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第八章
船上の照れリスト
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自分の才能の無さに気づいて二日後。俺は練習を中座しリストさんを連れてマイボート、ディードリット号の上にいた。
「ほほう! これはなかなか気持ち良いでござる!」
リストさんは感嘆の声を上げた。船は風を受けて西へ走っている。向かうは街の中央にある学校、及び王城だ。
「ヨミケには湖とかボートは無いんだっけ?」
船縁から手を差し込んで水を弾いて遊ぶリストさんに訊ねる。
「無くはないのでござるが、ここまでのは」
リストさんは濡れてない方の手で目を日差しから庇いながら周囲を見渡す。
「本当に水が澄んで美しいし、船も綺麗で風が爽快でござる。まさにNice boatでござるな!」
ぶるっと謎の寒気がした。たぶん気のせいだろうがひょっとしたら風で身体が冷えたのかもしれない。俺は船に乗せている毛布を取り出し、リストさんにも手渡しながら言った。
「ごめんね、街への用事に連れ出しちゃって」
俺の口調にややシリアスなものを感じたのだろうか、リストさんが器用にボートの上で正座しながら応える。
「いやいや! ショー殿の導きで行く先々は何処も楽しい所ばかりで、こちらが礼を言いこそすれ、詫びを入れられるような筋合いは無いでござる!」
「あはは。だと良いんだけど」
俺はそう言いながらも彼女に足を崩すよう促す。
「……だと良いんだけど、ちょっとチームには馴染めてないよね?」
「ギクリ、でござる」
リストさんは毛布を顔まで引き上げ、わずかに目だけ覗かせて言う。
「気づいていたでござるか?」
「俺の仕事はそういう仕事です。それでお金を貰っています」
俺は少しでも彼女をリラックスさせようとおどけて言った。
「どちらかと言うと戦術として約束事が多くて混乱している感じ? それとも地上のエルフ達とどう話して良いか分からないとか?」
「ああ、それ! 両方ありますがその、後ろの方のでござる」
リストさんは毛布の端をぎゅっと掴みながら続ける。
「本当ところ拙者、かなりのコミュ障でござって、地上のエルフさんはおろかヨミケでも割と浮いてた方で……」
「そうなんですか!? でも尊み略奪隊の隊長とか、ナイトエルフの代表チームのエース選手とか立派にやってたじゃないですか?」
「あーあれは何と言うか、コスプレみたいなものでござる」
コスプレ? 確か好きなキャラクターの衣装を着てちょっと演じるやつだっけ?
「演技ってこと?」
「左様! 隊長にしても選手にしても、自分の中に模範とするモデルがおりまして、その衣装を着てその様に振る舞う事でなんとか形を保っているだけで……」
ふむ。完全に理解した訳ではないが、役割を演じる事でコミュニケーションをとってた、という事か。
「これはちょっと違うかもしれないけれど。俺は地球のコールセンターでクレーム担当もしててさ。所謂、電話ていう魔法の装置で遠方の人と会話できて一日に何件も苦情を聞く仕事だったんだよね」
これで彼女に通じるだろうか? と思ったがヨミケで地球の漫画なども読んでいたらしいリストさんは理解したっぽい顔で頷く。
「でそれを『本来の人格の自分』でやると心にダメージを喰らうから、『クレーム担当のAさん』みたいな仮面を作って仕事中は付けて、悪口も辛さも全部その架空人格に押しつける……みたいな事をやってたんだ。『どれだけ酷い事を言われても、言われて傷ついているのはAという外郭で本体は無事』て思いながら」
「それでござる! その仕事の時はそれ用のペルソナー! をつけて、それで無敵になれるのでござる!」
リストさんはよく分からないポーズをつけながら言った。
「もしそれが無かったら『隊員が怪我をいたらどうしよう?』とか『自分のミスでチームが負けたらどうしよう?』みたいな心配に耐えられないでござる。素の自分は、弱気で心配性でしょうもない存在ござるから……」
とそのポーズも声もしおしおと萎びていった。そうか、フリーダムに生きている様に見えたリストさんも色々と考えてやっていたんだな。
「本来のリストさんは決して『しょうもない存在』じゃないと思うよ? 面白いし優しいし。それに素がどうであれ『みんなを助けられるようにペルソナ(?)をつけて頑張ろう!』と考えて実行してるって事は、やっぱり素が優しくて素敵なエルフだって事だし」
「ゔ!」
リストさんは毛布に噛みつき変な顔になった。多分だが泣かないように堪えている。感情の揺れ幅が大きい女性だなあ。
「だからそのままの自分で行ってもきっとチームの皆やサポーターから愛される筈だよ。あとサッカーの方では……断言するけどシーズンも終盤の頃には、君は間違いなくオールスタークラスの選手になる」
「オールスター? て何でござるか?」
おっとオールスターの概念は無いのか。これは脳内メモに書き記しておこう。俺は簡単にだが説明を行う事にした。
「ほほう! これはなかなか気持ち良いでござる!」
リストさんは感嘆の声を上げた。船は風を受けて西へ走っている。向かうは街の中央にある学校、及び王城だ。
「ヨミケには湖とかボートは無いんだっけ?」
船縁から手を差し込んで水を弾いて遊ぶリストさんに訊ねる。
「無くはないのでござるが、ここまでのは」
リストさんは濡れてない方の手で目を日差しから庇いながら周囲を見渡す。
「本当に水が澄んで美しいし、船も綺麗で風が爽快でござる。まさにNice boatでござるな!」
ぶるっと謎の寒気がした。たぶん気のせいだろうがひょっとしたら風で身体が冷えたのかもしれない。俺は船に乗せている毛布を取り出し、リストさんにも手渡しながら言った。
「ごめんね、街への用事に連れ出しちゃって」
俺の口調にややシリアスなものを感じたのだろうか、リストさんが器用にボートの上で正座しながら応える。
「いやいや! ショー殿の導きで行く先々は何処も楽しい所ばかりで、こちらが礼を言いこそすれ、詫びを入れられるような筋合いは無いでござる!」
「あはは。だと良いんだけど」
俺はそう言いながらも彼女に足を崩すよう促す。
「……だと良いんだけど、ちょっとチームには馴染めてないよね?」
「ギクリ、でござる」
リストさんは毛布を顔まで引き上げ、わずかに目だけ覗かせて言う。
「気づいていたでござるか?」
「俺の仕事はそういう仕事です。それでお金を貰っています」
俺は少しでも彼女をリラックスさせようとおどけて言った。
「どちらかと言うと戦術として約束事が多くて混乱している感じ? それとも地上のエルフ達とどう話して良いか分からないとか?」
「ああ、それ! 両方ありますがその、後ろの方のでござる」
リストさんは毛布の端をぎゅっと掴みながら続ける。
「本当ところ拙者、かなりのコミュ障でござって、地上のエルフさんはおろかヨミケでも割と浮いてた方で……」
「そうなんですか!? でも尊み略奪隊の隊長とか、ナイトエルフの代表チームのエース選手とか立派にやってたじゃないですか?」
「あーあれは何と言うか、コスプレみたいなものでござる」
コスプレ? 確か好きなキャラクターの衣装を着てちょっと演じるやつだっけ?
「演技ってこと?」
「左様! 隊長にしても選手にしても、自分の中に模範とするモデルがおりまして、その衣装を着てその様に振る舞う事でなんとか形を保っているだけで……」
ふむ。完全に理解した訳ではないが、役割を演じる事でコミュニケーションをとってた、という事か。
「これはちょっと違うかもしれないけれど。俺は地球のコールセンターでクレーム担当もしててさ。所謂、電話ていう魔法の装置で遠方の人と会話できて一日に何件も苦情を聞く仕事だったんだよね」
これで彼女に通じるだろうか? と思ったがヨミケで地球の漫画なども読んでいたらしいリストさんは理解したっぽい顔で頷く。
「でそれを『本来の人格の自分』でやると心にダメージを喰らうから、『クレーム担当のAさん』みたいな仮面を作って仕事中は付けて、悪口も辛さも全部その架空人格に押しつける……みたいな事をやってたんだ。『どれだけ酷い事を言われても、言われて傷ついているのはAという外郭で本体は無事』て思いながら」
「それでござる! その仕事の時はそれ用のペルソナー! をつけて、それで無敵になれるのでござる!」
リストさんはよく分からないポーズをつけながら言った。
「もしそれが無かったら『隊員が怪我をいたらどうしよう?』とか『自分のミスでチームが負けたらどうしよう?』みたいな心配に耐えられないでござる。素の自分は、弱気で心配性でしょうもない存在ござるから……」
とそのポーズも声もしおしおと萎びていった。そうか、フリーダムに生きている様に見えたリストさんも色々と考えてやっていたんだな。
「本来のリストさんは決して『しょうもない存在』じゃないと思うよ? 面白いし優しいし。それに素がどうであれ『みんなを助けられるようにペルソナ(?)をつけて頑張ろう!』と考えて実行してるって事は、やっぱり素が優しくて素敵なエルフだって事だし」
「ゔ!」
リストさんは毛布に噛みつき変な顔になった。多分だが泣かないように堪えている。感情の揺れ幅が大きい女性だなあ。
「だからそのままの自分で行ってもきっとチームの皆やサポーターから愛される筈だよ。あとサッカーの方では……断言するけどシーズンも終盤の頃には、君は間違いなくオールスタークラスの選手になる」
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