162 / 178
瀬戸井街道
2日目の夜です
しおりを挟む
はい、副題通りです。
基本的にダラダラ回です。
何もしません。(いつもの事だねとか言うなや社長)
ダラダラ。ダラダラ。
って言うか、こんな記録まで残す価値あるんですか?お姉ちゃん?
これはこれで、私達の思い出になるから日記代わりに残しておいて?
はぁ。そうですか。
筑波山登山(と言って良いんだからどうだか)と、筑波山神社での御祈祷を終えてまだ14時過ぎ。
しかも、お昼をまだ食べてないぞ。
山頂のお土産屋さんで、田楽を食べただけだぞ。
田楽。すなわち茹でた蒟蒻を味噌で和えただけの料理って言っていいのか?これしか食べてない。
うら若き(浦和牡蠣とか浦和柿とか浦和夏季とか変換が間抜けな言葉だこれ)女の子としては、お腹空くんだよ!
おじさん・おばさん共よ!
(社長はともかく女性陣には絶対言えないけど)
でもさ、社長もお姉ちゃん達も空腹を訴えないので、1番下の私も大っぴらには言えず、Georgiaのロング缶を飲んで紛らわしました。
久しぶりに見たよ、これ。
MAXさんと違って糖分が「適度」にあるし量も多いから、とりあえずお腹は落ち着いた。
やれやれ。
何せ社長は1日2日食べなくても大丈夫な人で、スケジュールは南さんに委ねっぱなしだし、その南さんも昼メシより木刀の方が重要らしく、振り回して遊んでるし。
お姉ちゃん曰く、「編集者なんか生活が不規則になりがちだから、ご飯だって抜きがちなの。滅茶苦茶な生活の中での体調管理も仕事の内よ。」とか抜かしやがるし。
その滅茶苦茶な生活の中で行っている体調管理で、どうやってその括れた腰とクーパー靭帯が元気そうな上向きピンクな先っちょおっぱいと、若さに任せて化粧一つしない私よりも肌理の整った顔は保てるのよ。くそ!
あと、私達姉妹であれこれ下調べしていた細かな事象は、とっても偉い編集長様がとっくに滅茶苦茶にしてしまったので、慌ててスマホで調べながら、今日の残りの時間は隣山の雨引観音様に行く事になりました。
と、その前に。
社長が1人、南さんが、そこに見える今日の宿と示したホテル青木屋さんにトコトコ歩いて行っちゃいました。
おい、なんか言ってから行けよ。
慌ててみんなで追っかけます。
「こんにちは。」
「あらいらっしゃい先生。まだチェックインにはお早いですよ。お掃除が終わってませんよ。」
「今、神社にお参りに行って来たんですよ。御神酒を預けて良いですか?これから雨引さんにも行ってくるので。」
「あらあら、別に雨引さんとは宗派が違うから喧嘩しませんよ。でも、ま。ついでにお荷物もお預かりしますよ。」
「お願いしますね。」
ええと。
ウチの亭主の人脈というか、何というか。
なんで筑波山の麓のホテルのフロントさんと面識あるのよ?
「ん?前に茨城県の観光協会と仕事をした事があるから。それ以来のお付き合いだよ。」
「先生がそのお仕事をされている事を私も知っていましたから。私もこのお宿を先生と当社の名前を出して予約しました。」
あらら。
南さん、ドヤ顔してますけど、
「あぁゆぅのを、大人の悪い顔って言うのよ。」
ってお姉ちゃんがこっそり教えてくれた。
うん。知ってる。
お姉ちゃんが電話している時に、よく見るもん。
お姉ちゃんの応対からして多分、電話の向こうは男性なんだろう。
フロントさんとお話ししている社長もフロントのおばちゃんも無邪気にコロコロ笑い合っているから、ウチの人には邪気も悪意も無さそうだから良いか。
また血が繋がらない社長の親類を見つけちゃった。
「それで、どちら様が先生のお嫁さんなんですか?」
へ?
「みなさんお綺麗ですけど。」
へ?へ?
