21 / 162
あなたどなた
しおりを挟む
「これも、お願いね。」
お隣さんが持ってきたのはバナナだけでなく、じゃがいももあった。
それも箱ごと。
勿論、見えてたけれどさぁ。
「じゃがいも?それも1箱もですか?」
「採れたての新じゃがだからね。美味しいよ。4箱も贈られて来て始末に困っているから、お裾分け。」
「始末に困ってるって言っちゃった。」
あと、新じゃがって今の時期に収穫出来ることを初めて知った。
使いようのない知識だけど。
JA鹿児島の箱(結構重たいぞ)を縁側にドンと置いたまま、お隣さんが帰ろうとした時に、彼女は何事かを思い出した。
「そうそう、さっきお客さんが来てたわよ。若い女の人。」
「妹なら、途中まで送って行きましたよ。」
「妹さんてお墓参りに来ていた女の子でしょ。違うわよ。」
まぁ、男の妹はあまりいないですね。
今時、少し弄り辛い話なので、深入りはしませんが。
「私より少し歳下に見えたね。そのくらいの人。」
はて、心当たりがまったくない。
女性の知り合いって言われても、中学・高校のクラスメイトくらいだし、大体僕が引越した事なんが、仲の良かった男友達にすら誰にも連絡して無いぞ。
クラスメイトって卒業式が終わったら、大体関係は1度リセットされるだろ。
ましてや高校卒業は、大学進学にせよ就職にせよ浪人するにせよ。
自身の属性が大きく変わるわけだから、昔(まだ式から2週間経ってないけど)のままてはいられなくなるわけで。
「そうそう、お名刺を預かってたんだ。ちょっと待っててね。」
両手をパン!と胸元で打つと、お隣さんは自宅に走って行っちゃった。
瑞穂くんと穴熊の側を駆け抜けて行ったけれど、穴熊はバナナに夢中で、お隣さんに反応しなかった。
…穴熊ってバナナは皮も食べちゃうんだ。
あとお隣さん?
つっかけサンダルで走ると転びますよ?
門から地面から、やたら凸凹している屋敷なんだから。
地面から顔を出している立木の浮根なんか、どうすりゃいいのさ。
埋めればいいのか、掘り出して切っちゃえばいいのか。
あぁ、仕事が絶えないなぁ。
………
「北海道警・水野麗香」
それに札幌署の電話番号の書かれた、簡素な名刺を渡された。
誰ですか?水野さんて。
警察って事は、祖父の知り合いかな?
「でも、相馬光さんって、名指しをしてましたよ。」
「はぁ。」
そもそもコレ、本物の名刺かぁ?
祖父に聞いてみようか。
たしかに僕は警察道場に通っていましたけど、顔がわかるお知り合いは県警の人だけで、警視庁とか府警とか道警の人は知りません。
しかも道警って、北海道から来たの?
わざわざ?
「ヒカリ、オジャガデナニツクル?」
あ、スペインからわざわざ来た人がそこにいた。
しかも、穴熊の抱っこに成功してるぞ。
穴熊がくんくん鼻を鳴らして、瑞穂くんの顔を見つめてる。
「そうねぇ、フライドポテトとかハッシュドポテトとか、肉じゃがとかかなぁ。」
「ワ!ニクジャガ食べたい!」
「ねぇ!男を堕とす料理の1番人気よ!」
「ナンデスト!」
肉じゃがを作らない(作れない)女性陣が盛り上がっていますが、今晩はお刺身だし、プラ樽には水煮にした筍が丸々残ってるし、冷蔵庫の中の鮭、あれどうすんだよ。
「ひき肉と人参と隠元がないのと、今晩のメニューは決まっているので、肉じゃがは明日以降に作ります。」
「待って光さん。ひき肉と人参と隠元豆でいいのね。」
あれれ?
「ひき肉以外は食物庫に余っているから明日持ってくるわ。ひき肉は豚?牛?合い挽き?」
「…どれでもお好きなものを…。」
「よし!今から買ってくる!」
サンダルでポクポク走っていく後ろ姿は、某国民的家族4コマ漫画・日曜夕方アニメの(お日様も笑ってる愉快な)主人公みたいだな。
あの人。
…あと、食物庫って何?
お寺にそんなのあるの?
★ ★ ★
『あぁ水野君か、知ってるよ』
祖父に電話をしてみたら、悪びれも無く犯行を認めました。
『後藤君の婚約者だ』
「ミズノ君もゴトー君にも、面識ないんですけど?」
『後藤君はウチの機動隊員だよ。ついでにお前に負けた全警剣の優勝者だ。』
「あぁ。あの人ですか。」
なんだこれ。
婚約者さんの敵討ちでも来たのか?
