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52話

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私はジユの涙を拭いながら話を続けた。

*「ジユはお父さんにそっくり…すごく似てるよ。」

J「でも、ルリは親父に会いたくなかったんだろ?」

*「怖かったの…子供の時のお父さんが大好きだったから…拒絶されたらどうしようって…それだけ私に愛情をくれた唯一の人だったから…でも、やっぱり私たちはお父さんに選ばれなかった人間で…今考えると…会っておけば良かったなって思う…」

母の愛情を知らない私にとって父からの愛情が唯一、私の救いだったから…

もし、再会して父に邪気にされるような事があったら…

私はきっと耐えられなかっただろう…

J「ルリ…実は俺…ルリに言わなきゃいけない事がある。」

私にはジユの目がとても悲しそうで…不安そうに見えた。

*「…なに…?」

J「ルリはさ…俺が弟だって知っても…男として愛したい…そばにいたいって思ってくれたよね…?」

*「うん…」

 J「もし…親父がルリの本当の父親じゃなかったら…ルリはもう…親父のこと大好きではなくなってしまう?ルリと親父の大切な想い出は全てなかった事になってしまうのかな…?」

*「え………どういうこと?」

静かな病室で私たちの声だけが響いていた。

J「俺たち…………異母姉弟じゃないんだよ…」

ジユはそう言って少し寂しそうに笑った。

*「え………?」

J「ルリもトモキも…俺と異母姉弟じゃなかった俺とは血の繋がりがなかった…ルリ達は親父と血縁関係はないんだよ。」

*「うそ…」

J「ホント…DNA鑑定したから間違いないよ。ルリ………そんな悲しい顔して…やっぱり…俺が弟じゃない喜びよりも…父親という存在を失う悲しみの方が大きい…?」

ジユの目は涙が溢れていてポロポロとシーツに落ちていく。

*「分からない…お父さんが私達お父さんじゃないんだって思ったら凄く悲しいのに……ジユと血が繋がってないんだって思ったら……凄くホッとした…」

J「ルリごめんね…きっと、親父と血の繋がりがないと知ったらルリがショック受けるって分かってから言えなかった。何度も言わなきゃって思ったんだ…でも…ルリの大切な想い出を俺が真実を伝えることで壊してしまいそうで怖くて…言えなかった。」

*「ジユ…」

J「だけどルリが俺を弟だと知っても男として俺を愛させてほしいって言ってくれた時…この人なら真実を伝えてもきっと今までと変わりなく想い出も親父のことも大切に思ってくると信じて…真実を伝えようとしたのにルリが行方不明になるし…」

*「ごめん…ごめんね……ありがとう…」

J「ルリ…俺こそもっと早く伝えてあげれなくてごめん…」

私の目からポロポロと落ちる涙にジユは少し戸惑っていた。


つづく
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