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34話
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ヨナside
私が医学の道を選び外科医を目指したのは、私を女手一つで育ててくれたお母さんが重い病気になったから。
毎日毎日、朝から晩まで勉強してその合間にバイトに通って…奨学金を使い入学した医学部で私は必死になって勉強に励んだ。
今考えたらそんな私は若さから無茶苦茶な生活を過ごしていた。
生活費のためにバイトをし時間があれば自分で医学の知識を学び課題をこなす毎日。
そんな日々のなかやっとの思いで医学部を卒業し、医師国家試験の合格発表の日にそれは起きた。
私はお母さんに直接、合格したことを伝えようと嬉しさのなか原付に跨がりお母さんの入院している病院へと急いだ。
赤信号がもどかしく感じるほど、早くお母さんの所に行きたくて仕方ないと思ったのは幼かった頃以来だろう。
お母さん…絶対喜ぶ…
そう思いながらアクセルを回したその時………
ボールを追いかけてきた子供が道路に飛び出し、私はその子供を避けるためバイクのハンドルを切ると…
そのまま勢いよくバイクは横転し…
左肩に走る激痛と共に意識を失った。
私が目を覚ました時にはもう既に病室にいて、道路に飛び出した子供に怪我がなかった事を看護師さんから聞いて、私はホッとした事をよく覚えている。
しかし、そのあと聞いた医者からの言葉に私は耳を疑った。
肩の怪我が酷く日常生活には問題はないが、細かい作業や長時間の作業をするには問題が生じる可能性があると。
私は医者に外科医を目指している事を話し、何度も元の肩に戻してくれるよう頭を下げた。
しかし、医者は言った…それは難しいと…
私にとったらそれはもう…
絶望だった。
今まで必死で勉強をし、バイトをし、外科医を目指して寝る暇も惜しみ、青春を味わうこともなく全てをそこに捧げてきた。
なのに…私の夢は…いとも簡単に途切れてしまった。
それから私はまるで燃え尽き症候群にでもなったかのように退院しても毎日、家へと閉じこもりすべての事を放棄した。
もう…どうでもいいや…
頑張れば夢は叶うなんてテレビの中の人は笑顔で言うけれど…
叶う人間もいれば叶わない人間もいる。
私はただ叶わない側の人間だっただけの話…
私は益々腐っていき落ちぶれていったそんな時…幼なじみのテラが私の家にやってきた。
T「ヨナ久しぶり!入るよ~クッサ!なに!?汚いな~窓開けるよ~!!」
テラは私の様子を気にすることもなく部屋にドカドカと入り、窓を開けて散乱している物を片付けていく。
T「おばさん心配してたよ~ヨナもう怪我治ったんでしょ?病院の研修どうすんの?」
Y「外科医はもう無理なんだって…」
T「ふ~ん。なら、内科医?それとも小児科?いやヨナか小児科はないか~ならなんだろ?耳鼻科?」
Y「やめる。」
T「え?」
Y「医者は…もうやめるよ。」
私がそう言うとテラは真顔で私の顔をじーっと見たかと思ったらニカッと笑った。
T「そっか!!ならさ!私と一緒にケーキ屋さんやろう!!ね!?」
テラはそう言って紙袋から箱を取り出すと、私の前に沢山のケーキを並べていく。
T「ヨナどれがいい?これは私の得意なチーズケーキだよ?」
そんなマイペースなテラに言い返す言葉も見つからず、私がただぼんやりしているとテラは小さな声で言った。
T「甘いものってさ…悲しい時とか辛い時に食べると少しだけ幸せな気持ちになれるじゃん…みんながそうかは分からないけど子供頃、私が同級生から仲間外れにされて悲しくて泣いてたらヨナが泣くなって言って私にプリン…作ってくれたの覚えてる?私その味が忘れられなくて…悲しかったのにヨナのプリン食べたら幸せな気持ちになったんだよ…だからね?私もそんなケーキ屋さんになりたいな…って…少しでも辛かったり苦しかったりする気持ちを楽にしてあげられる…そんなケーキ屋さん。そこでヨナが一緒にあのプリン…作ってくれたら…私の夢…叶うんだけどな…」
そう言ったテラの作ったケーキを手に取り、私は無言のまま口に運んだ。
