び跳ねて喜んだ。

 「ま、学美、げげげ元気そうね。」

実際会えてめちゃくちゃ嬉しかった七月なのだが…微妙に笑顔が引きつっていた。

 「まあねっ。健康は取り柄のひとつだからさ。それにしても七月…そう、この学校にいたのか…。」

七月ではなく、何故か竜沢の方を見てそう言う学美。

 「?」

不思議顔の竜沢。

 「さすがにビックリした。でも…会えて良かったな。」
 「学美……うんっ。」

その二人のやり取りを見ていた竜沢達は…

 「何だ、感動の再会じゃないか。七月の気にし過ぎだな。」
 「そうですね。」

と、こそこそ話していた。

 「やっ、今朝はどーもっ。」

学美は七月との再会を喜んだ後、竜沢達の方を向き軽くあいさつをした。

 「いやいや。龍青学園GCSAへようこそ。」
 「竜沢くん、股間がパックリいってますよ。」

股の部分が破れている事をすっかり忘れて少し格好をつけている竜沢に、ツッコミを入れる鏡。

 「うわ~!」

慌てて部室の隅っこに引っ込む竜沢であった。

 「あっははは!楽しいね~、ここっ。」

学美、大うけ。そんな学美を見ていて七月も少しほっとしていた。

 「あの、さ…」
 「ん?なに。」

七月は学美に話しかけた。一年位前の喧嘩別れのことを切り出そうとしている事は竜沢達にも分かった。

 「あの時…あの引っ越しの時さ、何で喧嘩したのか忘れたけど…私が悪かったのなら謝るよ。」
 「……あ?」

学美の表情が明らかに変わった。

 「七月…あんた今、忘れたって言ったかい…?」

ゆっくりと七月の方を向く学美。

 「え、え~と…」

冷や汗をたらす七月。まるで蛇に睨まれた蛙。

 「…。」

しばらくの沈黙の後、学美は扉の方を向き横目で七月を見て言った。

 「争奪杯、水上平均台バレーボール…それに出場しな。」

学美はそう言い残すとゆっくりと部室を出て行った。しばらくの間しーんと静まり返る竜沢達。

 「あ、えーと…あ、あの子さーっ、前の学校で『二大格闘王』って呼ばれてた片割れでねっ。その…つ、強いんだよねー。と、特に空手なんか鬼のように強くてー。」

七月が沈黙に耐え切れずに学美の事を話しまくる。動揺しているのが見え見えであった。そこへ流香が突っ込む。

「ふぅ~…七月、あんた一体何したの?」
「う、うーん…」

流香の問い掛けに、腕を組んで悩む七月。

 「七月さんには何でもない事でも彼女には許せない事…って感じですね。」
 「そうだなぁ、思い方は人それぞれだからな。」

鏡と竜沢の言葉に、納得する流香達。

 「とにかく彼女が言っていた水上平均台バレーボールに出場しない訳には行かないようですね。」
 「また水着かー。うーん…。」

実は水着になるのが嫌な七月。鬼緑学院との大会でも水球に出さされそうになっていたが(七月の水着姿がどーしても見たいという男子生徒らの推薦が大多数あったのである)その時は『アレがソレでコレがコウなのよ』で逃げた経緯がある。だがまぁ今回はとりあえず言われた通りにしないとマズいかなーと、七月は考えていた。
現在GCSA達の出場が確定している種目を紹介しておこう。アメフトバスケ、竜沢。鉄人レース、甲。格闘キック野球、鏡。棒横飛び、隆正。ルーレット弓道、流香。水上平均台バレーボール、流香。と、七月。そして合体サッカー、GCSA全員と七月。その他も出場依頼募集中である。

 「ふっふっふっ、やる気倍増!グッと行くぞ!」
 「おおよっ!」
 「そうですね。」
 「ふん。」
 「ふぅ~…まぁ何はともあれ渡くんの事が先決ね。護衛を付けると共に犯人を特定しないと。」

GCSA行動開始!


