D○ZNとY○UTUBEとウ○イレでしかサッカーを知らない俺が女子エルフ代表の監督に就任した訳だが

米俵猫太朗

文字の大きさ
321 / 700
第十八章

中盤のリーダーとファッションリーダー

しおりを挟む
 これだけ頻繁に魔術による瞬間移動を経験すると慣れ……はしないのだが技術の質のようなモノが分かるようになった気がする。もしかしたらプラシーボ効果かもしれないが魔法都市アーロンへのテレポートは今までで一番、酔いがなく快適だった。さすが専門家の街だ。
 一方で次の対戦相手ゴブリンだが、彼女らの魔法は極めて稚拙で粗雑、体調を崩す可能性もあるのでとてもじゃないがお勧めできない……と聞いて今回の様な手段――インセクターの街チャプターからわざわざアーロンまで転移、そこからは馬車で移動――を取るようになった次第である。
 理由は違うが日本人選手も所属する某チームがあるドイツの某都市、空港と言うか税関が異常に厳しいのでドイツに入国する際は避けて別の都市を使うみたいなもの、と言えば分かる筋には分かるだろうか?
「それでは宜しくにゃん!」
 その移動用魔法陣を出るなりマイラさんが列を外れ、別れの挨拶を口にする。
「ああっ、マイラちゃん。襟が折れちゃってます。直そっ?」
 そう言って長身のデイエルフがマイラさんに近づき布に手を伸ばす。ちなみにアローズは移動時もチームオフィシャルスーツを着用しているが、マイラさんはここで別行動になるので私服――ゆったりしたピンク色のローブ――姿だ。
「きゃっ、エオンにゃん!」
「ごめんっ、くすぐったいけど我慢して?」
 小柄でサイドテールのドーンエルフと身長の高いデイエルフ、大きさは違うが両者ともアイドルぶったというか不思議ちゃんぽい口調のアニメ声で聞いてると耳がキンキンしてくる。
「はい、これでよしっ!」
「ありがとうエオンにゃん!」
 エオンさんは襟を直すに飽きたらず、髪型やアクセサリーまで手を加えてようやくマイラさんを解放した。何せこの長身MFは本業がアイドルなのだ。普段から髪や顔や服装のお手入れが完璧なだけでなく、他の選手の身だしなみにもうるさい。
「アレくらいサッカードウにも真剣に取り組めば良いのに……」
「(リーシャさん、しっ!)」
 貶みをほぼ隠さずリーシャさんが呟き、俺は小声で叱責した。だが彼女の言う事にも一理ある。エオンさんは本業のアイドル――アイドル兼業なのは別に問題ではない。多くのサッカードウ選手は職が別にあるし、ハーピィに至ってはほぼ全員がアイドルだ――を優先し過ぎる嫌いがあるだけでなく、普段から見栄えを気にするあまりプレイを止めて髪型を直すとか、ハーフタイムにシャワーを浴びて遅刻してくるとかの実害もあるのだ。
 余談だがそういうチャラい選手を嫌ったアルゼンチンの某代表監督は『長髪禁止令』を出した事がある。
「試合中に髪をイジる度に集中力が削がれるから」
という理由で。
 その監督と仲が悪かったマラドーナは、
「じゃあ何か? 試合中にまたぐら股間を触る癖がある選手がいたら、そいつはナニをちょん斬ってこないといけないのか?」
と馬鹿にしたそうだが、代表に入りたい選手たち――ケンペスというかつてのスター選手に憧れて長髪にしていた選手も多い――は律儀に切っていたそうな。
 ま、それは行き過ぎだし俺は選手のモチベーションの方が大事なので髪型や普段の服装には規制をかけない、むしろ本人ならぬ本エルフの気持ちが上がるならなんでもやってくれ、的な方針だ。だがエオンさんの姿勢に苦々しい気持ちを抱く部分も分からなくはない。
 特に昨シーズンまで彼女と同じWGプレイヤーで、才能を分かっているリーシャさんはずっと思っていた事なのだろう。エオンさんの長いストライドと美しい姿勢でスラロームの様にDFを抜き去るドリブルには、火の玉小娘にはない魅力があった。なのに主にやる気の面でスタメンには至らないでいたのだ。
 今は違うが同じポジションのライバルが燻っているのはむしろチャンスじゃないかって? そこはまあ、とことんスポ根体質のリーシャさんらしさという事で。
「じゃあね、エオンにゃん! みんな!」
 そう言ってマイラさんはチームから離れて別の廊下へ消えた。アローズの中で彼女は数少ないエオンさんの知己だ。『KAWAII』を追求する生き様だけでなくプレイスタイルも理解し、彼女が受け易いパスを出しフォローできるポジショニングをとってきた。
 だが次のゴブリン戦にマイラさんはいない。ただでもWGプレイヤー、ドリブラー過多のアローズにおいて現状エオンさんはサブとベンチ外の当落線上の選手だ。ここはかなりの試練なタイミングだが、彼女は分かっているのだろうか?
「甘いんじゃない? か・ん・と・く」
「まあまあ。この後、時間もたっぷりあるからさ。ひとつ、話してみるよ」 
 普段はアイツとか言ってる癖にこういう時だけ監督と読んでくるリーシャさんにガツンと言い――言ったよな? 言ったと思う。言った事にしよう――俺はチームの先頭に立って歩き出した。
 そう、今回は時間がたくさんあるのだ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

《カクヨム様で15000PV達成‼️》悪魔とやり直す最弱シーカー。十五歳に戻った俺は悪魔の力で人間の頂点を狙う

なべぞう
ファンタジー
ダンジョンが生まれて百年。 スキルを持つ人々がダンジョンに挑む世界で、 ソラは非戦闘系スキル《アイテムボックス》しか持たない三流シーカーだった。 弱さゆえに仲間から切り捨てられ、三十五歳となった今では、 満身創痍で生きるだけで精一杯の日々を送っていた。 そんなソラをただ一匹だけ慕ってくれたのは―― 拾ってきた野良の黒猫“クロ”。 だが命の灯が消えかけた夜、 その黒猫は正体を現す。 クロは世界に十人しか存在しない“祝福”を与える存在―― しかも九つの祝福を生んだ天使と悪魔を封印した“第十の祝福者”だった。 力を失われ、語ることすら封じられたクロは、 復讐を果たすための契約者を探していた。 クロは瀕死のソラと契約し、 彼の魂を二十年前――十五歳の過去へと送り返す。 唯一のスキル《アイテムボックス》。 そして契約により初めて“成長”する力を与えられたソラは、 弱き自分を変えるため、再びダンジョンと向き合う。 だがその裏で、 クロは封印した九人の祝福者たちを狩り尽くすための、 復讐の道を静かに歩み始めていた。 これは―― “最弱”と“最凶”が手を取り合い、 未来をやり直す物語

ペーパードライバーが車ごと異世界転移する話

ぐだな
ファンタジー
車を買ったその日に事故にあった島屋健斗(シマヤ)は、どういう訳か車ごと異世界へ転移してしまう。 異世界には剣と魔法があるけれど、信号機もガソリンも無い!危険な魔境のど真ん中に放り出された島屋は、とりあえずカーナビに頼るしかないのだった。 「目的地を設定しました。ルート案内に従って走行してください」 異世界仕様となった車(中古車)とペーパードライバーの運命はいかに…

男女比1対5000世界で俺はどうすれバインダー…

アルファカッター
ファンタジー
ひょんな事から男女比1対5000の世界に移動した学生の忠野タケル。 そこで生活していく内に色々なトラブルや問題に巻き込まれながら生活していくものがたりである!

『スローライフどこ行った?!』追放された最強凡人は望まぬハーレムに困惑する?!

たらふくごん
ファンタジー
最強の凡人――追放され、転生した蘇我頼人。 新たな世界で、彼は『ライト・ガルデス』として再び生を受ける。 ※※※※※ 1億年の試練。 そして、神をもしのぐ力。 それでも俺の望みは――ただのスローライフだった。 すべての試練を終え、創世神にすら認められた俺。 だが、もはや生きることに飽きていた。 『違う選択肢もあるぞ?』 創世神の言葉に乗り気でなかった俺は、 その“策略”にまんまと引っかかる。 ――『神しか飲めぬ最高級のお茶』。 確かに神は嘘をついていない。 けれど、あの流れは勘違いするだろうがっ!! そして俺は、あまりにも非道な仕打ちの末、 神の娘ティアリーナが治める世界へと“追放転生”させられた。 記憶を失い、『ライト・ガルデス』として迎えた新しい日々。 それは、久しく感じたことのない“安心”と“愛”に満ちていた。 だが――5歳の洗礼の儀式を境に、運命は動き出す。 くどいようだが、俺の望みはスローライフ。 ……のはずだったのに。 呪いのような“女難の相”が炸裂し、 気づけば婚約者たちに囲まれる毎日。 どうしてこうなった!?

ダンジョン美食倶楽部

双葉 鳴
ファンタジー
長年レストランの下働きとして働いてきた本宝治洋一(30)は突如として現れた新オーナーの物言いにより、職を失った。 身寄りのない洋一は、飲み仲間の藤本要から「一緒にダンチューバーとして組まないか?」と誘われ、配信チャンネル【ダンジョン美食倶楽部】の料理担当兼荷物持ちを任される。 配信で明るみになる、洋一の隠された技能。 素材こそ低級モンスター、調味料も安物なのにその卓越した技術は見る者を虜にし、出来上がった料理はなんとも空腹感を促した。偶然居合わせた探索者に振る舞ったりしていくうちに【ダンジョン美食倶楽部】の名前は徐々に売れていく。 一方で洋一を追放したレストランは、SSSSランク探索者の轟美玲から「味が落ちた」と一蹴され、徐々に落ちぶれていった。 ※カクヨム様で先行公開中! ※2024年3月21で第一部完!

スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する

カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、 23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。 急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。 完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。 そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。 最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。 すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。 どうやら本当にレベルアップしている模様。 「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」 最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。 他サイトにも掲載しています。

処理中です...