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第六十話
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美沙サイド
ユオが純太くんの家に向かった後
美「私も帰りますね?今日もユオの付き添いで来ただけなので…」
S「美沙ちゃんちょっと話したい事があるんだけどこの後時間ある…?」
まさか誠司さんに誘ってもらえると思っていたなかった私は嬉しくてドキッとならす。
美「はいっ。よろこんで。」
私の咄嗟の返事に誠司さんはクスッと笑い目尻を下げながら言った。
S「じゃ、用意してくるからソファに座って待っててもらえる?」
私は誠司さんに言われるがままソファに座って誠司さんの仕事が終わるのを待った。
そして誠司さんと向かったのは緊張するほどおしゃれなBAR。
私は誠司さんと2人で並んでカクテルなんて飲んでしまっている現実に緊張し、指先が冷たくなって震える。
S「ごめんね?急に誘っちゃって…」
美「いえ、誘って頂けるなんて光栄です。」
実は私…ユオにうるさく言ってるクセに自分の恋愛となると全くダメ。
そう何を隠そう私は三十路目前なのに恋愛未経験者なのです…
ただ、近頃のユオを見て刺激を受けてしまったのだ。
S「勝手に誘っちゃったら美沙ちゃんの恋人に怒られちゃうかな?」
誠司さんはグラスを傾けて私の様子を伺うようにそう言った。
美「恋人?私、恋人なんていませんけど?」
私は…平然をよそえてますか?
誠司さんにだけさ恋愛経験のない女だとバレたくなくて必死で私は表情管理をして答えた。
S「またまた~!美沙ちゃんみたいな子に恋人がいないわけないじゃん!」
美「本当ですけど?私は誠司さん一筋なんで。」
一世一代の告白。
いや、本当はこんなタイミングでするつもりはなかった。
けれど、なぜか早く誠司さんに自分の気持ちを伝えないと誰かに取られてしまうんじゃないかと不安になったから。
なのに、あんなににこやかだった誠司さんの顔は一瞬にして硬直し、私は全てを悟った。
そうだよね…こんな素敵な誠司さんに恋人がいないわけないよね…と。
S「……美沙ちゃん…あ…ありがと。でも、今日は話があってさ。だからその話はまた今度ね…ごめん。」
もう、この話はしないよ…改めて振られる余裕なんて私にはない。
だから、私は気持ちを切り替えた。
美「いえ…大丈夫です。こっちこそいきなりすいません。で、話ってなんですか?」
S「うん。まぁ、あの二人の話なんだけど…」
美「あの二人って…ユオと純太くんの事ですよね?」
S「そうそう…」
美「実はユオが純太くんと連絡がずっとつかないって言ってて、それで今日サロンに行ったんですよ。何か心当たりあるんですか?」
S「そうだったんだね?うん…実は純太の様子がおかしくなったのはユオちゃんに謝りに行った後からなんだ…」
美「どういうことですか?ユオからはその日ちゃんと話して誤解は解けたって聞いてますけど…」
S「うん…なんかね…ずっと引っかかってさ…」
美「引っかかる…?」
S「実はさ?純太がユオちゃんに謝りに行った日あるじゃん?純太が帰った後にアヨがウチのサロンに来たんだよ…」
美「確か純太くんの元カノの?」
S「そう…って、アヨが元カノって知ってたんだね…?」
美「あ…純太くんがユオにそう話したみたいで…」
S「そっか。その時にアヨに俺…言っちゃったんだよね?純太は今デートに行ってるってだからもうあいつとは関わるなって…」
美「そうだったんですね…」
S「そしたらさ…今まで見たことのないような顔してアヨがキレたんだよ…私はこんなに惨めな思いしてんのに純太だけ幸せになるなんて許さないって…」
美「許さないって…なんでそこまで…」
S「その言葉聞いた時に恐怖を感じたよ。アヨさ?純太が原因で離婚したんだ。純太もアヨが結婚してた事は知らなかった。もしかしたら…純太の様子がおかしいのはアヨが原因かもしれない…」
美「あのそれって…純太くんは不倫してたって事ですよね…」
S「本人は知らなかったけどそうなるね。純太がこの事実を知ったのはユオちゃんが酔いつぶれて泣いた日だよ。まだ、分からないけど…アヨとなんかあったのかもな…」
誠司さんとそう話をしていると私のスマホが鳴り響いた。
S「電話なってるよ?出て?」
美「はい…すいません。…もしもし?」
私がスマホを耳に当てると今にも泣き出しそうなユオの声が聞こえてきた。
ユオは話をする度に声が震えていき、顔を見てなくても泣いているのが分かった。
早くユオの元に行ってあげなきゃ…!
