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幼女が弟子入りにきたのだが、断ると泣き出した
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ぽかぽかとした日差しが微妙に鬱陶しい5月。今日も今日とて俺こと、風祭 慶一郎(かざまつり けいいちろう)は、任務と言う名の使いっ走りを国からさせられ、辟易としながら我が家へと帰っている途中である。
本当にめんどくさい。なんで働いてるの?俺。マジでなんでこうなった?
他の奴にやらせろや、なんて思うが、俺以外のパシリはみんなもっと面倒臭いことをやらされていたりする。
それは、例えば学校で懇切丁寧に教える先生と言われるものであったり、なんもないところからいきなり炎や氷、果てには刃物なんかを降らして来たりするわけわからん奴をとっ捕まえに行かされたりと言った、実にしちめんどくさいことだったりするから、小間使いくらいの今のポジションって案外素敵?とか一瞬とち狂った考えが浮かぶが、やっぱり何かさせられること自体が面倒臭いので、国は俺を養うべきだと思いました。
愚痴ってる内容がもう意味わからんと、少し前までの俺でも思うので、俺以外の誰かから見れば本当にイミワカンナイとは思うが、実は俺、この国に5人しかいないS級というランクの魔法使いなのである。
この魔法使いってのは、所謂とんがり帽子被って、マントを身に付けて、なんとかかんとかパトローナムとか言う奴ではなく、普通の人間が出来ないことを出来る奴のことなのだ。
傷を治したり、馬鹿力を出したり、火を出したり、風を吹かせたり、電撃を放ったり、そこに存在しないものをそこに呼び出したりとその範囲は多種多様なのだが、殊更俺はそれに輪をかけて、文字通り何でも出来てしまうのである。まじ、誰かこのふざけた幻想をぶっ殺してくれませんかね?
そんな何でも出来る奴なんて、そりゃあ、何でもさせるわな国は。ふざけんなよマジ国。
あぁ、働きたくないでござる。
ぶつくさぶつくさと愚痴りながら敢えて歩いて我が家の前まで戻ってきたら、幼女がドアの前にいた。
え?なに?迷子?
そんなことを思っていたら、その幼女はあろうことかこんなことを言い出したのである。
「わたしをでしにしてください!」
「え?嫌だけど。めんどいし」
すぐさま答えた俺は悪くないよね。
すると、その幼女、俺の返事が気に食わないらしく、くりっくりの大きな瞳をより一層見開いたあと、ポロポロと涙を零し始めたのである。
え?え?なんで?
なんて思ってたら、その幼女ついに大きな声を上げ始めた。
「びえぇぇぇぇん。お兄ちゃん、お兄ちゃん、前に言ったもん!でしにしてくれるって言ったもん!うわぁぁぁぁぁぁん」
マジ泣き、大泣きである。
ちょ!?近所迷惑でしょ?!
『あのS級(笑)魔法使い(苦笑)遂に幼女にイタズラして、魔法使いからロリコンキングにジョブチェンジしたのか』
とか、思われたらどうすんの?
「ちょっと、ストップストップ!!とりあえず泣き止んで?で、家の中に入ろう?話を聞くからさ」
俺は必死に宥めながら、ドアを開け、とりあえず泣く幼女を家へと入れたのである。
☆
とりあえず家へと入った俺は、未だにグズり続けている幼女に改めて目を向ける。
艶やかな黒髪、大きな瞳、雪のように白い肌。人形の様に愛らしい、小さな顔。
その手の紳士なら天使だと言ってしまいそうな程の美幼女である。
その可愛い幼女がいきなり、俺の家の前にいて、剰え弟子入りさせろときたもんだ。
しかも以前、俺が了承したとまで言っている。
意味がわからないよ。白いアレなケモノではないがそう思ってしまう。
「……なぁ、前に俺が弟子にしてやるって言ったんだよね?それは分かったけどさ、学校に通った方がいいんじゃねーの?」
真面目な話、魔法使いとして能力が目覚めたのなら、俺は学校に通うのがいいと思っている。
なぜならば、きっちりとカリキュラムを組んで、能力の成長を促し、大惨事を引き起こす要因の一つである暴走を抑え、自身の能力とじっくり向き合うことができるからである。
それに、仲間や友達なんてものも作れたりするだろうし。多分だけど。
そうは思うが、俺は魔法使いの学校に通ったことも、誰かに弟子入りしたこともないのである。
別に俺がこのクソッたれな世界で初めての魔法使いって訳じゃない。
ある日、朝目覚めたら、突然世界がクソッたれなもんに変わっていたからだ。
まるで昔からそうだったかのように、世界はクソッたれになっていて、俺は魔法使いだったのである。
クソすぎんだろマジ。
我が人生ながら嫌になるわ。
「……わたしはお兄ちゃんのでしになりたい。学校より、お兄ちゃんがいいもん」
辟易とする俺に幼女は涙を湛え、真っ赤に泣き腫らした瞳を真っ直ぐに向けてそう言った。
お、おぉ……。
弟子……ねぇ。
「……俺、一応、男ね。で、お前、女の子。まだ子どもつっても、弟子入りしたら、一緒に暮らすことになるんだぜ?この家で。俺がお前みたいな小さな女の子にあんなことやこんなことするようなロリコンだったらどうすんの?」
「ロリコン?」
俺が投げ掛けた言葉に対し、幼女は首を傾げた。
やだ、可愛い。
「おう。お前みたいな小さな女の子を大好きなアレな奴のことな」
「んー。じゃあ、お兄ちゃんがロリコンさんなら、わたし、お兄ちゃんのおよめさんになる!わたし、お兄ちゃんのこと大好きだし!」
……おうふ。
本当にめんどくさい。なんで働いてるの?俺。マジでなんでこうなった?
