【BL】月光〜絶望から救ってくれたのはキミだった〜

樺純

文字の大きさ
7 / 18

第七話

しおりを挟む
カケルサイド

腕の痛みに耐えながら俺は昨日のことを思い出していた。

あの人に出会ったあの夜は不思議な夜だった…

木々の隙間から見えた空は雲ひとつなく、煌々と光る月がとても綺麗に出ていた。

それなのに雨がポツポツと降り始め、湿った土の匂いが俺の鼻を刺激し、なぜか俺の胸をぎゅっと締めつけた。

いつもと同じひと気のない茂みを走り、濡れていく服が体にまとわりつく不快感にイラつきながら家路を急いでいると、ちょうど人が倒れているのが目に入り俺はゆっくりと立ち止まった。

雨に打たれぐったりと濡れた落ち葉の上に倒れ込み、雨の匂いに混ざって人間の匂いがした。

それを感じた俺は内心、ちょうど良かった…そう思った。

それはなぜか?

なぜならBlue一族が暴れないよう、purple一族の俺たちが隔離された場所を抜け出し、毎日のように身元不明の死体をこの森に持ち帰るのが俺の仕事だから。

しかし、国の規制が厳しくなり、その日は全く身元不明の死体が見つからずに諦めていた所に目の前で倒れている人間がいてくれたから。

俺は近づきうつ伏せになっているその人間を仰向けにし、思わず俺は透明感あるその美しさに驚いた。

K「マジかよ…」

痛々しく額から血を流しているその人…

月明かりに照らされてよりその美しさが際立つ…

目の前に倒れているのは自分と同じ男のはずなのに、まるで眠り姫のように長いまつ毛を濡らし俺を誘惑した。

これがひと目惚れっていうのだろうか?

それとも孤独だった俺が寂しさのあまりそう錯覚してしまっただけなのだろうか?

俺はその人を抱えて自分の家に戻り、緊張から震える手でその人が風邪をひかないよう濡れた服を脱がした。

本来なら命を奪う立場なのに風邪の心配をしている時点でもう…俺はあの人を特別な目で見ていたんだと思う。

ドキドキと高鳴りうるさく動く俺の心臓に、俺にも人を愛する心があるんだとそのとき初めて気づかされた。

スヤスヤと眠るその愛おしい顔をただ見つめていたかった…

このまま戻らなきゃいいのに…

俺の側にずっといればいいのに…

たった数時間前に出会った人にそう想いを募らせるのは、今まで俺が誰からも愛されていなかったからだろうか?

空に浮かぶ月を見上げながら俺はツキヤとの出会いを思い返していた。

K「ツキヤ…逢いたいよ…」

その名を知ってしまった俺は今まで無意味だと思っていた愛に貪欲になってしまう。

あなたをもっと知りたい…

あなたにもっと触れたい…

どうか…無事でいてくれ…

ツキヤ…ツキガキレイだよ…

恐怖心を感じるほど大きな満月にそう祈ると、止め処なく流れだす紫がかった血液を見つめながら俺はそのまま意識を手放した。


つづく
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

捨てられた生贄オメガ、魔王城で極上の『巣作り』始めます!~不眠症の魔王様、私のクッションで爆睡して溺愛モードに突入~

水凪しおん
BL
「役立たずのオメガ」として冷遇され、血も涙もない魔王への生贄として捨てられたリノ。 死を覚悟して連れてこられた魔王城は、寒くて硬くて、居住性最悪のブラック環境だった!? 「こんなところで寝られるか!」 極限状態で発動したオメガ特有の『巣作り本能』と、神業レベルの裁縫スキルが火を噴く! ゴミ同然の布切れをフカフカのクッションに、冷たい石床を極上のラグマットにリフォーム。 すると、不眠症で常にイライラしていた魔王ザルドリスが、リノの作った「巣」のあまりの快適さに陥落してしまい……? 「……貴様、私を堕落させる気か」 (※いいえ、ただ快適に寝たいだけです) 殺されるどころか、魔王様に気に入られ、気付けば城中がリノの虜に。 捨てられた生贄オメガが、裁縫一つで魔王城を「世界一のマイホーム」に変える、ほのぼの逆転溺愛ファンタジー!