 その日の夜。抹紅中学校の校庭にいくつかの人影があった。

 「お前スマホぐらい持てよ。いちいちこんな風に集まらんと話しも出来んやないか。」
 「うるさい、私の勝手だ。それに…持っててもあんたらに教える訳ないだろ。」
 「ちっ、相変わらずムカつく女だ。」
 「もう黙れ馬場崎(ばばさき)。で…そうか、GCSAが動き出したか。」
 「ああ。」

答えた女の口元が少しニヤけた。

 「ん?良い事でもあったのか?いつも不機嫌なお前が。」
 「…うるさいって言ってるだろ。何度も言うが私はあんたらの仲間になった訳じゃない。気安く話しかけんな。今の良い気分が台無しになる。」
 「な、なんだと!このっ…」
 「黙れ言うとるやろ馬場崎。それよりもGCSAや。」
 「鹿島田(かしまだ)の言う通りだ。それで不破、GCSAの弱点だが…」

どうやら男が三人と女が一人いる様だ。しかもこの女は…

 「ああ、龍青内で色々情報を聞いたが…まず川波鏡は万能だね。弱点は無い。」
 「やはりそうか。」
 「けどそれ以外は…全くない訳じゃない。」
 「おいっ、もったいぶんな!」

胸板が厚く体格の良い男、鹿島田が話しに食いつく。

 「…その前に約束のものだよ。」
 「いいや、そちらが先だ。」
 「ふん、まぁいい。…谷角甲は俊敏、大嵐隆正は思考、竜沢神侍は決断…が、それぞれ欠けている。」
 「あ…?」

学美の話した内容が良く分からない、かなり面長の馬場崎。

 「つまり分かりやすく言うと、谷角がのろく、山嵐がアホ、そして竜沢が優柔不断という訳だな。」

鹿島田・馬場崎以外の、もう一人の男が明確に言う。男の頬はニキビが多く、ボコボコであった。

 「…ああ。」
 「ほぉ。…ん?そ、それだけかい?!」
 「他にはないのか?!」
 「ふんっ、慌てるな馬鹿コンビが。致命的な弱点は…四人にはまとまりがないってところだ。はっ、あんたらと一緒だな馬鹿コンビ。」

もたれていた鉄棒から背を離し、ゆっくりと馬場崎らの方に歩き出す学美。

 「何ぃ、ば、馬鹿コンビだとぉ!」

馬場崎と鹿島田はかなり頭にきている。

 「やめろ二人とも。不破、約束のものは体育館倉庫にあるマットの一番下に挟んであるそうだ。」
 「…猪野岡(いのおか)、もし無かったら…」
 「心配するな。お前と事を荒立てる気はない。」
 「どうだかな。…ま、これであんたらとは終わりだ。じゃあな。」

一人、その場から去って行く学美。

 「い、いいのかよ猪野岡さん!」
 「放っておけ。それよりも…今から作戦を再調整するぞ。」

顔のニキビを触りながらニヤリとする猪野岡に、馬場崎と鹿島田は顔を見合せた。


 次の日。龍青学園、放課後の運動場。サッカー部の練習を見ている竜沢と鏡。

 「いい動きしてますね。」
 「渡か?…ま、脅されてる割にはな。」
 「…ふっ。」

竜沢の言葉に驚いた様な表情をして、その後鼻で笑う鏡。

 「何だよ、その含み笑いはっ。」
 「いえ、さすがは竜沢くんだと思いましてね。」
 「?」
 「あの渡くんの動きを見て本調子じゃない事に気付くなんて。」
 「…前に、渡が出てた試合を見た事があるからな。」
 「やはり当日は出ないつもりですかね。」
 「悩んでるんだろうな。けど多分、出ないつもりだろうなぁ。」
 「…そうですね。」


