D○ZNとY○UTUBEとウ○イレでしかサッカーを知らない俺が女子エルフ代表の監督に就任した訳だが

米俵猫太朗

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第三十四章

保護者と対話する方

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 俺がベンチに座ると当時に大きなブザーが鳴った。ピッチ内ウォーミングアップの開始だ。俺はナリンさんに目で挨拶しつつ、立ち上がりセンターサークルの方へ歩き出す。例によって相手チームであるフェリダエチームの様子を間近で見る為だ。
「ショーチャーン!」
 と、コンコースから走り出してきたアローズ選手の列から一つの影が飛び出し、俺の元へ来た。
『例の子、見つかったってー! 今、魔法通信で繋いでいるよー』
 シャマーさんだ。俺のスーツの裾を引っ張りつつ、何か言っている。
「どうしたんですか? 誰かトラブルでも!?」
 俺はさっとアローズ側のピッチを見渡し確認する。一応、全員いるみたいなんだが?
『あのショーちゃんがおっきいおっぱい触った子ー! ほら、ハーピィ戦でパンチラしてイヤーンってなった子だよー!』
 一方、シャマーさんは胸をモミモミしたりユニフォームのズボンをクイッっと引き上げたりして俺の注意を引こうとする。いや二人きりの時ならともかく、公衆の面前で何やってんのこのエルフ!?
『どうしたの、シャマー?』
『良かったナリン! ショーちゃんとロチューしてた子、ステフが見つけたのー。伝えてくれるー?』
 そこへナリンさんが素早く駆け寄ってきて、破廉恥なキャプテンと何言か話した。
「ショーキチ殿! アリス殿が見つかって、いま話せるそうであります!」
「まじっすか!」
 それは朗報だ。実の所、ゴブゾウさんのすっぱぬき――と言うと秘密が公表されたという意味になってしまうな。捏造報道と言うべきか――があった直後から、本国に連絡してアリスさんを探して貰っていたのだ。もしかしたら彼女の方にも報道陣が詰めかけて迷惑をかけているかもしれないし。その場合はこちらが保護しなければ。
「あ、でも今は……」
「ショーキチ殿! 行って下さいであります!」
 そうは言いつつも試合があるので躊躇う俺の背を、ナリンさんが押した。
「自分がここでこう腕を組んで、フェリダエを睨みつけているであります!」
 美貌のコーチはそう言うとビシっとポーズを決め、言葉通りフェリダエチームのウォーミングへ目をやる。
 ……もしかして俺の真似?
「ありがとうございます。行こう、シャマーさん!」
 モノマネ全般が上手いナリンさんにしては残念なクオリティに首を捻りつつ、俺はシャマーさんに声をかけてコンコースへ向かう。
『うん! それはそうとナリン、ショーちゃんの真似も上手なのね~』
 ドーンエルフも何か言いながら俺を追尾してきた。ナリンさんや俺の名前が聞こえたから、おそらく彼女も同意見なのだろう。
 って本当はシャマーさんも残ってアップをすべきなんだけどなあ。ただ魔法通信の調整があるかもだし、今日はスタメンでもないし、まあ良いか!

「どうも、ショーキチ先生。ご無沙汰しています……」
 画面の中のアリスさんは恐縮そうに、そう言った。
「どうも、ご無沙汰です。えっと、そちらは大丈夫ですか?」
 いかにも手慣れた社会人っぽい挨拶を返しつつ、彼女に問う。俺が普段おつき合いさせて頂いているエルフはサッカードウ選手や自由業だったりするので、こういう感覚は懐かしくも心地よい。
 ……普通の状況ならね。残念ながら今はスタジアム内の暗い通信室で魔法の鏡を介して話している状態で、とても普通とは言えない。
「はい、お陰様で。今日は朝からずっと学院でしたし、報道があった直後からここに置いて貰ってますから」
 アリスさんはいつもの快活さが少し無い声でそう言うと、背後をチラリと見た。魔法通信の背景から察するにあちらは校長室だろう。スカラーシップの打ち合わせでたびたび訪れているし、レイさんの就学態度を偵察する時のベースキャンプにも使用した所だ。
「あ、ナモリン校長ですか? ご協力、感謝します。ステフも」
 その背景に別のエルフの姿を見かけ、声をかける。
「いえ、どういたしまして」
「いいって事よ!」
 黒髪の美しいデイエルフとブラウンの髪を今日はポニーテールにしているダスクエルフはそれぞれの言い方で応えた。
「そうだ、ついででごめん! ステフ、魔法通信の調整ってお前だけでできるよな?」
「モチのロンよ!」
 じゃあシャマーさんは帰って貰えるな。
「そうか。でしたらシャマーさんは……」
「ねえねえパパラッチって来たー?」
 と、俺が言うのに割り込んでシャマーさんがアリスさんに話しかける。
「はい!? い、いえ、学院の外にはいるらしいですけど」
 当然の如く、知らないエルフが出てきてアリスさんはややキョどる。因みにパパラッチとはゴシップカメラマンの事で、ジダンに頭突きを喰らったイタリアのDF――マテラッツィだよ!――の事ではない。
「じゃあ貴女のお家の方を見張っているかもー。ショーちゃん、彼女さえ良ければエルヴィレッジに避難させてあげれば? 寮に空き部屋もあるしー」
「それは、その」
 それは俺が提案しようとしていたのに!
「あの! ご迷惑でしたら……」
「いいえ! そんな事は全然ありません! 是非ともどうぞ!」
 シャマーさんの提案に俺が戸惑う、アリスさんが遠慮する、俺が急いで彼女の言葉を否定し避難を薦める、という流れが一瞬で起こった。
「本当にご迷惑でないですか?」
「はい! ただ、割と五月蠅くて賑やかな連中が寝泊まりしてますので、繊細なアリスさんにベストな環境か? と言うと疑問なので。それでちょっと悩みまして」
 先にシャマーさんに提案された事を悔しがっている、という事を隠す為に俺は別の理由をでっちあげた。まあ実際それほど嘘ではないしな! 
 なにせパパラッチとは本来、飛び回るウザい虫の事で、五月蠅いという言葉には蠅が入っていて、なんか虫から逃れて別の虫に煩うとなったら本末転倒じゃん!
「私が繊細ですか? 困っちゃうなー分かる人には分かるかー!」
 アリスさんはそう言うと笑いながら頬に手を当ててしなを作った。
「あー大丈夫そうですね」
「え!? ショーキチ先生、ひっどーい!」
 金髪のドーンエルフはそう言って今度は頬を膨らませる。良かった、ようやく調子が戻ってきたな。
「ナモリン校長、それで良いですか? その方が学院にも迷惑がかかりませんし」
「ええ、異論はありませんわ」
 俺が確認すると校長先生もあっさりと許可を出した。その後、俺たちは簡単に流れを話し合い、詳細は現場に任せて通信を切った……。
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