キミのとなり

樺純

文字の大きさ
20 / 92

第二十話

しおりを挟む
純太サイド

急遽、撮影会が始まった。

写真慣れをしてないユオちゃんは最初こそ戸惑いがあったけど、俺が指示を出せばついさっきまで無防備な顔をして寝てたとは思えないぐらいのとても雰囲気のある良い表情をした。

シャッターを押せば押すほど俺は何かの魔法にかかってしまったのではないかと思うほど、ユオちゃんの魅惑的な瞳に夢中になる。

カメラを覗けば自然とユオちゃんの視線と俺の視線がぶつかる訳で、俺の心臓は早く動き出し視線が外せなくなる。

そして、照れたユオちゃんが無邪気に笑ったその瞬間…

俺の胸は一撃を食らい見事に恋の銃弾によって負傷した。

なにがおきた?今の笑顔…ヤバイんだけど…

そして、俺はどの写真にするか散々深夜まで悩んだ挙句、俺の心に恋の爆弾を投げた衝撃の一枚でもあるユオちゃんの無邪気な笑顔の写真に決めた。

次の日

俺はその写真を持って誠司さんの元に行った。

J「誠司さん…写真なんですが…この写真にしました。」

俺は深夜遅くまで選び抜き、プリントアウトした写真を誠司さんに渡した。

誠司さんはそれを受け取るとじーっと表情を変える事なくそれを見つめる。

あぁ…緊張する。

テスト結果の報告がしたいという口実でユオちゃんと連絡先交換したのに、もし万が一、不合格だったらユオちゃんになんて連絡しよう。

そんな事を思いながら俺は誠司さんの言葉をじっと待つ。

S「へぇ~これにしたんだ。純太はなんでこのユオちゃんの写真にしたの?」

誠司さんはその写真をじっと見つめたまま俺にそう問いかける。

俺は緊張から微かに声が上ずりながら一生懸命に答えた。

J「えっと…他の写真も良かったんですがこの写真が1番ユオちゃんらしい写真だと思いましたし…このユオちゃんの笑顔が俺に向けられた初めての笑顔だったので…この写真にしました。」

俺は一体なにを言ってるんだ?

スタイルについてとか髪型のこだわりとかが1番わかる写真じゃないと意味ないじゃん。

なのになんで俺は自分に向けられた初めての笑顔だからという謎のプレゼンを誠司さんに堂々としてしまっているのだろうか。

誠司さんが黙って俺の言葉を聞き、写真を見ているあいだ俺はとてつもなく無意味なプレゼンをしてしまったようで後悔に襲われた。

S「そっか。あぁ…まぁ…結果なんだけどさ…」

誠司さんは言いにくそうな顔をして口籠る。

J「はい…」

俺が不安気に返事をすると、ずっと写真を見ていた誠仁さんは突然、俺の方に視線を向け大きなため息を落とした。


つづく
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】指先が触れる距離

山田森湖
恋愛
オフィスの隣の席に座る彼女、田中美咲。 必要最低限の会話しか交わさない同僚――そのはずなのに、いつしか彼女の小さな仕草や変化に心を奪われていく。 「おはようございます」の一言、資料を受け渡すときの指先の触れ合い、ふと香るシャンプーの匂い……。 手を伸ばせば届く距離なのに、簡単には踏み込めない関係。 近いようで遠い「隣の席」から始まる、ささやかで切ないオフィスラブストーリー。

数合わせから始まる俺様の独占欲

日矩 凛太郎
恋愛
アラサーで仕事一筋、恋愛経験ほぼゼロの浅見結(あさみゆい)。 見た目は地味で控えめ、社内では「婚期遅れのお局」と陰口を叩かれながらも、仕事だけは誰にも負けないと自負していた。 そんな彼女が、ある日突然「合コンに来てよ!」と同僚の女性たちに誘われる。 正直乗り気ではなかったが、数合わせのためと割り切って参加することに。 しかし、その場で出会ったのは、俺様気質で圧倒的な存在感を放つイケメン男性。 彼は浅見をただの数合わせとしてではなく、特別な存在として猛烈にアプローチしてくる。 仕事と恋愛、どちらも慣れていない彼女が、戸惑いながらも少しずつ心を開いていく様子を描いた、アラサー女子のリアルな恋愛模様と成長の物語。

