228 / 700
第十三章
ビッグな出会い
しおりを挟む
その現場も、俺がドワーフ戦後に考案し発注をかけてモノだった。運河沿いの一等地に設けられた仮設スタンドで、スタジアム入りするアローズの船を間近で観覧し声をかけられる特等席だ。
大人数が何時間も座っている場所ではない。しかしこのスペース付のシーズンチケットはプレシーズンマッチの勝利もあり思った以上に売れており、途中で計画を変更追加しながらも急ピッチで足場から組み立てられていた。
大がかりな建設工事だ。関わる作業員も多い。地球ならば重機なども活躍していただろう。しかしこの世界にクレーンやショベルカーは無い。
代わりにその役割を果たしているのは……巨人族だった。
「おおいおおい、あぶないよさがって!」
「あ、すみません!」
建築現場の中へ入りかけた俺を現場監督のノームさんが慌てて叱る。俺は思ってたよりも近寄りすぎていたみたいだ。
「おまえらも! もっとまわりをみろ!」
「へいへい、すみませーん」
小柄で気の短そうなノームのオジサンに頭を下げる巨人たち。傍目で見ればユーモラスな風景でもあるが、背後のスタジアムを含め遠近感が狂いまくって少し気持ち悪くもある。
「いや、俺がぼーっとしてたんで……」
「ほんとだよ。きをつけてくれよまったく!」
遠く辿ればこの工事の発注主は俺である。もっと偉そうにしても許されるかもしれないが、俺はノームさんと巨人たちに頭を下げて距離を取った。
「それはそうと親方、そろそろお昼ご飯じゃ……」
「なんだと! まったく、くうことばかりいちにんまえにこのうすらぼうたちが!」
ノームの親方は早口でそう毒つくと、しぶしぶといった様子でお昼休みを宣言した。
「いぇーい!」
「やっほう! 飯だ飯だ!」
巨人たちは嬉しそうに歓声を上げると、工具をその場に放り投げそれぞれの弁当箱へ向かう。
「おおう! すげえ迫力……!」
巨人達の大声、地面に落ちた道具が起こした衝撃、食事へ向かうスキップの足音、その全てが大型サイズだった。
「うわ、マジでそれを喰うのか!?」
そして当たり前だが取り出されたお弁当が空前絶後の大きさで俺は思わず吹き出してしまった。
「うふふ。良いでしょ?」
俺の笑い声を勘違いしたか、巨人にしては妙に顔の整った可愛らしい女巨人がそう言ってウインクを送り、取り出したダチョウのような鳥をそのまま丸かじりする。
「スワッグが見たら卒倒するな……」
今のはマジでグリフォン並の大きさだった。流石に生きているのを踊り喰い、というのでは無かったが生ではあった。
「君も食べる?」
「いや、結構っす!」
その巨人の女の子は屈託ない表情で大きな鳥を差し出す。既に齧られた後なので断面はかなりセンシティブだ。モザイクが必要だろう。
「見てるだけで十分っす!」
「そうなんだ? 遠慮しなくても良いのに」
その子はそう言って食事を再開したが、じっと俺に見られているのを感じて流石に少し顔を赤らめそっぽを向いた。
……可愛い。髪は短いめだが睫が長く目鼻もすっとしているので、明らかに女性、しかも美少女と分かる。今は口元を隠しながら上品に咀嚼を繰り返し、たまに指でぷっくらした桜色の唇付近を拭っている。
でもまあサイズがめっちゃデカいし、口元についたのはケチャップとかじゃなくて血なんだよなあ……。
「みんな凄いな」
あまり彼女ばかり見るのもアレなので、俺は失礼にならないように注意しつつ別の巨人たちを盗み見た。
岩のような肌、霜のような髭、炎が舞い踊る髪……巨人と一言で言っても種類は様々な者がいるようだ。大きさも見た目も、あと知性の感じもかなり差異がありそうだ。すぐに昼休みに入ったのでそこまで詳しくは分析できていないが、例えば氷の巨人が型を作り炎の巨人が溶接し石の巨人が加工する……といった作業分担までしているようだった。
「エルヴィレッジにはいなかったもんなあ」
建築と言えば俺たちアローズのクラブハウスも最近、建てられたモノではあるが作業員に巨人の姿はなかった筈だ。
森の中だし、そこまで大きな工事ではないし、何よりエルフの住居という繊細な創造物に巨人は不向きというのがあったのかもしれない。