テラは少し驚きながら私を見ていて、私はそのケーキを食べた瞬間…涙が溢れ出した。
Y「なによこれ……」
T「え!?なに!?そんな不味い!?」
Y「涙が出るほど美味い……」
あの日、テラが私のために作ってくれた涙の味がするチーズケーキの味を私は一生忘れないだろう。
そして、今…
腐りかけた私を救ってくれたテラが初めて心から愛した男、ケイトが私の目の前で血を流して苦しんでいる。
私は何度も確認をして、手術で必要な道具を目で追う。
そして、私は言った。
Y「ケイトが言ったんだからね…途中でやめろなんて言うのはナシよ…」
私は深く息を吐くと、勢いよくケイトの肩に消毒液をぶっ掛けるとメスを手に取った。
微かに震える手は緊張しているからなのか…
肩の怪我の後遺症なのか今の私には分からない。
ただ、私がする事は今、ケイトの肩に埋まっている拳銃の弾を抜き止血すること…
息が荒くなるのを自分でコントロールし、メスをケイトの肩に入れると、布を噛んだケイトの身体が強張り、傷口から血が溢れだす。
ピンセットを突っ込み目を凝らすと弾が見え私はゆっくりと挟む。
小さく息を吐いて弾を取り出すとケイトの呻き声が部屋中に響いた。
Y「ケイト!弾は取れたよ!」
そうケイトに声をかけるとケイトは額から汗を流し何度も首を立てに振った。
今から麻酔なしでこの傷口を縫うのか…
辛そうなケイトを見てせめて麻酔さえあれば…そう私が思っていると勢いよく扉が開いた。
Y「…ジニさん…」
扉の向こうにはジニさんがいて、その横に立っていた女性が難しい顔のまま部屋の中へ入ろうとするとケイトの部下がそれを阻止する。
すると、ジニさんが口を開いた。
J「ヨナだけじゃケイトを救うのは難しい…ハウがいなきゃケイトはここまま死ぬぞ!?お前らは!それでもいいのか!!」
ジニさんがそう言うと渋々、部下たちは道を開けハウという人が私の横に来た。
H「弾は?」
Y「今取り出した。」
H「もしかして…医者?」
ハウという人は私の切った傷口を見てそう私に問いかける。
Y「まぁ…一応資格だけある…」
H「なら、手伝ってくれるよね。」
ハウという人はケイトの部下に鍵を渡し、麻酔を持ってくるよう伝えると手にゴム手袋をはめた。
つづく
私が医学の道を選び外科医を目指したのは、私を女手一つで育ててくれたお母さんが重い病気になったから。
毎日毎日、朝から晩まで勉強してその合間にバイトに通って…奨学金を使い入学した医学部で私は必死になって勉強に励んだ。
今考えたらそんな私は若さから無茶苦茶な生活を過ごしていた。
生活費のためにバイトをし時間があれば自分で医学の知識を学び課題をこなす毎日。
そんな日々のなかやっとの思いで医学部を卒業し、医師国家試験の合格発表の日にそれは起きた。
私はお母さんに直接、合格したことを伝えようと嬉しさのなか原付に跨がりお母さんの入院している病院へと急いだ。
赤信号がもどかしく感じるほど、早くお母さんの所に行きたくて仕方ないと思ったのは幼かった頃以来だろう。
お母さん…絶対喜ぶ…
そう思いながらアクセルを回したその時………
ボールを追いかけてきた子供が道路に飛び出し、私はその子供を避けるためバイクのハンドルを切ると…
そのまま勢いよくバイクは横転し…
左肩に走る激痛と共に意識を失った。
私が目を覚ました時にはもう既に病室にいて、道路に飛び出した子供に怪我がなかった事を看護師さんから聞いて、私はホッとした事をよく覚えている。
しかし、そのあと聞いた医者からの言葉に私は耳を疑った。
肩の怪我が酷く日常生活には問題はないが、細かい作業や長時間の作業をするには問題が生じる可能性があると。
私は医者に外科医を目指している事を話し、何度も元の肩に戻してくれるよう頭を下げた。
しかし、医者は言った…それは難しいと…
私にとったらそれはもう…
絶望だった。
今まで必死で勉強をし、バイトをし、外科医を目指して寝る暇も惜しみ、青春を味わうこともなく全てをそこに捧げてきた。
なのに…私の夢は…いとも簡単に途切れてしまった。
それから私はまるで燃え尽き症候群にでもなったかのように退院しても毎日、家へと閉じこもりすべての事を放棄した。
もう…どうでもいいや…
頑張れば夢は叶うなんてテレビの中の人は笑顔で言うけれど…
