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第七話
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ユオサイド
私たちは会社を出て美沙さんが呼んでいたタクシーに乗り込むと、私は座席に座るなりチョコを口の中に放り込む。
Y「あぁ~お腹すいた~」
美「すぐ着くからちゃんとしてて。」
Y「エネルギー切れでちゃんとできないです。」
美「…怒るよ?」
Y「すいません…おふざけが過ぎました…」
そんなやり取りを美沙さんとしながらタクシーに揺られしばらくすると、私には遠い世界となっていた煌びやかな夜の街が見えてきて、キラキラと眩しすぎる。
美「あっ!運転手さんここで大丈夫です。ありがとうございました。」
美沙さんがそう言った瞬間、一瞬にして緊張感が私を襲う。
美沙さんがタクシーを降り、仕方なく重い足取りのまま私は美沙さんの後に続くと言葉を失った。
Y「……。」
久しぶりに訪れた美容室は私が想像していた美容室よりもはるかに大きく、キラキラと輝いていて看板を思わず見上げる。
はぁ…なんか…
陽キャの一軍女子しかいなさそうな美容室だ…
気が重いな…
ってかそもそも一軍女子ってなに。
ダル。
そんな事を思っていると、美沙さんが優しく微笑みながら私の肩を抱いた。
美「まぁ、そう緊張しないで。いい人たちばかりだから大丈夫。行くよ。」
美沙さんはそう言うと、私の手を引いて歩いて行く。
ヘアサロン「B」
扉を開けるとチリンチリンと心地よい音色が響いた。
美「こんばんは。連れてきましたよ?」
美沙さんはそう挨拶をしながら中に入っていき、私は恐る恐る視線を下げたまま美沙さんの背中について行く。
Y「こここ…こんばんは!」
あまりの緊張から吃ってしまった私は手に汗握りながらそう挨拶をした。
「いらっしゃいませ~!!」
私は軽くお辞儀をして恐る恐る顔を上げた。
すると、そこには見覚えのある顔があり、驚いた私からは大きな声が出た。
Y「…ん?…あぁっ!!あの時の!!」
そう、私が顔を上げた先にいたのはなんと駅で男に絡まれた時に助けてくれた…あの…えっと…名前…なんだっけ?
忘れちゃったけど!
あの少しチャラくて勝手に私にお礼をして貰おうとしていたウサギのような顔をした男がいたのだ。
「あっ!!え!!美沙さんもしかして…モデルって…!!この人!?」
そのうさぎ男も驚きが隠せないようで私の顔を見てそう言っているが、私がモデルだなんてハズレだなと思われてたらどうしようと思った私は思わず彼から視線を逸らした。
美「そうだよ。純太くん頼んだよ。」
そうだ…この人…純太って言うんだった。
ようやく彼の名前を思い出した私はチラッと美沙さんを見る。
美「ってか2人とも知り合いなの?」
美沙さんは不思議そうな顔をして私たちにそう問いかけるので私は咄嗟に答えた。
Y「いや、はじめまして。」
J「はい、会ったことあります。」
なんとまぁ、タイミングが良いのか悪いのか思いっきり彼と言葉が被ってしまい、おまけに同時に真逆のことを言ってしまったばかりに気まずくてたまらない。
美「変な人達…まぁいいわ。先に紹介するね。こっちが私の後輩で紹介したモデルのユオ。純太くんより2歳上だよ。私はあっちで誠司さんと一緒にいるから、なんかあったら呼んで。」
私はずっとそばに美沙さんがいてくれるものだと思っていたのに、来て早々この広い美容室の違う場所に行こうとする美沙さんに視線で訴えかけるが全く伝わらない。
J「え…まさか俺よりお姉さんだったんですね?美沙さんありがとうございます。コッチは任せといてください。」
どう見ても私の方がお姉様だろ!!失礼なやつだ!と思いながら私は美沙さんをじっと見つめる。
美「頼んだよ。じゃ、最終テスト頑張れ。ファイト!!」
美沙さんはそう言うと私の訴えも虚しく、あっさりと人見知りで場見知りで挙動不審な私を置いてあっちにいる唇ぶるんぶるんなイケメンの所に行ってしまった。
私は美沙さんがいなくなり心細くて下を向いていると彼に呼ばれた。
J「じゃ、ユオちゃんあっち行くよ。」
いきなりのちゃん呼びに驚いた私がギョッとして固まっていると、彼は私の手首を掴み鏡の前に座らせる。
え…めちゃくちゃ馴れ馴れしいんだけど…
どうしよう…
そうテンパってしまった私はさっき聞いたばかりの彼の名前が頭の中からポーンッと抜けてしまった。
あ…やば…この人…名前なんだっけ…?