そしてサッカー部の練習も終わり、更衣室で着替える渡達。

 「おい、渡。」

サッカー部キャプテンの秋月(あきづき)が神妙な顔で渡に声をかけた。

 「みんなが帰った後で話がある。残ってくれ。」
 「い、いいけど…どうしたんだよ秋月?」

更衣室の外で待っている竜沢と鏡は、渡がなかなか出て来ないので首を傾げていた。辺りはもう薄暗くなっていた。

 「遅いですね。秋月くんと渡くん以外の部員は帰りましたが…。」
 「…ったく。女子の着替えじゃあるまいしっ。」

更衣室へ向かう竜沢。

 「ダメですよ竜沢くんっ。」
 「見付からない様にするって。」

止める鏡にそう答え、更衣室へ向かった竜沢は、こそっと窓から中を覗いた。その竜沢を見て女子更衣室を覗く変質者を思い浮かべる鏡。

 「どれどれ。」

すりガラスなので本来は見えないのだが、少しガラスが欠けている部分があったのでそこから中を確認する竜沢。更衣室内では渡と秋月が言い合っているのが見えた。

 「落ち着けよ秋月っ。」
 「話しをそらすな!最近のお前のプレーは何だって言ってるんだ!」

その時、更衣室の前を里奈が通りかかった。

 「あれ?まだ誰か残ってるのかな?もしかして渡先輩かなぁ。」

更衣室の近くに来た里奈の耳に、秋月の怒鳴り声が聞こえてきた。

 「答えろ、渡!」
 「そ、それは…」

秋月の剣幕に口ごもる渡。

 「…ま、まさかお前も?!あ、いや…」

秋月は、はっとして言葉を止めたが、渡は気付いた。

 「あ、秋月…もしかしてお前も、なのか?」

驚くべき事に秋月も渡と同じ様に脅されていたのだ!

 「…ああ。ホッケーの面をかぶった奴らにな。」
 「そうか…。でも秋月、それなら俺がプレーに集中出来ない理由が分かるだろ?」
 「いいや、分からんねっ。」
 「な…?!」

渡と同じ位の身長である秋月が、渡の襟首をつかみ上げる。

 「ふざけてるのか!お前はそんな事で最後の試合を捨てるってのか!」

感情をぶつける秋月。渡はその秋月の手を振り払った。

 「ああ、そうだよ!俺が出たら…いや、俺達が出たら他の部員達がやられるかもしれないんだぞ!そんな事になるくらいなら俺は!」
 「それがふざけてるって言うんだよ!いいか…!」

秋月は一呼吸置いてから話し出す。

 「俺達はお前と一心同体だ。誇りある龍青のサッカー部だ。あんな奴らの脅しに屈服して勝負を捨てるなんて…そんな事が我慢できるか!奴らと戦ってでもやってやる!…龍青サッカー部全員同じ気持ちだ。そんな事、ずっと一緒にやってきたお前なら分かる筈だろうが!」
 「秋月、お前…。」

渡は目頭が熱くなった。

 「…一緒に出よう。全員一緒に出て、そして…必ず勝つ!」
 「秋月…!」

二人は強く握手をした。

 「秋月キャプテン、渡先輩…」

里奈は二人の会話が聞こえていたのか、涙を流していた。

 「よし…っと。」

その里奈の横に竜沢が出て来た。

 「きゃっ…」
 「あ、ご免。驚かすつもりじゃなかったんだけど。」
 「竜沢先輩っ?」
 「いや~、ひょんな事から話しを聞いてしまって…ついでだから録音した。」

スマホを見せる竜沢。スマホの機能で今の会話を録音したようだ。

 「おや、そんなに良い話だったんですか?」

鏡も近づいて来た。

 「川波先輩まで…」
 「とりあえず、この場を離れましょう。」

三人は気付かれない内にその場を去った。


 帰宅途中の竜沢と里奈。

 「脅されていたのは渡先輩だけじゃなかったんですね。」
 「だな。ま、恐らく他の部にもいるなー。」
 「サッカー部以外にもって事ですかっ?」

少し驚いた表情をする里奈。そしてその表情を見て『その顔もまた…か、か、可愛いっ』と思う竜沢。

 「でもまぁ、明日になれば何とかなるよ。」
 「明日…?」

不思議そうな表情をする里奈。そしてその表情を見て『その顔も…た、た、たまらんっ』と思う竜沢。ダメだ、こいつ…。
一方、渡の方は…


日の暮れた帰り道を歩く渡の足取りは軽かった。

 「ふっ、秋月の奴…。」

秋月の言葉が嬉しかった渡。気持ちもすっかり晴れていた。その時、その清々しい気持ちをぶち壊す声が…。

 「その様子だとどうやら出るつもりのようだな。予想通り、か…」

路上駐車をしている車の陰からアイスホッケーの面を被った男が現れた!