あとこれは失礼な話、巨人たちはサッカードウをしない。なので俺は最初からこの種族の事が眼中になかった。彼女たちはサイズの違い故にまともな相手が――最少の巨人でさえトロールよりも大きいのだ――おらず、自分たちだけで行うにはチーム数や組織力の面で手が回らず……といった感じで流行るまでには至らなかったらしい。まあ仕方ないよね。
しかしながらいざ見てみるとこれは実に興味深い種族だ。あと実際にこうして工事でお世話にもなっている。社会見学の一環として分析する価値があるかもしれない。
とは言え食事の風景はもう十分だなあ。そして俺も腹が減っている。確か近くにカフェの様な店があったよな? 俺はそこでさっさと昼食を済ませて帰ってきてから改めて見学する事にした。
大人数が何時間も座っている場所ではない。しかしこのスペース付のシーズンチケットはプレシーズンマッチの勝利もあり思った以上に売れており、途中で計画を変更追加しながらも急ピッチで足場から組み立てられていた。
大がかりな建設工事だ。関わる作業員も多い。地球ならば重機なども活躍していただろう。しかしこの世界にクレーンやショベルカーは無い。
代わりにその役割を果たしているのは……巨人族だった。
「おおいおおい、あぶないよさがって!」
「あ、すみません!」
建築現場の中へ入りかけた俺を現場監督のノームさんが慌てて叱る。俺は思ってたよりも近寄りすぎていたみたいだ。
「おまえらも! もっとまわりをみろ!」
「へいへい、すみませーん」
小柄で気の短そうなノームのオジサンに頭を下げる巨人たち。傍目で見ればユーモラスな風景でもあるが、背後のスタジアムを含め遠近感が狂いまくって少し気持ち悪くもある。
「いや、俺がぼーっとしてたんで……」
「ほんとだよ。きをつけてくれよまったく!」
遠く辿ればこの工事の発注主は俺である。もっと偉そうにしても許されるかもしれないが、俺はノームさんと巨人たちに頭を下げて距離を取った。
「それはそうと親方、そろそろお昼ご飯じゃ……」
「なんだと! まったく、くうことばかりいちにんまえにこのうすらぼうたちが!」
ノームの親方は早口でそう毒つくと、しぶしぶといった様子でお昼休みを宣言した。
「いぇーい!」
「やっほう! 飯だ飯だ!」
巨人たちは嬉しそうに歓声を上げると、工具をその場に放り投げそれぞれの弁当箱へ向かう。
「おおう! すげえ迫力……!」
巨人達の大声、地面に落ちた道具が起こした衝撃、食事へ向かうスキップの足音、その全てが大型サイズだった。
「うわ、マジでそれを喰うのか!?」
そして当たり前だが取り出されたお弁当が空前絶後の大きさで俺は思わず吹き出してしまった。
「うふふ。良いでしょ?」
俺の笑い声を勘違いしたか、巨人にしては妙に顔の整った可愛らしい女巨人がそう言ってウインクを送り、取り出したダチョウのような鳥をそのまま丸かじりする。
「スワッグが見たら卒倒するな……」
今のはマジでグリフォン並の大きさだった。流石に生きているのを踊り喰い、というのでは無かったが生ではあった。
「君も食べる?」
「いや、結構っす!」
その巨人の女の子は屈託ない表情で大きな鳥を差し出す。既に齧られた後なので断面はかなりセンシティブだ。モザイクが必要だろう。
「見てるだけで十分っす!」
「そうなんだ? 遠慮しなくても良いのに」
その子はそう言って食事を再開したが、じっと俺に見られているのを感じて流石に少し顔を赤らめそっぽを向いた。
……可愛い。髪は短いめだが睫が長く目鼻もすっとしているので、明らかに女性、しかも美少女と分かる。今は口元を隠しながら上品に咀嚼を繰り返し、たまに指でぷっくらした桜色の唇付近を拭っている。
でもまあサイズがめっちゃデカいし、口元についたのはケチャップとかじゃなくて血なんだよなあ……。
「みんな凄いな」
あまり彼女ばかり見るのもアレなので、俺は失礼にならないように注意しつつ別の巨人たちを盗み見た。
