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3章 怪異にまつわる雑談・雑考
100「人外の者」
しおりを挟む・『人非ざる者』の見抜き方について
――――――――――――――――――――――――
お寺で修行している知り合いの話。
「妖怪や人外との悲恋話とか、アニメや漫画でも
一緒に暮らしたり戦ったりする話があります
けど―――」
彼がそう言うと、同僚たちも話に加わり……
例えばアメリカだと、ヴァンパイアや人狼などは
定番であり、
欧州でもイギリスは妖精話が盛んで、
フランスだとジェヴォーダンの獣など、
それぞれ特色のある人外の物語が出て来る。
しかし当然ながら、実在、もしくはその存在を
感じられるケースは稀で―――
「普通の人とかでも、そういう存在を感じ取れる
状況や条件って無いんでしょうかね」
という話になった時、彼らの師匠が部屋に
入って来た。
そしてそれまでの話の経緯や、先ほどの疑問を
ぶつけてみると、
「あるっちゃあ、あるんじゃねえか」
師匠曰く、例えばヴァンパイアが鏡に写らない、
というのは有名だし、
影が無い、もしくは薄い……
または煙草の煙など嫌がるもの、眉唾というのも
もとは妖怪に化かされないように、という
まじないの方法だという。
「それに相手に制限がある場合もある。
呼ぶ回数とか―――
前に狐は1回、亡霊・幽霊の類は
2回までしか呼べない、という
話をした事があるよな?」
(■雑考78「回数」参照)
弟子たちがうなずくと、師匠は続けて、
「それに人外ってのは、どうしても
人間との違いが出てきちまうもんだ。
どんなに上手く化けても、例えば
男が女になり切れないように……
違和感、というのはどうしても出る」
それで彼の同僚の一人が、どういう
ケースがありますか? と聞いたところ、
「そうだなあ。
酒の席に呼ばれた事があったんだが、
とある経営者に会ってな。
ただ、会話の中でどうしても
首を傾げる事が何度かあった」
当初は普通だと思っていたのだが、
段々と疲れて来たのだという。
自分なりに師が原因を探ってみると、
「何ていうかなあ、相手が一方的に
しゃべっている時は何の問題も
無いんだけどな。
ただ、自分がしゃべっている話の中で、
その人が知っている、もしくは知識に
引っかかる話題のみ―――
突然それについての知識を披露し出す、
という感じだった」
例えば、儀式で使う塩について話に
なったところ、
『塩ってね、天然のものは水に溶かすと
血液のような成分になるらしいね』
とか、
精進料理の話をしていたら、
『あれ、意外と油が多いので
ダイエットには向かないよね』
とか、全くの無関係では無いが、的外れと
いうか見当違いの答えが返って来た。
そしてちょっとでも議論めいた事になると、
『じゃあ』『それじゃあ』を多用し、
話をリセット、もしくは別の話に切り替えて
しまうのだという。
「何というかな……
本当の意味での意思疎通が出来ない。
正確には『反論に対する再反論が
出来ない』だな。
あと必死さがあった」
「必死?」
弟子の一人が聞き返すと、
「異常な事を隠したがっている―――
自分はまともだと、死に物狂いで
アピールしている。
そんな印象を受けた」
そこで師匠は一息つき、
「まあ今は、発達障害とか
ADHD(注意欠陥多動性障害)と
呼ばれるものがあるから……
ああいうのでも誤魔化しやすいん
だろうよ」
「いやでも―――
人間だったんですよね、その人?」
彼が師にそう聞き返すと、
「ああ、人間『だった』。
それで後でそいつについていろいろ
聞いてみたんだが……
まあ、裏で結構酷い事をしていた
みたいでな。
別に反社とかそういうものじゃねえけど、
非人道的というか―――
全員から、『ああ、あの人ね』という
答えが返ってくるような人間だったよ」
弟子たちが顔を見合わる中、知り合いが
意を決して口を開き、
「人間ではないものになっていた、と?」
「別におかしくはねぇだろう。
人としての道に外れた事ばかり
やってりゃ……
そりゃ人間以外の何かになっても
不思議じゃない」
人間をやめちまうのは、意外と簡単
だからなあ―――
そう師匠は話を締めくくった。
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