【完結】百怪

アンミン

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3章 怪異にまつわる雑談・雑考

23「目」

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・現代怪談話・伝聞

――――――――――――――――――――――――

とある中堅どころのIT業界の社員の話。

「ITといえばパソコン中心で―――
 ずっとデスクワークで、業務自体それほど
 厳しいイメージは無いでしょうけど。

 まあ、ITドカタっていう言葉もありますし」

アラフォーになるその男性はそのドカタの方で、
バブル崩壊後の時はそれこそサビ残サビ出勤など、
ブラック企業の一通りの洗礼を受けたという。

「終電で帰れたらまだいい方でね。
 月イチの休日の前は、午前三時くらいに
 歩いて数駅の家まで帰った事もあった」

それでも都会の夜は長く―――
不景気のせいか遅くまでやっている店もあり、
それに群がる猫たちも多くいた。

「当時はそれが唯一の癒しっていうかね。
 100円で買えるオヤツとか持って、
 猫たちにあげていたんだ」

いつものように猫たちにピューレ状のオヤツを
与えていたところ……

「よう、こんなに遅くまで大変だなあ」

仲が良い、というほどの事はないが、
月イチくらいで出会うホームレスの人が、
いつの間にか後ろにいた。

たいていこういう時は、愛想笑いをして
そのまま通り過ぎるのが常なのだが……

「急に猫たちがね。
 『フシャーッ!!』って反応したんだよ」

それを見た初老のホームレスは、

「悪ぃ悪ぃ。
 どうも俺は好かれてないみたいでなぁ。
 アンタより付き合いは長いと思うんだけどよぉ」

苦笑いすると、彼はそのまま立ち去った。
いったいどうしたのかと思って猫を見ると、

「目ってさ、鏡みたいなものなんだよね。
 ずーっとそのホームレスの方をジッと見ている
 猫の目を、のぞき込むような形になっちゃって」

その猫の瞳に写っていたのは―――
ホームレスの背後、肩の上に……
後をつけるように浮いていた、何人もの
人間の首だった。
男女問わずそれは、初老の男性の移動に
合わせて遠ざかっていった。

彼は声をかける事も振り返る事も出来ず、
ただジッと猫の目を見つめていたという。

「失敗した人って、いろいろあったん
 だろうけど……
 恨みだけは買わないようにしようと
 思っていますよ」

彼は今、そこそこの役職に就いているが、
それだけは肝にめいじているという。


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