叶う人間もいれば叶わない人間もいる。
私はただ叶わない側の人間だっただけの話…
私は益々腐っていき落ちぶれていったそんな時…幼なじみのテラが私の家にやってきた。
T「ヨナ久しぶり!入るよ~クッサ!なに!?汚いな~窓開けるよ~!!」
テラは私の様子を気にすることもなく部屋にドカドカと入り、窓を開けて散乱している物を片付けていく。
T「おばさん心配してたよ~ヨナもう怪我治ったんでしょ?病院の研修どうすんの?」
Y「外科医はもう無理なんだって…」
T「ふ~ん。なら、内科医?それとも小児科?いやヨナか小児科はないか~ならなんだろ?耳鼻科?」
Y「やめる。」
T「え?」
Y「医者は…もうやめるよ。」
私がそう言うとテラは真顔で私の顔をじーっと見たかと思ったらニカッと笑った。
T「そっか!!ならさ!私と一緒にケーキ屋さんやろう!!ね!?」
テラはそう言って紙袋から箱を取り出すと、私の前に沢山のケーキを並べていく。
T「ヨナどれがいい?これは私の得意なチーズケーキだよ?」
そんなマイペースなテラに言い返す言葉も見つからず、私がただぼんやりしているとテラは小さな声で言った。
T「甘いものってさ…悲しい時とか辛い時に食べると少しだけ幸せな気持ちになれるじゃん…みんながそうかは分からないけど子供頃、私が同級生から仲間外れにされて悲しくて泣いてたらヨナが泣くなって言って私にプリン…作ってくれたの覚えてる?私その味が忘れられなくて…悲しかったのにヨナのプリン食べたら幸せな気持ちになったんだよ…だからね?私もそんなケーキ屋さんになりたいな…って…少しでも辛かったり苦しかったりする気持ちを楽にしてあげられる…そんなケーキ屋さん。そこでヨナが一緒にあのプリン…作ってくれたら…私の夢…叶うんだけどな…」
そう言ったテラの作ったケーキを手に取り、私は無言のまま口に運んだ。
テラは少し驚きながら私を見ていて、私はそのケーキを食べた瞬間…涙が溢れ出した。
Y「なによこれ……」
T「え!?なに!?そんな不味い!?」
Y「涙が出るほど美味い……」
あの日、テラが私のために作ってくれた涙の味がするチーズケーキの味を私は一生忘れないだろう。
そして、今…
腐りかけた私を救ってくれたテラが初めて心から愛した男、ケイトが私の目の前で血を流して苦しんでいる。
私は何度も確認をして、手術で必要な道具を目で追う。
そして、私は言った。
Y「ケイトが言ったんだからね…途中でやめろなんて言うのはナシよ…」
私は深く息を吐くと、勢いよくケイトの肩に消毒液をぶっ掛けるとメスを手に取った。
微かに震える手は緊張しているからなのか…
肩の怪我の後遺症なのか今の私には分からない。
ただ、私がする事は今、ケイトの肩に埋まっている拳銃の弾を抜き止血すること…
息が荒くなるのを自分でコントロールし、メスをケイトの肩に入れると、布を噛んだケイトの身体が強張り、傷口から血が溢れだす。
ピンセットを突っ込み目を凝らすと弾が見え私はゆっくりと挟む。
小さく息を吐いて弾を取り出すとケイトの呻き声が部屋中に響いた。
Y「ケイト!弾は取れたよ!」
そうケイトに声をかけるとケイトは額から汗を流し何度も首を立てに振った。
今から麻酔なしでこの傷口を縫うのか…
辛そうなケイトを見てせめて麻酔さえあれば…そう私が思っていると勢いよく扉が開いた。
Y「…ジニさん…」
扉の向こうにはジニさんがいて、その横に立っていた女性が難しい顔のまま部屋の中へ入ろうとするとケイトの部下がそれを阻止する。
すると、ジニさんが口を開いた。
J「ヨナだけじゃケイトを救うのは難しい…ハウがいなきゃケイトはここまま死ぬぞ!?お前らは!それでもいいのか!!」
ジニさんがそう言うと渋々、部下たちは道を開けハウという人が私の横に来た。
H「弾は?」
Y「今取り出した。」
H「もしかして…医者?」
ハウという人は私の切った傷口を見てそう私に問いかける。
Y「まぁ…一応資格だけある…」
H「なら、手伝ってくれるよね。」
ハウという人はケイトの部下に鍵を渡し、麻酔を持ってくるよう伝えると手にゴム手袋をはめた。
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