 「お、お前は!」

一歩下がる渡。すると今度は背後から声が!

 「痛い目に会いたい…そういう事やな。」

同じくアイスホッケー男だ!

 「くっ…お、俺達はお前等の言う事なんか聞かない!」
 「ほう、立派だな…だがそうすると他の部員どころか、あんたらにも大怪我してもらう事になるな。」

ゆっくりと間合いを詰めてくる二人の男。渡は挟まれ、逃げ場を失った。

 「さてと…」

アイスホッケーの面から少しだけ顎が出ている面長な男は鎖を、もう一人の胸板が厚い男は木刀を手にしていた!

 「全治一ヶ月位がいいかな!」

面長な方が渡に向けて鎖を振り下ろす!…つもりが振り下ろせなかった。

 「ん?…な、何だ…?」

ゆっくりと振り返った面長の男が見たものは…

 「…ふん。」

鎖を握った甲だった!

 「う、うわぎゃーっ?!」

甲の迫力に本気でビビる面長の男。

 「流香さんの推測通り、やはりもう一度渡くんに接触してきましたね。」

今度は胸板厚い男の背後から鏡が現れた!

 「わ、わわっ!川波鏡?!」

慌てて構える胸板厚い男。

 「川波!それに、谷角くんか?!」
 「渡くん、今は何も言わずこのままお帰り下さい。」
 「え?あ、ああ…分かった!」

鏡達が何故ここに居るのか…不思議に思いながらも、今はとりあえず鏡達の邪魔にならないよう走り去る渡。

 「あっ!く、くそっ!」

渡を追いたいが鎖が甲に握られていて離れない。

 「こ、この野郎!離せ!」
 「…ふん。」

鎖を軽く引っぱる甲。面長男は甲に凄い勢いで引き寄せられた!

 「うわっ?!」

ずむっ。鈍い音と共に、面長男の腹部に甲の拳がめり込んだ。

 「…っ!」

その時点で面長男は気を失った。なのに…更に一本背負い炸裂。

 「ぐべらっ…!」

腕を引いて、頭を打たないように考慮した優しい甲。そして面長男は完全に沈黙。

 「馬場崎?!」

思わず名前を出してしまう胸板厚い男。

 「へえ…前回、格闘野球に出場していた抹中の馬場崎くんですか。では、あなたは…誰でしょうかねぇ…。」

ドライバーグローブを付ける鏡。

 「う、うわ…」

逃げる事も出来ず、戦うのも恐い胸板厚い男。

 「おとなしく面を取って下さい。でないと…あーなりますよ。」

鏡が指差したのは、甲が片手でぶら下げている沈黙した馬場崎。

 「は、はは、はいぃっ!」

自ら面を取る男。

 「ははっ、こちらも格闘野球に出場していた人ですね。確か田中くんでしたか?」
 「鹿島田や!…あ。」
 「なるほど、そうでしたか。鹿島田くん…ね。」

見事に誘導尋問に引っかかる鹿島田。

 「覚えましたよ。次は…ありません。」

ニヤリとする鏡にビビって、自分達は猪野岡という男に命令されただけで、もう二度と渡達を襲わないと約束させられる鹿島田。その後、開放された鹿島田は沈黙した馬場崎を連れて逃げ去って行った。

 「これで大丈夫…とはいきませんよね。」
 「…だろうな。」

そして何事もなかったかの様に家路につく鏡と甲であった。


 同じ頃、抹紅中学近くの公園に学美が居た。

 「ありがとう、学美…。」

ベンチに座っていたライトブラウンの髪色をした女の子が、前に立っている学美に礼を言う。女の子の右手は包帯で巻かれており、三角巾で吊っていた。

 「何泣いてんだよっ。たいした事じゃないさ。単に薙刀部の存続を約束させただけなんだから。」

抹紅体育館倉庫の、マットの一番下から持ってきた書類を見せる学美。そこには薙刀部の存続を認めるといった文言が書かれており、生徒会の印と校長印が押されていた。

 「だいたいアヤが悪い訳じゃないだろ?」
 「けど、あんたには関係ない事でしょ?それなのに…」
 「おいおい、関係無いなんて悲しい事言うねぇ。友達、だろ?」
 「…ありがとう、学美。」

