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[3]素敵な先輩と、やっぱりやなやつ
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「はあ、やっと追いついた! もう、ルカはいつもスタスタ先に行っちゃうんだから!」
ゼエゼエ、と肩で息をしているこの人物は……たぶん同級生。でも名前が思い出せない。
大きくてがっしりとした体格で、髪は真っ黒でたき火のようにツンツンと跳ね上がってる。
そして一番目立っているのは、つぶらな瞳の上に生えてる凛々しく太い眉毛だ。
あ、そうだ。この人は今朝『ダイヤモンドスネークの牙はどうして三回しか生え替わらないのか』ってスピーチをしてた人だ。
面白い内容だったから覚えてる。えーと……そんな彼の名前は……。
シモン・デイビスくんだ!
「シモン、学生証は持ってきたのか? あれがないと図書館に入れないぞ。」
「え? うわっ、しまった。寮の部屋に忘れてきた!」
そう言って頭を抱えているシモンくん。私の記憶は合っていたみたい。
「あーあどうしよう。今から戻ってたら図書館が閉まっちゃうよな……。」
「はあ……仕方ないな。じゃあ代わりに借りてきてやるから本のタイトル教えろ。」
「うう~ルカ~~ありがとう! 心の友よ!」
目の前で繰り広げられる二人のやりとり。とても仲が良さそうだ。
って、図書館に行くの?
今から調べ物をしたり、勉強するってこと?
……夜遊びじゃないの?
私は驚いて言葉を失った。するとそんな私の表情を見たルカがまた意地の悪い笑みを浮かべた。
「不良じゃなくて残念だったね。俺って本当にマジメだからさぁ。アンタが呑気に寝かしつけなんてやってる間に、どんどん上に行っちゃうんだ。じゃあね、おせっかい女。」
「……!」
ルカはそう言い捨てて、そのまま無駄に長い脚で風を切るように歩いて行った。
顔がカッと熱くなる。
また嫌味を言われたことに腹が立ったのと、他人を見た目で判断してしまった自分が恥ずかしいって気持ちが混ざり合ってモヤモヤする。
すると私たちのやり取りを見ていたシモンくんが、気まずそうに声をかけてきた。
「……えっと、俺はシモン。『医療クラス』だよ。あいつ……ルカとは幼馴染なんだ。それで君はアンナちゃん、『寝かしつけクラス』の子だよね。」
「……うん、よく覚えてるね。」
「そりゃ、今朝のスピーチ聞いてたからね。トップバッターでインパクトがあったし、面白い子がいるって思ったよ! よろしく。」
「よ、よろしく。」
インパクトがあった? 面白い? そんな感想を持たれるなんて予想外だった。
シモンくんは私の顔とルカの背中を交互に見て、頭を掻きながら、今度はばつが悪そうに口を開いた。
「……ごめんね。ルカのやつ、言い方がきつい時があるけど、根は悪い奴じゃないから。」
シモンくんはそう言い残し、ルカのところへ走っていった。
そしてその後、律儀に私に向かって手を振った。私もそれに応えて手を振り返した。
シモンくんは礼儀正しくて優しそうな人だ。
でも、でもでも……そんなシモンくんがルカを庇ったって、私の気持ちが変わるわけがない。
ルカがどんなに友達に慕われていようが、私には関係ない。
手を振ってくれたシモンくんとは対照的に、ルカは振り返りもしない。
その頑なさが「お前なんて俺のライバルにすらなれない。」って言ってるみたいで気分が悪い。
……こうなったら最後にルカの鼻を明かしてやる!
私はそう思って大きく息を吸い込んだ。
「ルカ・ナレッド! 私は今後もあなたに負けるつもりなんてないわよ!」
私はお腹から声を出してそう宣言した。
「あなたが努力家なのは分かったわ! でも私だって勉強頑張るんだから!……それにっ!」
そこまで言いかけて、急に頭の中にウィル先輩の柔らかい笑顔が浮かんできた。
そうだ。私は今日、素敵な出会いがあったんだ。
『寝かしつけ魔獣士』を目指していないと出会うことのなかった人に巡り会えた。
そして初めてこんな気持ちになったんだ……!
私はもう一度深く息を吸って、ルカに届くようにうんと大声で叫んだ。
「私はね! 勉強だけじゃなくて、こ、恋だって頑張るんだから! 見てなさい! 私は同時に二つのことをやってみせるんだから!」
私は手でブイサインを作って『二つ』をアピールした。
二つのことを同時にやってのける人ってなんかかっこいいよね。
ふふ、私ならそれができるはず! 恋だって勉強だって頑張ってみせる!
どうだ、ルカ・ナレッド!
渾身のドヤ顔で宣言してやった。
するとルカがギョッとした顔で振り返っているのが見えた。
そして隣のシモンくんが「あの子、やっぱりすごく面白い子だねぇ……。」と言ってる声が聞こえてきた。
あれ……? 私、もしかして……変なこと言っちゃった?
自信満々で作ったブイサインがだんだんとしぼんでいく。
で、でも……あの余裕ぶってたルカを、あんな風に驚かせてやることができたのだから良かったじゃない!
