ある日、幼女が弟子にしろと言ってきたのだが

まさ☆まさお

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プロローグ

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それは、災害だった。

山は崩れ、大地は裂けて水が溢れ出し、木々は火の粉を巻き上げ赤く燃えていた。

人々が逃げ惑う中、年端もいかぬ幼いこどもが1人、今にも崩れそうな家の前にいた。

腰まで伸びた艶やかな黒い髪を2つに括り、身につけた西洋の人形が纏うような洋服は泥や、埃、自ら流した涙などで汚れている。

「おとうさん……おかあさん……」

散々泣いたのであろう、喚いたのであろう、その女の子の声は掠れていた。

周りの人々は自分、或いは自分の身の回りの事が精一杯なのか、そんな女の子を気にすることなく、一心不乱に逃げ惑っている。

そんな女の子に近づく1人の少年がいた。

そこそこ整った顔立ちに、平均的な身長、やる気を感じさせない眠そうな目をしたその少年の左胸にはとあるバッジが付けられている。

この国の魔法使い、その中でも最高位であることを示す、桜の花を象った金属製の小さなバッジである。

「1人なのか?父ちゃん、母ちゃんはどうした?」

少年は女の子にそう声を掛けた。

「おうちのなかにいるの……。おかあさんが動けなくなって、おとうさんがお前は先に逃げなさいって……」

女の子は少年を涙が溢れる瞳で見ながら、力無く答える。

「そうか。で、この家、お前の家?この中に父ちゃん、母ちゃんがいんの?」

「うん」

尋ねた少女が首肯し、言葉を返したところで、少年は女の子の頭に手を乗せて軽く撫でたあと、一言、「そうか。ちょっと待ってろ」と言い残し、今にも崩れそうな家へと歩いて行くのであった。

それから数分後、少年は何食わぬ顔で家から一組の男女を連れ出したのである。

2人の衣服は汚れ、所々破れていたが、2人揃って大きな怪我は無いように見えた。

「おとうさん!おかあさん!」

少年が家から連れ出した一組の男女を見た女の子はたたっと駆け出すと、2人に飛び付いた。

「お?よかったな。で、この家、もうもたないから、早く逃げなよ。父ちゃん、母ちゃんと一緒にな」

そう言う少年に両親と女の子は何度も何度もお礼を言い、頭を下げた。

「お兄ちゃん!おなまえおしえて。お兄ちゃんまほうつかいでしょ?わたしがもし、まほうを使えるようになったら、でしにしてね!」

別れ際、女の子は少年にそう言うと、少年はやる気なさげにこう答えた。

「……え?弟子とか、あれだからイヤなんだが……。ま、考えとくわ。名前?俺の名前は……」
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