D○ZNとY○UTUBEとウ○イレでしかサッカーを知らない俺が女子エルフ代表の監督に就任した訳だが

米俵猫太朗

文字の大きさ
441 / 700
第二十五章

蛇の密着

しおりを挟む
「ティアさんって攻撃的な性格じゃないですか?」
「まあな。ベッドの上でもドSだって言われるな。一度、試してみっか?」
「遠慮しときます。その性格でなんでSBやってんすか? もっと攻撃的なポジション選ばなかったんすか?」
「昔はFWもやってたけど、前だと相手の足を蹴れる機会が少ないんだよ。お前にやらされてるゾーンプレス、とかも無かったし」
「お前、じゃなくて監督ね?」
「ベッドの上でなら呼んでやるよ。試さね?」
「どんなシチュエーションやねん! しません!」
 以前に行ったそんな会話が脳裏をよぎった。それくらい、ボールを受けた後のティアさんの動き――キックフェイントでGKを倒し横になった身体の上を軽く越えるシュートを決める――はFWじみていて完璧だった。
 後半12分、ティアさんのゴールで1-1。追いついた!
「よっし! ナリンさんみんな行きましょう!」
 俺はコーチ陣に声をかけ、ゴルルグ族のベンチを煽るようにその前を失踪してきたティアさんを迎えに走った。
『ティア、良くやったぞ!』
『見事なのだ!』
『アガサ殿のパスも見事でござる! ……ていない! 早くこっちでござるよ!』 
 俺より後から走り出して先に着いたザックコーチが殊勲の右SBを抱え上げ、アイラさんリストさんがそこへ続いた。
「ティアさんもアガサさんもナイスー」
 結構、己を鍛えてきた自負があるが、相変わらず選手であるエルフやコーチのミノタウロスの方が足が速い。俺は既に出来上がった輪の外から賞賛の声をかける。少し、寂しい。
『急に、走らせるで、ないのじゃ……』
「ショーキチ殿、まだ同点の段階で大げさでは?」
 俺より後になったのはドワーフで短足のジノリコーチと、彼女を気遣って併走してきたナリンさんだけだ。
「ええ、そうなんですけど、今日は控え選手もいなくて盛り上がりに欠け人数が少ないますから」
 俺がそう言うとナリンさん周囲を見渡しはっとした顔になり、俺に頷くとジノリコーチに何か話しかけながら輪へ加わった。
「あ、リーシャさん!」
 付け加えて言うとリーシャさんもゴールセレブレーションに加われない。サッカードウの試合して相手とも接触しておいて何だが、それはそれで未観戦の仲間とは濃厚な触れ合いをしないよう、言い渡してあるからだ。
「ここまでオッケー! 引き続き動いて動いて」
 なので俺はポツンと離れた所へ佇む彼女に声をかけ、細かくステップを踏んでみせた。言葉は分からないだろうが激励の気持ちと言いたい事は伝わるだろう。
『何それ? 下手くそなダンス? 分かったわよー!』
 リーシャさんは珍しく笑顔を見せて、こちらへ軽く手を振った。おそらく俺の応援に感謝しているのだろう。良かった。
「で、そちらはどうするんです?」
 俺はそう言いつつゴルルグ族のベンチの方と、マース監督の方を見た。策士である彼らがこのまま手を拱いて見ている筈はない。
 そしてその推測は、すぐに間違いでないのを知る事となった。

『ショーキチ、これはアレじゃの!』
「ショーキチ殿、これが例の……」
 再開した試合の展開を見て、ジノリコーチとナリンさんが同時に問いかけてきた。
「ええ、これがフルコートフルマンツーってやつです」
 俺は作戦ボード上で選手の配置を変えながら、麻雀の上がり手の様な名称を口にする。
「ここはこうで……これで合ってます?」
「ええと、はい、間違いないそうであります」
 出来上がった配置をジノリコーチに見せナリンさん経由で問う。どうやら正解の様だった。
「うし! ありがとうございます。ちょっと思い出す時間が欲しいので、しばらく任せます」
 ナリンさんとジノリコーチにそう声をかけ、俺はベンチに座った。そして日に日に薄れていく地球のサッカーの記憶から、自分のなけなしの知識を掘り起こそうと頑張ることにした。

 簡単にフルマンツーと言っても、そもそもの話ゾーンディフェンスが浸透していないこの異世界においてサッカーというかサッカードウの守備は最初からマンツーマンディフェンスだ。
 一方で前線からの守備というのは殆どなく中盤のプレスもゆるゆるなので、相手DFにぴったりとくっついてマークにつかれるのはFW、或いは中盤のキーマンだけである。故にこの世界のサッカードウを正確に言うなら
「中盤より前は守備が殆ど無いが強いて言えばゾーン、後方はマンツーマン」
なゾーン+マンマーク守備という事になる。
 だがゴルルグ族はフルマンツーを行っている。それはつまりどういう事かというと、後方だけでなく中盤より前の選手にも一名一名、担当を割り振ってくっつかせているのである。
 と、ここで例外的な話をすると相手GKにはマークがつかないし自チームのGKも誰もマークしない。そんな場所に攻撃の選手が張り付いていてはそいつへのパスはほぼオフサイドの反則になってしまい攻撃が成り立たないし、味方GKがマークする相手を追ってゴール前を空けたりはできないからだ。なので互いのGKを抜いた10VS10で考える事となる。
 あとはDFライン。自陣ゴール前で数的均衡――なんか変な表現だな。ただの同数で良いのに。数的優位という言葉からの派生なんだろう――を迎えるのは不安なので、普通は1名余分に増やす。相手が2TOPならDFは3名だ。3DFにうち2名がそれぞれのマークへ付き余った1名が誰か抜かれた時のカバーに回る。
 しかしそうなると数が足らなくなるので、どこかを諦める。多くの場合は前線だ。相手CBの1名は自由にして、その分後ろにズレていって数を合わせる。
 以上をまとめるとDFラインはカバー用に誰もマークしない選手がいるし、逆に相手DFも誰にもマークされていない選手がいる。そしてGKも空いている。名称に大いに偽り有りでどこがフルマンマークやねん! と言いたくなるがそこはまあ、言葉の綾という事で……。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