アヤはうつむいた。細めの目からは涙が流れている。しばらくして話し出すアヤ。

 「未だに、あの時の事を思い出すんだ…」
 「事件の?」
 「うん。あの男…仮面を被ってたけど、どこかで…あの声聞いた事があると思うんだ。それと、何で私の右手だけを狙ったのか…。それに鞄に目もくれなかったし、それこそ私をどうこうする気もなかった。」
 「そう言ってたね。一体、誰が何の目的で…か。でもアヤ、それを調べる為には警察に言うべきだろ?それをしなかったのは、事を大袈裟にしたくなかった…だよな。」

学美の言葉に、ゆっくりうなずくアヤ。

 「父さんが事故で死んだ後、居場所が無くなって…もう、どうでもいいってなってた私を何も言わずに引き取ってくれたおばあちゃん。私が元気になるようにって、おばあちゃんが昔やってた薙刀を教えてくれたりして…。だから私が襲われたなんて知られたくないよ。おばあちゃんには心配掛けたくないんだ。」

涙目で語るアヤの横に座り、優しく肩を抱く学美。そしてアヤの右手を見た。

 「…大丈夫。またすぐ出来るようになるさ。」
 「うん、全治一か月だって。ただ…次の龍青学園との試合に出れないのは残念かな。」
 「………ま、まさか?」
 「ち、違うよ学美っ。」

学美が脳裏に浮かんだ事を話し出す前に、アヤがそれを察知し否定した。

 「龍青の薙刀部の奴らは本当に良い奴らなんだっ。こんな闇討ちするような奴らじゃないのは何度か試合した私らが一番わかってるから。」
 「そ、そうか。…でも、そこのところが絡んでるのか、も…」
 「龍青学園との争奪杯が?」
 「アヤ達薙刀部の存続がヤバい中で、龍青学園との争奪杯『片手薙刀』に勝てば存続させてやると『あいつ』は言った…。そんな中エースのアヤが襲われて出場できなくなった…もしかしたら、右利きだと分かってたから右手だけを狙った…」

神妙な顔で考える学美。

 「いや、でも待てよ。それじゃ逆だよな?うーん…」

考え込む学美に、もたれ掛かるアヤ。

 「アヤ?」
 「危ない事はやめてよ?学美。私はあんたにも感謝してるんだからっ。あんたに何かあったら…嫌だよっ。一度は引っ越しで離れ離れになったけど…学美が抹紅に転校してきた時、本当に嬉しかったんだよっ。」
 「お、おう。」

照れまくる学美。

 「あ、あ、そうだ!今日、龍青に行ったんだけどさ…」

照れ隠しにか、七月に会った事を長々と話す学美。そんな学美を見て、アヤも嬉しくなっていた。

 「それでどうなの七月は?学美が怒ってた理由、分かってた?」
 「それがもう…全っ然っ。」

学美のその反応に思わず笑うアヤ。

 「ホントあいつ…私の思いを何も分かって無かった。だから…戦い挑んでやったっ。」

そう語る学美に、アヤは更に思い切り笑った。

 「な、なんだよっ。」
 「いや、学美らしいなーって。しかも『最高に幸せ』って顔してたよっ。楽しいんだろ?七月に会えて…めっちゃ嬉しんだろ?」
 「ア、アヤ!あんたねぇ!」
 「はっははっ。」
 「ったく。…は、ははっ。」

二人は顔を見合わせて大笑いした。


 次の日、早朝。毎度お馴染み藍川堤防にGCSAの四人が集まっていた。

 「へぇ、そんな事があったんかいなっ。」

屈伸運動をしながら興味津々な顔をする隆正。

 「鹿島田と馬場崎、猪野岡か。他にもまだ居る…か。」
 「何がや?神侍。」
 「背後に誰かがって事だ。」
 「うげぇ?!ど、どこにや?!」

竜沢の言葉に、青ざめて後ろを振り向く隆正。

 「…。」

ドゴッ! 

