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第九章
飛んでクリン島
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ドラえもんのタイムマシンに乗った時のようなエフェクトが出るでもなく、スターウォーズでワープする時のように星が線になるでもなく、ただ目の前が真っ白になって気づいたら暗い、大きな部屋にいた。
「ようこそ! エルフ代表の監督ショーキチ殿。補佐官のナリン殿とシャマー殿」
そこは暗く無機質で、出発したエルフの王城の一室とほぼ似た場所だった。違いがあるとしたら空間と魔法陣の大きさ、そして出迎える人物がリザードマンという所だった。
「あ、はい。どうも」
「監督会議の会場はドアを出て左です。エルフ代表の座席は名札も置いてありますが三名用のテーブルなので分かり易いと思います」
爬虫類の表情は俺には分からないが、たぶん目一杯愛想良く説明してそのリザードマンは先に部屋を出る。もう魔法陣横にスタンバイしないということは俺たちが最後なんだろうか?
そう思いながら案内通りドアを出て廊下を進む。こそっと自分の体や後方のナリンさんシャマーさんを見るが、紛れ込んだ蠅と融合するとか身体や衣服の一部が届いてないとかそういう事はなかった。
ちょっとだけ瞬間移動の魔法を見直しても良いかな? と思った所で会場についた。俺は両者と目で合図をして中へ足を進めた。
会場はとにかく馬鹿でかく、真ん中に半透明な球体を囲んで蹄鉄形にテーブルが並んでいた。輪の空いた部分にドラゴン――恐らく俺たちの試合を裁いたストックトンさんだ――が鎮座し、近い場所からフェリダエ、トロール、ミノタウロス……と順に座っていた。
これはつまりリーグの成績順に並んでいるという事だろう。その推測が正しければ俺たちの座席はゴブリンかハーピィの隣だ。
……あった。パタパタと羽根を降り微笑むハーピィさんの隣に、用3名の机と椅子がある。俺は親切にも席を教えてくれたハーピィさんに目で会釈をし、そちらへ向かう。
「(ショーちゃん、もう女を口説いてる!)」
「(失礼ですよ、シャマー! あの方は監督のトナーさんです)」
「(そうですよ、シャマーさん! 仕事は覚えてますか?)」
シャマーさんに注意しながら座席に到着し腰を下ろす。ちなみに今回の監督カンファレンス、俺たちは明確に役割を分担していた。
まず会そのものの主目的――DSDKから各チーム監督へレギュレーションやルール改正等の告知を行う――を聞く事についてはナリンさんが担当する。リーグをしっかり戦い抜くには選手登録の期間や交代人数の上限、使用可能な保護器具(リストさんのサングラスも認可を貰わないといけない)といった事務的なものから、
「ハーピィの羽根はどこからがハンドか?」
「試合中に取れた爪や脱皮した皮をどのように扱うか?」
等のこの世界種族独特の現象についてもルールを把握しておく必要があるのだ。真面目で理知的なナリンさんが適任だろう。
次に俺たちの提案を披露するプレゼンテーター。こちらについてはシャマーさんが担当だ。
俺が通したい議題の最大のモノは
「センシャの中止」
ではあるが、他にも
「マンデーナイトマッチやオールスターゲームの開催」
「エルフの職人が手がけた選手アクリルスタンド」
などDSDK及びサッカードウ全体についても利益になるモノを用意してある。というかセンシャの中止については反対意見が多い事が予想されるので、その取引材料になるものが必要なのだ。
しかしそれらを用意してもなお、交渉には困難が予想される。その為、駆け引きや口車の上手いシャマーさんを担当に選んだ。まあ地球から来た俺が偉そうに言うよりも可愛らしいシャマーさんを窓口にした方が通り易いだろうという、イヤラシイ読みもないではない。
そして最後。対戦相手となる各チームの監督各位、彼ら彼女らを観察し特に修羅場でどのような判断を下しそうなタイプか? を見抜く役割。それは俺が担当だ。サッカーはしばしば選手を駒にしたチェスのように例えられる。俺は完全にはそれに同意しないが、仮にもしそうならチェスの差し手を理解する事は何よりも大事になる。
とは言え実の所、スカウト担当のアカサオから一通りの分析は受け取っているんだけどな。特にドワーフ代表監督についての資料はこちらの希望通りかなり詳細な物だ。
だから俺の観察は画龍点睛、データに付け加える最後の部分、感覚的な所だ。ゲーマーがゲーマーのタイプを見抜く目、みたいな?
そう、目だ。本来なら言葉を交わしたり挑発したりして相手の本性を引きずり出したい所ではある。しかしここは真面目な監督会議で、ドラゴンさんが仕切っている。そんなに悪さはできないだろう。だからこそ、目で観察して各監督の個性を見て取る必要がある。
俺は机に置いてあった資料を手に取り、詳細に読み込むフリをして各テーブルを眺め渡した。
猫、トロール、牛、犬、蛇、老人、人、豚、虫、妖精、小鬼、鳥……。凄い、何だか新しい十二支を決める会議みたいだ。こんなにバリエーション豊かで、しかも「表情」てのがあるのか無いのか分からない種族までいる所で「観察して性格を見抜く」なんて出来るんだろうか?