「一応、この娘ですよ。」
社長に思い切り肩を抱かれて引き寄せられた。
「あらまぁ、1番若い子が口説き落としたのね。」
「早いもの順でしたから。」
「あら、そうだったの?」
「しまったぁ。私の方が理沙ちゃんより先に知り合っていたのにぃ。」
「…冗談ですよ。」
…編集者チームの目が変わったのを私は見たぞ。
早いもの順ってのは、実際マジだったからな。
私が処女と積極性を餌に釣り上げたんだ。
★ ★ ★
雨引観音。
ここも瀬戸井街道からは外れているのだけど、一応沿線?の名刹と言う事で、葛城姉妹チェックには入れていた。
何しろ先月だって、久留里城だの鴨川シーワールドだの、ひたすら自由人だったのが南さんだ。
大学及び業界の後輩たるお姉ちゃんは、2~3ヶ月前から逆らうことを諦めている。
って言うか、多少の(多少かぁ?)の脱線は全部南さんの責任に出来ると気がついたのと、実はその南さんの自由人ぶりが、お堅い出版業界のお偉いさん達に妙に評判だったりしたから。
まぁあまり脱線が過ぎると苦労するのはウチの社長''だけ''なので、そこら辺は秘書たる私がお説教しに行く必要がある。
あ、その前に私が車内にあった(社長のおやつの)源氏パイを齧っていたら
「そう言えば、お昼がまだだったね。」
って気がついてくれました。
偉い!
理沙ちゃんのお腹の具合も気にしてくれる素晴らしい旦那様ですわ。
で、パカパイキッチンなる、本当にど田舎の農家が集まる集落の中にあるパイ屋さんに連れて行ってくれました。
何だここ。
外装は平屋の農家というか、田舎の駅みたい。
「なんでこんな店知ってんの?」
「こっちには前に講演で来たんだよ。その時に地元の人に教えてもらったんだ。」
「相変わらず人脈を簡単に作る人ですね。」
「年賀状なんかのやり取りをしてるから、苗字変わったらよろしく。」
知ってますよ。
このSNS全盛時代に年賀状がマンションの郵便受けから溢れそうになっているのを、今年のお正月に見ましたもん。
DMが会社の葉書じゃなくて、普通の年賀状で来るなんか初めて見たもん。
ウチのお父さんは会社のお偉いさんだけど虚礼廃止とかでDMしか来ないからなぁ。
しかし、パイの専門店か。
初めてかも。
考えてみたら、食事としてのパイなんか食べたことな…あった。
ウチの社長野郎は小麦粉の達人だった。
結局、瑞稀に飼い慣らされているのか、あたしゃ。
………
「さてさてさてさて。理沙ちゃん。何故ここに来たかわかるよね。」
あぁ、南さんが楽しそうだ。
ここは大人に理沙ちゃんが乗ってあげよう。
「一に安産 二に子育よ、三に桜の楽法寺。あらかじめ調べてはありました。」
「あぁ南さん。先に言っておくとお金払う祈願はしないよ。」
「なんですと?」
入山料と引き換えに貰ったパンフレットを隅から隅まで読み込んだままの社長が、目線をパンフレットから外さずにすぐさまお断りした。
「先生は理沙ちゃんの安産を祈らないんですか?薄情者って言いますよ。」
「さっき筑波山神社でお祓いしてきたろ。伊弉諾・伊奘冉にお願いした後に、直ぐ観音様にお願いしたら、伊弉諾さん達が気を悪くするでしょ。」
「へ?」
あ、南さん。
ええと、この人マジだから。
相手が神様だろうと仏様だろうとそこら辺のお年寄りだろうと事務所の隣の平木さんちのタカちゃん(2歳)だろうと、礼儀と節度と常識を大切にする人だから。
単にお参りするだけならともかく、きちんと御祈祷した時は、御祭神や御本尊のはしごはしない人なんです。
あらかじめ知っていたお姉ちゃんも、少し呆れているみたい。
でもこんな人だから、血の繋がっていないお爺ちゃんお婆ちゃんが東日本に大量に出来たり、犬やウサギが側から離れない人になるんだよ。
あと、1人の女の子(私)もね。
「ふむ。多宝塔や六角堂、絵馬堂まで揃ってんのか。一応、七堂伽藍が揃っているのかな。」
「七堂伽藍?聞いた事はあるけど、なんですかそれ。」
「国や時代によって定義は変わるらしいけどね。要は僧が暮らし修行出来る建物が揃っているかどうかだよ。たしか永平寺では風呂場が、東大寺では食堂が加わっていたと思う。」
「はぁ。」
「中にはトイレまで数えている寺院もあるよ。」
「なんでもありかい?」
「まぁ。ぼんさんと言えど人間のやる事だ。自分の都合のいい様に変えるよ。」
「…そだね。」
茨城有数の名刹に来て、ガッカリしちゃったぞ。
この社長野郎。
★ ★ ★
また特室ですよ。
お父さんが会社から手配してくる箱根の富士屋も相当な高級宿だけど。
本当に私は、歳に合わないとんでもない贅沢ばかりさせてもらっている。
因みに社長と2人で出かける時は、ラブホで充分だったりする。
別にえっちぃ事ばかりしてるわけじゃ無いぜ。
ウチのちびやヒロやユキちゃんと同じで、社長のどこかに触っていれば満足なのさ。
お互い全裸同士で、素肌が触れる面積が広ければなお良し!
