D○ZNとY○UTUBEとウ○イレでしかサッカーを知らない俺が女子エルフ代表の監督に就任した訳だが

米俵猫太朗

文字の大きさ
75 / 700
第五章

ファン感謝祭

しおりを挟む
 翌日になっても頭の痛みは治らなかった。むしろ増したと言っても良いくらだ。
 いや、順番通り整理しよう。「ナイトエルフ代表ファン感謝祭」は順調に開催された。スタジアムDJのスワッグステップが煽る中、ファンと選手がコンビを組んで挑むドリブルリレー競争やキックターゲットが遊ばれ、選手への一問一答コーナーが盛り上がり、まず選手ファン入り交じりの、後に選手だけの紅白戦が行われた。
 その全てでリストさんは大活躍だった。ドリブルで劣勢になると相棒の幼子を抱えて全力疾走、キックは的を壊す勢い、質問コーナーでは特有の早口オタクの口調で熱く語る。悔しいが顔も整っていて気さくな性格なので人気も高く、サイン会では長蛇の列が前に並んだ。
 しかし一番の躍動はやはり試合だった。相棒のクエンさんと組んだCBのコンビはまさに鉄壁の山脈。一般的にナイトエルフさんたちは生息地が大洞穴という洞窟&対戦相手がゴルルグ族、という事から足下の細やかなテクニックに優れ、予測不可能なフェイントやドリブルを得意とするようだが、彼女たちは悉くそれをシャットダウンした。
 しかも恐るべき事にリストさんは後半からCFで出場した。ゴブリンのカーリー選手のようにリベロの練習……という感じではない。本格的なFWとして前線に張った彼女は空中戦でボールを収め、巧みなテクニックで相手DFの嫌がる所にボールを運び、強烈なシュートでゴールを決めた。まさかサッカーでも二刀流だったとは。
 強い。強すぎる個性だ。チームに欲しい欲しくないで言えば欲しい。だがあまりにも本能のままにプレイしている。CBの時は味方の位置を考えずボールホルダーに闇雲にアタックするし、FWの時も既に味方がいるニアサイドへ同時に突っ込んでしまったりする。
 監督としてはメリットデメリット計算の上でそんな選手を使うかどうか非常に悩む所だし、一個人のサッカーファンとしても「勿体ないなあ」という気持ちがある。
 そういう訳で俺はその日になってもリストさんの事で頭を痛めていたのである。そして次にはそれを忘れるような大事件も起きた。

『それでは最後の触れ合いコーナーですぴい。選手はそのままピッチに残って下さいぴよ。観客席のお子さんは係員さんのいる階段からピッチに降りて選手と戯れて良いぴよ』
『お子さんと、その保護者だけだぞ! 行けるヤツは行っとけ! この機会に触っておかないと勿体ないぞ!』
 それは、なんて事ない時間だった。スワッグとステフの場内アナウンスの通り、ファン感謝祭最後のイベントである触れ合いタイム――ピッチを子供たちに解放し、自由にボールを蹴ったり選手にファンサービスして貰ったりできる時間――の風景。
 俺はスタジアム上部のボックスシートからそれを眺めていた。ここまでスキルチャレンジや練習や紅白戦を上から観てアローズへ誘いたい選手を何名かピックアップし、リストさんの事で脳味噌を使い過ぎて頭を痛めた。だからその時間に至ってはあまり真剣に芝生の上を見ていなかった。 
 そもそも練習試合後の子供との戯れだ。さっきまで真面目な顔をしていた選手たちのゆるんだ顔や、楽しそうな子供たちの姿を見てなごむ時間である。
 だが俺はある少女に目を奪われた。人間だとギリギリ高校生くらいに見えるその少女は、クエンさんにドリブル突破をしかけ尻餅を着かせて抜き去ると、斜め後ろから突っ込んできた幼女二名――前を見ずに後ろを向いて楽しい悲鳴を上げながら逃げている――を一跳躍で飛び越え、幼女を追って走ってきたリストさん(だった)の頭上にボールを通して自分は脇をすり抜けてまた全速力で別の方向へダッシュしていた。ボールはその間、頭上に浮かした時を除いて彼女の足先から10cmと離れる事はなかった。
「ナリンさん、ナリンさんあの子!」
 俺はボックスシートから飛び出し階段を駆け下り、ピッチサイドで係員として働いているナリンさんを呼び止めた。
「どうしたんですか?」
「ナリンさん、今すぐあの子を捕まえて着替えさせて、もし保護者の方がいたらその人たちも一緒に控え室まで連れてきて下さい!」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

