【完結】女性冒険者パーティーの愛玩少年記~ナースのお姉さんたちと一緒の世界に転生したボクは、 病院ごと彼女たちの癒し要員となる~

アンミン

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114・ガド帝国の使節団04

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「な、何だここは……!?」

ヴァルマ=武田が先に聖赤山せいせきざん病院に
入ってから数日後、

帝国の使者であり、諜報機関の人間でも
あった彼女たちは―――
その異様な建物を前に立ち尽くしていた。

「真四角で垂直に建っていて……
 どのようにバランスを取って
 いるのでしょうか」

「あの入口はガラス!?
 透明度も凄まじい……」

赤髪の使者も、さすがに異世界の建物には
度肝どぎもを抜かれたのか、ポカンと口を開ける。

「リ、リエール様―――
 どうしますか?」

「どうもこうも……
 ここにヴァルマ領主が来た事は
 間違いないだろう。

 恐らくあの未知の薬も、ここで
 生産されている事は想像に難くない」

リーダー格の彼女の言葉に、全員が
ウンウンとうなずく。

「成分も製法も全くわからないと
 言っておりましたっけ」

「ただ、何らかの機械で作られた事だけは
 間違いないと」

「さらに量産されているようだとの
 分析が―――」

1人が持ち帰った薬があるのだが、
帝国でもその全容は解明出来ず、

わかったのは、帝国の技術を遥かに
上回るであろう製法で作られたという
事だけ。

それもあって、ガド帝国はその薬師の
確保に躍起やっきになっていたのである。

「それでどうしますか?
 入口には、これと言った警備も
 無さそうですが……」

「かと言って、素直に開けてくれるとも
 思えないな。

 しかし、どれだけの魔導具や技術が
 つぎ込まれているやら―――」

リエールが呆れるように病院を見上げると、

『あーあー。
 こちら、聖赤山病院です。
 こちら病院です。

 ここは病気やケガをした人が
 来る場所です。

 どのような目的で来たのか……
 また、差し支えなければお名前や
 身分のご提示をお願いします』

と、大きな声で彼女たちに告げられ、

「な、何だ今の声は?」

「拡声の魔導具でも使っているのか?」

と、リエールの部下たちの間で
動揺が広がるが、

「意思疎通出来るのであれば話が早い。

 ここに見た事も無い薬を作る薬師か、
 それに準じる何かがあるはずだ。

 それを引き渡してもらいたい」

リーダー格の女性が動じる事なく、
ストレートに要求を突き付ける。

『ここは病院です。

 それに、確かにここでしか作れない
 薬や技術はありますが―――
 そうおいそれと動かす事は出来ません。

 治療ならば引き受けられます。
 それ以外の用件であれば、どうか
 お引き取りを……』

通話先の声の主はやんわりと断るが、

「何もわかっていないな。

 我々はガド帝国の使いである!
 そしてここの領主ヴァルマ様からも、
 この件に関する人物を連れて行っても
 良いとの許可を得ているのだ!

 大人しく引き渡して頂こう」

すると、ガラス製の扉の向こうに
人影が見え、

「!?」

「だ、誰だ?」

リエール一行は思わず身構えるも、

『……無理やり連行する、という事までは
 許可した覚えはありません……

 あくまでも交渉、合意の上で招致しても
 いいという意味で言ったのですが……』

そこに現れたのは、数日前に『交渉』
したはずのヴァルマ領主で、

「い、いつの間に!?
 途中で何かに追い抜かされた覚えは
 無いが―――」

さすがにこれにはリエールも動揺の色を
隠せず、

『……それでどうするのですか……?

 この建物や技術、そしてここにいる
 人員は我がヴァルマ領の重要な根幹こんかん……

 ……引き渡すわけにはいきませんが……』

明確に彼女が拒否を伝えると、

「力ずくでも同行してもらう」

「これだけの技術を前にして、
 帰れるわけがなかろう?」

「この建物が壊される前に、考え直す
 事を推奨すいしょうしよう」

と、リエール以下10名ほどの部下たちも、
ある者は魔法を唱え出し、ある者は剣を
構えて戦闘態勢を取る。

『……仕方ありませんわね……

 ……お願い、みっちゃん……』

そのヴァルマの声と共に―――
1人のローティーンの『少女』が、
彼女の隣りに姿を現した。

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