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1章 怪異・不可思議
82「ヌシ」
しおりを挟む聞いた話。
知り合いのいるお寺に来た、30代の男性と
その両親の話。
雑談を進める内、こんな事を言い出した。
「そういえば、家にはヌシがいたなあ」
何の事かと聞くと、幼い頃、よく雨が降った時などに、
両親が彼に『ヌシが来たよ』と庭を見せた。
庭には、大きなガマ蛙が一匹、こちらをにらむように
構えていた。
微笑ましい話だと思って聞いていると、
「何だそれ?
私らはそんな事知らないけど」
両親の方は覚えていないらしい。
彼は、いやよく両親が見せてくれた、
と言ってきかない。
「ああ、思い出したわ。
そういえば、ホントにヌシだと信じていたわねえ」
母親が笑い飛ばすと、他もつられて笑った。
それでお開きとなり、一家を送り出す時、
最後に残った母親がポツリと言った。
「あの子が小さい頃って、2人とも共働きで
アパート住まいだったはずなんですけど……
庭って、いったいどこの事を言っているん
でしょうね?」
庭がどこというよりも、共働き―――
彼にヌシを見せたその両親が本当の両親だったのか
という方が気になるが、それは口には出せなかった。
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