『剣道に関してだけ言うなら、水野君はお前達に対抗するとか、そんなに強くないぞ。お前達がおかしいだけだ』
「おかしくて悪うございましたね。」
『俺も明日行くよ。ちょっと見てやって欲しいんだ。』
爺ちゃんが見て欲しいというのは、多分、間違いなく剣道だろうなぁ。
「爺ちゃんは北海道でも何やらかしてんの?」
『最終職位は県警からでは無く、警察庁から出向扱いだったからな。剣道に関して言えば、日本全国弟子だらけだ。県警の後藤は俺の最後の直弟子だからな。お節介くらいは焼いてやる気だ』
「はぁ。」
なんだか訳の分からない事になりそうだ。
『あと、警察官の名刺は貴重品だから取っとけ。結構するから姓もかわるしレアだぞ』
「いや、これ。本物なの?」
人様の奥様の名刺貰ってもさぁ。
『見てみない事にはわからんけどな。警察官の名刺なんか、その気に悪用し放題だろ。だから普通は警察手帳を提示するし、名刺自体が有料なんだよ。俺の伝とはいえ、警察官の名刺なんか滅多に貰えるもんじやないぞ』
いや、貰ってどうすんだよ。
………
「デ、ドウナルノ?」
「さぁねぇ。爺ちゃんが何かを企んでいるらしい事はわかった。」
「オジイ、ワルイヒトジヤナイヨ」
「今、僕と瑞穂くんがここに居て、2人でお刺身を食べている事も、爺ちゃんの悪巧みだよ?」
爺ちゃんが居なければ、僕は実家で大学進学前の休みを満喫していたし、瑞穂くんだって日本まで来て初めて会う男と一緒に住むとかなかっただろう。
「まぁ僕は、祖父に用がある祖父の知り合いと接するだけだよ。あとは全部ぜぇ~んぶ、流される事にする。」
「ヒカリ、カッコワルイ」
この状況で、カッコいい対応って、なんだろう。
お隣さんが持ってきたのはバナナだけでなく、じゃがいももあった。
それも箱ごと。
勿論、見えてたけれどさぁ。
「じゃがいも?それも1箱もですか?」
「採れたての新じゃがだからね。美味しいよ。4箱も贈られて来て始末に困っているから、お裾分け。」
「始末に困ってるって言っちゃった。」
あと、新じゃがって今の時期に収穫出来ることを初めて知った。
使いようのない知識だけど。
JA鹿児島の箱(結構重たいぞ)を縁側にドンと置いたまま、お隣さんが帰ろうとした時に、彼女は何事かを思い出した。
「そうそう、さっきお客さんが来てたわよ。若い女の人。」
「妹なら、途中まで送って行きましたよ。」
「妹さんてお墓参りに来ていた女の子でしょ。違うわよ。」
まぁ、男の妹はあまりいないですね。
今時、少し弄り辛い話なので、深入りはしませんが。
「私より少し歳下に見えたね。そのくらいの人。」
はて、心当たりがまったくない。
女性の知り合いって言われても、中学・高校のクラスメイトくらいだし、大体僕が引越した事なんが、仲の良かった男友達にすら誰にも連絡して無いぞ。
クラスメイトって卒業式が終わったら、大体関係は1度リセットされるだろ。
ましてや高校卒業は、大学進学にせよ就職にせよ浪人するにせよ。
自身の属性が大きく変わるわけだから、昔(まだ式から2週間経ってないけど)のままてはいられなくなるわけで。
「そうそう、お名刺を預かってたんだ。ちょっと待っててね。」
両手をパン!と胸元で打つと、お隣さんは自宅に走って行っちゃった。
瑞穂くんと穴熊の側を駆け抜けて行ったけれど、穴熊はバナナに夢中で、お隣さんに反応しなかった。
…穴熊ってバナナは皮も食べちゃうんだ。
あとお隣さん?
つっかけサンダルで走ると転びますよ?
門から地面から、やたら凸凹している屋敷なんだから。
地面から顔を出している立木の浮根なんか、どうすりゃいいのさ。
埋めればいいのか、掘り出して切っちゃえばいいのか。
あぁ、仕事が絶えないなぁ。
………
「北海道警・水野麗香」
それに札幌署の電話番号の書かれた、簡素な名刺を渡された。
誰ですか?水野さんて。
警察って事は、祖父の知り合いかな?
「でも、相馬光さんって、名指しをしてましたよ。」
「はぁ。」
そもそもコレ、本物の名刺かぁ?
