D○ZNとY○UTUBEとウ○イレでしかサッカーを知らない俺が女子エルフ代表の監督に就任した訳だが

米俵猫太朗

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第六章

ドアの外でお待たせしました

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 宿に着いた俺達は、部屋で荷物をまとめるクエンさんとフロントで話をまとめる俺とに分かれて作業を進める事にした。
 俺の方は部屋をキャンセルすると言うよりは部屋を利用する人物が変わる、という交渉で意外と簡単に話がついた。現代日本で考えれば断られそうな話だがやはりこの世界、かなりルーズなんだろう。
 ものの数分で話が終わって部屋につくと、そちらでもクエンさんの作業は終わっていた。何せ一泊すらしていない部屋である。荷物は殆ど広げていないしベッドメイクの必要すらない。
 俺達はやる事もないので床の上でルーナさんがやっていたリフティングにチャレンジすることにした。
「はあ……はあ……ショーパイセン、これ結構きついっす!」
「クエンさん、もう少し足を開いて」
「こうっすか? あ、良い感じかも?」
「うん、ナイスですね~! そう、上に乗せて……あ、でも玉を蹴り上げちゃいけません!」
「分かってるっす! 確か撫で上げるようにっすね……」
「おお、素晴らしい! とても初めてとは思えませんね!」
「コツが分かってきたっすよ。腰ですね、腰をこう使って」
「あ、いけません! 一気に動いたら……」
 と、盛り上がっている間にふと廊下で気配がした。
「あら、あなた? まだ入ってないの? ご挨拶は?」
「いや、それが……今は入ってはいけない気がする……」
「なに言ってんだよとーちゃん。おーい、おにいちゃーん!」
 そんな声がしてドアが開いて例のオーク親子が入ってきた。後ろについてダッシュで入ってきたのは、なんと人間の男性だ。
「おい待てダニー見ちゃ駄目……あれ? あ、どうも」
 その男性は鎧に包まれた腕でオークの坊やを押さえつけ、何故か必死に少年の目を隠そうとしていた。明らかに兵士だが、もしやこの人がオーク母子のお父さんだろうか?
「ショーキチさん、こちらが夫のダンです。少し時間がとれたのでご挨拶を、と思いまして」
 オークのお母さんはそう言って優しい目で旦那のダンという男性を紹介する。
「あ、やはりそうでしたか! はじめまして、エルフの監督をしていますショーキチと申します」
「新人のクエンっす!」
 俺達がそう挨拶するとダンさんはやや警戒した面もちで頭を下げた。
「はじめまして、ダンと申します。いきなりで失礼ですが、どんな監督をなさっておられるのですか?」
 確かにいきなりだな。
「サッカードウの監督です。あの、11人でボールを蹴るスポーツの」
「ああ、そっちでしたか!」
 ダンさんは唐突に大声を出すと、一気に緊張を解いて息子さんも離した。そっちってどっちや?
「すみません、可愛らしいお嬢さんを複数連れてらっしゃるそうだし、部屋も広いのを借りてらっしゃるし、あんな声もしてたもので……。てっきり私は全裸な監督の方かと思いまして」
 全裸な監督? よく分からないが全裸で指揮するつもりはないな。たぶんジャージかスーツを着るぞ?
「え? 自分可愛いっすか!?」
 クエンさんが素早く反応する。俺の通訳を待たずに分かった……てことはダンさんエルフ語で話しているな?
「ルーナさんの事かも知れないよ?」
「えっ、酷いっす! 自分も入ってますよ! ちゃんと『複数』て言いましたよねダンさん!?」
 俺達がそう言い合っているとダンさんは更に笑顔になったが、
「いえ、勘違いだったので気になさらず。遅れましたが、この度は部屋の提供ありがとうございます」
やおら姿勢を正しビシッと敬礼を行った。
「いえいえ。部屋とお金を無駄にしてしまう所を救って頂けたのは俺達の方ですよ。ところで他のご家族の候補は見つかりましたか?」
 敬礼って格好良くていいなあ、と思いながら訊ねる。
「はい! 幸い、部隊にも家族を呼び寄せる者、二、三日後に呼ぶ者がおりまして、彼らも喜んでいたであります」
「それは良かった! ダニー君もお父さんと一緒で嬉しいかい?」
「うん!」
 ダンさんの傍らのダニー君に声をかけると、少年は声を上げながらベッドにダイブした。
「たーのしー! ふかふか!」
 子供特有の急に上がるテンションと奇行に俺達ほ頬が緩んだ。が、その様子を見てふとある疑念が沸き上がった。
「ダンさんはヒューマンですよね? ということはオークの奥さんとは異種族婚ですか?」
 オークの奥さんという響きに自分でも笑いそうになるのを堪えながら旦那のダンさんに訊ねる。
「はい? そうですが」
「と言うことは失礼ですがダニー君は混血さん?」
「ええ」
 そう答えるとダンさんは傍らのオークの奥さんの肩を抱き微笑む。
「二人のラブの結晶です」
 そっそうか……。
「おおう、ごちそうさまっす!」
 クエンさんは喜んで敬礼で返す。だが俺はそう喜んで? もいられなかった。
「そっか、じゃあオーク代表チームにも混血の選手とかいるのかな? どんなプレイスタイルなんだろう?」 
 実のところ、エルフとオークの関係性仲の悪さや旅の短縮のあおりを受けてオークの視察は殆どできていなかった。その上、混血さんまでいるとなるとなかなか分析が難しくなるな。
「はは、本当にサッカードウの監督なんですね」
 考え込む俺を見てダンさんが吹き出す。
「あ、すみません。職業病というかなんというか」
「こちらこそ笑ってすみません。自分は一兵卒なので隊を指揮する苦労は分かりかねますが、曹長どのを見て大変だなあ、とは常々思っております」  
 そう言えば彼は仮面をつけていない。つまりはノートリアス、士官ではないという事か。
「でもすぐに任官されますわ。夫はオーク語もエルフ語も堪能で頭が良いもの」
 オークの奥さんはそう言って誇らしげに旦那のダンさん(しつこい?)を見上げる。
「おっと。オーク語を覚えたのは君を口説く為さ。二度とできないよ」
 そう言うとダンさんは再びオークの奥さん(こっちもしつこい?)を抱き寄せ、彼女の鼻にキスをした。
「でも君たちが来てくれたから頑張れるかもな? 昇進試験に向けて気合いが入ったよ」
「いいなあ。家族の助けがあれば百人力っすよねー!」
 クエンさんがつくづく羨ましそうに呟くとダンさん一家は嬉しそうにはにかんだ。
「そうだ、家族の助けか……」
 だが俺はまた別のアイデアが思い浮かんで考え込む。
「どうしました?」
「あ、また職業病でした。ともかく、お役に立てて幸いです。大変なお仕事だと思いますがどうか健やかで。では!」
 あまり永くいると家族団らんの邪魔だろう。俺とクエンさんは荷物を拾い、最後にもう一度お礼を言い合って宿を後にした。
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