D○ZNとY○UTUBEとウ○イレでしかサッカーを知らない俺が女子エルフ代表の監督に就任した訳だが

米俵猫太朗

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第十三章

親に叱られるやつ

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「きやがった!」
 俺とディードが折り返し地点が見える位置まで来ると、ティアさんが大声で叫んでクルーの注意を促した。
「誰が住之江競艇のとこの隣駅やねん!」
 俺は一人そう呟いた。当然だが
「それは『きやがった』じゃなくて『北加賀屋きたかがや)』駅」
と突っ込んでくれる人はいなかった。
「ムルト、ポリン、頼むぜ!」
「分かってますわ!」
「うん! 頑張るよティアさん!」
 ティアさんがそう言うとネットの上のムルトさんと操舵輪を握るポリンさんが力強く頷いた。なるほど、細かい動きが出来るティア号で俺を止め、スピード重視のリーシャ号に追い抜かす作戦。しかもティア号においては位置計算の早いムルトさんを目と頭脳とし、細かいコントロールが得意なポリンさんを手としたのか。ティアさんやるな。
「だがそっちが大船なら俺は戸塚ヨットスクールだぞ?」
 ティア号は大きな船で確かに幅はあるが、こちらのディードリット号は小型船で俊敏性がある。機動力でブロックを掻い潜ってリーシャ号に追い抜かれる前に、先へ行ける筈だ。
 なお「大船」と「戸塚」も電車で言えば隣で、船に関係する隣駅ボケを続けて言っているのである。「おおぶね」ではなく「おおふな」であるが。
 当然の如く、これにも突っ込んでくれる人もエルフもいなかった。俺は鋼の心で舵を細かく動かしフェイントをかけた。
 基本的にティア号はインコース、ブイの付近を塞ぐように位置している。当然、俺は仕方なくアウトコースにティア号を避け大回りする進路をとろうとするのだが、より遠回りさせようと俺が外に膨らんだぶん彼女たちも寄せてくる。
 そうすると今度はティア号とブイの間に隙間ができインが空く。俺の選択としては更に大回りしてティア号を回避するか、できたその空間に急反転で飛び込むか……だ。むろん、その目論見は向こうも知る所で俺が内側へ行くそぶりを見せればすぐにまたそこを塞ぐよう動く。
 ただしその巨体は俺の船ほど俊敏ではない。後手の対応では決して間に合わないので俺の行動を先読みしてゲームで言う所の先行入力をして対応する事になる。
 となると勝負は技術と言うよりも心理戦だ。俺とティアさん、船長同士による読み合い。または縦を切るか中を切るかというサイドでの守備か。そういう意味ではSBで代表選手にまで上り詰めているティアさんに一日、いや何百日の長がある。
 俺はもちろん、そんな不利な勝負に乗るつもりは無かった。

「カットインしましたわ! ブイまでおよそ10秒!」
「反転だポリン!」
「ラジャーだよ!」
 俺はインが十分に開くのを待ち舵と帆の角度を一気に変えて内側へ舳先を向けた。それを見たティア号が大急ぎでインコースを塞ぐ転進に入る。
「どうだ!?」
「塞げます! 1秒ほど余裕がありますわ!」
 彼女達の操船技術は見事だった。ムルトさんの言う通り、ディード号が到達する少し前に封鎖ができてしまうだろう。
「塞げます! ……が、監督の船のスピードが落ちません!」
「はぁ!?」
 俺はその風景を目撃してなお、ディード号の速度を下げてアウトへ転進したりはしなかった。むしろ魔法のオールのスイッチを捻り、圧縮空気を水中へ送って加速する。
「このままだと……衝突しますわ!」
「畜生! 度胸勝負か!」
 ティアさんの叫び声が聞こえた。そう、その通り。これはどちらが先にブレーキを踏むかのチキンレースである。
 俺はティアさんのように、百戦錬磨のウインガーと対峙してデュエル1対1を行った事はない。だが自転車に乗って「下り坂でどこまでブレーキをかけずに走れるか」レースなら――怖いモノ知らずな小学生時代に――何度も行った経験がある。
 正直、めちゃくちゃ強かった訳でもない。勝ったり負けたり、怪我をしたりもした。だが単純にその試行回数では明らかに勝っている。更に言うとどのような形であれ、衝突した時によりダメージを負うのは俺とディードリット号の方だ。その時の罪悪感を想像して、それでも彼女たちはチキンレースを続けられるだろうか?
「ごめん、ティアさん!」
「あ、ポリン! 仕方ねえ! 転進だ! 衝撃に備えろ!」
 船長による判断が下される半瞬先に、ポリンさんが勝手に舵を切った。ティアさんは半ば追従するように指示を出す。
「ごめんね、ポリンちゃん……」
 ティア号は強引に向きを変え、減速しながら明後日の方向へ進む。結果、俺の前には大きなスペースが広がっていた。
「実はぶつかりそうだったら、ブイの向こうへ逃げるだけだったんだけど……」
 俺はそう呟きながら、ブイのすぐ脇をすり抜けターンした。なんと言うか、最年少エルフ少女の優しさにつけ込む形になってしまったな……。
「謝っておこうか」
 俺は帆の位置を変え軽くロープをかけて固定すると、立ち上がりティア号の方へ声をかける。
「あこぎなやり方でごめんよー! お詫びに練習、軽目にするからさー!」
「うるせえ卑怯もの!」
「監督! 後ろ!」
 ティアさんが罵声を浴びせムルトさんが俺の後方を指さした。
「後ろ? あ、リーシャ号か」
 見ると、後方からリーシャ号が追いつきつつあった。今のゴタゴタでまあまあ距離を詰められた訳だな。
「違います! そっち……」
 再びムルトさんの声が聞こえる。なんだ? 違う方向か?
「「危ない!」」
 ティア号とリーシャ号の両方からそんな声と悲鳴が聞こえた。振り向いた俺の顔に固定の甘かった帆の下の部分、フットがぶち当たり、俺は意識を失いながらシソッ湖に落ちていった……。
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