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第七話
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カケルサイド
腕の痛みに耐えながら俺は昨日のことを思い出していた。
あの人に出会ったあの夜は不思議な夜だった…
木々の隙間から見えた空は雲ひとつなく、煌々と光る月がとても綺麗に出ていた。
それなのに雨がポツポツと降り始め、湿った土の匂いが俺の鼻を刺激し、なぜか俺の胸をぎゅっと締めつけた。
いつもと同じひと気のない茂みを走り、濡れていく服が体にまとわりつく不快感にイラつきながら家路を急いでいると、ちょうど人が倒れているのが目に入り俺はゆっくりと立ち止まった。
雨に打たれぐったりと濡れた落ち葉の上に倒れ込み、雨の匂いに混ざって人間の匂いがした。
それを感じた俺は内心、ちょうど良かった…そう思った。
それはなぜか?
なぜならBlue一族が暴れないよう、purple一族の俺たちが隔離された場所を抜け出し、毎日のように身元不明の死体をこの森に持ち帰るのが俺の仕事だから。
しかし、国の規制が厳しくなり、その日は全く身元不明の死体が見つからずに諦めていた所に目の前で倒れている人間がいてくれたから。
俺は近づきうつ伏せになっているその人間を仰向けにし、思わず俺は透明感あるその美しさに驚いた。
K「マジかよ…」
痛々しく額から血を流しているその人…
月明かりに照らされてよりその美しさが際立つ…
目の前に倒れているのは自分と同じ男のはずなのに、まるで眠り姫のように長いまつ毛を濡らし俺を誘惑した。
これがひと目惚れっていうのだろうか?
それとも孤独だった俺が寂しさのあまりそう錯覚してしまっただけなのだろうか?
俺はその人を抱えて自分の家に戻り、緊張から震える手でその人が風邪をひかないよう濡れた服を脱がした。
本来なら命を奪う立場なのに風邪の心配をしている時点でもう…俺はあの人を特別な目で見ていたんだと思う。
ドキドキと高鳴りうるさく動く俺の心臓に、俺にも人を愛する心があるんだとそのとき初めて気づかされた。
スヤスヤと眠るその愛おしい顔をただ見つめていたかった…
このまま戻らなきゃいいのに…
俺の側にずっといればいいのに…
たった数時間前に出会った人にそう想いを募らせるのは、今まで俺が誰からも愛されていなかったからだろうか?
空に浮かぶ月を見上げながら俺はツキヤとの出会いを思い返していた。
K「ツキヤ…逢いたいよ…」
その名を知ってしまった俺は今まで無意味だと思っていた愛に貪欲になってしまう。
あなたをもっと知りたい…
あなたにもっと触れたい…
どうか…無事でいてくれ…
ツキヤ…ツキガキレイだよ…
恐怖心を感じるほど大きな満月にそう祈ると、止め処なく流れだす紫がかった血液を見つめながら俺はそのまま意識を手放した。
つづく
腕の痛みに耐えながら俺は昨日のことを思い出していた。
あの人に出会ったあの夜は不思議な夜だった…
木々の隙間から見えた空は雲ひとつなく、煌々と光る月がとても綺麗に出ていた。
それなのに雨がポツポツと降り始め、湿った土の匂いが俺の鼻を刺激し、なぜか俺の胸をぎゅっと締めつけた。
いつもと同じひと気のない茂みを走り、濡れていく服が体にまとわりつく不快感にイラつきながら家路を急いでいると、ちょうど人が倒れているのが目に入り俺はゆっくりと立ち止まった。
雨に打たれぐったりと濡れた落ち葉の上に倒れ込み、雨の匂いに混ざって人間の匂いがした。
それを感じた俺は内心、ちょうど良かった…そう思った。
それはなぜか?
なぜならBlue一族が暴れないよう、purple一族の俺たちが隔離された場所を抜け出し、毎日のように身元不明の死体をこの森に持ち帰るのが俺の仕事だから。
しかし、国の規制が厳しくなり、その日は全く身元不明の死体が見つからずに諦めていた所に目の前で倒れている人間がいてくれたから。
俺は近づきうつ伏せになっているその人間を仰向けにし、思わず俺は透明感あるその美しさに驚いた。
K「マジかよ…」
痛々しく額から血を流しているその人…
月明かりに照らされてよりその美しさが際立つ…
目の前に倒れているのは自分と同じ男のはずなのに、まるで眠り姫のように長いまつ毛を濡らし俺を誘惑した。
これがひと目惚れっていうのだろうか?
それとも孤独だった俺が寂しさのあまりそう錯覚してしまっただけなのだろうか?
俺はその人を抱えて自分の家に戻り、緊張から震える手でその人が風邪をひかないよう濡れた服を脱がした。
本来なら命を奪う立場なのに風邪の心配をしている時点でもう…俺はあの人を特別な目で見ていたんだと思う。
ドキドキと高鳴りうるさく動く俺の心臓に、俺にも人を愛する心があるんだとそのとき初めて気づかされた。
スヤスヤと眠るその愛おしい顔をただ見つめていたかった…
このまま戻らなきゃいいのに…
俺の側にずっといればいいのに…
たった数時間前に出会った人にそう想いを募らせるのは、今まで俺が誰からも愛されていなかったからだろうか?
空に浮かぶ月を見上げながら俺はツキヤとの出会いを思い返していた。
K「ツキヤ…逢いたいよ…」
その名を知ってしまった俺は今まで無意味だと思っていた愛に貪欲になってしまう。
あなたをもっと知りたい…
あなたにもっと触れたい…
どうか…無事でいてくれ…
ツキヤ…ツキガキレイだよ…
恐怖心を感じるほど大きな満月にそう祈ると、止め処なく流れだす紫がかった血液を見つめながら俺はそのまま意識を手放した。
つづく
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