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はじまりは、あの日
20.初めてのデート
「キレイっすね。」
夜の海の向こう側に見える夜景に思わず声がでる。
「喜んでもらえて良かった。」と俺の向かいに座る川奈さんが柔らかく微笑む。
「ここに連れてこられた時は驚きましたけど、素敵な場所ですね。」
「着いた時、田浦君の目が点になってたもんね。」
おかしそうに言ってテーブルに置かれたコーヒーに口をつける。
コーヒーを飲む姿でさえ絵になるなんて、イケメンって凄いと一瞬思考が逸れそうになったが、面白がっている川奈さんをジロリと睨む。
「そりゃ、市のはずれの人気のない高台に夜に連れてこられたら、誰だってそうなりますよ。俺、ここに置き去りにされるのかなって焦りましたよ。」 とむくれて反論してみる。
先日、川奈のお家に遊びに行った時に、
『どこかにご飯食べにいきませんか?』とデートのお誘いをした。
日時だけ決め、川奈さんの家で待ち合わせと約束したのだ。
そうしたら車に乗せられ、この高台の喫茶店に連れて来られた訳だ。
「まぁまぁ、ここ景色だけじゃなくて、ご飯も美味しいから、それで許して。」
と軽くいなされる
「でも、こんなに景色綺麗なのに、俺たち以外居ないなんて、なんか勿体ない気がしちゃいます。」
週末の夜で、他にカップルが居ても良さそうなのに、客は俺たちだけ。
それを不思議に思い言うと
「あぁ、今日貸切にしたからね。」
と川奈さんがとんでもないことをサラリと言う。
「え⁈貸切⁈なんで?」
思わず大きな声が出てウエイターが驚いてこっちの様子をみる。
「なんでって、折角の機会だから誰にも邪魔されずにゆっくり楽しみたいし。」
とさも当然の様に言われ、思わずニヤけそうになる口元を咄嗟に隠した。
「なんか、面と向かって言われると照れますね。あの、こうして夜景みてると、T市って都会ですよね。」
ニヤけているのを悟られない様に向こう岸に見えるT市に話題を変える。
「一応、中核市だから、ここら辺だと大きい方かも。」
と川奈さんが答えるのを聞いて心が漣立つ。
別の世界の人、いつだか川奈さんに抱いた印象はあながち間違いではない気がする。
イケメンで、車の運転も上手くて、デートでお店を貸し切るスマートさがあって、しかも中核市の若きリーダー、周囲が放っておくはずがない。
最近、川奈さんの可愛い面ばかり見てて忘れてたけど、この人すごいハイスペックなんだよな。
それに、"りょうへい"の件もあるし。
向こう岸のT市の夜景が真っ暗な夜の海に反射して波の動きに合わせて揺蕩っているのと同じ様に、俺の心にも焦燥感が波の様に広がっていく。
「田浦君、嫌いな食べ物ある?」
暗い気持ちに落ちかけていた俺に川奈さんがヒョイとメニューを広げてみせる。
「ここのオススメは、オムライスなんだって。ソースが選べるみたい。」
と言葉を続ける。
「嫌いなものはないです。ソース選べるんですね。何がいいですかね?川奈さんは、どれが好みですか?」
「うーん。やっぱり、王道のデミグラスソースかケチャップで悩むね。」
「確かに、その二種類は間違いなく美味いですよね。うーん。このホワイトソースも美味しそうだけど、夜に食べるには重いかなぁ。」
「田浦君、まだ20代で若いから大丈夫だよ。」
「いや、もう28歳のアラサーなんで、若くないですよ。うーん。この魚介のトマトソースにします。川奈さんは?」
「そんなことないと思うけどね。俺はデミグラスソースにするかな。」と言い、ウエイターに二人分のオーダーを伝える。
こういう所も、スマートさを感じる。
「川奈さんと家以外で会うの、なんか新鮮です。外で会うと、川奈さんってハイスペックな大人の男性って感じます。」
「外でってことは、家で会うと違うの?」
とまた可笑しそうに笑う。
「まだあまり知らない頃は癖が強いなって思ってましたよ。」と正直に言う。
「じゃあ、今は違うの?」
といつもの揶揄いスイッチが入る。
ただ、俺だっていつもやられっぱなしではない。
「今は、もちろん違いますよ。すんごく、可愛い人だなと思ってます。」
「…へぇ。それは、どーも。」
俺が翻弄されなかったのが意外だったのか、反応がそっけない。
そうこうしているうちにオーダーしたものが届く。
互いの好きなものや、仕事について話しているうちに、あっという間に閉店時間になった。楽しい二人の時間は、この人を独り占めしたいという厄介な感情を助長させた。
「着いたよ。この後、どうする?」
と川奈さんが車の鍵をコンソールから取り、聞いてくる。
それには答えず、
「川奈さん、俺だけにしてください」
川奈さんの腕を掴み言う。
「え?何が?」
唐突な俺の発言に川奈さんが聞き返す。
「俺…川奈さんが俺じゃない他の誰かに抱かれてるって考えるだけで、嫉妬で狂いそうになるんです。」
我ながらカッコ悪く女々しいと思う。
でも、
俺以外に触らせないで。
俺だけを見て。
と幼稚な独占欲を抑えきれない。
「…初めて以降、一度も抱いてくれないのに?」川奈さんが冷たく言い放った。
