【完結】見習い魔獣士アンナの寝かしつけ

うれし乃まさみ

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[6]モフモフの毛づくろい

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「確かにあなたは獣操が上手だけど、それだけね。ほんっとにそれだけ!」
「ふーん。これが負け犬の遠吠えか。」
「違うわよ! 私だって成長してるし、別にあなたに負けてない。」

 昨日、ウィル先輩はそう言ってくれたんだ。
 私は強い気持ちでそう言い返した。
 だけどルカはフッと鼻で笑うだけ。本当に私のこと馬鹿にしてる!
 もう知らない。
 こんな奴最初から相手にしなきゃよかった。
 ライラのところに早く戻ろう。

 そう思って背を向けた瞬間、ルカはとんでもない発言をした。

「あの時、隣にいたの先輩だろ? もしかしてアンタが前に、恋だのなんだの言ってたのって……あの先輩のこと?」
「……は?」

 何、なになになに?
 なんで知ってるの?
 私は呆然としながら振り返った。

「ははっ、その反応はやっぱり図星か。アホみたいな顔であの先輩のこと見てたから、そんな気がしたんだよな。」

 え? えええ? 
 そんなのでバレるの? 
 それにアホみたいな顔って失礼すぎるんですけど!

 頭がフリーズして、何も言い返せない。おそらく今、真っ青な顔してる気がする。

 よりにもよって天敵の性悪男に好きな人がバレちゃったなんて……! 
 本当に最悪!

 ギリギリと奥歯を噛みしめてルカを睨む。だけどルカにそんな攻撃は効かない。

「あーあ、あの先輩も大変だな。アンタみたいな鬱陶しくて気の強い女に好かれるなんて。」

 ……こいつ、言わせておけば調子に乗って!
 堪忍袋の緒が切れた。
 私は大股でルカの目の前まで迫り、ぐっと背伸びをしながら胸ぐらを掴んでやった。

「あなたって本当にサイテー! 女の敵! デリカシーなし! それに人のこと遠くからジロジロと監視してんじゃないわよっ!」
「なっ……自意識過剰かよ。たまたま見えただけだし。」
「ふーん、たまたま? とか言って、私が気になるんでしょ!」
「はっ? そんなわけあるか!」

 ルカは珍しく上擦った声でそう叫んだ。
 その様子を見ていたシモンくんは、もう我慢できないと言いたそうな表情で吹き出した。

「フフッ、アンナちゃんには敵わないね。」
「……っクソ、話にならないな。行くぞシモン。」

 なぜか笑いが止まらない様子のシモンくんと、そんなシモンくんからモフモフを奪いとって歩き出すルカ。
 もう、一体なんだったの。
 ルカと言い争いをしたあとは、嵐が去った後みたいにドッと疲れちゃう……。
 ……あれ、私そういえば何してたんだっけ。
 何かを……忘れてるような……?
 そう思ってエプロンのポケットに手を突っ込むと、新しいブラシが二つ。

 まずい。
 道草を食いすぎた……。
 ライラにブラシを交換しに行くと言ってから、かなりの時間がたっていた。

 その後とにかく走った。
 ライラは開口一番に「おそーい!」と口を尖らせたけど、さっきのルカとの言い争いの話をしたら、いつのまにかお腹を抱えて笑ってた。
 シモンくんとライラって笑いのツボが同じみたい。
 そんなに面白い話だったかな?


 
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