取引先のエリート社員は憧れの小説家だった

七転び八起き
恋愛
ある夜、傷心の主人公・神谷美鈴がバーで出会った男は、どこか憧れの小説家"翠川雅人"に面影が似ている人だった。 その男と一夜の関係を結んだが、彼は取引先のマネージャーの橘で、憧れの小説家の翠川雅人だと知り、美鈴も本格的に小説家になろうとする。 恋と創作で揺れ動く二人が行き着いた先にあるものは──

ヒ・ミ・ツ~許嫁は兄の親友~(旧:遠回りして気付いた想い)[完]

麻沙綺
恋愛
ごく普通の家庭で育っている女の子のはずが、実は……。 お兄ちゃんの親友に溺愛されるが、それを煩わしいとさえ感じてる主人公。いつしかそれが当たり前に……。 視線がコロコロ変わります。 なろうでもあげていますが、改稿しつつあげていきますので、なろうとは多少異なる部分もあると思いますが、宜しくお願い致します。

解けない魔法を このキスで

葉月 まい
恋愛
『さめない夢が叶う場所』 そこで出逢った二人は、 お互いを認識しないまま 同じ場所で再会する。 『自分の作ったドレスで女の子達をプリンセスに』 その想いでドレスを作る『ソルシエール』(魔法使い) そんな彼女に、彼がかける魔法とは? ═•-⊰❉⊱•登場人物 •⊰❉⊱•-═ 白石 美蘭 Miran Shiraishi(27歳)…ドレスブランド『ソルシエール』代表 新海 高良 Takara Shinkai(32歳)…リゾートホテル運営会社『新海ホテル&リゾート』 副社長

〜仕事も恋愛もハードモード!?〜 ON/OFF♡オフィスワーカー

i.q
恋愛
切り替えギャップ鬼上司に翻弄されちゃうオフィスラブ☆ 最悪な失恋をした主人公とONとOFFの切り替えが激しい鬼上司のオフィスラブストーリー♡ バリバリのキャリアウーマン街道一直線の爽やか属性女子【川瀬 陸】。そんな陸は突然彼氏から呼び出される。出向いた先には……彼氏と見知らぬ女が!? 酷い失恋をした陸。しかし、同じ職場の鬼課長の【榊】は失恋なんてお構いなし。傷が乾かぬうちに仕事はスーパーハードモード。その上、この鬼課長は————。 数年前に執筆して他サイトに投稿してあったお話(別タイトル。本文軽い修正あり)

隠れオタクの女子社員は若社長に溺愛される

永久保セツナ
恋愛
【最終話まで毎日20時更新】 「少女趣味」ならぬ「少年趣味」(プラモデルやカードゲームなど男性的な趣味)を隠して暮らしていた女子社員・能登原こずえは、ある日勤めている会社のイケメン若社長・藤井スバルに趣味がバレてしまう。 しかしそこから二人は意気投合し、やがて恋愛関係に発展する――? 肝心のターゲット層である女性に理解できるか分からない異色の女性向け恋愛小説!

『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』

鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、 仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。 厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議―― 最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。 だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、 結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。 そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、 次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。 同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。 数々の試練が二人を襲うが―― 蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、 結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。 そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、 秘書と社長の関係を静かに越えていく。 「これからの人生も、そばで支えてほしい。」 それは、彼が初めて見せた弱さであり、 結衣だけに向けた真剣な想いだった。 秘書として。 一人の女性として。 結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。 仕事も恋も全力で駆け抜ける、 “冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。

処理中です...