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第一章
午後は半牛
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後半15分2ー2の同点! 得点者はオ・ウンゴル選手!(いや違う)
『やめてもう~私じゃないから~』
得点者はカイヤさんではない。目前でパスカットを試みたミノタウロスDFのオウンゴールだ。だが便宜上、みんなはカイヤさんの元へ集まりニヤニヤ笑いながら祝福する。カイヤさんはそれを、苦笑混じりに払い退ける。良い風景だ。
「凄いでありますね、ショーキチ殿!」
「ああ。シュートに到らなかったけど、あの場所へ走ったから得点が生まれた」
「ミノタウロスにしたら僅か4分で2失点。しかも2点目はオウンゴール!『2-0は危険なスコア』とはこの事だったのでありますか!」
いやオウンゴールの事は含んでないけど……まあいいや。
「でもここからがちょっと難しいんですよ。勝ってるチームって2点リードだと余裕があって隙がある。1点返されると改めて守備を固めるのか追加点を狙って再び攻勢に出るか統一できなくてバタバタする。でも同点になったら、もうリセットして攻めるしかないですよね」
「なっ、なるほど」
感心して考え込むナリンさん。そして、俺の懸念は的中する事になる。
試合はそこから10分ほど膠着状態になった。攻撃するしかないミノタウロスは、いよいよ中盤から強引なドリブルで攻めに出るようになる。もちろんそれはかなり確率が低く、しばしば人数をかけたエルフの守備に止められる結果で終わるが同時に「オフサイドで安全確実にこちらボールにする」機会が激減する事となった。
またそれにつきあう事でチーム全体が走り、体をぶつけ合う展開となる。いわゆる「消耗戦」であり、それはエルフにとって分があるものではなかった。
そして消耗しているモノが他にもあった。俺の体力と精神力だ。
「きっついな、これ……」
オフサイドトラップをかける機会が減ったとは言え、やはりチャンスがあれば奪いたい。その為に俺はボールを見ながら、同時にDFラインと歩調を合わせ続けていた。
蒸し返すが俺は運動部ではない。コールセンターというデスクワークだ。主な運動と言えば仕事ではセンター内を歩き回ること、プライベートではPS4のコントローラーを上げたり下げたりするくだいだ。そんな俺にこのステップはキツい。
しかも初めてサッカーのフィールド(脇)に立ち、動き続けている。緊張が更に疲労を加速させる。その上、この状況を打破する策も考え続けている。脳も脚も限界を迎えようとしていた。
一度など、明らかにラインの上げ方を失敗した。だが
『よっしゃオフサイド、サンキュー!』
と叫んだ(らしい)ティアさんの大声で誤解しミノタウロスFWが脚を止め副審も旗を上げる……というシーンすらあった。ジャッジリプレイがあったらひ○っちに
「これはティア選手のファインプレイっすわ」
と言われハラ○ロミが苦笑する事態だ。まあ俺は笑う余裕も無いけどな。
その直後、ボールがサイドラインを割ったタイミングで相手チームが選手交代を申告し、試合が中断される事となんた。
「はぁ……はぁ……ちょっと休めるか……」
俺にはその交代が救いの主に思えた。だが実際はそれどころではなく、悪魔の仕業だった。
「なっ……あんなんありか!? 反則ちゃうんか!」
俺はその交代選手を見て膝から崩れるしかなかった。
「大丈夫でありますか、ショーキチ殿!?」
その選手は普通に可愛かった。……つまり、牛的動物的な「カワイイー」ではなく、人間的な顔というか……普通に俺達人間と似たような顔をしていた。ミノタウロス的部分は髪から突き出した耳だけ。(ケモナーさんも安心?)
いや違う。もう一つ牛的部分があった。ホルスタイン的胸。おっぱいだ。大きい。可愛くて胸も大きくて獣耳……。
「ナリンさん、あれ反則じゃないんですか?」
「彼女はハーフミノタウロスであります。今シーズンの半ばに、ミノタウロスに帰化して登録されたであります」
「そっすか……」
つまり、可愛さ的には反則だが登録ルール的には反則でないと言うことだ。
「そうなるとマズいぞ……もうオフサイドトラップは駄目かもしれん」
「え!?」
俺の目が彼女に釘付けになるからではない。違う「目」が問題になるかもしれないのだ。
「試すしかないか……上がれ! いややっぱ下がれ!」
『上がって……駄目、下がって!』
スローインで試合が再開した。動きが止まっているのでトラップがかけやすいシーンだ。俺はさっそく仕掛けたが……すぐにキャンセルする羽目になった。
いや、キャンセルし損ねたと言うべきか。俺の指示そのものが半歩遅れ、更にナリンさんの通訳が一歩遅れ。ゲームのボタン操作のようにはいかない!