最近、マジでそんな触れ合いが大好きな私です。
「葛城!露天風呂付き個室よ!その割には先月のホテル三日月より安かったわ。」
「だから脱ぐ前に、荷物を片しましょう。」
隣の部屋からは、何ともはしたない成人女性の元気な声が聞こえてるけど、せめて部屋の戸くらい締めてください。
見なさいよ。
ウチの社長ったら2部屋分、きちんと仲居さんにポチ袋を差し上げているぞ。
こういうのって、普通は出版社側が気にするものじゃ無いのか?
だから社長に、
「接待してるのは僕の方。」
って言われちゃうんだぞ。
取材費として領収書を切るなら、もう少し作家を大切にしろ。
「さて、と。」
お茶を淹れて、ついでに茶菓子を山ほど運んで来た仲居さんとあれこれ世間話を終えた社長は、さっさとPCを開いて執筆を始める。
私はどうしよう。
先ずはデジカメの写真を整理してサムネ化するって作業があるんだけど、なんとなくする気が起きないなぁ。
「理沙くん。」
「なんですか?」
「今月は君も歩くかい?ちょっとね。君と2人きりで歩きたいんだ。」
「行きます!大学なんかどうでもいいです。」
「どうでもよくないよ。留年したら婚約破棄するよ。」
「ええぇぇぇぇ!」
「ええじゃないよ。」
基本的にダラダラ回です。
何もしません。(いつもの事だねとか言うなや社長)
ダラダラ。ダラダラ。
って言うか、こんな記録まで残す価値あるんですか?お姉ちゃん?
これはこれで、私達の思い出になるから日記代わりに残しておいて?
はぁ。そうですか。
筑波山登山(と言って良いんだからどうだか)と、筑波山神社での御祈祷を終えてまだ14時過ぎ。
しかも、お昼をまだ食べてないぞ。
山頂のお土産屋さんで、田楽を食べただけだぞ。
田楽。すなわち茹でた蒟蒻を味噌で和えただけの料理って言っていいのか?これしか食べてない。
うら若き(浦和牡蠣とか浦和柿とか浦和夏季とか変換が間抜けな言葉だこれ)女の子としては、お腹空くんだよ!
おじさん・おばさん共よ!
(社長はともかく女性陣には絶対言えないけど)
でもさ、社長もお姉ちゃん達も空腹を訴えないので、1番下の私も大っぴらには言えず、Georgiaのロング缶を飲んで紛らわしました。
久しぶりに見たよ、これ。
MAXさんと違って糖分が「適度」にあるし量も多いから、とりあえずお腹は落ち着いた。
やれやれ。
何せ社長は1日2日食べなくても大丈夫な人で、スケジュールは南さんに委ねっぱなしだし、その南さんも昼メシより木刀の方が重要らしく、振り回して遊んでるし。
お姉ちゃん曰く、「編集者なんか生活が不規則になりがちだから、ご飯だって抜きがちなの。滅茶苦茶な生活の中での体調管理も仕事の内よ。」とか抜かしやがるし。
その滅茶苦茶な生活の中で行っている体調管理で、どうやってその括れた腰とクーパー靭帯が元気そうな上向きピンクな先っちょおっぱいと、若さに任せて化粧一つしない私よりも肌理の整った顔は保てるのよ。くそ!
あと、私達姉妹であれこれ下調べしていた細かな事象は、とっても偉い編集長様がとっくに滅茶苦茶にしてしまったので、慌ててスマホで調べながら、今日の残りの時間は隣山の雨引観音様に行く事になりました。
と、その前に。
社長が1人、南さんが、そこに見える今日の宿と示したホテル青木屋さんにトコトコ歩いて行っちゃいました。
おい、なんか言ってから行けよ。
慌ててみんなで追っかけます。
「こんにちは。」
「あらいらっしゃい先生。まだチェックインにはお早いですよ。お掃除が終わってませんよ。」
「今、神社にお参りに行って来たんですよ。御神酒を預けて良いですか?これから雨引さんにも行ってくるので。」
「あらあら、別に雨引さんとは宗派が違うから喧嘩しませんよ。でも、ま。ついでにお荷物もお預かりしますよ。」
「お願いしますね。」
ええと。
ウチの亭主の人脈というか、何というか。
なんで筑波山の麓のホテルのフロントさんと面識あるのよ?
