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鮮魚街道
帰っちゃって来ちゃった
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スマホ→繋がらない
LINE→既読すら付かない
メール→返答なし
あのダメ大人たち、お風呂とビールとおつまみで出来上がってるな。
湯楽の里のHPを調べてみたら、しらすおろしだの、鮪山かけだの、サーモンのカルパッチョだの、お姉ちゃんが大好きな居酒屋メニューが並んでいる。
呑兵衛の南さんだって、当然好みに大差はないだろうし。
「こりゃ駄目かもですねぇ。」
「今日の予定は済んでるし、帰ろっか?」
「さっきのラブなホテルさんは…。」
「一応、まだ僕らは仕事中だから、僕らだけでもちゃんとしようよ。」
「なんかいつも、姉がすいません。」
本当にすいません。
博物館前だと、道がある種のバイパスになっていたりバス停があったり、タクシーが捕まるスペースが取れないので、また少し歩いて桜通りまで戻ります。
そこから社長のアプリでタクシーを呼んで、事務所に帰社帰宅。
「ただいまぁ。」
おかえりと、うさぎのヒロがぴょんぴょん玄関まで出迎えてくれたので、抱っこ抱っこ。
誰ですか、うさぎは抱っこを嫌がるとか飼育書に書いた人は。
うちのヒロは、ちぃちぃ鳴きながら、私の腕の中で私の腕をぺろぺろ舐めますよ。私の顔まで立ち上がってチューしてくれますよ。
社長が床にだらしがなくもひっくり返っていると、お腹に乗ってそのまま寝ちゃいますよ。
ヒロにビタミン入りのサプリメントを上げている間に社長はお風呂を沸かしている。
今日はジャグジー稼働ですね。
うん。
これで足の疲れはイチコロですよ。
ついでに社長が冷蔵庫から取り出したのはVAAM。
これ、昔は高橋尚子がCMをしていた奴で今じゃダイエットアプリだったりするけど、肉体疲労にも効くんだとか。
「ほら、僕の父は若い頃長距離ランナーだっただろ。父の経験上、今じゃ売っていない缶入りVAAMを薬局やスポーツ店で買ってレース前に飲むんだよ。すると、体力を最後の一絞りまで絞り出せたんだって。逆に言えば普段の体力が有り余る父だと、眠れなくなるほど回復したんだってさ。」
「それ、ヤバくないですか?」
「そのせいか知らないけど、商品ラインナップから消えたね。大会側は全く問題なしとされていたけど、ドーピング薬物になるなんて言う人が、今の商品でも言う人がいるよ。プラシーボだとしても、効き目を感じる人はいると言う事だよ。」
「へぇ。」
………
先に私がお風呂を頂いた。
ふひぃ。
オレンジのバブを、私が溶かすことを社長が許してくれましたよ。
ジャグジーとのダブル泡泡効果で、それはもうあなた。
天国ですよ天国。
うちの人(社長)も一緒に入れば良いのに。
妻として、サービスしちゃうわよ。
なんて、馬鹿な事を考えながら、今日1日を振り返るのですよ。
お風呂から出たら仕事があるから。
実際、その間に社長は写真のサムネイル化を終わらせて、南さんの方の原稿をまとめ終えていたもん。
「考えてみたら、''脇''をやってない時の''ウチ''ですね、これ。」
「文筆業という割には慌ただしいよね、うちは。」
「今晩どうすんのでしょうね。」
「予定の宿泊場所は東松戸のリラ東松戸、ツインルーム6万円。葛城くんはよくぞまぁこんなホテルを見つけたもんだよ。」
「うふふ、このままだと泊まれないかもしれませんけどね。」
実際の所、駄目大人~ズは7時過ぎに慌ててタクシーを飛ばして来ましたよ。
私達は今日書くべき原稿を既に終わらせて、冷蔵庫の中の有り合わせで作った、丸美屋の黒いパッケージの麻婆豆腐と、青梗菜の豆板醤炒めと中華スープの中華料理風の晩御飯も済ませてました。
このまま来なければ、たとえお疲れだろうと、社長にたっぷり可愛がって頂く気満々でしたよ。ええ、ええ。
