D○ZNとY○UTUBEとウ○イレでしかサッカーを知らない俺が女子エルフ代表の監督に就任した訳だが

米俵猫太朗

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第二十八章

ここでもリズム

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 時代やチームによって少し変化したりするがWGというのは非常に明快なポジションだ。サイドにいて、ドリブルで相手を抜き、センタリングを送り込む。
 このセンタリングというのはサイドから中央へ向かって届けられるパスだ。ミノタウロスやインセクターの様に目の位置が特殊な種族以外にとって横方向から来るボールと相手FWを同時に視認するのは難しく、良いボールがくれば攻撃側には大きなチャンス、守備側にはピンチとなる。それだけにWG及びWGが行うサイド攻撃はチームにとって大きな武器となる。
 そんなWG、基本的にはセンタリングを蹴り易いように利き足――身体の構造がかなり違う異世界の種族でも利き足は存在する。まあ猫や熊にだって利き手利き足はあるから――と同じサイドに配置するのが普通だ。右利きなら右サイド、左利きなら左サイド、といった具合に。
 しかしカペラ選手はちょっと違うタイプのWGだ。彼女は利き足の右とは逆の左サイドを主戦場とし、縦に抜いて左足でセンタリングをするのではなく、中の方へドリブルしそこからシュートやパスを狙う……とここまではツンカさんに話したことの復習。
 俺はその先、では中へ入っていくプレイをどのように止めるか? まで彼女に仕込んであったのだ。

「リズム、ですか?」
 俺の説明にアリスさんが首を傾げた。
「そうです、リズム。民族種族によって好むテンポみたいなものがありまして。ほら、アリスさんも嗜む俳句! あれも五七五の17音で構成されていますけが、日本人が好むリズムなんですよ!」
 続けて言葉に合わせて軽く手を叩く。俳句は狙ってやっているものだが、なんとなく収まりの良い言葉を言ったり文章を書いたりした時に偶然17音になっていたりもするくらいだ。
「つまりハーピィにもそういう推しのリズムがあると?」
「ええ。そしてそのリズムの影響は読み書き会話だけでなく、運動にも表れたりするんですよ。サッカードウのドリブルにもね」
 俺は先程ツンカさんが止めたカペラ選手のドリブルを思い出しながら言った。彼女の最大の武器はサイドから中へ入っていく時のダイナミックな動きである。一方で動きが一度、止まってしまった後のバリエーションはさほど豊富ではない。
 前に二度ほどボールを突いて縦に行くと見せかけて、斜めへ。実戦でやれるフェイントはそれくらいしかなく、しかもリズムはいつも一定だった。
「それを元に動きを予測して防いだんですか!」
「ええ。俺の仮説を元に分析担当のアカリさんが確認して、ジノリコーチがツンカさんに仕込んだんです。ここでもみんなの共同作業です」
 俺はそれぞれの貢献を漏らさず言った。貢献、と言っても俺の果たした役割はさほど大きくないけどね。ただカペラさんのフェイントの動きが、WillUの人気曲『サカノサーカス』の冒頭であるのに気づいたのはまあまあ重要だったと自負している。
「ちっ、また『みんなの』か……。先を越されましたね」
 アリスさんは悔しそうに指を鳴らした。いやなんで二人の共同作業って言いたいのよ!
「まあ、何にせよあっちはこれで事実上のゲームエンドですよ」
 俺はとっくの昔に再開していた試合を、そして明らかに生彩を欠いたカペラ選手を見下ろしながら言った。カペラ選手がここまで躍進してきたのは、この異世界サッカードウではあまり知られていないウイング・ストライカーというスタイルと、スピードとサイズを生かした大胆なプレイに寄るものが大きい。
 しかしプレイスタイルについては完全に分析され、一度スピードを落とした後の対処法もバレた。こうなると、カペラさんには「迷い」が生じる。突破力や勢いが売りの選手が足を止め悩んで模索しあれこそする……。これほど簡単な相手はいない。
「あ、またボンキュボンが止めましたよ!」
 見ると、アリスさんが叫んだ通りツンカさんが再びカペラ選手を止めた。迷えるルーキーがボールを二度三度と跨いで揺さぶりをかけたが、アリスさんからの呼び名がボンキュボンに戻ってしまった万能MFは、そのフェイントを意にも介さずボールを奪い自分のモノにしたのだ。。
「付け焼き刃のドミニク選手の真似じゃだめっすよ、カペラさん……」
 少し悲しい気持ちになって俺は呟いた。WillUとカペラさんの一人のファンとして、これでまた彼女が迷走しサッカードウ選手としてもアイドルとしても伸び悩む未来が見える。
 まあ、だからと言って手加減できる状況や立場ではないのだが。だってこちらは1部リーグ残留が至上命令のチームだし、ライバルは蹴落とさなければならない。その辺りは過酷なアイドル業界と同じだ。
 出来ればカペラさんには次のステージで、或いは降格したチームと一緒に2部リーグで自分を磨き直し再び輝いて欲しい。
「おお、ぶりっこ凄い!」
 俺の小声の呟きもアンニュイな気分もアリスさんにはバレていない様だった。ツンカさんが奪ったボールをマイラさんが繋ぎ、エオンさんがマルセイユルーレットでDFを抜き去ったシーンに大興奮の趣だ。
「エオンさんです。彼女はたぶん、人気者になりますよ」
 彼女もアリスさんにちゃんと名前を覚えて貰えるだろうか? と考えつつ、俺は同じくエルフのアイドルへ視線を送った。
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