D○ZNとY○UTUBEとウ○イレでしかサッカーを知らない俺が女子エルフ代表の監督に就任した訳だが

米俵猫太朗

文字の大きさ
7 / 700
第一章

反逆の翼

 審判ドラゴンさんの(かなりウルサい)笛が鳴り、こちらボールで後半が始まった。エルフ側エンドは都合良くベンチ側なので気兼ねすることなく前へ進み出てDFライン手前のティアさんに話しかける。
「どう? やれそう? って聞いて下さい」
『様子はどう、ティア?』
『悪くないぜ。戸惑ってるけどな』
「戸惑っているぜ、だそうであります」
 そりゃそうだろう。恐らくミノタウロス女子が……いやスタジアムのほとんどが見た事のないフラットな3バック、DFがそのまま揃った中盤、両サイドがタッチラインギリギリまで広がった(左のダリオさんと右のリーシャさんには「常にタッチラインを跨ぐ気持ちで」と伝えてある)3TOP。 特にミノタウロスの3バックは誰がどこまでどのFWについて行くのか、決めかねている様子だった。
「対応される前に……て、あれ?」
 元DFで今はMFのエルフたちでパスがずれ、相手ボールになると同時に一気に攻めのスピードが上がった。
「やべ、遅攻のこと教えてなかった!」
 『戸惑っている』てエルフ側の事でもあったんだ! しかも速攻過ぎて俺もオフサイドトラップのタイミングを失ってる!
「うおおおおはずせ!」
 祈りながらもDFラインに遅れてボールを追う。幸い、シャマーさんに軽く足を引っかけられながらミノタウロスFWが撃ったシュートはGKに難なくキャッチされた。
「やばかった……って今だ! 上がれ!」
 俺は叫んで腕を振る。DFラインは「え? 相手ボールじゃないのに?」という顔で止まったが、ナリンさんも追従して「上がれ!」と叫ぶと三人揃ってセンターラインへ疾走を始める。
 始めると同時にGKがパントキックでボールを相手陣へ送り、ミノタウロスDFがそれを跳ね返し、その三人がセンターサークル手前まで来た頃にはボールは彼女らの間をすり抜けて、きょとんとしているミノタウロスFWの元へ帰ってきた。
「オフサイド!」
 俺が叫んだ半瞬後に副審が尻尾と旗を大きく上げた。笛が鳴って審判ドラゴンさんも尻尾を上げる。恐らく間接FKの意味、つまりオフサイドが取れたって事だ。
「ティアさん!」
『おう、よこせや堕牛!』
 俺の意を汲んだティアさんが何か口汚さそうな事を叫びながら猛ダッシュでボールを奪い、副審の示す位置へボールをセットするとワンステップでパスを出す。まだ何が起きたか認識できてなさそうな選手たちの間を縫い、ボールはカイヤさんの足元へ届いた。
 そして驚いたミノタウロスMFが「この選手どこから来た?」という顔で守備に入る鼻先でカイヤさんはリズムよくパスをダリオさんの足元へ繋ぐ。
「頼むぞダリオさん……!」
 左サイドタッチライン際フリー。予想通りミノタウロスのDFはそこまで開いて守備をしていない。十分距離があるのを確認したダリオさんはボールを左足前にトラップし……
 ボールを左足で切り返して中央に進み、右足で渾身のシュートを放ってミノタウロスDFの鳩尾に撃ち込んだ!
「モオオオオオ!」
 悶絶しながらも、あっぱれそのDFはボールをサイドラインに蹴り出したのち、ピッチに崩れ落ちる。
『うぉぉぉぉ!』
「違うやろー!」
 歓声と溜息に満ちるスタジアムで、俺だけが頭を抱えていた。あれだけ説明したのに、初手から違うプレイするんかい!
 ……いや、頭を抱えているのは俺だけじゃない。ダリオさんもだった。審判が試合を止めメディカルスタッフを呼び入れる中で、倒れるミノタウロスDFに詫びを入れた後に頭を抱えつつ申し訳なさそうに俺の方を見る。
 ナリンさんを呼んで指示の徹底を伝えて貰う? いや、違うな。俺は頭にあった手を顔の横まで移動し、一気に中心へ寄せておたふくのような顔を作った。
『ぶっ!』
 さすがエルフ族、眼が良い。俺の顔に気づいて何か言いつつ笑うダリオさんに軽く手を振り、低い軌道を示す。
「ナイスアイデア! でも次はお願いな!」
の意味を込めた手振り。言葉は通じないがたぶん、分かってくれただろう。
「ショーキチ殿! 伝えましょうか?」
「いや、ダリオさんはアレで大丈夫。次はやってくれるでしょう。それより遅攻の方だ。中盤の4人を呼んで下さい」
 鳩尾を強打したミノタウロスさんは復活しつつある。急いで集めた4人に、俺は