うん、ある意味反撃できたのよ。
そう無理やり納得してみたけど、やっぱりどんどん恥ずかしくなってきた。
なんであんなこと言っちゃったんだろう……。
私はさっきの自分の言動がいたたまれなくなって、そのまま逃げるように小走りで女子寮へと駆け込んだ。
ゼエゼエ、と肩で息をしているこの人物は……たぶん同級生。でも名前が思い出せない。
大きくてがっしりとした体格で、髪は真っ黒でたき火のようにツンツンと跳ね上がってる。
そして一番目立っているのは、つぶらな瞳の上に生えてる凛々しく太い眉毛だ。
あ、そうだ。この人は今朝『ダイヤモンドスネークの牙はどうして三回しか生え替わらないのか』ってスピーチをしてた人だ。
面白い内容だったから覚えてる。えーと……そんな彼の名前は……。
シモン・デイビスくんだ!
「シモン、学生証は持ってきたのか? あれがないと図書館に入れないぞ。」
「え? うわっ、しまった。寮の部屋に忘れてきた!」
そう言って頭を抱えているシモンくん。私の記憶は合っていたみたい。
「あーあどうしよう。今から戻ってたら図書館が閉まっちゃうよな……。」
「はあ……仕方ないな。じゃあ代わりに借りてきてやるから本のタイトル教えろ。」
「うう~ルカ~~ありがとう! 心の友よ!」
目の前で繰り広げられる二人のやりとり。とても仲が良さそうだ。
って、図書館に行くの?
今から調べ物をしたり、勉強するってこと?
……夜遊びじゃないの?
私は驚いて言葉を失った。するとそんな私の表情を見たルカがまた意地の悪い笑みを浮かべた。
「不良じゃなくて残念だったね。俺って本当にマジメだからさぁ。アンタが呑気に寝かしつけなんてやってる間に、どんどん上に行っちゃうんだ。じゃあね、おせっかい女。」
「……!」
ルカはそう言い捨てて、そのまま無駄に長い脚で風を切るように歩いて行った。
顔がカッと熱くなる。
また嫌味を言われたことに腹が立ったのと、他人を見た目で判断してしまった自分が恥ずかしいって気持ちが混ざり合ってモヤモヤする。
すると私たちのやり取りを見ていたシモンくんが、気まずそうに声をかけてきた。
「……えっと、俺はシモン。『医療クラス』だよ。あいつ……ルカとは幼馴染なんだ。それで君はアンナちゃん、『寝かしつけクラス』の子だよね。」
「……うん、よく覚えてるね。」
「そりゃ、今朝のスピーチ聞いてたからね。トップバッターでインパクトがあったし、面白い子がいるって思ったよ! よろしく。」
「よ、よろしく。」
インパクトがあった? 面白い? そんな感想を持たれるなんて予想外だった。
シモンくんは私の顔とルカの背中を交互に見て、頭を掻きながら、今度はばつが悪そうに口を開いた。
「……ごめんね。ルカのやつ、言い方がきつい時があるけど、根は悪い奴じゃないから。」
シモンくんはそう言い残し、ルカのところへ走っていった。
そしてその後、律儀に私に向かって手を振った。私もそれに応えて手を振り返した。
シモンくんは礼儀正しくて優しそうな人だ。
でも、でもでも……そんなシモンくんがルカを庇ったって、私の気持ちが変わるわけがない。
ルカがどんなに友達に慕われていようが、私には関係ない。
手を振ってくれたシモンくんとは対照的に、ルカは振り返りもしない。
その頑なさが「お前なんて俺のライバルにすらなれない。」って言ってるみたいで気分が悪い。
……こうなったら最後にルカの鼻を明かしてやる!
私はそう思って大きく息を吸い込んだ。
「ルカ・ナレッド! 私は今後もあなたに負けるつもりなんてないわよ!」
私はお腹から声を出してそう宣言した。
「あなたが努力家なのは分かったわ! でも私だって勉強頑張るんだから!……それにっ!」
そこまで言いかけて、急に頭の中にウィル先輩の柔らかい笑顔が浮かんできた。
そうだ。私は今日、素敵な出会いがあったんだ。
『寝かしつけ魔獣士』を目指していないと出会うことのなかった人に巡り会えた。
そして初めてこんな気持ちになったんだ……!
私はもう一度深く息を吸って、ルカに届くようにうんと大声で叫んだ。
「私はね! 勉強だけじゃなくて、こ、恋だって頑張るんだから! 見てなさい! 私は同時に二つのことをやってみせるんだから!」
私は手でブイサインを作って『二つ』をアピールした。
二つのことを同時にやってのける人ってなんかかっこいいよね。
ふふ、私ならそれができるはず! 恋だって勉強だって頑張ってみせる!
どうだ、ルカ・ナレッド!
渾身のドヤ顔で宣言してやった。
するとルカがギョッとした顔で振り返っているのが見えた。
そして隣のシモンくんが「あの子、やっぱりすごく面白い子だねぇ……。」と言ってる声が聞こえてきた。
あれ……? 私、もしかして……変なこと言っちゃった?
自信満々で作ったブイサインがだんだんとしぼんでいく。
で、でも……あの余裕ぶってたルカを、あんな風に驚かせてやることができたのだから良かったじゃない!
うん、ある意味反撃できたのよ。
そう無理やり納得してみたけど、やっぱりどんどん恥ずかしくなってきた。
なんであんなこと言っちゃったんだろう……。
私はさっきの自分の言動がいたたまれなくなって、そのまま逃げるように小走りで女子寮へと駆け込んだ。
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