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第二十二章
救出の代償は
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中には予想通りリストさんがおり、上を向きながら静かに首の後ろを叩いていた。
「なに……してはるんですか?」
「いや~、拙者が出て行かなくてもなかなかのいやらしー雰囲気で、刺激が強くて鼻血が出たでござる!」
嘘付け出てないぞ!
「そういうのはいいから! お手洗いの帰り、道に迷って間違えてリストさん達の部屋に行って、仕方なく朝まで話していた、という設定にしますので、貴女たちの部屋へ連れて行って下さい!」
「そこは『朝までゲーム』じゃなくて良いのでござるか?」
それは熱愛報道が出たアイドルの言い訳だろ!
「何でも良いから早く!」
俺がそう急かすとリストさんは中から出て、例によって凄い力でロッカーを担ぎ上げしぶしぶ歩き出した。
「なぜ据え膳を喰わぬのでござる? ここにはナリス殿はおらぬでござるよ?」
「ナリスじゃなくてナリンさんね!」
リストさんが言っているのはナリンさんが男装をした時のキャラだ。リストさんを隊長とする『尊み略奪隊』をおびき出す際、俺と男に化けたナリンさんとで『男性同士の密かな愛』という設定で演技をしたのだが、彼女はまだその時のキャラにご執心なのだ。
「ナリンさんとはそういう関係じゃないしチームの誰ともそうじゃありませんが、バートさんともそういう関係になるつもりはありません!」
そんな話をする間にもリストさんは軽快に足を進める。夜中に高所を歩いているとはとても思えない歩調だ。
「何故!? 拙者は口が堅いでござるよ? それに選手には恋愛を進めるのに自分はやらないとはダビスタでござる!」
「それを言うならダブスタ! ダビスタは競馬のゲームでしょ! 血統とか繁殖とかは考えてませ……わざとか!」
ツッコミを入れている間にやらしー考えになりかけて、俺はリストさんの意図を読みとりツッコミ方を変えた。
「くっくっく! しかし真剣な話、ショー殿も恋愛をされた方が『大人としての幅』が出るのではござらんか?」
図星だったらしいリストさんは楽しそうに笑い、しかしそれ以上の追及を避けるかのように話を戻した。
「それはまあ、そうなんですけど」
俺は選手の恋愛を禁止するのではなく、むしろ推奨していた。むろん、それに頭がいっぱいでプレーに支障が出たら注意はするが俺は選手を個エルフとして尊重したいし変に抑制したくないし、愛する対象がいるという事は選手をトータルで成長させると期待しているからだ。
「俺は別です。そんな事にかまけてる時間はないし、関係性が変にギクシャクするのも嫌だし」
「しかしバート殿は関係者ではないでござるが?」
リストさんはぱっと振り向いてそう指摘した。彼女の動きにあわせてロッカーが回り、俺は瞬時の判断で身を屈めてそれを避けた。危ない。アレに当たったら本当に鼻血が出るぞ!
「そうなんですけど、バートさんとの関係はただのトモダチと言うか……これでくっつくのはストックホルムシンドロームとかリマなんですよ」
「ストックホモォ……何でござる?」
自分の好きそうな話題を期待してリストさんが目を輝かせた。
「ストックホルムとリマ!」
しかし俺は冷静に訂正し、話を続けた。
「人質事件等で長期に渡る密接な接触の結果、人質が犯人に親近感や愛情を抱いてしまう事です。人質が脱出や抵抗をするどころか、犯人に協力してしまったりするんです。ストックホルムの銀行強盗事件で有名になりました」
ストックホルムシンドロームは映画にもなっているし、オタクにとっての必修事項に近い。名前の格好良さもあってちょっと違う事例でも言ってしまう事があるくらいだ。
あ、因みに俺の場合はそれほど『長期に渡る密接な接触』ではない。外的には1週間とちょっとだが、絶情木で時間が飛んだので実質は数日だ。
「リマは逆に、犯人側が人質に愛着を抱いてしまう事です。ペルーのリマにある大使館立てこもり事件で注目を浴びました」
リマの日本大使館に立てこもったテロリストは、人質と仲良くなり過ぎ気が緩みまくっている所を利用されて制圧されてしまった。一説によると撃ち殺す予定の人質を撃てなかったとか、人質たちをサッカーをしている時に、治安部隊に突入されてしまったと言う。
おっと! 意外な所からサッカーの話に戻ったな。
「回りくどい話でござるが、つまりバート殿とは恋愛関係ではなく状況に流されて……と言いたいのでござるか?」
「そう、それです!」
リストさんはプレーや性格もだが、考え方の癖が独特だ。それでもなんとか俺の言いたい事を察してくれたようで嬉しい。
「状況に流されて関係を結んだら、意外と身体の相性が良くて……というのも萌えるでござるな!」
前言撤回。察してくれてなかった。
「萌える萌えないや好き嫌いは個々の自由ですけど、俺はやりませんから!」
俺の強い否定の声はリストさんに届いてないようだった。ナイトエルフの妄想家はその脳内で、なにやらけしからぬ想像の翼を羽ばたかせて楽しんでいるようだ。
「ところでまだ着かないんですか?」
「おっと! そろそろ……そう、そこでござる! 早速クエンに拙者の構想を語るとするでござる!」
「えっ……」
リストさんはそう言うと目の前に現れた巨木の中へ入っていった。そこは彼女とクエンさんに提供された部屋で、俺は朝までお菓子を食べつつ彼女らの萌え語りを聞かされる事となるのであった……。
「なに……してはるんですか?」
「いや~、拙者が出て行かなくてもなかなかのいやらしー雰囲気で、刺激が強くて鼻血が出たでござる!」
嘘付け出てないぞ!
「そういうのはいいから! お手洗いの帰り、道に迷って間違えてリストさん達の部屋に行って、仕方なく朝まで話していた、という設定にしますので、貴女たちの部屋へ連れて行って下さい!」
「そこは『朝までゲーム』じゃなくて良いのでござるか?」
それは熱愛報道が出たアイドルの言い訳だろ!
「何でも良いから早く!」
俺がそう急かすとリストさんは中から出て、例によって凄い力でロッカーを担ぎ上げしぶしぶ歩き出した。
「なぜ据え膳を喰わぬのでござる? ここにはナリス殿はおらぬでござるよ?」
「ナリスじゃなくてナリンさんね!」
リストさんが言っているのはナリンさんが男装をした時のキャラだ。リストさんを隊長とする『尊み略奪隊』をおびき出す際、俺と男に化けたナリンさんとで『男性同士の密かな愛』という設定で演技をしたのだが、彼女はまだその時のキャラにご執心なのだ。
「ナリンさんとはそういう関係じゃないしチームの誰ともそうじゃありませんが、バートさんともそういう関係になるつもりはありません!」
そんな話をする間にもリストさんは軽快に足を進める。夜中に高所を歩いているとはとても思えない歩調だ。
「何故!? 拙者は口が堅いでござるよ? それに選手には恋愛を進めるのに自分はやらないとはダビスタでござる!」
「それを言うならダブスタ! ダビスタは競馬のゲームでしょ! 血統とか繁殖とかは考えてませ……わざとか!」
ツッコミを入れている間にやらしー考えになりかけて、俺はリストさんの意図を読みとりツッコミ方を変えた。
「くっくっく! しかし真剣な話、ショー殿も恋愛をされた方が『大人としての幅』が出るのではござらんか?」
図星だったらしいリストさんは楽しそうに笑い、しかしそれ以上の追及を避けるかのように話を戻した。
「それはまあ、そうなんですけど」
俺は選手の恋愛を禁止するのではなく、むしろ推奨していた。むろん、それに頭がいっぱいでプレーに支障が出たら注意はするが俺は選手を個エルフとして尊重したいし変に抑制したくないし、愛する対象がいるという事は選手をトータルで成長させると期待しているからだ。
「俺は別です。そんな事にかまけてる時間はないし、関係性が変にギクシャクするのも嫌だし」
「しかしバート殿は関係者ではないでござるが?」
リストさんはぱっと振り向いてそう指摘した。彼女の動きにあわせてロッカーが回り、俺は瞬時の判断で身を屈めてそれを避けた。危ない。アレに当たったら本当に鼻血が出るぞ!
「そうなんですけど、バートさんとの関係はただのトモダチと言うか……これでくっつくのはストックホルムシンドロームとかリマなんですよ」
「ストックホモォ……何でござる?」
自分の好きそうな話題を期待してリストさんが目を輝かせた。
「ストックホルムとリマ!」
しかし俺は冷静に訂正し、話を続けた。
「人質事件等で長期に渡る密接な接触の結果、人質が犯人に親近感や愛情を抱いてしまう事です。人質が脱出や抵抗をするどころか、犯人に協力してしまったりするんです。ストックホルムの銀行強盗事件で有名になりました」
ストックホルムシンドロームは映画にもなっているし、オタクにとっての必修事項に近い。名前の格好良さもあってちょっと違う事例でも言ってしまう事があるくらいだ。
あ、因みに俺の場合はそれほど『長期に渡る密接な接触』ではない。外的には1週間とちょっとだが、絶情木で時間が飛んだので実質は数日だ。
「リマは逆に、犯人側が人質に愛着を抱いてしまう事です。ペルーのリマにある大使館立てこもり事件で注目を浴びました」
リマの日本大使館に立てこもったテロリストは、人質と仲良くなり過ぎ気が緩みまくっている所を利用されて制圧されてしまった。一説によると撃ち殺す予定の人質を撃てなかったとか、人質たちをサッカーをしている時に、治安部隊に突入されてしまったと言う。
おっと! 意外な所からサッカーの話に戻ったな。
「回りくどい話でござるが、つまりバート殿とは恋愛関係ではなく状況に流されて……と言いたいのでござるか?」
「そう、それです!」
リストさんはプレーや性格もだが、考え方の癖が独特だ。それでもなんとか俺の言いたい事を察してくれたようで嬉しい。
「状況に流されて関係を結んだら、意外と身体の相性が良くて……というのも萌えるでござるな!」
前言撤回。察してくれてなかった。
「萌える萌えないや好き嫌いは個々の自由ですけど、俺はやりませんから!」
俺の強い否定の声はリストさんに届いてないようだった。ナイトエルフの妄想家はその脳内で、なにやらけしからぬ想像の翼を羽ばたかせて楽しんでいるようだ。
「ところでまだ着かないんですか?」
「おっと! そろそろ……そう、そこでござる! 早速クエンに拙者の構想を語るとするでござる!」
「えっ……」
リストさんはそう言うと目の前に現れた巨木の中へ入っていった。そこは彼女とクエンさんに提供された部屋で、俺は朝までお菓子を食べつつ彼女らの萌え語りを聞かされる事となるのであった……。
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