そう思った私はユオを落ち着かせて電話を切った。
S「どうしたの!?ユオちゃんになんかあった!?」
誠司さんは電話を切った途端に心配そうにそう問いかけた。
美「わかりません…でもユオが泣いてます…私の家にいるみたいなので…すみませんが私…失礼します!」
S「待って!俺も一緒に行くよ!」
美「えっ…でも…」
S「なんか嫌な予感がする…美沙ちゃんの事1人で帰すわけいかないし一緒行くよ!」
美「わかりました。ありがとうございます。」
私たちは慌てて店を出るとタクシーでウチに向かった。
家に着くとユオは私の部屋の前でぐったりとしゃがみ込んで泣いていた。
美「とりあえず部屋に入ろう?」
ユオに駆け寄り私がユオを立ち上がらせると、誠司さんがユオを支えてくれた。
S「……大丈夫だから。ユオちゃんはひとりじゃないからね?」
なぜか誠司さんのその言葉がすごく心強かった。
誠司さん…やっぱり私はあなたが好きです…
つづく
ユオが純太くんの家に向かった後
美「私も帰りますね?今日もユオの付き添いで来ただけなので…」
S「美沙ちゃんちょっと話したい事があるんだけどこの後時間ある…?」
まさか誠司さんに誘ってもらえると思っていたなかった私は嬉しくてドキッとならす。
美「はいっ。よろこんで。」
私の咄嗟の返事に誠司さんはクスッと笑い目尻を下げながら言った。
S「じゃ、用意してくるからソファに座って待っててもらえる?」
私は誠司さんに言われるがままソファに座って誠司さんの仕事が終わるのを待った。
そして誠司さんと向かったのは緊張するほどおしゃれなBAR。
私は誠司さんと2人で並んでカクテルなんて飲んでしまっている現実に緊張し、指先が冷たくなって震える。
S「ごめんね?急に誘っちゃって…」
美「いえ、誘って頂けるなんて光栄です。」
実は私…ユオにうるさく言ってるクセに自分の恋愛となると全くダメ。
そう何を隠そう私は三十路目前なのに恋愛未経験者なのです…
ただ、近頃のユオを見て刺激を受けてしまったのだ。
S「勝手に誘っちゃったら美沙ちゃんの恋人に怒られちゃうかな?」
誠司さんはグラスを傾けて私の様子を伺うようにそう言った。
美「恋人?私、恋人なんていませんけど?」
私は…平然をよそえてますか?
誠司さんにだけさ恋愛経験のない女だとバレたくなくて必死で私は表情管理をして答えた。
S「またまた~!美沙ちゃんみたいな子に恋人がいないわけないじゃん!」
美「本当ですけど?私は誠司さん一筋なんで。」
一世一代の告白。
いや、本当はこんなタイミングでするつもりはなかった。
けれど、なぜか早く誠司さんに自分の気持ちを伝えないと誰かに取られてしまうんじゃないかと不安になったから。
なのに、あんなににこやかだった誠司さんの顔は一瞬にして硬直し、私は全てを悟った。
そうだよね…こんな素敵な誠司さんに恋人がいないわけないよね…と。
S「……美沙ちゃん…あ…ありがと。でも、今日は話があってさ。だからその話はまた今度ね…ごめん。」
もう、この話はしないよ…改めて振られる余裕なんて私にはない。
だから、私は気持ちを切り替えた。
美「いえ…大丈夫です。こっちこそいきなりすいません。で、話ってなんですか?」
S「うん。まぁ、あの二人の話なんだけど…」
美「あの二人って…ユオと純太くんの事ですよね?」
S「そうそう…」
美「実はユオが純太くんと連絡がずっとつかないって言ってて、それで今日サロンに行ったんですよ。何か心当たりあるんですか?」
S「そうだったんだね?うん…実は純太の様子がおかしくなったのはユオちゃんに謝りに行った後からなんだ…」
美「どういうことですか?ユオからはその日ちゃんと話して誤解は解けたって聞いてますけど…」
S「うん…なんかね…ずっと引っかかってさ…」
美「引っかかる…?」
S「実はさ?純太がユオちゃんに謝りに行った日あるじゃん?純太が帰った後にアヨがウチのサロンに来たんだよ…」
美「確か純太くんの元カノの?」
S「そう…って、アヨが元カノって知ってたんだね…?」
美「あ…純太くんがユオにそう話したみたいで…」
S「そっか。その時にアヨに俺…言っちゃったんだよね?純太は今デートに行ってるってだからもうあいつとは関わるなって…」
美「そうだったんですね…」
S「そしたらさ…今まで見たことのないような顔してアヨがキレたんだよ…私はこんなに惨めな思いしてんのに純太だけ幸せになるなんて許さないって…」
美「許さないって…なんでそこまで…」
S「その言葉聞いた時に恐怖を感じたよ。アヨさ?純太が原因で離婚したんだ。純太もアヨが結婚してた事は知らなかった。もしかしたら…純太の様子がおかしいのはアヨが原因かもしれない…」
美「あのそれって…純太くんは不倫してたって事ですよね…」
S「本人は知らなかったけどそうなるね。純太がこの事実を知ったのはユオちゃんが酔いつぶれて泣いた日だよ。まだ、分からないけど…アヨとなんかあったのかもな…」
誠司さんとそう話をしていると私のスマホが鳴り響いた。
S「電話なってるよ?出て?」
美「はい…すいません。…もしもし?」
私がスマホを耳に当てると今にも泣き出しそうなユオの声が聞こえてきた。
ユオは話をする度に声が震えていき、顔を見てなくても泣いているのが分かった。
早くユオの元に行ってあげなきゃ…!
そう思った私はユオを落ち着かせて電話を切った。
S「どうしたの!?ユオちゃんになんかあった!?」
誠司さんは電話を切った途端に心配そうにそう問いかけた。
美「わかりません…でもユオが泣いてます…私の家にいるみたいなので…すみませんが私…失礼します!」
S「待って!俺も一緒に行くよ!」
美「えっ…でも…」
S「なんか嫌な予感がする…美沙ちゃんの事1人で帰すわけいかないし一緒行くよ!」
美「わかりました。ありがとうございます。」
私たちは慌てて店を出るとタクシーでウチに向かった。
家に着くとユオは私の部屋の前でぐったりとしゃがみ込んで泣いていた。
美「とりあえず部屋に入ろう?」
ユオに駆け寄り私がユオを立ち上がらせると、誠司さんがユオを支えてくれた。
S「……大丈夫だから。ユオちゃんはひとりじゃないからね?」
なぜか誠司さんのその言葉がすごく心強かった。
誠司さん…やっぱり私はあなたが好きです…
つづく
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