D○ZNとY○UTUBEとウ○イレでしかサッカーを知らない俺が女子エルフ代表の監督に就任した訳だが

米俵猫太朗

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第十章

スタメン談義その3

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「次にネガトラです。これはチーム始動日から狙っている通り、『撤退ではなく前で止める、止めたら囲む』です」
 俺は今度は相手陣内に丸を書き『ボールロスト地点』とし、そこへ向けての矢印を近くの選手から引っ張った。攻撃失敗から素早く守備へ移行する局面、ネガティブトランジション、ネガトラだ。
「失ったら最も近くの選手が2秒以内にボールホルダーの前に立ち、2人目の選手が6秒以内に広い方のサイドを塞ぐ」
 いわゆる6秒ルールだ。本家はその6秒の間にボールを奪う事を狙う『即時奪回』のものだが、そこまでは(まだ)求めていない。だから俺は矢印それぞれに秒数ではなく順位の数字を振った。
「様々なケースが考えられるので最初の選手は不明です。ですが多くの場合で2番目になりそうなのはこのポジションです」
 そう言いながら俺が指さしたのは、やはりTOP下だった。
「ここの選手がサボらない、遅れない、ちゃんと塞ぐ。それが肝になります。ダリオさんなら問題ない。でもレイさんだと……」
 俺は首を横に振りながら続けた。
「俺は彼女の才能を信じてます。守備だって本気でやれば上手い筈です。でも基本的に彼女は守備は行わないか、気紛れです。そういう選手にこのタスクを任せるのは危険だし、可哀想です」
 地球のサッカーでは彼女の様な選手、いわゆるファンタジスタ――肉体的に弱く守備は殆どできないが、天才的な閃きを見せる攻撃の選手――は戦術が進化するにつれて居場所を失い、肉体的強化を経てFWの一角へ入ったり、ポジションを下げてゲームをコントロールする役割レジスタを担うようになったりした。更にはウインガーになったり万能型になったり……。
 この世界でも同じ変移を辿るかは分からないし、レイさんがどうなっていくかも分からない。もしなってもずっと時間がかかるかもしれない。
「肉体もまだ大人になりきってないし、スタミナの不安もある。だからちょっと負荷の少ない右MFが良いと思うんです」
 それはそうと明後日の試合だ。アカリさんの分析レポートによると、ドワーフ代表の左サイドはそれほど脅威ではない。レイさんの守備力でも問題ないだろうし、もっと言えばレイさんが守備しなくてもクエンさんとティアさんでなんとかしてしまうだろう。
「なるほど。攻撃以外の局面をトータルで考えての事なんじゃな?」
 ジノリさんが最初に話を理解して言った。
「ええ。まあ配分にもよりますけどね。ウチが圧倒的にボールを握って攻撃とネガトラばかりなら、レイさんがそこにいた方が有利かもしれませんが」
 こちらがボールを握り相手をずっとサンドバックの様に攻め立てる展開なら、レイさんが思う存分に攻撃のタクトを振り、ラインを上げ距離を詰めた味方DFラインがネガトラ時も加勢してあげられるだろう。
 だがドワーフ代表との力関係と地の利、こちらの成熟度などを考えると少なくとも明後日に限ってはその見込みは薄かった。
「分かりました! 流石ショーキチ殿ですね」
「残念ながら分かった気がする」
「ふむ。勉強になるな」
 しばらくして、ナリンさんニャイアーコーチザックコーチが次々と呟いた。そうも誉められると流石に気恥ずかしいな。
「分からないけどレイさんが出るならよいか」
 サオリさんが悔しそうに呟く。そうそう、これくらいが良い。
「じゃあ、あとはFWですね」
 俺はそう言って最前線、最後の2ピースの名前を書き込んだ。

「ここはリスト君、ヨン君で良いのかな? 普通だな」
 ザックコーチがやや拍子抜けした声で呟いた。彼の気持ちも分かる。リスト、ヨンのコンビはアローズの攻撃陣で最も高さを持つユニットで、対ドワーフにおいて高さのあるFWをぶつけるのは定石の中の定石、他ならぬミノタウロス代表が散々やってきた事でもあるからだ。
「ドワーフ代表が何をしかけてくるか分かりませんが、とりあえず前線の逃げ道として高さを置いておきたいんですよね。それに後半はリーシャ、ポリンでしかけますから、タイプの違うFWで前半の間に相手の足のスタミナを削ってしまいたいんです」
 この辺りは極めてゲーマー的感覚というか、交代可能人数が多いプレシーズンマッチ特有と言うか。まだゲームが落ち着かない間にドワーフ代表が猛攻をかけてきた時に、
「とりあえず前線に蹴り出し逃げる」
為のターゲットとして背の高い二枚が欲しかったのだ。言ってみれば保険として。
 プラス、前半で重量級FWとの空中戦を相手DFに強いらせ疲れさせた後に、スピードのあるコンビをぶつけたいという狙いもある。それだけの交代枠は残せる筈だ。
「確かにスタメンよりも後半からの方が、ポリンの為にも良いですからね」
 コーチとしてか従姉妹としてか両方か、ナリンさんがそう呟き全員が肯定の声をあげた。
「ではそれでいきましょう!」
 俺がそう宣言すると皆は頷いて立ち上がりそれで解散となった。明日はいよいよドワーフご自慢のスタジアムとご対面だ。

第十章:完
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