祖父に聞いてみようか。
たしかに僕は警察道場に通っていましたけど、顔がわかるお知り合いは県警の人だけで、警視庁とか府警とか道警の人は知りません。
しかも道警って、北海道から来たの?
わざわざ?
「ヒカリ、オジャガデナニツクル?」
あ、スペインからわざわざ来た人がそこにいた。
しかも、穴熊の抱っこに成功してるぞ。
穴熊がくんくん鼻を鳴らして、瑞穂くんの顔を見つめてる。
「そうねぇ、フライドポテトとかハッシュドポテトとか、肉じゃがとかかなぁ。」
「ワ!ニクジャガ食べたい!」
「ねぇ!男を堕とす料理の1番人気よ!」
「ナンデスト!」
肉じゃがを作らない(作れない)女性陣が盛り上がっていますが、今晩はお刺身だし、プラ樽には水煮にした筍が丸々残ってるし、冷蔵庫の中の鮭、あれどうすんだよ。
「ひき肉と人参と隠元がないのと、今晩のメニューは決まっているので、肉じゃがは明日以降に作ります。」
「待って光さん。ひき肉と人参と隠元豆でいいのね。」
あれれ?
「ひき肉以外は食物庫に余っているから明日持ってくるわ。ひき肉は豚?牛?合い挽き?」
「…どれでもお好きなものを…。」
「よし!今から買ってくる!」
サンダルでポクポク走っていく後ろ姿は、某国民的家族4コマ漫画・日曜夕方アニメの(お日様も笑ってる愉快な)主人公みたいだな。
あの人。
…あと、食物庫って何?
お寺にそんなのあるの?
★ ★ ★
『あぁ水野君か、知ってるよ』
祖父に電話をしてみたら、悪びれも無く犯行を認めました。
『後藤君の婚約者だ』
「ミズノ君もゴトー君にも、面識ないんですけど?」
『後藤君はウチの機動隊員だよ。ついでにお前に負けた全警剣の優勝者だ。』
「あぁ。あの人ですか。」
なんだこれ。
婚約者さんの敵討ちでも来たのか?
『剣道に関してだけ言うなら、水野君はお前達に対抗するとか、そんなに強くないぞ。お前達がおかしいだけだ』
「おかしくて悪うございましたね。」
『俺も明日行くよ。ちょっと見てやって欲しいんだ。』
爺ちゃんが見て欲しいというのは、多分、間違いなく剣道だろうなぁ。
「爺ちゃんは北海道でも何やらかしてんの?」
『最終職位は県警からでは無く、警察庁から出向扱いだったからな。剣道に関して言えば、日本全国弟子だらけだ。県警の後藤は俺の最後の直弟子だからな。お節介くらいは焼いてやる気だ』
「はぁ。」
なんだか訳の分からない事になりそうだ。
『あと、警察官の名刺は貴重品だから取っとけ。結構するから姓もかわるしレアだぞ』
「いや、これ。本物なの?」
人様の奥様の名刺貰ってもさぁ。
『見てみない事にはわからんけどな。警察官の名刺なんか、その気に悪用し放題だろ。だから普通は警察手帳を提示するし、名刺自体が有料なんだよ。俺の伝とはいえ、警察官の名刺なんか滅多に貰えるもんじやないぞ』
いや、貰ってどうすんだよ。
………
「デ、ドウナルノ?」
「さぁねぇ。爺ちゃんが何かを企んでいるらしい事はわかった。」
「オジイ、ワルイヒトジヤナイヨ」
「今、僕と瑞穂くんがここに居て、2人でお刺身を食べている事も、爺ちゃんの悪巧みだよ?」
爺ちゃんが居なければ、僕は実家で大学進学前の休みを満喫していたし、瑞穂くんだって日本まで来て初めて会う男と一緒に住むとかなかっただろう。
「まぁ僕は、祖父に用がある祖父の知り合いと接するだけだよ。あとは全部ぜぇ~んぶ、流される事にする。」
「ヒカリ、カッコワルイ」
この状況で、カッコいい対応って、なんだろう。
0
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ご飯を食べて異世界に行こう
compo
ライト文芸
会社が潰れた…
僅かばかりの退職金を貰ったけど、独身寮を追い出される事になった僕は、貯金と失業手当を片手に新たな旅に出る事にしよう。
僕には生まれつき、物理的にあり得ない異能を身につけている。
異能を持って、旅する先は…。
「異世界」じゃないよ。
日本だよ。日本には変わりないよ。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-
ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。
1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。
わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。
だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。
これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。
希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。
※アルファポリス限定投稿
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる