相馬さんは今日も竹刀を振る 

compo

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また1人、まったくもう

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とにもかくにも、食べても食べても無くならない鮭をなんとかしたかった。
昨日の昼も今朝も鮭だったけれど、早く冷凍庫のスペースを開けないと、僕の大好きな時間節約(手抜き)料理に必須な冷凍食品が買えない。

最初の頃は(まだ1週間経っていない)コンビニで買って来たパック入りの生野菜しか無かったのに、いつのまにか野菜室も溢れている。
僕と瑞穂くん2人しか居ないと言うのに、お隣さんが、ご近所の農家さんから貰ったと言って(箱ごと)持って来る様になってしまったからだ。

なので、お客さんが居る時に、鮭が続こうがなんだろうか、無理矢理食わす事に決めた。

というか最近、僕と瑞穂くん(with穴熊)しか居ない時間と言う物が、早朝と夜しか無い。
毎日毎日、誰かが訪ねてくる。
明日も祖父と水野さんと石川さんが来る事は決定しているし。
来週は4月だと言うのに。
大学だって始まるのに、僕に安寧の日はいつ来るんだろう。

さて、何作るかな。 
因みに今は、キッチンに僕1人、瑞穂くんと水野さんは、祖父の指導でまだ道場だ。
 
「昼、食べてく?」
「おう!水野、お前も食ってけ。」
「え、はい。ご馳走になります。」
「ア、テツダウヨ。」
「瑞穂は儂と一緒に居残り稽古だ。」
「ブー」

てな感じで、3人はまだ稽古中。
瑞穂くんには、一緒に居る2人は剣道の最前線にいる人達だから、きっと良い手本になるだろう。
僕?
僕は別に剣道で生きていく気ないもん。

だから僕は祖父達の為にお風呂を沸かし、ご飯を作るのさ。

と、言うわけで取りいだしたるは、パスタ。
乾麺は蕎麦もうどんもパスタも全部常備している。
そして、鮭とパスタと言えば、勿論あれだよね。

★  ★  ★

「クリームパスタ?光さん、あなたがお作りになったんですか?」
「はぁまぁ。」

昨日も今日も(あと明日も)買い物に行けないから、残り物でちゃっちゃと作りました。
米と乾物は、ネットスーパーで買いました。
この屋敷にいる限り、食べ物には不自由しなさそう。

「ヒカリ、スパゲッティツクレルンダ」

だから、大抵の麺類は煮れば出来るの。
あとはソースを適当に作って混ぜれば完成。
一昨日スーパーで買った牛乳の減りが思ったより少ないから、これにバターと砂糖を加えて掻き回せば生クリームも作れるし。
という事で作ったものが、鮭とエリンギのクリームパスタです。 

祖父は歳の割に洋食もOKな人。
警察じゃ偉い人だったから、そう言う会食の場に出る事も多かったのだろう。
というか、祖父から美味い不味いを聞いた事ない。

「1番美味いのは、婆さんの飯だがな。あっはっはっはっ。」
「はいはい、ご馳走様。まだ食べてないけど。」

「なんなのよ。警視監の''お孫さん''だし、私なんかよりずっと若いのに、私よりも剣道も料理も上手いって、世の中間違ってるわ。」
「ヒカリハバンノウ。コッチイガイは。」
「まぁ。まだ若いのに。」

誰だ、瑞穂くんに「小指」の意味を教えたのは?
あと、若いの意味が変わったぞ。

………

「さて、皆も聞いて欲しい。明日の事だ。先程石井に連絡して意志を聞いてみた。」

僕が食器を洗おうとしたら、何故か瑞穂くんと水野さんにシンクを取られた。
瑞穂くんはともかく、お客さんの水野さんまで何してんの?

「せめてこのくらいさせて下さい。私ももうすぐ結婚なのに、新婦として、まるで役立たずみたいで、何かしたいんです。」
「はぁ、そうですか?」

横目で祖父を見たが、祖父は知らん顔をして食後のお茶を啜っている。
あの野郎。
この状況を楽しんでいるな……

まぁ、瑞穂くんは、掃除・洗濯・皿洗いが好きな人なので、あっちは良いか。
と、ドタバタし終わった後、祖父が仕切り始めたわけだ。

まぁこの中で1番偉いのは祖父だし、いいけど。

「明日午前9時に石井はやって来る。試合はその後随時。なお、石井はこちらの言い分を全部呑んだ。」
「はい。」

「ドッチガイイノ?」
「冷たい方。」 
「ハイ。ヒカリハソレ、スキダネ」
「ただのミネラルウォーターだよ。」

「そこのママごと夫婦、少しは俺の話を聞け。」
「誰がママごとですか?あと、ジジイキャラか俺様キャラか統一して下さい。」
「ママゴトジャナイツモリダケドナァ。」
「まったく、お前達がいると、ちっともシリアスな雰囲気にならん。」

知らんがな。

「水野と石井の3分1本勝負の後、光、お前石井に胸を貸せ。」
「はい?」

さぁ、また突拍子のない事言い出したぞ。

「お前のしたインチキに興味があるらしい。そんな小細工しなくても孫はお前より強いと言ったら、お前にも興味を持ったらしい。」
「いつもの爺ちゃんの悪巧みじゃないか!」
「まぁそう喚くな。」

喚きますよ。

「警察を辞めて家庭に入る水野の違って、結婚後も引き続き道警に勤務する石井は剣道も続ける。なのにお前の様な人間がいて、しかも俺の孫という事に興味を持ったんだと。」
「はぁ。」

僕はつい最近まで、ただの高校生だったのになぁ。
あと、僕の周り、剣道に真剣過ぎです。
剣だけに。    

「ヒカリ、ツマンナイ」
「僕の独り言を聞いていないように。」

★  ★  ★

午後もしばらく3人は稽古を続けているので、(そう言うなら、お風呂沸かす前に言って欲しかったなぁ。まぁ、うちのユニットバスには追い焚き機能も付いているから平気だけど)僕は庭に出ている。

何故なら、穴熊が来ているから。

そうか、食いきれない食べ物は、この仔にあげれば良いか。
いや、和尚さんが餌付けしてるって言うし、うちの食材は7~8割がたお隣のお裾分けだから意味ないか。

「クゥー」

その穴熊は、足元でバナナを齧っているわけで。 
なんだかな。

この庭、あれだな。
無駄に(本当に無駄に)広い庭を見渡すと、ため息が出た。
まだまだ未整備だ。
縁側の直ぐ外は土が固く踏みしめられているし、まだ雑草も生えていないからなんとも寒々しい。

塀沿いには立木が並んでいて、池と築山の周りだけは風流だけどさ。

土から剥き出しだと、この穴熊が穴掘るかもしれないし。
芝生を敷く事も考えたけど、こいつは気にもせず掘るだろう。

あと、池。
知らない間に魚が増えたかと思いきや、オタマジャクシが泳いでいた。
奥の方は行ってなかったから、多分そっちに卵を産みつけられていて、それがまとめて孵化したのだろう。

ボウフラが湧く季節にもなるしな。
やはりポンプを動かすだけでなく、魚を飼おう。

よし。
庭改造計画を発動しよう。

「クゥー」
「お前と遊んでて、エキノコックスとか大丈夫なのかね。」
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