【完結】見習い魔獣士アンナの寝かしつけ

うれし乃まさみ

文字の大きさ
37 / 47
[15]モフモフの寝かしつけ

しおりを挟む

 翌日。
 インターンシップは残すところあと二日だ。

 私はモフモフの寝床に着くと、ベンチに座っていつも通り精神統一をした。

 すー、はー、すー。
 目を瞑って、深呼吸をして、何も考えない。
 そんな時間を少しとってから、私はモフモフたちの寝かしつけを始める。
 目を開けると,足元にはモフモフたちが集まってきていた。
 短い間だったけれど、この子たちともだいぶ仲良くなれたな。
 一番近くにいたピンクモフモフのリッカの頭をそっと撫でると、ほかのモフモフたちも撫でて欲しそうにからだを寄せた。

「可愛いなぁ……。」
 寝かしつけ魔獣士は、魔獣を癒して眠りをサポートしなくちゃいけない。だけど本音を言えば、ここ数日間は私の方がこの子たちに癒しを与えてもらっていた。
「よし、今日もやりますか。」
 自分を奮い立たせるように独り言を呟いてみた。
 この子たちの寝かしつけをしている間だけは、絶対に余計なことは考えないぞ。
 そう意気込んで、私は子守唄を歌うように眠りのメロディーを奏でた。


 
 全てのモフモフたちが寝静まった後、ゆっくりと寝床から立ち去る。
 廊下に出ると、そこにはドーマス副主任が立っていた。

「おめでとう、アンナさん。見事な寝かしつけだったよ。これで最終課題は合格だ。」
「えっ、合格ですか?!」
「うん。時間もぴったり三十分だったし、なによりモフモフたちへの眼差しが良かったよ。」

 ななな、なんと……。
 副主任はどこで見てたんだろう。寝床には私しかいなかった気がしたんだけど……。

「インターン最終日に合格できてよかったね。」
「はい! ……ん?」

 最終日? あれ? 最終日って……。
「明日が最終日ですよね。」
 そう聞くと、副主任は目をぱちくりさせた。

「え、今日だよ? 今日でアンナさんのインターンシップはおしまい。」
「ええっ……?!」

 そそそ、そんなはずない。だって確か、インターンシップは二週間で、明日でちょうど二週間のはずだ。
 私は急いでポケットにしまってある『インターンシップのしおり』を取り出した。
 そこには……。

『インターンシップは原則二週間。』のと書かれた文字。そしてその下に小さく『ただし、準夜帯・夜勤帯を体験した者は生活リズムを戻すための休養をとらなければならない。よって、そのにインターン終了とする。』と書かれていた。

 つまり、私みたいに遅い時間にお仕事をした人は、身体を休めるために、他のクラスの子よりも一日早くインターンが終わるってわけだ。

「知らなかった……。」
「あはは、アンナさんはいつもはしっかりしてるけど、抜けてるところもあるんだねぇ。」

 うう……。
 最終課題には無事合格できたけど、大事なことを勘違いしてて恥ずかしい……。
「今日はまだ時間があるから、最後にゆっくり見学していってね。」
「はい。じゃあ今日もピピのところに行ってもいいですか?」
 まだまだできることは少ないけど、ピピが昨日よりも眠れるようにお手伝いさせてもらおう。

「もちろんいいよ。じゃあ行こうか。今日は獣操クラスの子が見学に来てるから……。」
「……え?」
 今なんて?
 私がポカンとしていると,副主任はにこりと笑って言葉を続けた。
「あ、もしかして彼と友だち? ルカ・ナレッドくん。」
「え? ……えええ!」
 目玉が飛び出そうなぐらい驚いた。
 うそでしょ。ルカが……? 
「実は昨日から見学したいって申し出があったんだけど、急だったから昨日は断ったんだ。だから今日来てもらうことになってる。」
「そ、そうなんですか。」
 
 ……なんで? 
 昨日のルカとのやりとりはもちろん鮮明に覚えてる。
 だから絶対に寝かしつけ舎には来ないだろうと思ったのに……。
 それが昨日から来るつもりだったなんて、一体どういう心の変化があったんだろう

 まあ……何はともあれ、ルカが一人で思い悩まなくて済むならよかったんだけど……。
 やっぱりちょっと、会うのは気まずいな。

 
 
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。

猫菜こん
児童書・童話
 私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。  だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。 「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」  優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。  ……これは一体どういう状況なんですか!?  静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん  できるだけ目立たないように過ごしたい  湖宮結衣(こみやゆい)  ×  文武両道な学園の王子様  実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?  氷堂秦斗(ひょうどうかなと)  最初は【仮】のはずだった。 「結衣さん……って呼んでもいい?  だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」 「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」 「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、  今もどうしようもないくらい好きなんだ。」  ……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。

9日間

柏木みのり
児童書・童話
 サマーキャンプから友達の健太と一緒に隣の世界に迷い込んだ竜(リョウ)は文武両道の11歳。魔法との出会い。人々との出会い。初めて経験する様々な気持ち。そして究極の選択——夢か友情か。   (also @ なろう)

クールな幼なじみの許嫁になったら、甘い溺愛がはじまりました

藤永ゆいか
児童書・童話
中学2年生になったある日、澄野星奈に許嫁がいることが判明する。 相手は、頭が良くて運動神経抜群のイケメン御曹司で、訳あって現在絶交中の幼なじみ・一之瀬陽向。 さらに、週末限定で星奈は陽向とふたり暮らしをすることになって!? 「俺と許嫁だってこと、絶対誰にも言うなよ」 星奈には、いつも冷たくてそっけない陽向だったが……。 「星奈ちゃんって、ほんと可愛いよね」 「僕、せーちゃんの彼氏に立候補しても良い?」 ある時から星奈は、バスケ部エースの水上虹輝や 帰国子女の秋川想良に甘く迫られるようになり、徐々に陽向にも変化が……? 「星奈は可愛いんだから、もっと自覚しろよ」 「お前のこと、誰にも渡したくない」 クールな幼なじみとの、逆ハーラブストーリー。