夜の海の向こう側に見える夜景に思わず声がでる。
「喜んでもらえて良かった。」と俺の向かいに座る川奈さんが柔らかく微笑む。
「ここに連れてこられた時は驚きましたけど、素敵な場所ですね。」
「着いた時、田浦君の目が点になってたもんね。」
おかしそうに言ってテーブルに置かれたコーヒーに口をつける。
コーヒーを飲む姿でさえ絵になるなんて、イケメンって凄いと一瞬思考が逸れそうになったが、面白がっている川奈さんをジロリと睨む。
「そりゃ、市のはずれの人気のない高台に夜に連れてこられたら、誰だってそうなりますよ。俺、ここに置き去りにされるのかなって焦りましたよ。」 とむくれて反論してみる。
先日、川奈のお家に遊びに行った時に、
『どこかにご飯食べにいきませんか?』とデートのお誘いをした。
日時だけ決め、川奈さんの家で待ち合わせと約束したのだ。
そうしたら車に乗せられ、この高台の喫茶店に連れて来られた訳だ。
「まぁまぁ、ここ景色だけじゃなくて、ご飯も美味しいから、それで許して。」
と軽くいなされる
「でも、こんなに景色綺麗なのに、俺たち以外居ないなんて、なんか勿体ない気がしちゃいます。」
週末の夜で、他にカップルが居ても良さそうなのに、客は俺たちだけ。
それを不思議に思い言うと
「あぁ、今日貸切にしたからね。」
と川奈さんがとんでもないことをサラリと言う。
「え⁈貸切⁈なんで?」
思わず大きな声が出てウエイターが驚いてこっちの様子をみる。
「なんでって、折角の機会だから誰にも邪魔されずにゆっくり楽しみたいし。」
とさも当然の様に言われ、思わずニヤけそうになる口元を咄嗟に隠した。
「なんか、面と向かって言われると照れますね。あの、こうして夜景みてると、T市って都会ですよね。」
ニヤけているのを悟られない様に向こう岸に見えるT市に話題を変える。
「一応、中核市だから、ここら辺だと大きい方かも。」
と川奈さんが答えるのを聞いて心が漣立つ。
別の世界の人、いつだか川奈さんに抱いた印象はあながち間違いではない気がする。
イケメンで、車の運転も上手くて、デートでお店を貸し切るスマートさがあって、しかも中核市の若きリーダー、周囲が放っておくはずがない。
最近、川奈さんの可愛い面ばかり見てて忘れてたけど、この人すごいハイスペックなんだよな。
それに、"りょうへい"の件もあるし。
向こう岸のT市の夜景が真っ暗な夜の海に反射して波の動きに合わせて揺蕩っているのと同じ様に、俺の心にも焦燥感が波の様に広がっていく。
「田浦君、嫌いな食べ物ある?」
暗い気持ちに落ちかけていた俺に川奈さんがヒョイとメニューを広げてみせる。
「ここのオススメは、オムライスなんだって。ソースが選べるみたい。」
と言葉を続ける。
「嫌いなものはないです。ソース選べるんですね。何がいいですかね?川奈さんは、どれが好みですか?」
「うーん。やっぱり、王道のデミグラスソースかケチャップで悩むね。」
「確かに、その二種類は間違いなく美味いですよね。うーん。このホワイトソースも美味しそうだけど、夜に食べるには重いかなぁ。」
「田浦君、まだ20代で若いから大丈夫だよ。」
「いや、もう28歳のアラサーなんで、若くないですよ。うーん。この魚介のトマトソースにします。川奈さんは?」
「そんなことないと思うけどね。俺はデミグラスソースにするかな。」と言い、ウエイターに二人分のオーダーを伝える。
こういう所も、スマートさを感じる。
「川奈さんと家以外で会うの、なんか新鮮です。外で会うと、川奈さんってハイスペックな大人の男性って感じます。」
「外でってことは、家で会うと違うの?」
とまた可笑しそうに笑う。
「まだあまり知らない頃は癖が強いなって思ってましたよ。」と正直に言う。
「じゃあ、今は違うの?」
といつもの揶揄いスイッチが入る。
ただ、俺だっていつもやられっぱなしではない。
「今は、もちろん違いますよ。すんごく、可愛い人だなと思ってます。」
「…へぇ。それは、どーも。」
俺が翻弄されなかったのが意外だったのか、反応がそっけない。
そうこうしているうちにオーダーしたものが届く。
互いの好きなものや、仕事について話しているうちに、あっという間に閉店時間になった。楽しい二人の時間は、この人を独り占めしたいという厄介な感情を助長させた。
「着いたよ。この後、どうする?」
と川奈さんが車の鍵をコンソールから取り、聞いてくる。
それには答えず、
「川奈さん、俺だけにしてください」
川奈さんの腕を掴み言う。
「え?何が?」
唐突な俺の発言に川奈さんが聞き返す。
「俺…川奈さんが俺じゃない他の誰かに抱かれてるって考えるだけで、嫉妬で狂いそうになるんです。」
我ながらカッコ悪く女々しいと思う。
でも、
俺以外に触らせないで。
俺だけを見て。
と幼稚な独占欲を抑えきれない。
「…初めて以降、一度も抱いてくれないのに?」川奈さんが冷たく言い放った。
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