龍青学園GCSA

楓和

文字の大きさ
24 / 49

第4章の12「どっちにしようかな?」

しおりを挟む
 最終戦を目前に、遂にGCSA五人が揃った。
ここまでは全てGCSAの勝利となっているが、実は黒点塾の目的は戦いに勝つ事では無い。スポーツを重んじる龍青学園の特色を利用して試合を仕掛け、その中で鏡の周囲にいる仲間達を痛め付ける事や、鏡を皆から孤立させる事を目的としていた。つまりは全て鏡を苦しめる事に特化していたのである。
しかし作戦が全て失敗に終わった為、ゴンザはこの最終戦で鏡以外の全員を倒す事以外に任務を遂行出来ない状況となっていた。
ゴンザにとっても土壇場である最終戦…果たしてゴンザはGCSAを倒す事が出来るのか?!頑張れゴンザ!………あれ?


 「最終戦第五試合!運動場でのドッヂボール対決です!」

このドッヂボールは六対六の勝負で、六人全員が外野になるか全員が戦闘不能になるかで勝負が決まる。ちなみに一度外野になった者はもう内野に戻る事は出来ない。

 「いい?全員で鶴野さんを守るのよ。それと、始まってからしばらくしたら甲くんはワザと外野にまわって。その後は…ボールを受けない様に。」

円陣を組み、流香のアドバイスを聞いてうなずく竜沢達。

 「よしっ、分かった。」
 「分かりました。流香さんも守りますよ。」
 「う、うん。」

照れる流香。

 「え?何や?ボールを受けるなってどういう意味や?」
 「…ふっ。」
 「鼻で笑うなや鼻で!」

半ベソで甲につかみ掛かる隆正。

 「そんな…斎藤さん達をなめちゃダメっ。四人で六人を相手にするなんて。」
 「つくしちゃんはおとなしく俺達に守られなさーい。」

竜沢はつくしの肩をポンッと叩いた。さりげなく触るのがうまくなっている。

 「俺達を信じろって。な?鏡。」
 「そうですよ。流香さんと鶴野さんは、ゆっくりお茶でも飲んでて下さい。」
 「鏡~、さすがにコート内でお茶はせんやろぉ?第一持って来てないで、普通。」
 「鶴野さん、どっちがいい?」
 「あ、えーと…じゃあ緑茶で。」

所持していたペットボトルのお茶をつくしに渡す流香。ちなみにもう一本はほうじ茶。

 「あるんかい?!」

キレイなツッコミを見せる隆正。

 「とうきび茶はないのか。」
 「お前は我慢せぇや!しかもマニアック!」

レアなお茶を要求する甲に見事な二段ツッコミをする隆正であった。さすがである。

 「さぁて…グッと行くぞ!覚悟しろよ、ゴンザ軍団!略してゴン軍!更に略してゴ軍!」
 「くぅ…いつまでも馬鹿にしおって…」

またも怒るゴンザ。そしてジャンケンで、ボールはゴンザが持つ事になった。

 「ゴンぐ…いや、ゴ、両軍、整列!最終戦の審判は、この青葉が引き受ける!では、試合開始!」

二回セリフを噛んだ青葉が笛を吹く。と、同時に黒房がつくしを狙ってボールを投げる!

 「ふん。」

甲が素早くつくしの前に立ち、ボールを難なくキャッチ。そして…

 「ぬぅん!」

投げ返す甲。しかも球威は、黒房など比べ物にならないものだった。

 「ほげぇー!」

犠牲者は馬場崎だった。本来ボールを当てられた者は外野にまわる訳だが、馬場崎は線審に担がれコート外に運び出された。つまり…外野というより、馬場崎は『沈黙』したという事である。

 「次は…」

軽く鹿島田を見る甲に、鹿島田はめちゃくちゃ怯えていた。

 「うろたえるな!あんなもの、かわせば済む事だ!」

ゴンザが吠える!でも避ける事しか考えていないところがちょっと逃げ腰!

 「いいぞー!みんなぁ!」
 「その調子っ!」

学美と七月の声援にも力が入る。

 「うおりゃ!」

黒房はその怪力で流香を狙った。かなりの剛速球だが、流香の前に入って軽く受け止めたのは鏡。

 「よいしょ。さて、それじゃ…」

鏡の目線は森林に向けられた。

 「むっ、来るぞ森林!」
 「はっ!」

動きを読んで構える森林。だが…

 「げぶぅー!」

犠牲になったのは、やはり鹿島田であった。鹿島田…沈黙。

 「くっ、フェイントか…」

裏をかかれるゴンザ。そう、ボクサーが使う、目のフェイントであった。鏡は甲との試合時にも使っていた。

 「さぁ、馬場崎選手に続き鹿島田選手も運び出されました!始まる前から沈黙していた猪野岡選手を入れると、早くも三人が戦闘不能になったという事です!ここまで見て、どうですか咲子さん。」
 「GCSAの皆さん、かっこいいですねぇ~。咲子もGCSAの皆さんに守られてみたいです~。」
 「いや咲子さん、それ私もめっちゃ同感っ。もしかしたら学園内の女子全ての願望かもしれませんねー。」

