D○ZNとY○UTUBEとウ○イレでしかサッカーを知らない俺が女子エルフ代表の監督に就任した訳だが

米俵猫太朗

文字の大きさ
306 / 700
第十七章

瞬きしないで

しおりを挟む
 改めて。前半33分1-0で試合は再開された。アローズ、インセクターと立て続けに二つのゴールが審判によって取り消され普通はブーイングものであるが、例によって観衆の大半を占める虫さんたちは静かに試合を見守っている。
「うん、なるほど」
 一方、俺の方も静かに状況を分析していた。見ているのは先程ナリンさんとダリオさんから聞いたバックドアの部分だ。配置としてはオーバーロード作戦は引き続き行われている。故に選手は殆どが右サイドに集合し、ただ一名ダリオさんだけが左サイドに孤立して右SBの隙を伺っていた。
「やっぱり無いわ」
 しかし、である。インセクターの右SBにはその『隙』が無かった。一般的にDFはマークする選手とボールをしっかり注視し、相手と自陣ゴールを結んだ線の間に立つものである。とは言え決定的なパスやシュートが行われたりする瞬間はどうしてもボールに目が行き――しばしば『ボールウォッチャーになる』と言われる状態だ。変な言い方だよね。普通選手は殆どの時間、ボールも見てるんだから――マーク対象を見失ってしまう。
 だがインセクターの右SBにはボールウォッチャーになってしまう瞬間が無かった。どれだけ逆サイドでボールが動こうとも、ダリオさんが細かくステップを刻み急な方向転換をしようとも、インセクターの右SBは彼女を決して見失うようなそぶりをみせない。
「ダリオの言う通りでありますね……」
 ナリンさんも同意して呟く。オバロ作戦が発動してからずっとダリオさんは静かな駆け引きを続けてきたが、一度も裏を取れなかったらしい。
「結果としてはパスが廻って来ませんでしたが、恐らく来たとしても全くイケませんでしたわ」
との事だ。
 あんな美しい女性にイケませんでしたわ、と言われるとは男として全く面目ない情けない。ついで言うと試合中に心の中でそんな下ネタを考えてるという部分も面目ない。
「まあ仕方ないっすよ。あの選手相手じゃ」
 一方、あの右SBの面には目がありまくるのだ。
「だって複眼がついてますもん」
 俺は蜻蛉の様な見た目をした右SBを睨みながらナリンさんに解説を始めた。

 複眼とは空を飛ぶ昆虫等でよく見られるあの、無数の小さな目が集合して一つの大きな目になっているアレの事である。その小さな目の数は1万個以上でマルチカメラとして機能し後方の一部以外の全てをカバーするという。それを使って獲物となる小さな虫を探すそうだ。
 それが、恐らくあのSBにはついてる。たぶん左SBにも。遠目に見れば大きな目がついてるだけでプリとかショート動画アプリで目を加工し過ぎたギャルにも見えるが――嘘です見えません――近くでしっかり確認すれば小さな目の集合体が見える筈だ。
 兎も角、そんな複眼を持つSBに対して裏を取るとか隙をつくとかは至難の技だ。

「なるほど。ミノタウロスと我々では目の位置が違う、という話とも似ているでありますね」
「ええ。アレを更に極端にしたと言うか、或いは上位互換と言えるかもしれません」
 俺たちは懐かしのミノタウロス戦、昨シーズン最終節の試合の事を話題にした。エルフがサイドから送るクロスが悉く跳ね返される原因の一つはミノタウロスの目が横にあるから……という例の話だ。
 じゃあ上位互換ならインセクターもあの蜻蛉SBをCBに置いてはどうか? と言うとそう単純な話でもない。残念ながらあの細い体では屈強なFWを押さえ込むのは到底不可能だし、ヘディングもあの頭部ではかなり困難だ。また上下運動を苦にしない運動量と走力を無駄にする事にもなる。恐らくそういった事を考慮してあの蜻蛉型インセクターをSBに置いているのであろう。
 余談だがそれは他のポジションとインセクターにも言える。体が強く捉えた相手を離さないクワガタをCBに、蜻蛉と同じく周囲が見れて運動量豊富な蜂をIHに、線は細いが瞬発力のあるバッタをWGに。多様な個性を把握し適材適所に配置。どうやらあのチームの長は相当、頭が切れる。
「ま、それくらいの方が相手としてやりがいがあるかな」
 俺はジノリコーチから聞いた『インセクター戦は選手を駒にしたボードゲームの様だ』というポビッチ監督の言葉を思い出しながら呟いた。
「じゃあ俺の次の一手を披露しましょう。ナリンさん……」
 俺は作戦ボードを取り出し、用意していたある手を指示した。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

『スローライフどこ行った?!』追放された最強凡人は望まぬハーレムに困惑する?!