「ん?前に茨城県の観光協会と仕事をした事があるから。それ以来のお付き合いだよ。」
「先生がそのお仕事をされている事を私も知っていましたから。私もこのお宿を先生と当社の名前を出して予約しました。」
あらら。
南さん、ドヤ顔してますけど、
「あぁゆぅのを、大人の悪い顔って言うのよ。」
ってお姉ちゃんがこっそり教えてくれた。
うん。知ってる。
お姉ちゃんが電話している時に、よく見るもん。
お姉ちゃんの応対からして多分、電話の向こうは男性なんだろう。
フロントさんとお話ししている社長もフロントのおばちゃんも無邪気にコロコロ笑い合っているから、ウチの人には邪気も悪意も無さそうだから良いか。
また血が繋がらない社長の親類を見つけちゃった。
「それで、どちら様が先生のお嫁さんなんですか?」
へ?
「みなさんお綺麗ですけど。」
へ?へ?
「一応、この娘ですよ。」
社長に思い切り肩を抱かれて引き寄せられた。
「あらまぁ、1番若い子が口説き落としたのね。」
「早いもの順でしたから。」
「あら、そうだったの?」
「しまったぁ。私の方が理沙ちゃんより先に知り合っていたのにぃ。」
「…冗談ですよ。」
…編集者チームの目が変わったのを私は見たぞ。
早いもの順ってのは、実際マジだったからな。
私が処女と積極性を餌に釣り上げたんだ。
★ ★ ★
雨引観音。
ここも瀬戸井街道からは外れているのだけど、一応沿線?の名刹と言う事で、葛城姉妹チェックには入れていた。
何しろ先月だって、久留里城だの鴨川シーワールドだの、ひたすら自由人だったのが南さんだ。
大学及び業界の後輩たるお姉ちゃんは、2~3ヶ月前から逆らうことを諦めている。
って言うか、多少の(多少かぁ?)の脱線は全部南さんの責任に出来ると気がついたのと、実はその南さんの自由人ぶりが、お堅い出版業界のお偉いさん達に妙に評判だったりしたから。
まぁあまり脱線が過ぎると苦労するのはウチの社長''だけ''なので、そこら辺は秘書たる私がお説教しに行く必要がある。
あ、その前に私が車内にあった(社長のおやつの)源氏パイを齧っていたら
「そう言えば、お昼がまだだったね。」
って気がついてくれました。
偉い!
理沙ちゃんのお腹の具合も気にしてくれる素晴らしい旦那様ですわ。
で、パカパイキッチンなる、本当にど田舎の農家が集まる集落の中にあるパイ屋さんに連れて行ってくれました。
何だここ。
外装は平屋の農家というか、田舎の駅みたい。
「なんでこんな店知ってんの?」
「こっちには前に講演で来たんだよ。その時に地元の人に教えてもらったんだ。」
「相変わらず人脈を簡単に作る人ですね。」
「年賀状なんかのやり取りをしてるから、苗字変わったらよろしく。」
知ってますよ。
このSNS全盛時代に年賀状がマンションの郵便受けから溢れそうになっているのを、今年のお正月に見ましたもん。
DMが会社の葉書じゃなくて、普通の年賀状で来るなんか初めて見たもん。
ウチのお父さんは会社のお偉いさんだけど虚礼廃止とかでDMしか来ないからなぁ。
しかし、パイの専門店か。
初めてかも。
考えてみたら、食事としてのパイなんか食べたことな…あった。
ウチの社長野郎は小麦粉の達人だった。
結局、瑞稀に飼い慣らされているのか、あたしゃ。
………
「さてさてさてさて。理沙ちゃん。何故ここに来たかわかるよね。」
あぁ、南さんが楽しそうだ。
ここは大人に理沙ちゃんが乗ってあげよう。
「一に安産 二に子育よ、三に桜の楽法寺。あらかじめ調べてはありました。」
「あぁ南さん。先に言っておくとお金払う祈願はしないよ。」
「なんですと?」
入山料と引き換えに貰ったパンフレットを隅から隅まで読み込んだままの社長が、目線をパンフレットから外さずにすぐさまお断りした。
「先生は理沙ちゃんの安産を祈らないんですか?薄情者って言いますよ。」
「さっき筑波山神社でお祓いしてきたろ。伊弉諾・伊奘冉にお願いした後に、直ぐ観音様にお願いしたら、伊弉諾さん達が気を悪くするでしょ。」
「へ?」
あ、南さん。
ええと、この人マジだから。