既に正体をなくしているお姉ちゃんで、ここまで送ってくれたタクシーの運転手さんに迷惑をかけるわけにいかないので、我が社のモコを出動させて、その1泊6万円のホテルに行きました。
元々、成田羽田都心に用がある外国人向けホテルだそうですけど。
ホテルは各々の部屋にキッチンが付いているアパートメントタイプというそうだけど、全員、お腹ぱんぱんだし、まさかの素泊まり状態です。
本当に経費を無駄遣いする為の宿泊ですね。
けしからん。
編集者部屋はどうなっていたのか知らないけど、既に原稿も夕食も入浴も済ませていた私と社長はチェックイン早々、エッチな事もしないで寝ちゃいました。
この企画ではかなりの高級宿に宿泊させてもらってますけど、ここまで何の思い入れもない一夜というのは初めてです。
というか、ここに泊まるくらいなら、事務所で社長と寝ていたかったなぁ。
★ ★ ★
翌朝。
社長は朝食を取らないし(あれば食べるなければ食べない人)、食材をそもそも何も買っていないので、部屋に立派なキッチンがあっても、「リストランテ理沙ちゃん」の出番は有りません。
私もまだお腹空いて無いし、別にいいかな。
夕べの、麻婆豆腐の素を使った麻婆フォンデュが楽しかったんだもの。
いやね、少し萎れて来た野菜を角切りにして素揚げにしたものを、麻婆豆腐の素に浸けるってアイデア(?)料理を提案したら、これが結構イケたんだよ。
社長が野菜を素揚げにするとか、女の私がまるで思い付かなかった事を、隣で始めちゃうんだもん。
細くなり始めた茄子なんか、タッパーに出汁とカラシを入れて一夜漬けにするくらいしか考えが回らなかったもん。
一緒にキッチンに立つ妻(予定)としては、料理で旦那様(確定)に負けるわけにはいかないじゃん。
…勝てそうにないけど。
あれれ駄目大人~ズ、特にお姉ちゃんは死んだままだ。
寝癖も凄いぞ。
南さんは一応意識はあって、領収書をきっちり貰っているけど、足元が覚束ないし。
何より服装が2人とも一緒だもん。
先月の小湊の温泉宿では着替えてたのにね。
因みに私達はお風呂に入ったくらいだから、下着から何から全部着替えて事務所から出て来ましたよ。
汚れ物は全部全自動乾燥洗濯機に入れておいたので、後で畳んでおかないと。
たたみジワが出来る服は無かったけど。
主婦業主婦業と。
さて。今日歩く距離は昨日より少ないし、昨日より見どころもない。
多分1時間で歩き終わっちゃう程度な上、道は今でも地図上で容易に辿れる、住宅街の中を一直線で進む上、土地の高低差も殆ど無い。
社長曰く「つまらない」。
馬鹿姉貴はともかく、南さんまで頭痛を訴えている状況だしさぁ。
どうしよう。
★ ★ ★
南さんもお姉ちゃんも女性だからなぁ、あれでも。
私と社長なら、それこそラブホで寝てればいいし、社長だけならネットカフェとか、カプセルホテルとか、いくらでも一休み出来る場所に事欠かないんだけど。
で、社長と考えた末、2人を事務所に捨てて行く事にした。
応接室にはソファがあるし、空き部屋は私の個室みたいになっているから、枕と毛布でも置いときゃ勝手に寝るだろう。
「ちぃ?」
「ごめんねヒロ。駄目な人を寝かせておくから、お留守番お願いね。」
「ち!」
うさぎに面倒を見られる成人女性2人というのもアレ過ぎるけど。
さて、私達は私達だ。
仕事だ仕事。
歩こう。
あらかじめ決めてあった予定では、松戸市八柱のコインパーキングにモコを停めて、現状辿れる松戸市五香近辺まで歩いたら、新京成に乗って八柱まで帰ってくる。
お爺ちゃんのウォーキングルートみたいだぞ。
でも、今日も社長を独り占めするわけて、それはそれで楽しい。
新京成の八柱踏切、昨日見た八柱石油跡が今日のスタート地点。
あ、一つ訂正。
事務所に帰れたので、鮮魚街道を古地図と現代地図に重ね合わせる作業を社長がやり直した結果、昨日否定した右に曲がる寂しい別れ道が鮮魚街道な事が判明した。