アリアさんの幽閉教室

柚月しずく
児童書・童話
この学校には、ある噂が広まっていた。 「黒い手紙が届いたら、それはアリアさんからの招待状」 招かれた人は、夜の学校に閉じ込められて「恐怖の時間」を過ごすことになる……と。 招待状を受け取った人は、アリアさんから絶対に逃れられないらしい。 『恋の以心伝心ゲーム』 私たちならこんなの楽勝! 夜の学校に閉じ込められた杏樹と星七くん。 アリアさんによって開催されたのは以心伝心ゲーム。 心が通じ合っていれば簡単なはずなのに、なぜかうまくいかなくて……?? 『呪いの人形』 この人形、何度捨てても戻ってくる 体調が悪くなった陽菜は、原因が突然現れた人形のせいではないかと疑いはじめる。 人形の存在が恐ろしくなって捨てることにするが、ソレはまた家に現れた。 陽菜にずっと付き纏う理由とは――。 『恐怖の鬼ごっこ』 アリアさんに招待されたのは、美亜、梨々花、優斗。小さい頃から一緒にいる幼馴染の3人。 突如アリアさんに捕まってはいけない鬼ごっこがはじまるが、美亜が置いて行かれてしまう。 仲良し3人組の幼馴染に一体何があったのか。生き残るのは一体誰――? 『招かれざる人』 新聞部の七緒は、アリアさんの記事を書こうと自ら夜の学校に忍び込む。 アリアさんが見つからず意気消沈する中、代わりに現れたのは同じ新聞部の萌香だった。 強がっていたが、夜の学校に一人でいるのが怖かった七緒はホッと安心する。 しかしそこで待ち受けていたのは、予想しない出来事だった――。 ゾクッと怖くて、ハラハラドキドキ。 最後には、ゾッとするどんでん返しがあなたを待っている。

【もふもふ手芸部】あみぐるみ作ってみる、だけのはずが勇者ってなんなの!?

釈 余白(しやく)
児童書・童話
 網浜ナオは勉強もスポーツも中の下で無難にこなす平凡な少年だ。今年はいよいよ最高学年になったのだが過去5年間で100点を取ったことも運動会で1等を取ったこともない。もちろん習字や美術で賞をもらったこともなかった。  しかしそんなナオでも一つだけ特技を持っていた。それは編み物、それもあみぐるみを作らせたらおそらく学校で一番、もちろん家庭科の先生よりもうまく作れることだった。友達がいないわけではないが、人に合わせるのが苦手なナオにとっては一人でできる趣味としてもいい気晴らしになっていた。  そんなナオがあみぐるみのメイキング動画を動画サイトへ投稿したり動画配信を始めたりしているうちに奇妙な場所へ迷い込んだ夢を見る。それは現実とは思えないが夢と言うには不思議な感覚で、沢山のぬいぐるみが暮らす『もふもふの国』という場所だった。  そのもふもふの国で、元同級生の丸川亜矢と出会いもふもふの国が滅亡の危機にあると聞かされる。実はその国の王女だと言う亜美の願いにより、もふもふの国を救うべく、ナオは立ち上がった。

児童絵本館のオオカミ

火隆丸
児童書・童話
閉鎖した児童絵本館に放置されたオオカミの着ぐるみが語る、数々の思い出。ボロボロの着ぐるみの中には、たくさんの人の想いが詰まっています。着ぐるみと人との間に生まれた、切なくも美しい物語です。

この町ってなんなんだ!

朝山みどり
児童書・童話
山本航平は両親が仕事で海外へ行ってしまったので、義父の実家に預けられた。山間の古風な町、時代劇のセットのような家は航平はワクワクさせたが、航平はこの町の違和感の原因を探そうと調べ始める。

【完結】キスの練習相手は幼馴染で好きな人【連載版】

猫都299
児童書・童話
沼田海里(17)は幼馴染でクラスメイトの一井柚佳に恋心を抱いていた。しかしある時、彼女は同じクラスの桜場篤の事が好きなのだと知る。桜場篤は学年一モテる文武両道で性格もいいイケメンだ。告白する予定だと言う柚佳に焦り、失言を重ねる海里。納得できないながらも彼女を応援しようと決めた。しかし自信のなさそうな柚佳に色々と間違ったアドバイスをしてしまう。己の経験のなさも棚に上げて。 「キス、練習すりゃいいだろ? 篤をイチコロにするやつ」 秘密や嘘で隠されたそれぞれの思惑。ずっと好きだった幼馴染に翻弄されながらも、その本心に近付いていく。 ※現在完結しています。ほかの小説が落ち着いた時等に何か書き足す事もあるかもしれません。(2024.12.2追記) ※「キスの練習相手は〜」「幼馴染に裏切られたので〜」「ダブルラヴァーズ〜」「やり直しの人生では〜」等は同じ地方都市が舞台です。(2024.12.2追記) ※小説家になろう、カクヨム、アルファポリス、ノベルアップ+、Nolaノベル、ツギクルに投稿しています。 ※【応募版】を2025年11月4日からNolaノベルに投稿しています。現在修正中です。元の小説は各話の文字数がバラバラだったので、【応募版】は各話3500~4500文字程になるよう調節しました。67話(番外編を含む)→23話(番外編を含まない)になりました。

処理中です...