都合1.5ほどタイミングを外した間に、さっきの交代で入ったハーフミノタウロスさんは絶好のパスをFW……ではなく、オンサイドから走り込む二列目の選手へ送ったのだ。
「終わった……」
エルフDF陣を置き去りにして独走態勢に入るミノタウロスMF。俺は後を追ったが脚をもつらせて派手に転倒してしまった。
『きゃああああ!』
俯いて地面を舐める俺にそのシーンは見えなかった。だが、悲鳴と笛から想像すれば分かる。ミノタウロスに貴重な勝ち越し点をやってしまったのだ。俺のミスで……。
『やめてもう~私じゃないから~』
得点者はカイヤさんではない。目前でパスカットを試みたミノタウロスDFのオウンゴールだ。だが便宜上、みんなはカイヤさんの元へ集まりニヤニヤ笑いながら祝福する。カイヤさんはそれを、苦笑混じりに払い退ける。良い風景だ。
「凄いでありますね、ショーキチ殿!」
「ああ。シュートに到らなかったけど、あの場所へ走ったから得点が生まれた」
「ミノタウロスにしたら僅か4分で2失点。しかも2点目はオウンゴール!『2-0は危険なスコア』とはこの事だったのでありますか!」
いやオウンゴールの事は含んでないけど……まあいいや。
「でもここからがちょっと難しいんですよ。勝ってるチームって2点リードだと余裕があって隙がある。1点返されると改めて守備を固めるのか追加点を狙って再び攻勢に出るか統一できなくてバタバタする。でも同点になったら、もうリセットして攻めるしかないですよね」
「なっ、なるほど」
感心して考え込むナリンさん。そして、俺の懸念は的中する事になる。
試合はそこから10分ほど膠着状態になった。攻撃するしかないミノタウロスは、いよいよ中盤から強引なドリブルで攻めに出るようになる。もちろんそれはかなり確率が低く、しばしば人数をかけたエルフの守備に止められる結果で終わるが同時に「オフサイドで安全確実にこちらボールにする」機会が激減する事となった。
またそれにつきあう事でチーム全体が走り、体をぶつけ合う展開となる。いわゆる「消耗戦」であり、それはエルフにとって分があるものではなかった。
そして消耗しているモノが他にもあった。俺の体力と精神力だ。
「きっついな、これ……」
オフサイドトラップをかける機会が減ったとは言え、やはりチャンスがあれば奪いたい。その為に俺はボールを見ながら、同時にDFラインと歩調を合わせ続けていた。
蒸し返すが俺は運動部ではない。コールセンターというデスクワークだ。主な運動と言えば仕事ではセンター内を歩き回ること、プライベートではPS4のコントローラーを上げたり下げたりするくだいだ。そんな俺にこのステップはキツい。
しかも初めてサッカーのフィールド(脇)に立ち、動き続けている。緊張が更に疲労を加速させる。その上、この状況を打破する策も考え続けている。脳も脚も限界を迎えようとしていた。
一度など、明らかにラインの上げ方を失敗した。だが
『よっしゃオフサイド、サンキュー!』
と叫んだ(らしい)ティアさんの大声で誤解しミノタウロスFWが脚を止め副審も旗を上げる……というシーンすらあった。ジャッジリプレイがあったらひ○っちに
「これはティア選手のファインプレイっすわ」
と言われハラ○ロミが苦笑する事態だ。まあ俺は笑う余裕も無いけどな。
その直後、ボールがサイドラインを割ったタイミングで相手チームが選手交代を申告し、試合が中断される事となんた。
「はぁ……はぁ……ちょっと休めるか……」
俺にはその交代が救いの主に思えた。だが実際はそれどころではなく、悪魔の仕業だった。
「なっ……あんなんありか!? 反則ちゃうんか!」
俺はその交代選手を見て膝から崩れるしかなかった。
「大丈夫でありますか、ショーキチ殿!?」
その選手は普通に可愛かった。……つまり、牛的動物的な「カワイイー」ではなく、人間的な顔というか……普通に俺達人間と似たような顔をしていた。ミノタウロス的部分は髪から突き出した耳だけ。(ケモナーさんも安心?)
いや違う。もう一つ牛的部分があった。ホルスタイン的胸。おっぱいだ。大きい。可愛くて胸も大きくて獣耳……。
「ナリンさん、あれ反則じゃないんですか?」
「彼女はハーフミノタウロスであります。今シーズンの半ばに、ミノタウロスに帰化して登録されたであります」
「そっすか……」
つまり、可愛さ的には反則だが登録ルール的には反則でないと言うことだ。
「そうなるとマズいぞ……もうオフサイドトラップは駄目かもしれん」
「え!?」
俺の目が彼女に釘付けになるからではない。違う「目」が問題になるかもしれないのだ。
「試すしかないか……上がれ! いややっぱ下がれ!」
『上がって……駄目、下がって!』
スローインで試合が再開した。動きが止まっているのでトラップがかけやすいシーンだ。俺はさっそく仕掛けたが……すぐにキャンセルする羽目になった。
いや、キャンセルし損ねたと言うべきか。俺の指示そのものが半歩遅れ、更にナリンさんの通訳が一歩遅れ。ゲームのボタン操作のようにはいかない!
都合1.5ほどタイミングを外した間に、さっきの交代で入ったハーフミノタウロスさんは絶好のパスをFW……ではなく、オンサイドから走り込む二列目の選手へ送ったのだ。
「終わった……」
エルフDF陣を置き去りにして独走態勢に入るミノタウロスMF。俺は後を追ったが脚をもつらせて派手に転倒してしまった。
『きゃああああ!』
俯いて地面を舐める俺にそのシーンは見えなかった。だが、悲鳴と笛から想像すれば分かる。ミノタウロスに貴重な勝ち越し点をやってしまったのだ。俺のミスで……。
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