鈴美の言葉に、龍青の女生徒達は皆うなずいていた。

 「どうしたゴンザ。お前のゴンザ軍団はこの程度か?いや、ゴ軍はこの程度か?」

わざわざ言い直す竜沢に、ゴンザは怒りで体を小刻みに震わせていた。

 「ゆ、許さんぞ竜沢…くらえい!」

ゴンザ自ら竜沢目掛けて全力投球。これを竜沢、不敵な笑みを浮かべたまま避けようとしない。

 「…何?」

ゴンザの目は点になった。何と竜沢の前に甲が出て来て、ゴンザの投げたボールに当たったのだ。ボールは地に転がる。

 「ふぅ~、スタート。ゴンザ、飛んじゃうかな。」

ボソッと言う流香。

 「た、谷角くん、外野にまわりなさい!」

審判の青葉に言われ、甲はゆっくりと外野に行った。

 「さ、さすがゴ斎藤さん!やりましたね!」
 「え?あ、いや……当たり前だ!お頭(かしら)だからな!」

『斎藤さん』の前に『ゴ』って入った事はとりあえずスルーし、調子に乗るゴンザ。

 「あたりめだ!塩辛だからな!」

ゴンザの声や仕草を真似しながらニュアンスの似た無意味な言葉を並べ、隆正にボールをトスする竜沢。

 「イカ繋がりかぃ?!」

そのボールを思い切り蹴り上げる隆正。ボールは上空へ高く上がる。

 「…」

そのボールを目で追っていたゴンザ達は、これがどういう事か次の瞬間理解した。

 「行かせてもらう。」

外野の甲が飛び上がっていた。そして山なりに落ちてくるボールに…スパイク!

 「あ、ぐぎゃあぁぁぁー!」

甲の強烈なスパイクから放たれたボールは黒房の顔面に直撃。頑丈な男も一発で地に転がった。

 「退場!」

青葉の号令とともに、『沈黙』した黒房は運び出された。

 「さぁ、次のターゲットは…どっちにしようかな?」
 「お、おのれ…」

舌なめずりする竜沢に、警戒して構えるゴンザ達。

 「隆正、あげろ!」

再び隆正にトスする竜沢。

 「イカを?!」

またも思い切りボールを蹴り上げる隆正。ゴンザ達は、二度も同じ手に引っ掛かる馬鹿ではないと言わんばかりに、甲のいる外野側から離れる。

 「イカリング。」

ゴンザ達の想像通り、甲がボールに飛びついてスパイク!しかしボールはゴンザ達ではなく、鏡の方へ向かって飛ぶ!

 「馬鹿め!何処を狙って…はっ?!」

ゴンザは気付いた。鏡がファイティングポーズを取っている事に。

 「イカは…天ぷらもおいしいですよ?」

鏡は、甲がスパイクしたボールを受け止めずにそのまま右ストレートで返す。拳に捻りを加えていた為、ボールは更にスピードと威力を増した。そのボールは…森林の顔面に直撃した。

 「ぐぎぇばぁー!」

森林は断末魔の奇妙な声をあげて倒れた。

 「沈黙!いや、退場!」

言い間違う青葉の指示に従い、線審達にコート外へ運び出される森林。

 「す、凄い…」

つくしは驚いていた。黒房や森林は相当強い。それをイカの話しをしながらあっという間に余裕で倒してしまうGCSAはその上をいく強さ。
つくしは思った…自分達が勝てる相手ではなかったのだ、と。

 「残るはお前だな、ゴンザ。」

かまぼこ型の目を細める竜沢。

 「く…そ、そう簡単にはやられんぞ!」
 「ですよね。ブロ…ゴンザさんなら二倍ってところでしょうか。」

ゴンザは鏡の言葉の意味を、この時は理解出来なかった。

 「ほらよっ。」

竜沢がゴンザから離れた所にボールを投げる。

 「ふん。」

甲がそのボールを軽く弾く。ボールはゴンザの横を通り抜け、隆正へ。

 「はいよっ!」

隆正は強めに蹴り返した。ボールはまたゴンザの横を通り抜ける。ゴンザは、ボールが徐々に近づいている事に気付いた。

 〝そうやって徐々に逃げ場を狭めつつ、スピードを上げていく算段か。甘いわ!〟

ゴンザは素早さには自信があった。ゴンザにしてみれば、敵の手裏剣をかわす事に比べたらこの程度のスピードは何の問題もない!ただ…避けているだけなのにそんなに粋がられても困る!

 「ふんっ。」

隆正の蹴ったボールの正面に移動した甲が、チョップで弾き返す。若干スピードと精度が上がった。スッとかわすゴンザ。

 「はい。」

ここで鏡のコークスクリューブロー。弾かれたボールに回転がかかり、急激に速さと威力が上がった。確実に照準も合っている!

 「むう!」

ギリかわすゴンザ。避けなければ確実に当たっていた。そしてここで…

 「ふん!」

甲は蹴りで、回転のかかっているボールを真芯で捉えて弾き返す!

