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178・取り込み03
しおりを挟む「……難しい、ですか……?」
「そうですね。
申し訳ありませんが、すでに
みっちゃん様とテオ君を記録した
魔導具は、メルダ竜皇姫様の手に
渡ってしまっておりますので」
その後、竜人族のお姉さんたち全員に
協力を取り付けたボクたちは、
その代表者と一緒に―――
みんなでナースステーションへと
集まっていた。
「どういう事?」
ボクがヴァルマ領主様こと、武田先生に
たずねると、
「まあ、これまではね……
諜報機関の人たちを通じて、相手国の
重要人物を懐柔したり」
「使者を通じて実力を見せつけたり
して来たけど、その手が使えないって
事ッス」
葵お姉ちゃんと加奈お姉ちゃんが
そう説明するも、ボクはまだ首を傾げ、
「つまりであるな。
今回は最初から、向こうのトップに
みっちゃんやテオ君の事を知られて
しまっているのである」
「要するに、事情を知っている周囲の人間が
止められないって事ですわ~」
何とか仲間に引き入れたり、先にこっちの
情報を知った人でも止められないって事?
と、ボクがなおも悩んでいると、
「ええとですね、ミル。
つまり国のトップが最初から、わたしや
ミルに狙いを絞った場合―――
どうしようも無いという意味です。
最悪、それだけで軍を動かす事も
考えられるでしょう」
テオさんの言葉にボクはビックリして、
「ふえぇえぇっ!?
そ、そんな」
「……驚く事は無いでしょう……
現にガド帝国はかつて、みっちゃんと
その師匠を要求して来ました……
……もちろん、武力を背景に……
それを考えると、ノグラード竜皇国が
同じ事をしないという可能性は
低いのです……」
そういえば、ボクも最初はローレル王国
経由で、ガド帝国から『招待』されて
いたんだっけ。
「言いにくいのですが、我々がマオル大陸に
来た目的の1つは―――
みっちゃん様とテオ君の情報を集める
事でした。
もし我々が無事この情報を持ち帰ったと
したのなら……
メルダ竜皇姫様は迷う事なく、
お2人を要求するでしょう」
竜人族のお姉さんの言葉を聞いて、
ボクはまた少し悩んで、
「で、でもあの時は―――
ボクは薬師の弟子という設定でも
ありましたし、他お薬とかそういうのも
あっての話だと思いますし、
映像だけ見て、ボクを欲しい、
という事になるんでしょうか?
あ、テオさんならわかりますけど……」
ボクがそう言うと、ナースステーションの
各モニターに一斉に電源が入って、
『なるっ!!』
『まったく困ったものよ。
こうまで己の価値をわかっていないとは』
ローレル王国のティーネール女王陛下と、
ガド帝国のグレンダ・ガド女帝が突然
話に割って入って来て、
『現にそちらにいるみんなに聞いて
みたらよい。
みっちゃんを手放せ、と言われたら
そうする?』
そしてバクシア獣王国・王姫、
ヒルデガルド様の問いに、
武田先生と葵お姉ちゃんたち、さらに
竜人族のお姉さんも―――
残像が見えるほどに首を左右に振っていて、
「でも、とにかくこのままでは、
マオル大陸とイルミア大陸との間で、
戦争が起きかねませんよ。
何か良い知恵はありませんか?」
テオさんの言葉でみんなはいったん
落ち着き、話し合いが再開された。
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