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84話
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ルリサイド
絶望とはきっとこういう事を言うのだろう。
なんであの時…マルタに行かせてしまったんだろか…
悔やんでも悔やみきれない。
全身から血の気がひいて行くのがわかった。
*「…リンちゃんは?怪我大丈夫なの?」
T「うん…無事みたい…」
*「今から行ってあげなさい…リンちゃんの所に…」
T「姉ちゃん…何言ってんの!!姉ちゃんを1人にできるわけないだろ?」
*「あんたはバカなの?大切な人が今、危険な目に遭ったんだよ?あんたがリンちゃんのそばにいてあげなきゃどうするんのよ…私は1人で大丈夫だから…あなたはリンちゃんの所に行ってあげなさい。」
私はトモキの背中を押してそう言うと、トモキは目に涙を溜めながら準備をした。
T「姉ちゃん……」
*「大丈夫だから…行ってあげて…私はオサからの連絡待ってるから…」
T「姉ちゃんごめん……」
*「うん。気をつけね…」
T「何かあったらすぐ連絡して?俺も何か分かったらすぐ連絡するから…」
*「分かったよ…」
そうして私はトモキの背中を見送った。
リビングに飾られたジユの写真を見てため息をひとつ落とす。
お腹の子がまるで私を励ますかのようにポコポコと動いてる。
そっとそのお腹に手を当てて話しかける…
*「大丈夫…きっとパパは大丈夫だよね…?そうだ……一緒にあそこに行こっか…そうしようね?」
それに応えるかのように赤ちゃんもポコポコと動く。
私は上着を着てまだなんの連絡もないスマホを持ち…家を出た。
ジユと出会って色々あったけど私は幸せすぎてあの場所に行くことがなくなっていた。
ジユと出会う前は何か辛いことがあるたびにあそこに行っていたのに…
お腹を撫でてゆっくりと歩きながらあの丘に向かう…
久しぶりに訪れたその場所に懐かしさがこみ上げた。
この丘から見るこの景色は何ヶ月ぶりだろうか…
晴れ渡る空が憎くなるほどに綺麗だった。
この丘に来るときはいつも決まって辛いことがあった時だった…
なのに今思い出すのは辛いことよりもジユと出会ったあの日の出来事…
母に連れられてやってきたこの丘で彼と出会った。
生意気な笑顔を見せた彼は想像できないほどの大きい闇を抱えていていた。
私は体の中に溜まった不安をかき消すように深呼吸をする。
空を見上げると不思議と涙が一筋…こぼれ落ちた。
*「お父さん…お願い…ジユを助けて…」
私は首元に今はない白詰草のネックレスを思い浮かべて空に祈った。
心を失ってしまっていると思い込んでいた私にはちゃんと人を愛して想い募らせる事ができる心があった。
あの日、私はこの綺麗な青空を見てふと思った何の為に生まれてきたのか…何の為に生きているのか…
今ならわかる…きっとそれはジユと出会うためなんだと。
特に幸せでもなかった私の人生に幸せを教えてくれた大好きな人。
私よりも私のことを愛してくれる…
ジユという男。
きっと、今の私は彼なしではもう…
生きていくことは難しい。
綺麗な青だった空がオレンジに色づき…
薄っすらと月が姿をあらわす…
*「まだ連絡…来ないね…もし…パパが帰って来なかったら…ママと一緒にパパのとこに…行こうか………」
時間の経過と共に残酷な現実が私の目の前に見え始め…涙がこぼれる。
なんで…なんでなの…
会いたいよ…ジユ…
早く帰ってくるって…私と約束したじゃん…
すると…突然…後ろから声がした。
つづく
絶望とはきっとこういう事を言うのだろう。
なんであの時…マルタに行かせてしまったんだろか…
悔やんでも悔やみきれない。
全身から血の気がひいて行くのがわかった。
*「…リンちゃんは?怪我大丈夫なの?」
T「うん…無事みたい…」
*「今から行ってあげなさい…リンちゃんの所に…」
T「姉ちゃん…何言ってんの!!姉ちゃんを1人にできるわけないだろ?」
*「あんたはバカなの?大切な人が今、危険な目に遭ったんだよ?あんたがリンちゃんのそばにいてあげなきゃどうするんのよ…私は1人で大丈夫だから…あなたはリンちゃんの所に行ってあげなさい。」
私はトモキの背中を押してそう言うと、トモキは目に涙を溜めながら準備をした。
T「姉ちゃん……」
*「大丈夫だから…行ってあげて…私はオサからの連絡待ってるから…」
T「姉ちゃんごめん……」
*「うん。気をつけね…」
T「何かあったらすぐ連絡して?俺も何か分かったらすぐ連絡するから…」
*「分かったよ…」
そうして私はトモキの背中を見送った。
リビングに飾られたジユの写真を見てため息をひとつ落とす。
お腹の子がまるで私を励ますかのようにポコポコと動いてる。
そっとそのお腹に手を当てて話しかける…
*「大丈夫…きっとパパは大丈夫だよね…?そうだ……一緒にあそこに行こっか…そうしようね?」
それに応えるかのように赤ちゃんもポコポコと動く。
私は上着を着てまだなんの連絡もないスマホを持ち…家を出た。
ジユと出会って色々あったけど私は幸せすぎてあの場所に行くことがなくなっていた。
ジユと出会う前は何か辛いことがあるたびにあそこに行っていたのに…
お腹を撫でてゆっくりと歩きながらあの丘に向かう…
久しぶりに訪れたその場所に懐かしさがこみ上げた。
この丘から見るこの景色は何ヶ月ぶりだろうか…
晴れ渡る空が憎くなるほどに綺麗だった。
この丘に来るときはいつも決まって辛いことがあった時だった…
なのに今思い出すのは辛いことよりもジユと出会ったあの日の出来事…
母に連れられてやってきたこの丘で彼と出会った。
生意気な笑顔を見せた彼は想像できないほどの大きい闇を抱えていていた。
私は体の中に溜まった不安をかき消すように深呼吸をする。
空を見上げると不思議と涙が一筋…こぼれ落ちた。
*「お父さん…お願い…ジユを助けて…」
私は首元に今はない白詰草のネックレスを思い浮かべて空に祈った。
心を失ってしまっていると思い込んでいた私にはちゃんと人を愛して想い募らせる事ができる心があった。
あの日、私はこの綺麗な青空を見てふと思った何の為に生まれてきたのか…何の為に生きているのか…
今ならわかる…きっとそれはジユと出会うためなんだと。
特に幸せでもなかった私の人生に幸せを教えてくれた大好きな人。
私よりも私のことを愛してくれる…
ジユという男。
きっと、今の私は彼なしではもう…
生きていくことは難しい。
綺麗な青だった空がオレンジに色づき…
薄っすらと月が姿をあらわす…
*「まだ連絡…来ないね…もし…パパが帰って来なかったら…ママと一緒にパパのとこに…行こうか………」
時間の経過と共に残酷な現実が私の目の前に見え始め…涙がこぼれる。
なんで…なんでなの…
会いたいよ…ジユ…
早く帰ってくるって…私と約束したじゃん…
すると…突然…後ろから声がした。
つづく
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