 「ぬおぉっ?!」

かなりギリで、辛うじてかわすゴンザ!さすがお頭!

 「こ、こんなものよ!」

若干『どや?!』という顔をしたゴンザだったが、次の瞬間お花畑が見えた。

 「はいっ。」

ドギャっ!

そんな音が聞こえてくるようなボールの歪み方だった。甲の蹴りから放たれた凄まじい速さと威力のボールを、鏡はまたも捻りを加えた右拳で打ち返したのだった。

メゴッ…

軌道なんか見える間もなく、ボールはゴンザの顔面(額あてをうまく避けて目ぇ出してるあたり)に当たり、ゴンザは…飛んだ。けっこう飛んだ。
薄れる意識の中、ゴンザは思っていた。

 〝二倍以上だよね、これ?〟

さらばゴンザ!いい夢見ろよ!無理か!

 
 「黒点塾対GCSAの試合は…全てGCSAの勝利で幕を閉じましたー!」

その放送と同時に、龍青はまたも盛り上がる。

 「ほ、ほんとに凄い…」
 「だろ?俺達の事また見直した?」

つくしの前に集まるGCSA。龍青の生徒、教師、皆の顔に笑顔が溢れた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

彼女に振られた俺の転生先が高校生だった。それはいいけどなんで元カノ達まで居るんだろう。

遊。
青春
主人公、三澄悠太35才。 彼女にフラれ、現実にうんざりしていた彼は、事故にあって転生。 ……した先はまるで俺がこうだったら良かったと思っていた世界を絵に書いたような学生時代。 でも何故か俺をフッた筈の元カノ達も居て!? もう恋愛したくないリベンジ主人公❌そんな主人公がどこか気になる元カノ、他多数のドタバタラブコメディー! ちょっとずつちょっとずつの更新になります!(主に土日。) 略称はフラれろう(色とりどりのラブコメに精一杯の呪いを添えて、、笑)

フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件

遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。 一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた! 宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!? ※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

幼馴染に告白したら、交際契約書にサインを求められた件。クーリングオフは可能らしいけど、そんなつもりはない。

久野真一
青春
 羽多野幸久(はたのゆきひさ)は成績そこそこだけど、運動などそれ以外全般が優秀な高校二年生。  そんな彼が最近考えるのは想い人の、湯川雅(ゆかわみやび)。異常な頭の良さで「博士」のあだ名で呼ばれる才媛。  彼はある日、勇気を出して雅に告白したのだが―  「交際してくれるなら、この契約書にサインして欲しいの」とずれた返事がかえってきたのだった。  幸久は呆れつつも契約書を読むのだが、そこに書かれていたのは予想と少し違った、想いの籠もった、  ある意味ラブレターのような代物で―  彼女を想い続けた男の子と頭がいいけどどこかずれた思考を持つ彼女の、ちょっと変な、でもほっとする恋模様をお届けします。  全三話構成です。

俺は陰キャだったはずなのに……なぜか学園内でモテ期が到来した件

こうたろ
青春
友人も恋人も居ないボッチ学生だった山田拓海が何故かモテだしてしまう。 ・学園一の美人で、男女問わず憧れの的。 ・陸上部のエースで、明るく活発なスポーツ女子。 ・物静かで儚げな美術部員。 ・アメリカから来た金髪碧眼でハイテンションな留学生。 ・幼稚園から中学まで毎朝一緒に登校していた幼馴染。 拓海の生活はどうなるのか!?

【完結】イケメンが邪魔して本命に告白できません

竹柏凪紗
青春
高校の入学式、芸能コースに通うアイドルでイケメンの如月風磨が普通科で目立たない最上碧衣の教室にやってきた。女子たちがキャーキャー騒ぐなか、風磨は碧衣の肩を抱き寄せ「お前、今日から俺の女な」と宣言する。その真意とウソつきたちによって複雑になっていく2人の結末とは──

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

二重のカーテン (スカートの下の黒い意志)

MisakiNonagase
青春
洗濯物の隙間に隠したのは、母としての祈りと、娘のプライド。 かつて、女子高生という生き物はもっと無防備で、自由だった。 44歳の主婦、愛子が朝のベランダで手にするのは、娘たちが毎日履き替える漆黒のオーバーパンツ、通称「黒パン」。それは、令和を生きる娘たちが自らの尊厳を守るために身に着ける、鉄壁の「鎧」だった。 小学校時代のママ友たちとのランチ会。そこで語られるのは、ブルセラショップに下着を売っていた奔放な50代、無防備なまま凛と歩くしかなかった40代、そして「見せないこと」に命を懸ける10代の、あまりに深い断絶。さらには、階段で石像のように固まる父、生徒の背後に立たないよう神経を削る教師……。 一枚の黒い布を通して浮き彫りになる、現代社会の歪さと、その根底にある不器用なまでの「優しさ」。 ベランダに干された黒いカーテンの向こう側に、あなたは何を見ますか?

処理中です...