岩のような肌、霜のような髭、炎が舞い踊る髪……巨人と一言で言っても種類は様々な者がいるようだ。大きさも見た目も、あと知性の感じもかなり差異がありそうだ。すぐに昼休みに入ったのでそこまで詳しくは分析できていないが、例えば氷の巨人が型を作り炎の巨人が溶接し石の巨人が加工する……といった作業分担までしているようだった。
「エルヴィレッジにはいなかったもんなあ」
建築と言えば俺たちアローズのクラブハウスも最近、建てられたモノではあるが作業員に巨人の姿はなかった筈だ。
森の中だし、そこまで大きな工事ではないし、何よりエルフの住居という繊細な創造物に巨人は不向きというのがあったのかもしれない。
あとこれは失礼な話、巨人たちはサッカードウをしない。なので俺は最初からこの種族の事が眼中になかった。彼女たちはサイズの違い故にまともな相手が――最少の巨人でさえトロールよりも大きいのだ――おらず、自分たちだけで行うにはチーム数や組織力の面で手が回らず……といった感じで流行るまでには至らなかったらしい。まあ仕方ないよね。
しかしながらいざ見てみるとこれは実に興味深い種族だ。あと実際にこうして工事でお世話にもなっている。社会見学の一環として分析する価値があるかもしれない。
とは言え食事の風景はもう十分だなあ。そして俺も腹が減っている。確か近くにカフェの様な店があったよな? 俺はそこでさっさと昼食を済ませて帰ってきてから改めて見学する事にした。
0
あなたにおすすめの小説
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
男女比1対5000世界で俺はどうすれバインダー…
アルファカッター
ファンタジー
ひょんな事から男女比1対5000の世界に移動した学生の忠野タケル。
そこで生活していく内に色々なトラブルや問題に巻き込まれながら生活していくものがたりである!
『スローライフどこ行った?!』追放された最強凡人は望まぬハーレムに困惑する?!
たらふくごん
ファンタジー
最強の凡人――追放され、転生した蘇我頼人。
新たな世界で、彼は『ライト・ガルデス』として再び生を受ける。
※※※※※
1億年の試練。
そして、神をもしのぐ力。
それでも俺の望みは――ただのスローライフだった。
すべての試練を終え、創世神にすら認められた俺。
だが、もはや生きることに飽きていた。
『違う選択肢もあるぞ?』
創世神の言葉に乗り気でなかった俺は、
その“策略”にまんまと引っかかる。
――『神しか飲めぬ最高級のお茶』。
確かに神は嘘をついていない。
けれど、あの流れは勘違いするだろうがっ!!
そして俺は、あまりにも非道な仕打ちの末、
神の娘ティアリーナが治める世界へと“追放転生”させられた。
記憶を失い、『ライト・ガルデス』として迎えた新しい日々。
それは、久しく感じたことのない“安心”と“愛”に満ちていた。
だが――5歳の洗礼の儀式を境に、運命は動き出す。
くどいようだが、俺の望みはスローライフ。
……のはずだったのに。
呪いのような“女難の相”が炸裂し、
気づけば婚約者たちに囲まれる毎日。
どうしてこうなった!?
最初から最強ぼっちの俺は英雄になります
総長ヒューガ
ファンタジー
いつも通りに一人ぼっちでゲームをしていた、そして疲れて寝ていたら、人々の驚きの声が聞こえた、目を開けてみるとそこにはゲームの世界だった、これから待ち受ける敵にも勝たないといけない、予想外の敵にも勝たないといけないぼっちはゲーム内の英雄になれるのか!
ペーパードライバーが車ごと異世界転移する話
ぐだな
ファンタジー
車を買ったその日に事故にあった島屋健斗(シマヤ)は、どういう訳か車ごと異世界へ転移してしまう。
異世界には剣と魔法があるけれど、信号機もガソリンも無い!危険な魔境のど真ん中に放り出された島屋は、とりあえずカーナビに頼るしかないのだった。
「目的地を設定しました。ルート案内に従って走行してください」
異世界仕様となった車(中古車)とペーパードライバーの運命はいかに…
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる