スパダリ様は、抱き潰されたい

きど

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はじまりは、あの日

49.俺だけを見て

「うん。なに?」

上目遣いの真斗さんは可愛いけど、改まって言われるのは決まって悪い知らせだ。この状況での悪い知らせって何だ…と頭をフル回転し精神的な衝撃に備える。

「ここのマンションから引っ越すことにしたんだ。新しい部屋はT市の西側だから、ここよりW市に近くなるよ。それでね、引越しの準備とかあるから少しの間会えなくなるけど、心配しないで!」

真斗さんが、はにかみながら言った内容に肩の力が抜ける。ホッと安堵し悪い知らせじゃなくて良かったと、心の底から思った。

「そうなんだ。引越しの準備なら手伝うよ?真斗さん忙しいし、一人だと大変でしょ?」

「そんな悪いよ。一臣君だって忙しいのに、わざわざここまで通ってもらうなんて」

「いや、真斗さんが嫌じゃないなら手伝いに来させて欲しいな。やっと恋人になれたのにしばらく会えないなんて寂しいし」

そっと真斗を抱き寄せて囁くと、真斗さんは照れた様子で笑う。耳まで赤くなって可愛い。

「そういうことなら、ぜひお願いします」

そう言って俺の唇にキスを落とす。
ああ、俺の恋人が可愛すぎる。と俺は心の底から思った。

* * *

「真斗さん、こっちは箱詰め終わったから掃除機かけるよ」

リビングで段ボールにガムテープを貼り、寝室で箱詰めをしている真斗さんに声をかける。

「あっ!うんっ!お願い」

俺がひょこりと寝室を覗くと、真斗さんが手にしてた段ボールを焦って閉じた気がする。心なしか声がうわずってるし。

「いま何か隠さなかった?」

「え?そんなことないよ!一臣くんの気のせいだよ!」

怪訝に思って聞けば、真っ向から否定してくるから余計に怪しさが増す。真斗さんらしくない。いつもならこんな時、『なに?見たいの?一臣くんてば、エッチ』なんておちょくってきそうなのに。
俺は大股で真斗さんの側に寄ると、手元の箱を素早く奪う。

「あ!一臣くんダメ!」

焦って制止する真斗さんの声を無視して箱を開く。その中身に俺はギョッとした。
目に飛び込んできたのは、懐かしのバイブ達と、初めましての大人の玩具が一つ。
それを箱から出すと、真斗さんは恥ずかしそうに目を手で覆った。

「これって、ディル」

「そうだよ!もうやだ何で見るのさ。恥ずかしい」

皆まで言う前に真斗さんは不貞腐れながら答える。
恥ずかしいという真斗さんの気持ちは分からんでもない。でも、一つだけ解せない点がある。

「真斗さん。なんでこれ引越し用の箱に詰めてたの?引越し先に持っていくつもりだった?」

「いや、それは。お互いに忙しいとさ、会えない期間があるし。一臣君だって一人でヌいたりすることあるでしょ?」

「そうだね。じゃあ、バイブは引越し先に必要だね。でもディルドとはここでお別れしようね」

確かに真斗さんは中を刺激しなきゃイけないのは知っている。だからこれは俺なりの最大の譲歩だ。だってバイブは許せても男性器を模したディルドを使われるのは、何と言うか、こう、寝取られた気分になるから複雑なのだ。

「え?なんで?」

そんな俺のくだらない嫉妬心に気づいていないのか、真斗さんはキョトンとした顔をする。

「なんでも。はい!この話はこれで終わり!急いで作業しないと、明日の引越し業者がくる時間に間に合わなくなるよ!」

ディルドは俺のジャージのポケットに入れ、真斗さんに段ボールを返す。ディルドがポケットからはみ出てるのがなんとも間抜けな絵面だが、そんなことは気にせず真斗さんに引越し作業をするように発破をかける。

「……はぁい」

不服そうな表情で真斗さんが返事をして、手を動かす。
その様子が俺の琴線に触れたが、表情には出さないようにして寝室から出る。引越し作業が全部終わってからのお楽しみだ。

* * *

「全部終わったね」

荷物の箱詰めを全て終え一息つく頃には、あたりは暗くなっていた。午前中から作業していたから、ほぼ丸一日かかったことになる。

「真斗さんの部屋は荷物少なかったから助かった」

「事前にちょこちょこ荷造りしてたけど、引越しとなると要る要らないの仕分けもあるから意外に時間かかったね」

出前取っておくから、ゆっくりお風呂に入っておいでと真斗さんにタオルを渡される。
いつもの俺なら折角だし一緒に入ろうと真斗さんをお風呂に誘う所だが、今日の俺はのために一人で風呂に入ることにした。食後が楽しみだなと胸がルンルン踊った

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