おまけの神子は帰ることができない~平凡な筈の俺が美形たちに囲い込まれる話〜

宮沢ましゅまろ

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◆第2章 おまけの神子とにゃんこ(?)とワイルドエロ傭兵

苦手な男④-2

 でも、確かに外部への醜聞はさすがにまずいよなぁ。ずるがしこくても、伊藤に腹芸は多分無理だから、絶対失礼な態度を相手に取る。

 神子の伊藤はノーダメージだろうが、周りはそうはいかないんだろうな。

「都合の良い時だけ、利用したいというのはおこがましいんじゃないか?」

 俺が遠い目をしてそんなことを考えていると、すべての手紙を読み終わったラインハルトは、そう言って手紙をテーブルにぽいと放り投げた。異世界特有の少し厚みのある紙が、ぱさりと音をたてて地面に落ちるのを見て俺は慌てた。

「っ、ってラインハルト、いくらなんでもそんな雑に扱うのはまずいんじゃないか? 王太子殿下だぞ?」

 いつもは自身よりも下の相手だからともかくとして、フェリックス王太子殿下は公爵であるラインハルトに上から意見ができる数少ない相手の筈だ。一応は神子を除けば相手は最高権力者の長子にあたる人物なんだから。

 あまりに不遜な態度を取れば、ラインハルトもただではすまないのではないか。そんな不安から俺はそう言った。

 だが、ラインハルトは俺の様子に「問題ない」と不機嫌な様子で言った。

「神子と違ってフェリックス王太子殿下は、王族の一人にすぎない。他国のような完全な世襲制の王位ならともかく、下手をうてば不利な立場になるのはあちらだ。神子も現れた以上、選択肢は無限にあるからな。自身が行った悪行は、自分自身にそのまま返ってくる。神子に選ばれなければ、今の地位にいることはできないあの方が、私に真っ向から噛みつくことはありえん」

「……うわぁ」

 神子が選ぶとはいえ、やろうと思えば周りが色々と手を打って候補にさえないこともできるということだ。伊藤って別に王太子殿下が一番好きってわけでもないし、多分そうなってもドラマチックに二人が結ばれるみたいな展開はなさそう。

 何となくだが、この国の王族って現実世界の中間管理職を彷彿とさせる。こう、偉いような偉くないような感じの立ち位置っていうか。王族って普通は一番偉いんだろうに……特殊な王位継承をしているからだろうな。

 地球でいう大統領とか、どちらかといえばそっちの方が近いのかもしれない。

 西洋ヨーロッパの貴族の世襲方法は俺のいた世界でも十分ややこしいけど、やはりこの世界はもっとややこしいなと改めて思った。

「こんなふざけた手紙を徹に出すなど……私の方が噛みつきたいところだ。まぁ、さすがにあの神子には要人の歓待は出来ないだろうと考えられるだけの理性が残っていたことはほっとしているが……」

 ラインハルト、結構言うな……。

「っ……王太子殿下も、今回徹様にお願いをするのは心苦しいとは仰っておりました」

 不機嫌なラインハルトに、従者の男性がやや引きつった表情でそう答えた。ラインハルトが言う通り、強い態度には出られないらしいというのは本当のようだ。

 いや、でも絶対心苦しいは嘘だろうなと俺は思う。あの人がそんな殊勝なこと思っているわけがない。

 どっちかっていうと、頼むのは癪だが仕方ない。一応は低姿勢でへりくだってやるか! という思いが透けて見えるよ、この手紙。うん、断言できる。俺に渡すにしては丁寧な手紙を寄越したのも仕方なく、だろうし。

「ふん。あの方がそんなタマか」

 ラインハルトの目がすうっと細められた。だよねー! と俺は心の中で激しく同意した。

 ラインハルトの態度は、敬っているのか馬鹿にしているのか微妙な感じだが、そういえばラインハルトと王太子殿下って結構仲が良い?んだよな。確か。王子たちと交流があったって、王太子殿下もやっぱり普通は入るだろうし。
 前聞いた際のニュアンスだと、友人っぽい感じに受け取ったんだけど、違うんだろうか?

 俺の味方につくようなって以降はあまり関りは持っていないようだし、前に一緒に居るのを見かけた際も別に親しそうには見えなかったんだよね。

 貴族としての友人と、俺が考える友人は考え方がちょっと違うのかもしれないけどさ。

 でも、だ。今回に関してはラインハルトの権力を持ってしても断るのは難しいような気配がひしひしとする。

 今回の手紙、いくら内心では利用してやろうみたいな下心や企みがあるとはいえ、俺にはラインハルトがついているんだからそんなの看破されるのは分かってると思うんだよ。

 でも、出してきたってことはばれても別に良いと思っているってことだ。押し切れると思っている。

「……ラインハルト様、今回はどうしても成功させなければいけない夜会なのです」

 使者の男性は、少し震えた声でそう言った。演技、ではおそらくないんだろう。実際に、手紙の内容的には確かに重要なものだし。

 俺は普段、何らかの思惑がある第三者から夜会などに誘われたとしても大抵はラインハルトの名前を出してすべて断っている。夜会に出るのが嫌だとも伝えていたし、ラインハルトはその点を考慮して周りにも言い含めてくれてもいた。だから、今まで俺は嫌な夜会は完全無視が出来ていたんだ。

 だから、今回も本当に断りたい! 断りたいんだけど……!

(俺は小心者なんだよ……!)

 俺は内心で叫んだ。

 王太子殿下の性格上、俺に嫌がらせをするためだけに呼び出すというのは考えにくいので、罠という線はないだろう。そうなると、今回は本当に困っているだけだとは思う。
 厄介な顧客にあたってしまった時の絶望、それを思い出すと俺の良心が痛むのもある。

 だが、一番は断った後どうなるのか? という不安だ。

 断った場合、王太子殿下が俺に対して何かする可能性は高い。

 合理主義者だから現時点では意味のない嫌がらせはしてこないけど、必要があれば絶対にやってくると思う。あの人は。

 嫌がらせなんて可愛いレベルではなく、徹底的に。

 俺はぶるりと今更ながら体を震わせた。

 ラインハルトは俺を守ってくれるだろうが、回避できる危険は何事もなく回避してしまいたい。少し我慢すれば平和が手に入るのなら、俺はそっちを選ぶ。

 だから……。

「参加します……!」

 俺はそう気づけば申し出ていた。

 勿論、ラインハルトには叱られた。何故、そんな安請け合いするのかと。しかし、一度言った言葉は引っ込めることは出来ず、俺とラインハルトはほっとした様子で帰っていく使者の男性を見送った。

 最終的に、俺と夜会に出れると喜んでいたラインハルトに急遽任務が入ってしまったのは、俺の自業自得だったのかもしれない。





――9/22――

全ての修正完了しました。
大変お待たせいたしましたが、1日1回の更新を目指して、こつこつやっていきますのでよろしくお願いします。
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