たらふくごん
ファンタジー
最強の凡人――追放され、転生した蘇我頼人。 新たな世界で、彼は『ライト・ガルデス』として再び生を受ける。 ※※※※※ 1億年の試練。 そして、神をもしのぐ力。 それでも俺の望みは――ただのスローライフだった。 すべての試練を終え、創世神にすら認められた俺。 だが、もはや生きることに飽きていた。 『違う選択肢もあるぞ?』 創世神の言葉に乗り気でなかった俺は、 その“策略”にまんまと引っかかる。 ――『神しか飲めぬ最高級のお茶』。 確かに神は嘘をついていない。 けれど、あの流れは勘違いするだろうがっ!! そして俺は、あまりにも非道な仕打ちの末、 神の娘ティアリーナが治める世界へと“追放転生”させられた。 記憶を失い、『ライト・ガルデス』として迎えた新しい日々。 それは、久しく感じたことのない“安心”と“愛”に満ちていた。 だが――5歳の洗礼の儀式を境に、運命は動き出す。 くどいようだが、俺の望みはスローライフ。 ……のはずだったのに。 呪いのような“女難の相”が炸裂し、 気づけば婚約者たちに囲まれる毎日。 どうしてこうなった!?

最初から最強ぼっちの俺は英雄になります

総長ヒューガ
ファンタジー
いつも通りに一人ぼっちでゲームをしていた、そして疲れて寝ていたら、人々の驚きの声が聞こえた、目を開けてみるとそこにはゲームの世界だった、これから待ち受ける敵にも勝たないといけない、予想外の敵にも勝たないといけないぼっちはゲーム内の英雄になれるのか!

《カクヨム様で15000PV達成‼️》悪魔とやり直す最弱シーカー。十五歳に戻った俺は悪魔の力で人間の頂点を狙う

なべぞう
ファンタジー
ダンジョンが生まれて百年。 スキルを持つ人々がダンジョンに挑む世界で、 ソラは非戦闘系スキル《アイテムボックス》しか持たない三流シーカーだった。 弱さゆえに仲間から切り捨てられ、三十五歳となった今では、 満身創痍で生きるだけで精一杯の日々を送っていた。 そんなソラをただ一匹だけ慕ってくれたのは―― 拾ってきた野良の黒猫“クロ”。 だが命の灯が消えかけた夜、 その黒猫は正体を現す。 クロは世界に十人しか存在しない“祝福”を与える存在―― しかも九つの祝福を生んだ天使と悪魔を封印した“第十の祝福者”だった。 力を失われ、語ることすら封じられたクロは、 復讐を果たすための契約者を探していた。 クロは瀕死のソラと契約し、 彼の魂を二十年前――十五歳の過去へと送り返す。 唯一のスキル《アイテムボックス》。 そして契約により初めて“成長”する力を与えられたソラは、 弱き自分を変えるため、再びダンジョンと向き合う。 だがその裏で、 クロは封印した九人の祝福者たちを狩り尽くすための、 復讐の道を静かに歩み始めていた。 これは―― “最弱”と“最凶”が手を取り合い、 未来をやり直す物語

ペーパードライバーが車ごと異世界転移する話

ぐだな
ファンタジー
車を買ったその日に事故にあった島屋健斗(シマヤ)は、どういう訳か車ごと異世界へ転移してしまう。 異世界には剣と魔法があるけれど、信号機もガソリンも無い!危険な魔境のど真ん中に放り出された島屋は、とりあえずカーナビに頼るしかないのだった。 「目的地を設定しました。ルート案内に従って走行してください」 異世界仕様となった車(中古車)とペーパードライバーの運命はいかに…

男女比1対5000世界で俺はどうすれバインダー…

アルファカッター
ファンタジー
ひょんな事から男女比1対5000の世界に移動した学生の忠野タケル。 そこで生活していく内に色々なトラブルや問題に巻き込まれながら生活していくものがたりである!

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

処理中です...