《カクヨム様で15000PV達成‼️》悪魔とやり直す最弱シーカー。十五歳に戻った俺は悪魔の力で人間の頂点を狙う

なべぞう
ファンタジー
ダンジョンが生まれて百年。 スキルを持つ人々がダンジョンに挑む世界で、 ソラは非戦闘系スキル《アイテムボックス》しか持たない三流シーカーだった。 弱さゆえに仲間から切り捨てられ、三十五歳となった今では、 満身創痍で生きるだけで精一杯の日々を送っていた。 そんなソラをただ一匹だけ慕ってくれたのは―― 拾ってきた野良の黒猫“クロ”。 だが命の灯が消えかけた夜、 その黒猫は正体を現す。 クロは世界に十人しか存在しない“祝福”を与える存在―― しかも九つの祝福を生んだ天使と悪魔を封印した“第十の祝福者”だった。 力を失われ、語ることすら封じられたクロは、 復讐を果たすための契約者を探していた。 クロは瀕死のソラと契約し、 彼の魂を二十年前――十五歳の過去へと送り返す。 唯一のスキル《アイテムボックス》。 そして契約により初めて“成長”する力を与えられたソラは、 弱き自分を変えるため、再びダンジョンと向き合う。 だがその裏で、 クロは封印した九人の祝福者たちを狩り尽くすための、 復讐の道を静かに歩み始めていた。 これは―― “最弱”と“最凶”が手を取り合い、 未来をやり直す物語

ペーパードライバーが車ごと異世界転移する話

ぐだな
ファンタジー
車を買ったその日に事故にあった島屋健斗(シマヤ)は、どういう訳か車ごと異世界へ転移してしまう。 異世界には剣と魔法があるけれど、信号機もガソリンも無い!危険な魔境のど真ん中に放り出された島屋は、とりあえずカーナビに頼るしかないのだった。 「目的地を設定しました。ルート案内に従って走行してください」 異世界仕様となった車(中古車)とペーパードライバーの運命はいかに…

男女比1対5000世界で俺はどうすれバインダー…

アルファカッター
ファンタジー
ひょんな事から男女比1対5000の世界に移動した学生の忠野タケル。 そこで生活していく内に色々なトラブルや問題に巻き込まれながら生活していくものがたりである!

『スローライフどこ行った?!』追放された最強凡人は望まぬハーレムに困惑する?!

たらふくごん
ファンタジー
最強の凡人――追放され、転生した蘇我頼人。 新たな世界で、彼は『ライト・ガルデス』として再び生を受ける。 ※※※※※ 1億年の試練。 そして、神をもしのぐ力。 それでも俺の望みは――ただのスローライフだった。 すべての試練を終え、創世神にすら認められた俺。 だが、もはや生きることに飽きていた。 『違う選択肢もあるぞ?』 創世神の言葉に乗り気でなかった俺は、 その“策略”にまんまと引っかかる。 ――『神しか飲めぬ最高級のお茶』。 確かに神は嘘をついていない。 けれど、あの流れは勘違いするだろうがっ!! そして俺は、あまりにも非道な仕打ちの末、 神の娘ティアリーナが治める世界へと“追放転生”させられた。 記憶を失い、『ライト・ガルデス』として迎えた新しい日々。 それは、久しく感じたことのない“安心”と“愛”に満ちていた。 だが――5歳の洗礼の儀式を境に、運命は動き出す。 くどいようだが、俺の望みはスローライフ。 ……のはずだったのに。 呪いのような“女難の相”が炸裂し、 気づけば婚約者たちに囲まれる毎日。 どうしてこうなった!?

ダンジョン美食倶楽部

双葉 鳴
ファンタジー
長年レストランの下働きとして働いてきた本宝治洋一(30)は突如として現れた新オーナーの物言いにより、職を失った。 身寄りのない洋一は、飲み仲間の藤本要から「一緒にダンチューバーとして組まないか?」と誘われ、配信チャンネル【ダンジョン美食倶楽部】の料理担当兼荷物持ちを任される。 配信で明るみになる、洋一の隠された技能。 素材こそ低級モンスター、調味料も安物なのにその卓越した技術は見る者を虜にし、出来上がった料理はなんとも空腹感を促した。偶然居合わせた探索者に振る舞ったりしていくうちに【ダンジョン美食倶楽部】の名前は徐々に売れていく。 一方で洋一を追放したレストランは、SSSSランク探索者の轟美玲から「味が落ちた」と一蹴され、徐々に落ちぶれていった。 ※カクヨム様で先行公開中! ※2024年3月21で第一部完!

スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する

カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、 23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。 急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。 完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。 そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。 最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。 すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。 どうやら本当にレベルアップしている模様。 「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」 最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。 他サイトにも掲載しています。

処理中です...