いや、現代地図だと県道51号がそのまま鮮魚街道に当てられているんだよ。
でも明治時代の古地図では、そもそも51号がなかった。
古道は今で言う八柱の飲み屋街を下る道だけが書かれて、歩いてみたら現代であ道がなくなっていた。
「うん。ここは浅い谷になっていて両側の台地の村境になっているから、暗渠になっているであろう川の存在が推測出来る。今では区画整理されてわからないけど、川なり地形なりで直進出来なかったんだろう。或いは地主や江戸時代からの領土権が絡んでいたかもしれない。」
実際の所、ローソンやらセブンイレブンやら我が社御用達ABCマートやらと、4車線ある広い道と、住宅街が東西に四角く区切られた街角なわけで、そりゃ昔の事なんかわからんなぁ。
「そして、この県道の一本奥が鮮魚街道になると。」
「ねぇ社長。ひょっとして私達、早く出すぎましたか?まだ店がどこも開いてません。」
「ん?何か買い物でもあった?」
「この辺地図見ても紳士服店とか釣具屋とかで、コンビニ1つ見当たらないです。ただほら、今日これからの組み立てです。このままだと、11時前にゴールです。お食事出来るとことか無さそうですよ。」
「そうだねぇ。」
日曜の朝だから、旧街道の裏通りなんか人も車も走ってない。
人が車を洗車している姿はあちこちで見かけるけど、私達は相当自由に(迷惑)歩いている。
いつでも右側通行の社長にしては、珍しく私の浮かれっぷりに乗ってくれている。
まぁ昨日からずっと2人きりだったのに、何しろ健全な2人で指1つ触れて無いから、社長が気を使ってくれているのかもしれない。
「ふむ。ラッシャー板前が板前をしていた割烹店があるから行ってみようか。松戸では結構な老舗だから、美味しいかもしれない。」
「さんせぇい!」
右手をたかだかと上げて賛成!
って言うか、社長の提案を断る女じゃないけど、私。
あと、たけし軍団無駄知識も披露してくれそうだし。
LINE→既読すら付かない
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あのダメ大人たち、お風呂とビールとおつまみで出来上がってるな。
湯楽の里のHPを調べてみたら、しらすおろしだの、鮪山かけだの、サーモンのカルパッチョだの、お姉ちゃんが大好きな居酒屋メニューが並んでいる。
呑兵衛の南さんだって、当然好みに大差はないだろうし。
「こりゃ駄目かもですねぇ。」
「今日の予定は済んでるし、帰ろっか?」
「さっきのラブなホテルさんは…。」
「一応、まだ僕らは仕事中だから、僕らだけでもちゃんとしようよ。」
「なんかいつも、姉がすいません。」
本当にすいません。
博物館前だと、道がある種のバイパスになっていたりバス停があったり、タクシーが捕まるスペースが取れないので、また少し歩いて桜通りまで戻ります。
そこから社長のアプリでタクシーを呼んで、事務所に帰社帰宅。
「ただいまぁ。」
おかえりと、うさぎのヒロがぴょんぴょん玄関まで出迎えてくれたので、抱っこ抱っこ。
誰ですか、うさぎは抱っこを嫌がるとか飼育書に書いた人は。
うちのヒロは、ちぃちぃ鳴きながら、私の腕の中で私の腕をぺろぺろ舐めますよ。私の顔まで立ち上がってチューしてくれますよ。
社長が床にだらしがなくもひっくり返っていると、お腹に乗ってそのまま寝ちゃいますよ。
ヒロにビタミン入りのサプリメントを上げている間に社長はお風呂を沸かしている。
今日はジャグジー稼働ですね。
うん。
これで足の疲れはイチコロですよ。
ついでに社長が冷蔵庫から取り出したのはVAAM。
これ、昔は高橋尚子がCMをしていた奴で今じゃダイエットアプリだったりするけど、肉体疲労にも効くんだとか。
