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1章 怪異・不可思議
73「引越し」
しおりを挟む会社を定年退職し、今は老後を楽しんでいる
男性から聞いた話。
彼は若い頃からゴルフを趣味としていて、
定年後はそれが仲間との数少ないイベントと
なっていた。
「でもまあ、みんな年だからね。
一月に2回あればいいくらいで」
ある時、広いコースを回っていた彼は、
急な天候の悪化で雨に見舞われた。
他の仲間とははぐれており、彼は適当な大きな
木を見つけ、その下で雨宿りする事にしたという。
「嫌な予感がしてね。
雷が鳴り始めて、これはマズイかなぁって」
避難する小屋はあったものの、距離にしてそこまで
300メートルはある。
音と光の間隔は段々短くなっているような気がして、
彼は迷いに迷っていた。
ふと、彼の視線をさえぎった物があった。
というより、いきなり降ってきたような
感じだったという。
子供が立っていた。
こちらに小さな背中を向けている。
年は7、8才だろうか、白地に赤い花柄の着物に
ハカマをはいていた。
その子供はてってって、と雨の中を走り出した。
危ない、と思って追いかけようとした時、その
子供が振り返り、言った。
「行かないの?
そこにはもういちゃいけないんだよ?」
わけがわからず、とにかくその子供を
追いかける事にした。
どうやら、小屋の方向に向かっているらしい。
保護者か誰かいるのかもしれない、
そう思っていると、背後に轟音と光が走った。
「それまで雨宿りしていた木に雷が落ちてね。
あれはびっくりするしかなかった」
子供は―――
そう思って向き直ると、落雷など気にしないとでも
いうように、構わず遠ざかっていく後姿が見えた。
とにかく小屋までの方向は同じなので、追いかける
形で彼は子供の後ろを走った。
と、小屋まで2、30メートルまで来た時、
子供が突然方向を変えた。
え? と思う間もなく、子供は近くにあった木に
頭から飛び込んだという。
そのまま子供の姿は木の中へと消え、後には彼一人が
残された。
「とにかくこっちも小屋の中に入ってさ。
雷がおさまるのを待つしかなかった」
雨が止んだ後、彼は子供が消えた木を探そうと
思ったが、もうどれがどの木やらわからず
断念したという。
「何か“宿る”っていうのはわかるけど、
引越しも出来るものなんだねえ」
そのゴルフ場は今も健在で、彼も時々通っている。
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