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111話

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アナside

子供の頃に私を理解し、幼いながらにも一生懸命に寄り添ってくれたジョウキ。

見ず知らずの私を命をかけて助けてくれたトウヤ。

大切な2人を比べて私が選ぶなんて絶対にできない。

私は夜空に浮かぶ月を見上げながらそう思った。

次の日

私が実家に戻るとママが地下の倉庫から何やらたくさんの荷物を出してきていた。

A「ママ…何してるの…?」

母「お泊りするならちゃんと連絡してよね~心配するじゃん!」

A「ごめんね…これなに?」

母「うん…あなたがチエリだった頃に描いた絵の作品とか洋服とか色々思い出が詰まってるものよ?」

ママは嬉しそうに一枚ずつ広げて見はじめた。

A「ねぇ…ママ…?」

母「うん?どうしたの?」

A「私が事故に遭った時に助けてくれた男の子がいたって言ってたじゃない?その子って名前分からないよね?」

ママは手を止めて私をじっと見つめた。

母「事故の後ね?パパが必死になって色んなツテで探し回ったの…でも見つからなかった…」

A「そっか…」

母「あの辺りじゃ見慣れない制服を着てたみたいでね?…でも確か…」

A「え?なに?」

母「事故の目撃者によるとその男の子は友達と一緒にいたみたいでね?その子の友達が男の子の事をトウヤって呼んでた事だけは分かったの…」

A「トウヤ…」

母「苗字が分からなくてね…彼のこと見つけれなかったのよ…アナ?どうしたの?大丈夫?」

私の表情を見てママが不安そうな顔になっていく。

A「だ…大丈夫…ちょっと部屋で休むね…」

私は2階にある自分の部屋に入り、少し混乱する頭を休めようとベッドに横になった。

やっぱり私を助けてくれたのはトウヤで間違いない。

ベッドで横になったまま天井を見上げているとスマホにジョウキからのメールが届いた。

しかし、私はそのメールを見ることができなかった。

今から出そうとしている自分の答えが苦しくて辛いから現実から目を背けたんだ。

何気なく勉強机に目をやると無造作に置いてある私の日記張。

古びた一枚のポラロイド写真が日記張の1番うしろのページにはさまっていた。

ふと、そのポラロイド写真の裏側を見てぎゅっと胸の奥が傷む。

だけど私はその写真をそっと元の場所に戻した。


つづく
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