「ほら、僕の父は若い頃長距離ランナーだっただろ。父の経験上、今じゃ売っていない缶入りVAAMを薬局やスポーツ店で買ってレース前に飲むんだよ。すると、体力を最後の一絞りまで絞り出せたんだって。逆に言えば普段の体力が有り余る父だと、眠れなくなるほど回復したんだってさ。」
「それ、ヤバくないですか?」
「そのせいか知らないけど、商品ラインナップから消えたね。大会側は全く問題なしとされていたけど、ドーピング薬物になるなんて言う人が、今の商品でも言う人がいるよ。プラシーボだとしても、効き目を感じる人はいると言う事だよ。」
「へぇ。」
………
先に私がお風呂を頂いた。
ふひぃ。
オレンジのバブを、私が溶かすことを社長が許してくれましたよ。
ジャグジーとのダブル泡泡効果で、それはもうあなた。
天国ですよ天国。
うちの人(社長)も一緒に入れば良いのに。
妻として、サービスしちゃうわよ。
なんて、馬鹿な事を考えながら、今日1日を振り返るのですよ。
お風呂から出たら仕事があるから。
実際、その間に社長は写真のサムネイル化を終わらせて、南さんの方の原稿をまとめ終えていたもん。
「考えてみたら、''脇''をやってない時の''ウチ''ですね、これ。」
「文筆業という割には慌ただしいよね、うちは。」
「今晩どうすんのでしょうね。」
「予定の宿泊場所は東松戸のリラ東松戸、ツインルーム6万円。葛城くんはよくぞまぁこんなホテルを見つけたもんだよ。」
「うふふ、このままだと泊まれないかもしれませんけどね。」
実際の所、駄目大人~ズは7時過ぎに慌ててタクシーを飛ばして来ましたよ。
私達は今日書くべき原稿を既に終わらせて、冷蔵庫の中の有り合わせで作った、丸美屋の黒いパッケージの麻婆豆腐と、青梗菜の豆板醤炒めと中華スープの中華料理風の晩御飯も済ませてました。
このまま来なければ、たとえお疲れだろうと、社長にたっぷり可愛がって頂く気満々でしたよ。ええ、ええ。
既に正体をなくしているお姉ちゃんで、ここまで送ってくれたタクシーの運転手さんに迷惑をかけるわけにいかないので、我が社のモコを出動させて、その1泊6万円のホテルに行きました。
元々、成田羽田都心に用がある外国人向けホテルだそうですけど。
ホテルは各々の部屋にキッチンが付いているアパートメントタイプというそうだけど、全員、お腹ぱんぱんだし、まさかの素泊まり状態です。
本当に経費を無駄遣いする為の宿泊ですね。
けしからん。
編集者部屋はどうなっていたのか知らないけど、既に原稿も夕食も入浴も済ませていた私と社長はチェックイン早々、エッチな事もしないで寝ちゃいました。
この企画ではかなりの高級宿に宿泊させてもらってますけど、ここまで何の思い入れもない一夜というのは初めてです。
というか、ここに泊まるくらいなら、事務所で社長と寝ていたかったなぁ。
★ ★ ★
翌朝。
社長は朝食を取らないし(あれば食べるなければ食べない人)、食材をそもそも何も買っていないので、部屋に立派なキッチンがあっても、「リストランテ理沙ちゃん」の出番は有りません。
私もまだお腹空いて無いし、別にいいかな。
夕べの、麻婆豆腐の素を使った麻婆フォンデュが楽しかったんだもの。
いやね、少し萎れて来た野菜を角切りにして素揚げにしたものを、麻婆豆腐の素に浸けるってアイデア(?)料理を提案したら、これが結構イケたんだよ。
社長が野菜を素揚げにするとか、女の私がまるで思い付かなかった事を、隣で始めちゃうんだもん。
細くなり始めた茄子なんか、タッパーに出汁とカラシを入れて一夜漬けにするくらいしか考えが回らなかったもん。
一緒にキッチンに立つ妻(予定)としては、料理で旦那様(確定)に負けるわけにはいかないじゃん。
…勝てそうにないけど。
あれれ駄目大人~ズ、特にお姉ちゃんは死んだままだ。
寝癖も凄いぞ。
南さんは一応意識はあって、領収書をきっちり貰っているけど、足元が覚束ないし。
何より服装が2人とも一緒だもん。
先月の小湊の温泉宿では着替えてたのにね。
