手乗り姫

ねこいかいち

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手乗り姫とおじいちゃん

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 コニックについてきて貰い、ニアはお家のドアを開けます。中には温厚そうな小人族のおじいさんがいました。
「ニアか。どうしたんだい?」
 眼鏡をかけ髭を蓄えたおじいさん。ニアの唯一の家族です。そして、このハートフットの村長でもあります。
「あ、あのね、おじいちゃん……私、旅に出たいの」
「旅か……旅はいいものだ。何処にだい?」
 若かりし頃の自分の冒険を思い出しながら、おじいさんは訊ねます。意を決して、ニアは答えました。
「外の世界に行きたいの……!」
 その瞬間、おじいさんは目を見開き、口を大きく開けます。余程の衝撃だったのか、おじいさんは動きません。
(やっぱり……駄目だったんだよ……)
 玄関の外で、コニックは溜息を吐きます。ニアの夢はあまりにも危険があります。おじいさんも賛成はしてくれないでしょう。
「……ニアよ」
「どうしても行きたいの。一生に一度の夢なの。コニックも一緒に行くから、だから……」
 俯き、涙を滲ませながらニアは説得します。そんなニアに、おじいさんは近付いてきます。
「……そこまでして、行きたいのか?」
「うん……」
「何の為に? 冒険ならば、他の何処でも出来る。それなのに何故、人の世界がいいんだい?」
 そう言われて、ニアは言葉に詰まりました。人間の世界はとても興味がありました。でも、『何の為』と聞かれると、答えられませんでした。
「ニア。顔を上げてごらん」
 言われて、ゆっくりと顔を上げるニア。おじいさんの顔は、それはそれは穏やかな表情でした。
「何の為に冒険に出たいのか、それをゆっくりと考えてみなさい。そしたら、また儂の所に来なさい」
「うん」
 おじいさんの言葉に、ニアは頷きました。『何の為に』冒険に出たいのか。それをまず考えねば始まらない。
 ニアはおじいさんにぎゅっと抱き着き、そして考える為、家を出ました。


「ねえコニック。私、どうして人の世界に行きたいんだろう」
「それはニアにしかわからないよ。僕だって知りたいさ」
 何時もの遊び場に戻り、ニアは空を眺めます。
「私も雲だったら良かったのになあ……そうしたら、どこにでも行けるのに」
 そんなことを言うニアに、コニックは答えます。
「そしたら僕と友達にはなれなかったよ。空と友達になる方法なんてないんだから」
 そう、雲ならば何処にでも行けます。でも、そうだったら大好きなおじいちゃんともコニックとも出会えなかったのは事実です。
「うーん……。難しい問題だなあ」
 草の上に寝そべりながら、ニアは小さく溜息を吐きました。
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