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プロローグ
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「自分が何をしたかわかってる?」
低い声音に言われ、スーッと背中が冷たくなった。
部屋は、媚香の甘い香りに包まれているのに、私達の間には、冷ややかな空気が流れている。殿下から注がれる冷たい視線から逃れたいのに、ベッドの上で手首を掴まれている状態では視線から逃れる術がない。
この状況は、まずい。なんとか弁明を考えなきゃと頭をフル回転しても、最悪の結末しか思い浮かばない。
「ねぇ、聞いてる?」
声音に少し苛立ちが入り混じり、端正な顔は不愉快だと言いたげに歪められている。
その感情を表現するように私の手首を抑えつけているラヴェル殿下の手に更に力が入る。
「ぃっ!」
痛みに思わず声を上げる私を、変わらずに見下ろし、
「僕の気が変わらないうちに、早く何か言い訳してみなよ」と冷たく言い放つ。
空いてる手で夜伽用のローブの間に手を差し込み、お腹に爪を立て、そのまま躊躇なく力を入れて手を這わす。
「い゛っ」
さっきよりも強い痛みに思わず声が出て、引っ掻かれたお腹もジンジンと痛みと熱を持つ。
このままじゃ本当に危ないと本能が告げ、恐怖で耳鳴りが警告音の様に鳴り響くのに、私は自分を見下ろす紅い目から目を逸らせず、走馬灯の様に今日までの出来事が頭を巡っていた。
低い声音に言われ、スーッと背中が冷たくなった。
部屋は、媚香の甘い香りに包まれているのに、私達の間には、冷ややかな空気が流れている。殿下から注がれる冷たい視線から逃れたいのに、ベッドの上で手首を掴まれている状態では視線から逃れる術がない。
この状況は、まずい。なんとか弁明を考えなきゃと頭をフル回転しても、最悪の結末しか思い浮かばない。
「ねぇ、聞いてる?」
声音に少し苛立ちが入り混じり、端正な顔は不愉快だと言いたげに歪められている。
その感情を表現するように私の手首を抑えつけているラヴェル殿下の手に更に力が入る。
「ぃっ!」
痛みに思わず声を上げる私を、変わらずに見下ろし、
「僕の気が変わらないうちに、早く何か言い訳してみなよ」と冷たく言い放つ。
空いてる手で夜伽用のローブの間に手を差し込み、お腹に爪を立て、そのまま躊躇なく力を入れて手を這わす。
「い゛っ」
さっきよりも強い痛みに思わず声が出て、引っ掻かれたお腹もジンジンと痛みと熱を持つ。
このままじゃ本当に危ないと本能が告げ、恐怖で耳鳴りが警告音の様に鳴り響くのに、私は自分を見下ろす紅い目から目を逸らせず、走馬灯の様に今日までの出来事が頭を巡っていた。
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