「迷ったら相手コーナーフラッグ目指して蹴れ」
とだけ伝えて貰った。
 ソリボールを通り越してラグビー的手段だが、これだけサッカーの戦術というものが発展していない世界なら、スローインも上手くはないだろう、という読みからだ。それを奪ってチャンスを作ろう。
 いやこちらもプレスのかけ方とかないけどさ。

 案の定というか、エルフのスローインで再開された試合はあっさりとミノタウロス側ボールになった。こっちもスローインが下手って事だな、くっそ。
「いいぞ……いいぞ……よし、上がれ!」
 緩い横パスがミノタウロスの右WBに渡り、内に切り返して前線にパスを送ろうとする流れ。その「内に切り返す」為に下を向いたタイミングで俺は声をかけてピッチすぐ外を駆け上がる。
「オフサイド!」
 叫ぶ三人がボールへ追いつくより先に旗が上がる。よし、今度のは闇雲じゃない。完璧に「奪いに行った」オフサイドトラップだ。
『カイヤー!』
 シャマーさんはセットしたボールをキックする。例によって中盤へ下がったカイヤさんは今度はターンせず、ボールに少しだけ触って角度を変えてダリオさんの元へ再び届ける。フリックやん。そんなんできるんすか!?
「今度こそ頼むぞ姫様……」
 祈る俺と逆側の左サイドラインで、ダリオさんは距離を詰めかねるミノタウロス右CBを迂回するような低いクロスを放った。
 彼女の左足から離れたボールはその右CB、スイーパーとGKの間、左CBの眼前をバウンドしながら旅し、無人のコーナーへ……と転がる間に、右タッチラインから猛スピードで走りこんできたリーシャさんの足元に収まった。
『もう、角度無いじゃない!』
「君なら『抜ける』だろ、リーシャさん」
 ゴールが見えなくても良い。GKを対面するSBだと思って抜いてみて、と彼女には伝えてあった。抜いた先がゴールだ。ゴールの正確な場所は、GKの立ち位置が彼女に教えてくれる。
『バカじゃないの!?』
 彼女は大きく開いたGKの足の間にボールを通し、自身は大きく迂回してボールへ追いつこうとする。しかし、できなかった。
 何故ならボールだけ先にゴールネットの中へ吸い込まれてしまったからだ。
感想 1

あなたにおすすめの小説

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

男女比1対5000世界で俺はどうすれバインダー…

アルファカッター
ファンタジー
ひょんな事から男女比1対5000の世界に移動した学生の忠野タケル。 そこで生活していく内に色々なトラブルや問題に巻き込まれながら生活していくものがたりである!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

義姉と押し入れに隠れたら、止まれなくなった

くろがねや
恋愛
父の再婚で、義姉ができた。 血は繋がっていない。でも——家族だ。そう言い聞かせながら、涼介はずっと沙耶から距離を取ってきた。 夏休み。田舎への帰省。甥っ子にせがまれて始まったかくれんぼ。急いで飛び込んだ押し入れの中に、先客がいた。 「……涼介くん」 薄い水色の浴衣。下ろした髪。橙色の光に染まった、沙耶の顔。 逃げ場のない暗闇の中で、二人分の体温が混ざり合う。 夜、来て。 その一言が——涼介の、全部を壊した。 甘くて、苦しくて、止まれない。 これは、ある夏の、秘密の話。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

妻に不倫され間男にクビ宣告された俺、宝くじ10億円当たって防音タワマンでバ美肉VTuberデビューしたら人生爆逆転

小林一咲
ライト文芸
不倫妻に捨てられ、会社もクビ。 人生の底に落ちたアラフォー社畜・恩塚聖士は、偶然買った宝くじで“非課税10億円”を当ててしまう。 防音タワマン、最強機材、そしてバ美肉VTuber「姫宮みこと」として新たな人生が始まる。 どん底からの逆転劇は、やがて裏切った者たちの運命も巻き込んでいく――。

ブラック企業でポイントを極めた俺、異世界で最強の農民になります

はぶさん
ファンタジー
ブラック企業で心をすり減らし過労死した俺が、異世界で手にしたのは『ポイント』を貯めてあらゆるものと交換できるスキルだった。 「今度こそ、誰にも搾取されないスローライフを送る!」 そう誓い、辺境の村で農業を始めたはずが、飢饉に苦しむ人々を見過ごせない。前世の知識とポイントで交換した現代の調味料で「奇跡のプリン」を生み出し、村を救った功績は、やがて王都の知るところとなる。 これは、ポイント稼ぎに執着する元社畜が、温かい食卓を夢見るうちに、うっかり世界の謎と巨大な悪意に立ち向かってしまう物語。最強農民の異世界改革、ここに開幕! 毎日二話更新できるよう頑張ります!