二人の王子様はどっちが私の王様？

182話

マハロside

正直ジョウキの話を聞いた時、グループのこれからの事とかスタッフやファンのみんなの事が頭に過って俺は不安になった。

なのに他のメンバー達はうろたえる様子もなく、ジョウキの話を落ち着いて聞いていて背中を後押ししていた。

そして、俺はユナにメールをいれた。

ついにはじまった授賞式。

俺たちのステージまでは少し時間があり、他のアーティストの歌を聞いたり授賞スピーチを聞いていた。

しかし、俺の隣に座ったジョウキはそれすらも耳に入らない様子で、両手をぐっと組み下を向いてブツブツを言っている。

途中で何度か名前を呼んだが全く俺の声はジョウキには届いていなかった

そしてついにこの授賞式最大の名誉ある賞、優秀大賞の発表だ。

大きなドラム音が鳴り響く中…俺たちには緊張が走る。

この賞を取ればアイドルではなくアーティストと認められ、俺たちグループはまたひとつ上のステージに行けるだろう。

微かに震えるなか…

華々しく俺たちグループの名前が呼ばれメンバーが一斉に立ち上がり喜びを表す。

そして、俺たちはいつもの笑顔で何度も頭を下げながらマイクのあるステージへと向かった。

メンバーたちがそれぞれスピーチでファンや家族、そしたスタッフ関係者への感謝の言葉を述べた。

感動的な雰囲気の中、熱愛報道渦中のジョウキへのフラッシュは人一倍多かった。

本人もおそらくそれに気づき、ジョウキはいつも以上に顔が強張っていた。

そして、ついにジョウキのスピーチの番が訪れ俺たちに緊張感が走る。

J「まずはじめにこのような賞を頂いた事を心より感謝します。いつも応援してくれているファンの皆さん、支えて下さっているスタッフ関係者のみなさんほんとにありがとうございます。感謝してます。実は今、僕はプライベートな事で世間を騒がせてしまってます。本当にご迷惑をおかけして申し訳ございません。とあるモデルの方と熱愛中であるとSNS上で噂になりましたがそのような関係では一切ありません。今、僕には心から想っている大切な方がいます。その方は今、病気と闘っています。そんな大切な時期に僕の無責任な行動により誤解を招いてしまいました。皆さまにも誤解とご迷惑をおかけした事大変申し訳なく思っております。ファンの皆様は僕にとって宝物です。それはこれからも変わらない事実です。これからも精進し、より上を目指して頑張って参りますのでどうか…僕たち2人のこと温かく身守って頂けると幸いです…」

ジョウキは話し終えると頭を深々と下げ、俺たちメンバー全員も頭を下げた。

そして、俺たちはステージのためにスタンバイをした。

ファンのみんなはジョウキの言葉をどう受け取ったのだろうか…？

ユナはちゃんとアナにジョウキの気持ちを届けてくれただろうか…？

今日、最後にパフォーマンスするのは曲はジョウキがソロ曲で発売した「cherry blossom」という曲。

ファンの間でも人気が高く、グループとしてその曲をカバーする事となり今日、それを初披露する。

こんな大切な場所で、ましてや大切なファンへの感謝を伝えるべき場所で、ジョウキがプライベートな事を話し、自身に大切な人がいるというカミングアウトをし、それを聞いたファン達はこれをどう受け止めるだろう。

中には応援してきたアイドルに意中の相手がいて心抉られ泣いてるファンの子もいるかもしれない…

裏切りだと言って怒っているファンの子もきっといるだろう… 

それでもジョウキは全てを分かった上で自分の口から大切な人がいるという事実をファンに1番に伝えた。

それはきっとジョウキなりの覚悟と最大の誠意だったと思う。

ジョウキは歌の途中、声を震わせ目に涙を浮かべながらこの歌を歌った。

そして歌の最後、ジョウキはジャケットの内側をカメラに見せてクマのキーホルダーを取り出しそっとキスをした。

つづく