いや、やるしかない。俺は監督に就任した際に、エルフ代表の為に努力を惜しまないと決めた。ちょっと百鬼夜行みたいな現場に出くわしただけで尻込みしている場合ではないのだ。
俺が決意を新たにすると同時に部屋の照明が落とされた。そろそろ開始らしい。
「ようこそ! エルフ代表の監督ショーキチ殿。補佐官のナリン殿とシャマー殿」
そこは暗く無機質で、出発したエルフの王城の一室とほぼ似た場所だった。違いがあるとしたら空間と魔法陣の大きさ、そして出迎える人物がリザードマンという所だった。
「あ、はい。どうも」
「監督会議の会場はドアを出て左です。エルフ代表の座席は名札も置いてありますが三名用のテーブルなので分かり易いと思います」
爬虫類の表情は俺には分からないが、たぶん目一杯愛想良く説明してそのリザードマンは先に部屋を出る。もう魔法陣横にスタンバイしないということは俺たちが最後なんだろうか?
そう思いながら案内通りドアを出て廊下を進む。こそっと自分の体や後方のナリンさんシャマーさんを見るが、紛れ込んだ蠅と融合するとか身体や衣服の一部が届いてないとかそういう事はなかった。
ちょっとだけ瞬間移動の魔法を見直しても良いかな? と思った所で会場についた。俺は両者と目で合図をして中へ足を進めた。
会場はとにかく馬鹿でかく、真ん中に半透明な球体を囲んで蹄鉄形にテーブルが並んでいた。輪の空いた部分にドラゴン――恐らく俺たちの試合を裁いたストックトンさんだ――が鎮座し、近い場所からフェリダエ、トロール、ミノタウロス……と順に座っていた。
これはつまりリーグの成績順に並んでいるという事だろう。その推測が正しければ俺たちの座席はゴブリンかハーピィの隣だ。
……あった。パタパタと羽根を降り微笑むハーピィさんの隣に、用3名の机と椅子がある。俺は親切にも席を教えてくれたハーピィさんに目で会釈をし、そちらへ向かう。
「(ショーちゃん、もう女を口説いてる!)」
「(失礼ですよ、シャマー! あの方は監督のトナーさんです)」
「(そうですよ、シャマーさん! 仕事は覚えてますか?)」
シャマーさんに注意しながら座席に到着し腰を下ろす。ちなみに今回の監督カンファレンス、俺たちは明確に役割を分担していた。
まず会そのものの主目的――DSDKから各チーム監督へレギュレーションやルール改正等の告知を行う――を聞く事についてはナリンさんが担当する。リーグをしっかり戦い抜くには選手登録の期間や交代人数の上限、使用可能な保護器具(リストさんのサングラスも認可を貰わないといけない)といった事務的なものから、
「ハーピィの羽根はどこからがハンドか?」
「試合中に取れた爪や脱皮した皮をどのように扱うか?」
等のこの世界種族独特の現象についてもルールを把握しておく必要があるのだ。真面目で理知的なナリンさんが適任だろう。
次に俺たちの提案を披露するプレゼンテーター。こちらについてはシャマーさんが担当だ。
俺が通したい議題の最大のモノは
「センシャの中止」
ではあるが、他にも
「マンデーナイトマッチやオールスターゲームの開催」
「エルフの職人が手がけた選手アクリルスタンド」
などDSDK及びサッカードウ全体についても利益になるモノを用意してある。というかセンシャの中止については反対意見が多い事が予想されるので、その取引材料になるものが必要なのだ。
しかしそれらを用意してもなお、交渉には困難が予想される。その為、駆け引きや口車の上手いシャマーさんを担当に選んだ。まあ地球から来た俺が偉そうに言うよりも可愛らしいシャマーさんを窓口にした方が通り易いだろうという、イヤラシイ読みもないではない。
そして最後。対戦相手となる各チームの監督各位、彼ら彼女らを観察し特に修羅場でどのような判断を下しそうなタイプか? を見抜く役割。それは俺が担当だ。サッカーはしばしば選手を駒にしたチェスのように例えられる。俺は完全にはそれに同意しないが、仮にもしそうならチェスの差し手を理解する事は何よりも大事になる。
とは言え実の所、スカウト担当のアカサオから一通りの分析は受け取っているんだけどな。特にドワーフ代表監督についての資料はこちらの希望通りかなり詳細な物だ。
だから俺の観察は画龍点睛、データに付け加える最後の部分、感覚的な所だ。ゲーマーがゲーマーのタイプを見抜く目、みたいな?
そう、目だ。本来なら言葉を交わしたり挑発したりして相手の本性を引きずり出したい所ではある。しかしここは真面目な監督会議で、ドラゴンさんが仕切っている。そんなに悪さはできないだろう。だからこそ、目で観察して各監督の個性を見て取る必要がある。
俺は机に置いてあった資料を手に取り、詳細に読み込むフリをして各テーブルを眺め渡した。
猫、トロール、牛、犬、蛇、老人、人、豚、虫、妖精、小鬼、鳥……。凄い、何だか新しい十二支を決める会議みたいだ。こんなにバリエーション豊かで、しかも「表情」てのがあるのか無いのか分からない種族までいる所で「観察して性格を見抜く」なんて出来るんだろうか?
いや、やるしかない。俺は監督に就任した際に、エルフ代表の為に努力を惜しまないと決めた。ちょっと百鬼夜行みたいな現場に出くわしただけで尻込みしている場合ではないのだ。
俺が決意を新たにすると同時に部屋の照明が落とされた。そろそろ開始らしい。
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