 「ぐはぁっ!」

そんな隆正を無言で蹴る甲。隆正は地に転がった。

 「騒がしい奴め。ちなみに背後にって言うのは、奴らを裏で操ってる奴がいる…って事だぞ。」
 「へ、そそそんなんお前に言われんでも分かっとるわ神侍。ジョジョジョークや。」
 「動揺丸見えですよ。」

準備運動をしながらツッコミを入れる鏡。

 「とにかく、これで安心…って訳には行かないでしょうが、とりあえず渡くん達を狙う事はもう無いと思います。」
 「ま、鏡と甲にそんだけ念を押されたんならな。普通の奴なら絶対に二度と会いたくないだろう。オキノドク。…さ、次はランニングだ。グッと行くぞ!」

準備体操を終え、ランニングを始めるGCSA。
しばらく走ると、前方に学美が立っているのが見えた。四人を待っていたようだ。

 「やってるねぇ。」
 「不破…どうしたんだ?」

足を止める竜沢達。

 「別になんでもないよ。用がなきゃ来ちゃダメなのか?」
 「そんな事ないけどな。ただ…」

学美の方に歩み寄る竜沢。

 「何かこの前と違うというか…。何かこう…吹っ切れた的な?」
 「え…?」

驚く学美。

 「竜沢くんは直感…というか、観察力…かな?それが長けてるんです。まぁそれより凄いのが回復力でして。それはもう、まるで怪物のような。」
 「おい鏡…お前、もしかしてディスってる?」
 「いえいえ全然。」

そう言いながらニコやかに目線を逸らす鏡。

 「ったく。それより何かあったんだろ?どうしたんだ?」

汗を拭きながら学美に尋ねる竜沢。

 「…ふっ。やっぱりいいね、あんた。さすが七月が…」

うつむいて呟く学美。そして、ゆっくりと話し出す。

 「実はさ…」

その時アイスホッケーの面をかぶった男達、十数人が走って突っ込んで来た!あっと言う間に周りを囲まれる竜沢達。

 「な、何だ?!」
 「うげげっ?!」
 「おやおや。」
 「…ふん。」
 「な、なんだこいつら?!」

咄嗟に構える学美。

 「ふははっ、用が済めばやはり裏切るか、不破ぁ!」

リーダーらしき、背の高いホッケー男が言う。

 「えっ?!」

名前を言われ、うろたえる学美。

 「ふははっ、驚いた表情、いいねー。」

ホッケー男は、気持ちが悪い位その長身の体を捻り、顔の高さを学美に合わせる様にして話しを続ける。

 「ネタばらししようかー?お前にはもう大怪我でもして引っ込んでもらおうと思うんだよなぁー…お前のお友達、矢崎(やざき)アヤのようになぁー。」
 「な…何だって?い、今なんて言った!」

目付きの変わる学美。

 「おっとと、怒ったのかい?なぁに、あれはお前を使う為に仕掛けたって事だよ。お前、かなりのワルだったんだろ?なのに義理堅く友人思い。まぁそんな事よりも…空手、柔道、レスリング、様々な格闘技に精通してるんだってな?それを知ってお前が欲しくなったらしいんだよなぁ。だからそう仕向けたのさ。矢崎アヤを襲ってなぁ。つまり矢崎アヤは、お前と友達ってだけであんな目に遭った…という訳だなぁ?間抜けな話しだろ?えぇ、不破ぁ?」

仮面の上からでもイヤな笑みを浮かべているのが分かる様な、ねちねちした話し方だった。

 「そ、そん…な…」

少しの間放心していた学美は、がっくりとその場に両膝をついた。

 「だがもう、逆らうお前はいらんそうだー。使い難いんだとさぁ。お友達と仲良く、全治一か月といこうかぁ?ふっはははははははははははははははぁっ!」

大笑いするホッケー仮面。他のホッケー仮面達も笑っていた。

 「…黙れ。」

ボソリと竜沢が呟いた。それに気付いたのか、それとも異様な雰囲気に恐怖を感じたのか、ホッケー仮面達はピタッと笑うのを止めた。そして…ホッケー仮面全員が後ろに二、三歩退いた。