他の奴にやらせろや、なんて思うが、俺以外のパシリはみんなもっと面倒臭いことをやらされていたりする。
それは、例えば学校で懇切丁寧に教える先生と言われるものであったり、なんもないところからいきなり炎や氷、果てには刃物なんかを降らして来たりするわけわからん奴をとっ捕まえに行かされたりと言った、実にしちめんどくさいことだったりするから、小間使いくらいの今のポジションって案外素敵?とか一瞬とち狂った考えが浮かぶが、やっぱり何かさせられること自体が面倒臭いので、国は俺を養うべきだと思いました。
愚痴ってる内容がもう意味わからんと、少し前までの俺でも思うので、俺以外の誰かから見れば本当にイミワカンナイとは思うが、実は俺、この国に5人しかいないS級というランクの魔法使いなのである。
この魔法使いってのは、所謂とんがり帽子被って、マントを身に付けて、なんとかかんとかパトローナムとか言う奴ではなく、普通の人間が出来ないことを出来る奴のことなのだ。
傷を治したり、馬鹿力を出したり、火を出したり、風を吹かせたり、電撃を放ったり、そこに存在しないものをそこに呼び出したりとその範囲は多種多様なのだが、殊更俺はそれに輪をかけて、文字通り何でも出来てしまうのである。まじ、誰かこのふざけた幻想をぶっ殺してくれませんかね?
そんな何でも出来る奴なんて、そりゃあ、何でもさせるわな国は。ふざけんなよマジ国。
あぁ、働きたくないでござる。
ぶつくさぶつくさと愚痴りながら敢えて歩いて我が家の前まで戻ってきたら、幼女がドアの前にいた。
え?なに?迷子?
そんなことを思っていたら、その幼女はあろうことかこんなことを言い出したのである。
「わたしをでしにしてください!」
「え?嫌だけど。めんどいし」
すぐさま答えた俺は悪くないよね。
すると、その幼女、俺の返事が気に食わないらしく、くりっくりの大きな瞳をより一層見開いたあと、ポロポロと涙を零し始めたのである。
え?え?なんで?
なんて思ってたら、その幼女ついに大きな声を上げ始めた。
「びえぇぇぇぇん。お兄ちゃん、お兄ちゃん、前に言ったもん!でしにしてくれるって言ったもん!うわぁぁぁぁぁぁん」
マジ泣き、大泣きである。
ちょ!?近所迷惑でしょ?!
『あのS級(笑)魔法使い(苦笑)遂に幼女にイタズラして、魔法使いからロリコンキングにジョブチェンジしたのか』
とか、思われたらどうすんの?
「ちょっと、ストップストップ!!とりあえず泣き止んで?で、家の中に入ろう?話を聞くからさ」
俺は必死に宥めながら、ドアを開け、とりあえず泣く幼女を家へと入れたのである。
☆
とりあえず家へと入った俺は、未だにグズり続けている幼女に改めて目を向ける。
艶やかな黒髪、大きな瞳、雪のように白い肌。人形の様に愛らしい、小さな顔。
その手の紳士なら天使だと言ってしまいそうな程の美幼女である。
その可愛い幼女がいきなり、俺の家の前にいて、剰え弟子入りさせろときたもんだ。
しかも以前、俺が了承したとまで言っている。
意味がわからないよ。白いアレなケモノではないがそう思ってしまう。
「……なぁ、前に俺が弟子にしてやるって言ったんだよね?それは分かったけどさ、学校に通った方がいいんじゃねーの?」
真面目な話、魔法使いとして能力が目覚めたのなら、俺は学校に通うのがいいと思っている。
なぜならば、きっちりとカリキュラムを組んで、能力の成長を促し、大惨事を引き起こす要因の一つである暴走を抑え、自身の能力とじっくり向き合うことができるからである。
それに、仲間や友達なんてものも作れたりするだろうし。多分だけど。
そうは思うが、俺は魔法使いの学校に通ったことも、誰かに弟子入りしたこともないのである。
別に俺がこのクソッたれな世界で初めての魔法使いって訳じゃない。
ある日、朝目覚めたら、突然世界がクソッたれなもんに変わっていたからだ。
まるで昔からそうだったかのように、世界はクソッたれになっていて、俺は魔法使いだったのである。
クソすぎんだろマジ。
我が人生ながら嫌になるわ。
「……わたしはお兄ちゃんのでしになりたい。学校より、お兄ちゃんがいいもん」
辟易とする俺に幼女は涙を湛え、真っ赤に泣き腫らした瞳を真っ直ぐに向けてそう言った。
お、おぉ……。
弟子……ねぇ。
「……俺、一応、男ね。で、お前、女の子。まだ子どもつっても、弟子入りしたら、一緒に暮らすことになるんだぜ?この家で。俺がお前みたいな小さな女の子にあんなことやこんなことするようなロリコンだったらどうすんの?」
「ロリコン?」
俺が投げ掛けた言葉に対し、幼女は首を傾げた。
やだ、可愛い。
「おう。お前みたいな小さな女の子を大好きなアレな奴のことな」
「んー。じゃあ、お兄ちゃんがロリコンさんなら、わたし、お兄ちゃんのおよめさんになる!わたし、お兄ちゃんのこと大好きだし!」
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