相手が神様だろうと仏様だろうとそこら辺のお年寄りだろうと事務所の隣の平木さんちのタカちゃん(2歳)だろうと、礼儀と節度と常識を大切にする人だから。
単にお参りするだけならともかく、きちんと御祈祷した時は、御祭神や御本尊のはしごはしない人なんです。
あらかじめ知っていたお姉ちゃんも、少し呆れているみたい。
でもこんな人だから、血の繋がっていないお爺ちゃんお婆ちゃんが東日本に大量に出来たり、犬やウサギが側から離れない人になるんだよ。
あと、1人の女の子(私)もね。
「ふむ。多宝塔や六角堂、絵馬堂まで揃ってんのか。一応、七堂伽藍が揃っているのかな。」
「七堂伽藍?聞いた事はあるけど、なんですかそれ。」
「国や時代によって定義は変わるらしいけどね。要は僧が暮らし修行出来る建物が揃っているかどうかだよ。たしか永平寺では風呂場が、東大寺では食堂が加わっていたと思う。」
「はぁ。」
「中にはトイレまで数えている寺院もあるよ。」
「なんでもありかい?」
「まぁ。ぼんさんと言えど人間のやる事だ。自分の都合のいい様に変えるよ。」
「…そだね。」
茨城有数の名刹に来て、ガッカリしちゃったぞ。
この社長野郎。
★ ★ ★
また特室ですよ。
お父さんが会社から手配してくる箱根の富士屋も相当な高級宿だけど。
本当に私は、歳に合わないとんでもない贅沢ばかりさせてもらっている。
因みに社長と2人で出かける時は、ラブホで充分だったりする。
別にえっちぃ事ばかりしてるわけじゃ無いぜ。
ウチのちびやヒロやユキちゃんと同じで、社長のどこかに触っていれば満足なのさ。
お互い全裸同士で、素肌が触れる面積が広ければなお良し!
最近、マジでそんな触れ合いが大好きな私です。
「葛城!露天風呂付き個室よ!その割には先月のホテル三日月より安かったわ。」
「だから脱ぐ前に、荷物を片しましょう。」
隣の部屋からは、何ともはしたない成人女性の元気な声が聞こえてるけど、せめて部屋の戸くらい締めてください。
見なさいよ。
ウチの社長ったら2部屋分、きちんと仲居さんにポチ袋を差し上げているぞ。
こういうのって、普通は出版社側が気にするものじゃ無いのか?
だから社長に、
「接待してるのは僕の方。」
って言われちゃうんだぞ。
取材費として領収書を切るなら、もう少し作家を大切にしろ。
「さて、と。」
お茶を淹れて、ついでに茶菓子を山ほど運んで来た仲居さんとあれこれ世間話を終えた社長は、さっさとPCを開いて執筆を始める。
私はどうしよう。
先ずはデジカメの写真を整理してサムネ化するって作業があるんだけど、なんとなくする気が起きないなぁ。
「理沙くん。」
「なんですか?」
「今月は君も歩くかい?ちょっとね。君と2人きりで歩きたいんだ。」
「行きます!大学なんかどうでもいいです。」
「どうでもよくないよ。留年したら婚約破棄するよ。」
「ええぇぇぇぇ!」
「ええじゃないよ。」
1
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ご飯を食べて異世界に行こう
compo
ライト文芸
会社が潰れた…
僅かばかりの退職金を貰ったけど、独身寮を追い出される事になった僕は、貯金と失業手当を片手に新たな旅に出る事にしよう。
僕には生まれつき、物理的にあり得ない異能を身につけている。
異能を持って、旅する先は…。
「異世界」じゃないよ。
日本だよ。日本には変わりないよ。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ヤクザに医官はおりません
ユーリ(佐伯瑠璃)
ライト文芸
彼は私の知らない組織の人間でした
会社の飲み会の隣の席のグループが怪しい。
シャバだの、残弾なしだの、会話が物騒すぎる。刈り上げ、角刈り、丸刈り、眉毛シャキーン。
無駄にムキムキした体に、堅い言葉遣い。
反社会組織の集まりか!
ヤ◯ザに見初められたら逃げられない?
勘違いから始まる異文化交流のお話です。
※もちろんフィクションです。
小説家になろう、カクヨムに投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる