D○ZNとY○UTUBEとウ○イレでしかサッカーを知らない俺が女子エルフ代表の監督に就任した訳だが

米俵猫太朗

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第七章

頭はクールに

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『くっそう! 頭が燃えそうだ!』
 戦術練習の休憩が告げられた。再会したら赤い髪に金色メッシュという髪型になっていたティアさんが何事か叫びながらグランドに横たわった
「ティアさんは何て?」
「頭が燃えそうだ、と」
 その日の練習では俺は翻訳ネックレスを外してナリンさんの通訳を通していた。別に故障などではない。実際の試合の時、スタジアムの中では魔法もマジックアイテムも使えないので、あのミノタウロス戦と同様に通訳が必須なのだ。それに慣れる為、最近の練習では数日置きにナリンさん越しの指示指導を敢えて行うようにしていた。
「ははは。実際に炎みたいに綺麗な赤だもんね」
 俺はティアさんと同じ様に倒れて休憩する選手達を眺めながら笑った。
『髪が炎色で綺麗だね、と』
『うっせえこの隠れS。妄想の中ではアタシが攻めでぶち犯すからな!』
 ナリンさんの翻訳を聞いたティアさんは下から俺を睨みつけながら何か吐き捨てた。
「うわ、ティアさんも珍しくまいってんなー。やっぱ愚痴?」
「えっ!? はい……」
 ティアさんが少し下品な悪口下ネタでも言ったのだろう。ナリンさんの顔が赤い。ここは聞かぬが花だな。俺は続いてルーナさんに近づいた。
「ルーナさんはどう? 冷えピタモドキ要る?」
「要る。頭の変な所が痛い」
 ルーナさんは俺にも分かる日本語で返事した。或いは弱音を他のエルフに聞かれたくなかったのかもしれない。
「じゃあ貼るから前髪を上げて。糖分も取って」
 俺は練習時いつも持っている肩下げ鞄から冷えピタモドキと金平糖めいたお菓子を取り出した。どちらもクラブハウスの医療スタッフと協力して俺が作ったアイテムだ。
 試験勉強や資格勉強で知恵熱っぽいものが出た時に俺も何度もお世話になった、頭部を冷やす品物と糖分を補給する品物。どちらもそれそのものはこちらの世界に無かったが、意図や用途を説明すると優れたスタッフが魔法や薬草を駆使して作ってくれた。
 戦術練習が本格開始になるとそれらの需要は爆発。エルフのお嬢さんたちも頭を使い過ぎると熱を持つんだ……と思うと無性におかしかった。
「ショーキチ、そんなに優しく微笑みながら額を触っちゃダメだよ」
 ルーナさんの言葉で思考の雲から現実へ戻った。
「あ、ごめん。そんなに笑ってた? 違うんだ、辛そうなみんなを見て笑ってたんじゃなくて、脳を酷使して熱くなるのはエルフも人間も一緒なんだな、て面白くて」
 俺が言い訳するとルーナさんは座った目で俺の顔をみつつため息をついた。
「そうじゃなくてさ……。知らない。もう遅いし」
 ルーナさんは呆れた顔で背を向け歩き去る。なんだ、そんなに怒らせるような事したか? と悩む俺の腕がぐいっと引っ張られた。
「はい?」
『監督。次はわたくしに貼ってくださいませ!』
『次は私です!』
 そこにはガニアさんパリスさんを先頭にして、何人もの選手の列が構成されていた。
「みなさん、どうしたんですか?」
 俺は離れた所のナリンさんを呼んで訊ねる。
『どうしたのガニア?』
『額と……こちらが熱くなったので監督に貼って頂きたいのです!』
 長身のガニアさんは膝立ちになり、長い髪を両手で巻き上げると首筋を俺の前に差し出した。
「ナリンさん、何と?」
「えっと、ヒエピタモドキを貼って欲しいそうですが……」
「首にですか!?」
『太い血管が多いので冷却効果が高い、とザックコーチから聞いておりますわ!』
 ナリンさんの通訳を待たずにガニアさんが何事か応えた。
「えっと?」
「『首を冷やすと効く』とザックコーチから聞いたそうです」
 さすが昨シーズンまで守備の要だったお姉さんだ。コーチの助言もちゃんと聞いている。サイドへ流れたFWへ粘着し過ぎる癖さえなんとかなれば新しい戦術でも十分戦力になるのではないか? とはナリンさんジノリコーチの談だ。
「それじゃあ額と、首と」
『ひゃん!』
 たぶん頸動脈付近に貼った途端、ガニアさんは変な声を出した。
「すみません! くすぐったかったですか!?」
『いいえ。でも監督、ちょっと位置が悪いのでもう少し後ろに貼り直して頂けます?』
『ガニア! あなた……』
「ああ、こっちに貼れって意味ですよね?」
 ガニアさんが姿勢を直したので流石に察したぞ。俺は申し訳なさに身を縮めながらも、うなじの方へ冷えピタモドキを直した。その後も立ち並ぶ選手全員に毎回、脇や横腹への貼り直しを要請されて自分には医療スタッフの適性はない、と思い知らされるのであった。

第七章:完
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