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第十章
仙道開始
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ダリオさんを先頭とする俺たちの歩みが高級住宅街から商業区へ進むにつれて、街並みや立ち並ぶ店舗も親しみ易いものに変わってきた。とは言えエルフの国の首都は主に魔法のクリスタルで形成されており、何て事ない飲食店すらも輝く水晶と魔法の光でデコレーションされてたりする。
その道半ばにおいて、抵抗を諦めた俺は素早く思考を働かせていた。選手にあれだけ『切り替えの早いサッカー』を求めておきながら、監督がそれを実践できないでは話にならないからね。
と言う訳でこの難所を乗り越える為の策が二つある。一つ目は武器だ。今、俺のポケットには先ほどの眼鏡屋さんで買った魔法のサングラスがある。
と言っても見た目が黒い訳ではない。魔法の効果で遮光し、かけている人間にしたらほぼ真夜中のように視界を暗く染めながら、端から見たら透明な特になんて事のない普通の眼鏡にしか見えないレンズが入っているのだ。しかも文字の翻訳機能付き。
よってこれをつければ自分としてはあまり見えていないが、他者からしたらちゃんと見ているように装えるのである。つまり容赦なく水着を凝視している様に見せかけられる。
「色んなお店があるんですね~。あ、これかけよっと」
俺は周囲を見渡しながらわざとらしくその武器を取り出し、かけた。
「あれ? ショーキチ兄さんも眼鏡買ったん?」
「ああ。翻訳眼鏡を置いてきちゃったんだけど、さっきも看板や商品の説明文が読めないのが辛くてね」
レイさんの方を見ながらそう応えるが、ナイトエルフである彼女の姿は殆ど見えない。うむ、効果は抜群だ。
「そうなんや。てっきりウチらの肌も露わな姿をじっくりみたいからかと思ったわ」
「違うよ!」
俺はそう否定しながら二つ目の策に思いを馳せた。
女性の外見や服装を褒めるのは非常に難しい。まして、職場のセクハラ講習でそういう事を厳しく戒められた俺たち管理職――コールセンターのSVもそれに含まれる――には尚更だ。
一方で、人間関係としてそれを全く出来ない男が女性の部下たちから支持を集められるか? と言ったらそれも難しい。
そんな過酷なダブルバインドの中で俺達が編み出したワザが、
「初手から大袈裟に褒め倒す」
である。
だいたいにおいてタイミングを見計らったり変に凝った事を言おうとしたりするから失敗するのである。何がどう? と訊ねられても良い! 凄い! 最高です! と演技が行き過ぎるほどに大声で賞賛するのだ。
当然、
「良く分からずに褒めてるでしょ?」
という突っ込みも非難も受けるが気にしてはいけない。ひるんだら負けである。
ましてこの後に控える水着の試着は、照れてモゴモゴ言ったり曖昧な評価を告げたりすると何着も着替えて長期化する危険性が高い。
だから俺のプランはこうだ。彼女らが着た水着を例のサングラス越しにじっくり見て(見てないが)、最初のを激賞し
「いやもうそれ最高っすよそれしかない!」
と宣言してさっさと終わらせてしまう。そうすることで予期せぬアクシデント――ポロリとか知り合いに見られるとか試着室に招き入れられるとか――を避ける。
それが仙道……ならぬ俺が描いたシナリオであった。
「ショーキチ兄さんは試着室の前で待っててな。こっからウチらが随時、水着を選んで持ってきて着替えるし。それ見てちゃんと感想言うんやで? じゃあ誰が一番、ショーキチ兄さんをドキドキさせれるか競争やな!」
洋服屋さんについてすぐ、レイさんがそう宣言して店内へ駆け出していった。ダリオさんシャマーさんも力強く頷いて続く。
姫様やキャプテン相手に場を仕切るなんて良い度胸してるよな……とレイさんに感心しつつ俺はサングラスをやや下にズラし、人や商品にぶつからないように注意しながら言われた通り中へ進む。
試着室は店の奥の方にあり、大きさや形まで地球のモノによく似ていた。違うのは材質が例の水晶で、ドアの部分が操作によって鏡になったり不透明になったりする所だった。
「あーこれ監督室の廊下側の窓に使ってるのと同じやつかな?」
そう言いながら装置部分を触っている間に客が何名か訪れ、空いているスペースに入る。三つのうち二つのブースが埋まり、使えるのは最奥の一つになってしまった。
「あら残念。三者同時にお見せするのは無理のようですね」
最初に候補を選び終わり試着室まで来たのはダリオさんだった。
「せーので見せられたら誰のからコメントするかでまた何かありますもんね……」
俺はサングラスをかけ直して表情を隠しつつ、しかし口調には正直な気持ちを出しつつコメントした。
「確かに。そういう意味では最初を取れて光栄ですね」
ダリオさんは色っぽくそう微笑むと、試着室の中へ消える。
「あ、姫様もう着替えてんの?」
「空いてるのはそこだけなのね? じゃあ順番だ」