私は密かにそう焦りながら鏡の前で目を泳がせた。
つづく
私たちは会社を出て美沙さんが呼んでいたタクシーに乗り込むと、私は座席に座るなりチョコを口の中に放り込む。
Y「あぁ~お腹すいた~」
美「すぐ着くからちゃんとしてて。」
Y「エネルギー切れでちゃんとできないです。」
美「…怒るよ?」
Y「すいません…おふざけが過ぎました…」
そんなやり取りを美沙さんとしながらタクシーに揺られしばらくすると、私には遠い世界となっていた煌びやかな夜の街が見えてきて、キラキラと眩しすぎる。
美「あっ!運転手さんここで大丈夫です。ありがとうございました。」
美沙さんがそう言った瞬間、一瞬にして緊張感が私を襲う。
美沙さんがタクシーを降り、仕方なく重い足取りのまま私は美沙さんの後に続くと言葉を失った。
Y「……。」
久しぶりに訪れた美容室は私が想像していた美容室よりもはるかに大きく、キラキラと輝いていて看板を思わず見上げる。
はぁ…なんか…
陽キャの一軍女子しかいなさそうな美容室だ…
気が重いな…
ってかそもそも一軍女子ってなに。
ダル。
そんな事を思っていると、美沙さんが優しく微笑みながら私の肩を抱いた。
美「まぁ、そう緊張しないで。いい人たちばかりだから大丈夫。行くよ。」
美沙さんはそう言うと、私の手を引いて歩いて行く。
ヘアサロン「B」
扉を開けるとチリンチリンと心地よい音色が響いた。
美「こんばんは。連れてきましたよ?」
美沙さんはそう挨拶をしながら中に入っていき、私は恐る恐る視線を下げたまま美沙さんの背中について行く。
Y「こここ…こんばんは!」
あまりの緊張から吃ってしまった私は手に汗握りながらそう挨拶をした。
「いらっしゃいませ~!!」
私は軽くお辞儀をして恐る恐る顔を上げた。
すると、そこには見覚えのある顔があり、驚いた私からは大きな声が出た。
Y「…ん?…あぁっ!!あの時の!!」
そう、私が顔を上げた先にいたのはなんと駅で男に絡まれた時に助けてくれた…あの…えっと…名前…なんだっけ?
忘れちゃったけど!
あの少しチャラくて勝手に私にお礼をして貰おうとしていたウサギのような顔をした男がいたのだ。
「あっ!!え!!美沙さんもしかして…モデルって…!!この人!?」
そのうさぎ男も驚きが隠せないようで私の顔を見てそう言っているが、私がモデルだなんてハズレだなと思われてたらどうしようと思った私は思わず彼から視線を逸らした。
美「そうだよ。純太くん頼んだよ。」
そうだ…この人…純太って言うんだった。
ようやく彼の名前を思い出した私はチラッと美沙さんを見る。
美「ってか2人とも知り合いなの?」
美沙さんは不思議そうな顔をして私たちにそう問いかけるので私は咄嗟に答えた。
Y「いや、はじめまして。」
J「はい、会ったことあります。」
なんとまぁ、タイミングが良いのか悪いのか思いっきり彼と言葉が被ってしまい、おまけに同時に真逆のことを言ってしまったばかりに気まずくてたまらない。
美「変な人達…まぁいいわ。先に紹介するね。こっちが私の後輩で紹介したモデルのユオ。純太くんより2歳上だよ。私はあっちで誠司さんと一緒にいるから、なんかあったら呼んで。」
私はずっとそばに美沙さんがいてくれるものだと思っていたのに、来て早々この広い美容室の違う場所に行こうとする美沙さんに視線で訴えかけるが全く伝わらない。
J「え…まさか俺よりお姉さんだったんですね?美沙さんありがとうございます。コッチは任せといてください。」
どう見ても私の方がお姉様だろ!!失礼なやつだ!と思いながら私は美沙さんをじっと見つめる。
美「頼んだよ。じゃ、最終テスト頑張れ。ファイト!!」
美沙さんはそう言うと私の訴えも虚しく、あっさりと人見知りで場見知りで挙動不審な私を置いてあっちにいる唇ぶるんぶるんなイケメンの所に行ってしまった。
私は美沙さんがいなくなり心細くて下を向いていると彼に呼ばれた。
J「じゃ、ユオちゃんあっち行くよ。」
いきなりのちゃん呼びに驚いた私がギョッとして固まっていると、彼は私の手首を掴み鏡の前に座らせる。
え…めちゃくちゃ馴れ馴れしいんだけど…
どうしよう…
そうテンパってしまった私はさっき聞いたばかりの彼の名前が頭の中からポーンッと抜けてしまった。
あ…やば…この人…名前なんだっけ…?
私は密かにそう焦りながら鏡の前で目を泳がせた。
つづく
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