《カクヨム様で15000PV達成‼️》悪魔とやり直す最弱シーカー。十五歳に戻った俺は悪魔の力で人間の頂点を狙う

なべぞう
ファンタジー
ダンジョンが生まれて百年。 スキルを持つ人々がダンジョンに挑む世界で、 ソラは非戦闘系スキル《アイテムボックス》しか持たない三流シーカーだった。 弱さゆえに仲間から切り捨てられ、三十五歳となった今では、 満身創痍で生きるだけで精一杯の日々を送っていた。 そんなソラをただ一匹だけ慕ってくれたのは―― 拾ってきた野良の黒猫“クロ”。 だが命の灯が消えかけた夜、 その黒猫は正体を現す。 クロは世界に十人しか存在しない“祝福”を与える存在―― しかも九つの祝福を生んだ天使と悪魔を封印した“第十の祝福者”だった。 力を失われ、語ることすら封じられたクロは、 復讐を果たすための契約者を探していた。 クロは瀕死のソラと契約し、 彼の魂を二十年前――十五歳の過去へと送り返す。 唯一のスキル《アイテムボックス》。 そして契約により初めて“成長”する力を与えられたソラは、 弱き自分を変えるため、再びダンジョンと向き合う。 だがその裏で、 クロは封印した九人の祝福者たちを狩り尽くすための、 復讐の道を静かに歩み始めていた。 これは―― “最弱”と“最凶”が手を取り合い、 未来をやり直す物語

ペーパードライバーが車ごと異世界転移する話

ぐだな
ファンタジー
車を買ったその日に事故にあった島屋健斗(シマヤ)は、どういう訳か車ごと異世界へ転移してしまう。 異世界には剣と魔法があるけれど、信号機もガソリンも無い!危険な魔境のど真ん中に放り出された島屋は、とりあえずカーナビに頼るしかないのだった。 「目的地を設定しました。ルート案内に従って走行してください」 異世界仕様となった車(中古車)とペーパードライバーの運命はいかに…

男女比1対5000世界で俺はどうすれバインダー…

アルファカッター
ファンタジー
ひょんな事から男女比1対5000の世界に移動した学生の忠野タケル。 そこで生活していく内に色々なトラブルや問題に巻き込まれながら生活していくものがたりである!

『スローライフどこ行った?!』追放された最強凡人は望まぬハーレムに困惑する?!

たらふくごん
ファンタジー
最強の凡人――追放され、転生した蘇我頼人。 新たな世界で、彼は『ライト・ガルデス』として再び生を受ける。 ※※※※※ 1億年の試練。 そして、神をもしのぐ力。 それでも俺の望みは――ただのスローライフだった。 すべての試練を終え、創世神にすら認められた俺。 だが、もはや生きることに飽きていた。 『違う選択肢もあるぞ?』 創世神の言葉に乗り気でなかった俺は、 その“策略”にまんまと引っかかる。 ――『神しか飲めぬ最高級のお茶』。 確かに神は嘘をついていない。 けれど、あの流れは勘違いするだろうがっ!! そして俺は、あまりにも非道な仕打ちの末、 神の娘ティアリーナが治める世界へと“追放転生”させられた。 記憶を失い、『ライト・ガルデス』として迎えた新しい日々。 それは、久しく感じたことのない“安心”と“愛”に満ちていた。 だが――5歳の洗礼の儀式を境に、運命は動き出す。 くどいようだが、俺の望みはスローライフ。 ……のはずだったのに。 呪いのような“女難の相”が炸裂し、 気づけば婚約者たちに囲まれる毎日。 どうしてこうなった!?

ダンジョン美食倶楽部

双葉 鳴
ファンタジー
長年レストランの下働きとして働いてきた本宝治洋一(30)は突如として現れた新オーナーの物言いにより、職を失った。 身寄りのない洋一は、飲み仲間の藤本要から「一緒にダンチューバーとして組まないか?」と誘われ、配信チャンネル【ダンジョン美食倶楽部】の料理担当兼荷物持ちを任される。 配信で明るみになる、洋一の隠された技能。 素材こそ低級モンスター、調味料も安物なのにその卓越した技術は見る者を虜にし、出来上がった料理はなんとも空腹感を促した。偶然居合わせた探索者に振る舞ったりしていくうちに【ダンジョン美食倶楽部】の名前は徐々に売れていく。 一方で洋一を追放したレストランは、SSSSランク探索者の轟美玲から「味が落ちた」と一蹴され、徐々に落ちぶれていった。 ※カクヨム様で先行公開中! ※2024年3月21で第一部完!

スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する

カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、 23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。 急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。 完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。 そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。 最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。 すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。 どうやら本当にレベルアップしている模様。 「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」 最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。 他サイトにも掲載しています。

処理中です...