因みに私達はお風呂に入ったくらいだから、下着から何から全部着替えて事務所から出て来ましたよ。
汚れ物は全部全自動乾燥洗濯機に入れておいたので、後で畳んでおかないと。
たたみジワが出来る服は無かったけど。
主婦業主婦業と。
さて。今日歩く距離は昨日より少ないし、昨日より見どころもない。
多分1時間で歩き終わっちゃう程度な上、道は今でも地図上で容易に辿れる、住宅街の中を一直線で進む上、土地の高低差も殆ど無い。
社長曰く「つまらない」。
馬鹿姉貴はともかく、南さんまで頭痛を訴えている状況だしさぁ。
どうしよう。
★ ★ ★
南さんもお姉ちゃんも女性だからなぁ、あれでも。
私と社長なら、それこそラブホで寝てればいいし、社長だけならネットカフェとか、カプセルホテルとか、いくらでも一休み出来る場所に事欠かないんだけど。
で、社長と考えた末、2人を事務所に捨てて行く事にした。
応接室にはソファがあるし、空き部屋は私の個室みたいになっているから、枕と毛布でも置いときゃ勝手に寝るだろう。
「ちぃ?」
「ごめんねヒロ。駄目な人を寝かせておくから、お留守番お願いね。」
「ち!」
うさぎに面倒を見られる成人女性2人というのもアレ過ぎるけど。
さて、私達は私達だ。
仕事だ仕事。
歩こう。
あらかじめ決めてあった予定では、松戸市八柱のコインパーキングにモコを停めて、現状辿れる松戸市五香近辺まで歩いたら、新京成に乗って八柱まで帰ってくる。
お爺ちゃんのウォーキングルートみたいだぞ。
でも、今日も社長を独り占めするわけて、それはそれで楽しい。
新京成の八柱踏切、昨日見た八柱石油跡が今日のスタート地点。
あ、一つ訂正。
事務所に帰れたので、鮮魚街道を古地図と現代地図に重ね合わせる作業を社長がやり直した結果、昨日否定した右に曲がる寂しい別れ道が鮮魚街道な事が判明した。
いや、現代地図だと県道51号がそのまま鮮魚街道に当てられているんだよ。
でも明治時代の古地図では、そもそも51号がなかった。
古道は今で言う八柱の飲み屋街を下る道だけが書かれて、歩いてみたら現代であ道がなくなっていた。
「うん。ここは浅い谷になっていて両側の台地の村境になっているから、暗渠になっているであろう川の存在が推測出来る。今では区画整理されてわからないけど、川なり地形なりで直進出来なかったんだろう。或いは地主や江戸時代からの領土権が絡んでいたかもしれない。」
実際の所、ローソンやらセブンイレブンやら我が社御用達ABCマートやらと、4車線ある広い道と、住宅街が東西に四角く区切られた街角なわけで、そりゃ昔の事なんかわからんなぁ。
「そして、この県道の一本奥が鮮魚街道になると。」
「ねぇ社長。ひょっとして私達、早く出すぎましたか?まだ店がどこも開いてません。」
「ん?何か買い物でもあった?」
「この辺地図見ても紳士服店とか釣具屋とかで、コンビニ1つ見当たらないです。ただほら、今日これからの組み立てです。このままだと、11時前にゴールです。お食事出来るとことか無さそうですよ。」
「そうだねぇ。」
日曜の朝だから、旧街道の裏通りなんか人も車も走ってない。
人が車を洗車している姿はあちこちで見かけるけど、私達は相当自由に(迷惑)歩いている。
いつでも右側通行の社長にしては、珍しく私の浮かれっぷりに乗ってくれている。
まぁ昨日からずっと2人きりだったのに、何しろ健全な2人で指1つ触れて無いから、社長が気を使ってくれているのかもしれない。
「ふむ。ラッシャー板前が板前をしていた割烹店があるから行ってみようか。松戸では結構な老舗だから、美味しいかもしれない。」
「さんせぇい!」
右手をたかだかと上げて賛成!
って言うか、社長の提案を断る女じゃないけど、私。
あと、たけし軍団無駄知識も披露してくれそうだし。
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