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30話

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私は涙が溢れる目でジユを見つめながら言った。

*「こんなこと絶対に許されるわけがない…ダメなのよ…なんでそれがジユには…分からないの?」

私がジユの手を払いのけながら言った。

J「俺は許されなくたって構わないよ。誰に否定されたって俺には関係ない。愛する人のそばにいることが罪だなんて俺は思わない。俺には時間がないんだ…残された時間をただ愛する人のそばにいたい…そう思っただけだよ。俺の病気のこと…オサくんから聞いたんだろ?」

*「…ジユ……」

ジユの口から改めて病気の話をされるとそれが現実なんだと思い知らされて涙がまた溢れ出す。

J「ルリを雇う時に俺が言った3カ月の試用期間…覚えてる…?」

*「え…?」

J「あれは俺の余命だよ…この1カ月、ルリと楽しく幸せにすごせたから…あと残ってる試用期間は2カ月。それはつまり…俺の余命があと2カ月ってこと…」

そんな…嘘でしょ…?あの試用期間は…そういう意味だったの?あと2カ月だなんて…そんなの…やだよ…ジユ…

J「だからさ?ずっと一緒にいてとは言わない。その時がくるまではさ…俺のそばにいてよ…お願い…ひとりにしないで…」

*「ジユ…やだよ…お願い…生きてよ…なんで…?なんで治療しないの!?」

私はジユの胸にしがみつき涙で言葉にならない。

J「俺さ…今まで何のために俺は生きてるだろって思ってた。だから、余命を宣告されてもなんとも思わなかった。でも、ルリと過ごすようになって…やっぱり生きたいって…朝起きたら病気が治ってたらいいのにな…って何度も何度も思ったよ…。でも、手術しても俺の病気は治らないから。ただの気休めのような手術をするぐらいならルリのそばにいたいと思った。だからルリ…ルリの人生の中の2か月を俺に…ちょうだい?」

*「バカ…ダメ!!私がいなくても生きなきゃダメ!!ちゃんと治療して生きるの…例えそこに私がいなくても生きてよ…手術が気休めな訳ないでしょ!?ちゃんと手術してよ…お願い。」

ジユは一筋の涙をこぼしながら少し微笑んで私を抱きしめた。

J「手術して治るなら…喜んで手術してるよ?ルリは俺の全てなんだからそばにいてくれなきゃダメ。もし、ルリがどうしても治療して少しでも生きる可能性を繋げて欲しいって言うならずっと俺のそばに居てよ…姉さんとして……」

ズルイよ…ジユ…そんな目は弟がする目じゃないんだよ…

*「ジユ…」

J「弟からの最初で最後のお願いだよ…俺に少しでも長く生きてほしいんだろ?」

*「………生きて欲しいよ………」

J「じゃ……俺のそばにいてくれるよね……?」

私はジユの言葉に弱々しく首を縦に振るとジユはニコッと笑った。

J「…じゃ、帰ろ?俺たちの家に…」

ジユは私の手に指を絡め歩き出す。

そして…私たちはまた…あの家に戻った。

つづく
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