ほどなくレイさんとシャマーさんがやってきた。例の機能越しでは二名の表情も持ってきた水着も見えないが、その声のトーンからして自信満々だ。
「あの、いかがでしょうか?」
ドアの開く音がしてダリオさんが姿を現し、レイさんとシャマーさんが息を呑む音が聞こえた。
その道半ばにおいて、抵抗を諦めた俺は素早く思考を働かせていた。選手にあれだけ『切り替えの早いサッカー』を求めておきながら、監督がそれを実践できないでは話にならないからね。
と言う訳でこの難所を乗り越える為の策が二つある。一つ目は武器だ。今、俺のポケットには先ほどの眼鏡屋さんで買った魔法のサングラスがある。
と言っても見た目が黒い訳ではない。魔法の効果で遮光し、かけている人間にしたらほぼ真夜中のように視界を暗く染めながら、端から見たら透明な特になんて事のない普通の眼鏡にしか見えないレンズが入っているのだ。しかも文字の翻訳機能付き。
よってこれをつければ自分としてはあまり見えていないが、他者からしたらちゃんと見ているように装えるのである。つまり容赦なく水着を凝視している様に見せかけられる。
「色んなお店があるんですね~。あ、これかけよっと」
俺は周囲を見渡しながらわざとらしくその武器を取り出し、かけた。
「あれ? ショーキチ兄さんも眼鏡買ったん?」
「ああ。翻訳眼鏡を置いてきちゃったんだけど、さっきも看板や商品の説明文が読めないのが辛くてね」
レイさんの方を見ながらそう応えるが、ナイトエルフである彼女の姿は殆ど見えない。うむ、効果は抜群だ。
「そうなんや。てっきりウチらの肌も露わな姿をじっくりみたいからかと思ったわ」
「違うよ!」
俺はそう否定しながら二つ目の策に思いを馳せた。
女性の外見や服装を褒めるのは非常に難しい。まして、職場のセクハラ講習でそういう事を厳しく戒められた俺たち管理職――コールセンターのSVもそれに含まれる――には尚更だ。
一方で、人間関係としてそれを全く出来ない男が女性の部下たちから支持を集められるか? と言ったらそれも難しい。
そんな過酷なダブルバインドの中で俺達が編み出したワザが、
「初手から大袈裟に褒め倒す」
である。
だいたいにおいてタイミングを見計らったり変に凝った事を言おうとしたりするから失敗するのである。何がどう? と訊ねられても良い! 凄い! 最高です! と演技が行き過ぎるほどに大声で賞賛するのだ。
当然、
「良く分からずに褒めてるでしょ?」
という突っ込みも非難も受けるが気にしてはいけない。ひるんだら負けである。
ましてこの後に控える水着の試着は、照れてモゴモゴ言ったり曖昧な評価を告げたりすると何着も着替えて長期化する危険性が高い。
だから俺のプランはこうだ。彼女らが着た水着を例のサングラス越しにじっくり見て(見てないが)、最初のを激賞し
「いやもうそれ最高っすよそれしかない!」
と宣言してさっさと終わらせてしまう。そうすることで予期せぬアクシデント――ポロリとか知り合いに見られるとか試着室に招き入れられるとか――を避ける。
それが仙道……ならぬ俺が描いたシナリオであった。
「ショーキチ兄さんは試着室の前で待っててな。こっからウチらが随時、水着を選んで持ってきて着替えるし。それ見てちゃんと感想言うんやで? じゃあ誰が一番、ショーキチ兄さんをドキドキさせれるか競争やな!」
洋服屋さんについてすぐ、レイさんがそう宣言して店内へ駆け出していった。ダリオさんシャマーさんも力強く頷いて続く。
姫様やキャプテン相手に場を仕切るなんて良い度胸してるよな……とレイさんに感心しつつ俺はサングラスをやや下にズラし、人や商品にぶつからないように注意しながら言われた通り中へ進む。
試着室は店の奥の方にあり、大きさや形まで地球のモノによく似ていた。違うのは材質が例の水晶で、ドアの部分が操作によって鏡になったり不透明になったりする所だった。
「あーこれ監督室の廊下側の窓に使ってるのと同じやつかな?」
そう言いながら装置部分を触っている間に客が何名か訪れ、空いているスペースに入る。三つのうち二つのブースが埋まり、使えるのは最奥の一つになってしまった。
「あら残念。三者同時にお見せするのは無理のようですね」
最初に候補を選び終わり試着室まで来たのはダリオさんだった。
「せーので見せられたら誰のからコメントするかでまた何かありますもんね……」
俺はサングラスをかけ直して表情を隠しつつ、しかし口調には正直な気持ちを出しつつコメントした。
「確かに。そういう意味では最初を取れて光栄ですね」
ダリオさんは色っぽくそう微笑むと、試着室の中へ消える。
「あ、姫様もう着替えてんの?」
「空いてるのはそこだけなのね? じゃあ順番だ」
ほどなくレイさんとシャマーさんがやってきた。例の機能越しでは二名の表情も持ってきた水着も見えないが、その声のトーンからして自信満々だ。
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