 「一体何の事か僕達には分かりませんが…」

真顔でドライバーグローブを付ける鏡。

 「てめえらが腐れ外道だって事は分かるで!今回だけは本気でやったるわ!」

中腰になって睨み上げる隆正。

 「…潰す。」

指をバキボキとならす甲。

 「その人数からして不破だけじゃなく俺達ともヤル気なんだろ?なぁ?…けどこの程度の数じゃ役不足だな。大怪我はお前等がする事になる。…グッと行くぞ!」

竜沢のいつものセリフが終わるや否や、GCSAの四人は四方に分散して突っ込んだ!

 「う、うわわ…!」

体勢の崩れたホッケー仮面達は次々と地に転がっていく!

 「え?え?」

呆気にとられている学美。しかし明らかに自分の為に傷を負いながらも戦っているGCSAを見て、学美は段々と闘志が湧いてきた。

 「く、くらえ!」

竜沢を背後から襲うホッケー木刀男!しかし木刀が竜沢に当たる前に、そのホッケー木刀男は地に倒れ落ちた。

 「サンキュー学美!」

そう、学美が倒したのだ!

 「ふんっ、れ、礼を言うのは私の方だよっ。」

名前を呼び捨てにされて照れている学美。それを見て竜沢は『か、か、可愛い!』と思っていた。

ドバキッ!

 「ほらほら竜沢くん、デレっとしてると大怪我しますよ。」

ヌンチャクを持ったホッケー男にやられそうだった竜沢を助ける鏡。

 「あ、悪いっ。助かったぜ鏡。」
 「お昼にチョココルネよろしく。二個。」
 「うっ?!しかも二個?!」

竜沢は鏡の言葉でダメージを受けた。
危うい戦いをしているにも関わらず普段と変わりないGCSA達を見て、学美は思わずニヤケていた。チームワークが悪いどころか、実は最高のチームワークを持つGCSA達…学美はそれを何となく感じていたのだが、猪野岡達にはチームワークが悪いという表面上の情報を流していたのだ。
そして数分後…十数人もいたホッケー仮面達は、リーダーを除いて全て倒れていた。

 「うう…か、勘弁してくれ~。」

背の高いホッケーリーダーもヨレヨレであった。

 「このホッケー人、最初に大笑いしてたねちっこい人ですが…どうします?」
 「潰す。」

甲が腕を伸ばしホッケーリーダーの手首を掴んだ。

 「う、うぎゃ…」

ビビるホッケーリーダー。その時、甲の肩に手を置く竜沢。

 「…ここは、俺達じゃない。」

竜沢の言葉に、ゆっくりと手を放す甲。

 「へ?へ?」

何故離されたのか分かっていないホッケーリーダーだったが、すぐに理解した。

 「てめぇ…」

怒り心頭の学美が正面に立ったからだ。

 「う、あ…」
 「こ…の…野郎ーっ!」

学美の渾身の右拳がホッケーリーダーの顔面に入り、仮面と奥歯が飛び散った。ホッケーリーダーは地に転がって動かなくなった。

 「いいパンチだ。」

甲がボソリとつぶやき、戦いは終った。鏡を除く全員、服は泥や血でボロボロ、顔はあざだらけで、竜沢や隆正に限っては今にも倒れそうだった。

 「さて、急がないと遅刻しますよ。」
 「うげ!そりゃヤバイやん痛っ!く、口ん中切れとるっ。」
 「…腹が減った。」
 「よし、帰るか!」

竜沢は早くも傷が治りかけていた。その後、何事も無かったかのように去ろうとする四人を学美が止める。

 「ちょ、ちょっと待ってっ。話しを…!」
 「悪ぃ!遅刻したら流香に怒られる!また今度な、学美!」

しかし四人はそのまま走り去ってしまった。

 「な、何なの、あの四人。」

少し呆れて、ふぅっと息をもらし、学美は微笑んだ。

 「また今度な…か。」
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