悪役令嬢の兄に転生!破滅フラグ回避でスローライフを目指すはずが、氷の騎士に溺愛されてます

水凪しおん
BL
三十代半ばの平凡な会社員だった俺は、ある日、乙女ゲーム『君と紡ぐ光の協奏曲』の世界に転生した。 しかも、最推しの悪役令嬢リリアナの兄、アシェルとして。 このままでは妹は断罪され、一家は没落、俺は処刑される運命だ。 そんな未来は絶対に回避しなくてはならない。 俺の夢は、穏やかなスローライフを送ること。ゲームの知識を駆使して妹を心優しい少女に育て上げ、次々と破滅フラグをへし折っていく。 順調に進むスローライフ計画だったが、関わると面倒な攻略対象、「氷の騎士」サイラスになぜか興味を持たれてしまった。 家庭菜園にまで現れる彼に困惑する俺。 だがそれはやがて、国を揺るがす陰謀と、甘く激しい恋の始まりを告げる序曲に過ぎなかった――。

追放された味見係、【神の舌】で冷徹皇帝と聖獣の胃袋を掴んで溺愛される

水凪しおん
BL
「無能」と罵られ、故郷の王宮を追放された「味見係」のリオ。 行き場を失った彼を拾ったのは、氷のような美貌を持つ隣国の冷徹皇帝アレスだった。 「聖獣に何か食わせろ」という無理難題に対し、リオが作ったのは素朴な野菜スープ。しかしその料理には、食べた者を癒やす伝説のスキル【神の舌】の力が宿っていた! 聖獣を元気にし、皇帝の凍てついた心をも溶かしていくリオ。 「君は俺の宝だ」 冷酷だと思われていた皇帝からの、不器用で真っ直ぐな溺愛。 これは、捨てられた料理人が温かいご飯で居場所を作り、最高にハッピーになる物語。

【完結】巷で噂の国宝級イケメンの辺境伯は冷徹なので、まっっったくモテませんが、この度婚約者ができました。

明太子
BL
オーディスは国宝級イケメンであるにも関わらず、冷徹な性格のせいで婚約破棄されてばかり。 新たな婚約者を探していたところ、パーティーで給仕をしていた貧乏貴族の次男セシルと出会い、一目惚れしてしまう。 しかし、恋愛偏差値がほぼ0のオーディスのアプローチは空回りするわ、前婚約者のフランチェスカの邪魔が入るわとセシルとの距離は縮まったり遠ざかったり…? 冷徹だったはずなのに溺愛まっしぐらのオーディスと元気だけどおっちょこちょいなセシルのドタバタラブコメです。

異世界転移した元コンビニ店長は、獣人騎士様に嫁入りする夢は……見ない!

めがねあざらし
BL
過労死→異世界転移→体液ヒーラー⁈ 社畜すぎて魂が擦り減っていたコンビニ店長・蓮は、女神の凡ミスで異世界送りに。 もらった能力は“全言語理解”と“回復力”! ……ただし、回復スキルの発動条件は「体液経由」です⁈ キスで癒す? 舐めて治す? そんなの変態じゃん! 出会ったのは、狼耳の超絶無骨な騎士・ロナルドと、豹耳騎士・ルース。 最初は“保護対象”だったのに、気づけば戦場の最前線⁈ 攻めも受けも騒がしい異世界で、蓮の安眠と尊厳は守れるのか⁉ -------------------- ※現在同時掲載中の「捨てられΩ、癒しの異能で獣人将軍に囲われてます!?」の元ネタです。出しちゃった!

【16話完結】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている

キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。 今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。 魔法と剣が支配するリオセルト大陸。 平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。 過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。 すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。 ――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。 切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。 お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /チャッピー AI比較企画作品

【連載版あり】「頭をなでてほしい」と、部下に要求された騎士団長の苦悩

ゆらり
BL
「頭をなでてほしい」と、人外レベルに強い無表情な新人騎士に要求されて、断り切れずに頭を撫で回したあげくに、深淵にはまり込んでしまう騎士団長のお話。リハビリ自家発電小説。一話完結です。 ※加筆修正が加えられています。投稿初日とは誤差があります。ご了承ください。

本当に悪役なんですか?

メカラウロ子
BL
気づいたら乙女ゲームのモブに転生していた主人公は悪役の取り巻きとしてモブらしからぬ行動を取ってしまう。 状況が掴めないまま戸惑う主人公に、悪役令息のアルフレッドが意外な行動を取ってきて… ムーンライトノベルズ にも掲載中です。

処理中です...